三方よしカレンダー

2021年9月16日木曜日

第165回三方よし研究会のご報告

今回も無事に下記内容にて第165回三方よし研究会が開催されましたので、ここにご報告致します。


日時:令和3916日(木) 18:3020:30

会場:Zoom活用によるWeb開催

当番:近江八幡市立総合医療センター

テーマ 看取りの意思決定を支える

ゴール

◯在宅で行う意思決定支援を理解する

◯地域での「看取り」を支えるためにできることを考える



【ご挨拶】

近江八幡市立総合医療センター 白山武司院長



今回この場にて伝統ある三方よし研究会が開催されること嬉しく思っております。私も出席は初めてになりますが楽しみに参加させていただきます。

 

 

進行:近江八幡市立総合医療センター 近野由美さん




 

【学習会】

ACP(人生会議)入門編 ~そこにしかない、旅をしよう~」

双樹会 よしき往診クリニック 徳田嘉仁医師



Advance Care Planningを一言で(概ね15秒以内で)説明してみてください

(チャットにて参加者意見募集)

〜ご飯が食べられなくなったらどうしますか?

〜これから、どうなふうに暮らしていきたいかを、大事な人や、かかりつけ医、ケアマネと話し合うこと

(徳田先生個人の考えとして)

〜その人の人となりを皆で“識”っていく過程

・事前知識の整理として〜ACP(アドバンス・ケア・プランニング),AD(アドバンス・ディレクティブ),LW(リビングウィル)の関係性とは

・患者さんに将棋を促した事例

MSC(メディカルケアステーション)を利用した多職種連携、看取りの情報共有の実際




 




【事例提供】

1「倫理カンファレンスを行い多職種でACPに取り組んだ一例」

発表者:近江⼋幡市⽴総合医療センター 向原千夏医師




・症例:Iさん 80歳女性。視床出血で右肩麻痺の後遺症あり。2019.2月〜特養入所。2020.12月新規脳梗塞と菌血症で入院、著しく意識レベル低下。
4人兄弟の長女、早くに両親を亡くし妹の親代わりとして保険会社・事務職などに従事

・人好き、本好き、賑やかなのが好き、面倒見が良い、薄いピンクのマニュキュアをよく塗っていた、熱心なクリスチャンで教会によく通っていた

Iさんの事前意思:「延命治療も経管栄養もいらない、でも痛みはとって欲しい」〜エンディングノートへの記載もあり

・たびたび「家に帰りたい」との訴え〜家=長女さんの実家ではなく元々の京都の実家〜では最期に過ごす場所はどこがよいのだろう?

・倫理カンファレンスを10日目に開催〜臨床倫理の四分割表を使って検討

QOL検討にて:今後どこで過ごすか?①医療センター ②特養 ③近隣A病院 ④自宅 〜慣れた特養施設が一番デメリットが少なかった〜これは家族会議での家族意見と合致

→カンファレンス後3日で特養ふれあいへ退院決定〜「Iさん、帰りましょう!」のスタッフの声

 






2「ふれあいでの関わり」
発表者:特別養護老人ホーム ふれあい 上田氏、井上氏、青山氏



・居室に牧師さん一家が訪問、バイオリン演奏で皆で讃美歌を歌う〜Iさんも歌い出した!

・病院主治医も特養にお見舞い

・施設スタッフの関わり:マニキュアを塗る/カルピスなどを味わっていただく/音楽をかける/アロマを置く/家族写真を置く/牧師さんと会って頂く/愛犬コロちゃんと会って頂く

・最期:エンゼルケアに家族の立ち合い/ご家族の選ばれた洋服を着て頂く/ワインを口に含んで頂く/牧師さんにお祈りをして頂き施設職員でお見送り

・退院から約1ヶ月後にフィードバックカンファレンスを開催、病院・特養それぞれのスタッフで振り返り、課題を共有した〜コロナ禍のため初のオンライン開催

・まとめ:当施設がというよりご本人がエンディングノートに書きとめてくれていたことをご家族と相談しながらケアさせてもらった

・ふれあいでも看取りを開始してから7年ほどになるが、元気な時に「最後はこうしよう」と決めていた本人家族は実際少なく、いざという時に家族の意見が割れることも実際にはある






【グループワーク】

各グループでの意見交換 

テーマ:看取りの意思決定を支えるプロセス

*日常の中で行われている意思決定支援の現状を振り返る

*それぞれの立場で、看取りを支える為にできること

 

【発表】

1GDr.Ns.、行政)


・元気なうちに歩けなくなったらどうするといったことを聞いておく

・施設の職員の話として、若い職員は看取りの場面に遭遇することがないので、実際の場面では怖いと感じることもあった

・退院支援の場面で、コロナ禍で面会できないことも多い中、比較的早く退院を勧められる中で、その方の意思決定が早く分かれば対応もしやすい

・ご飯を食べれなくなったらどうしますか?との問いはDr.であっても容態が悪くなった時には聞きやすいが、普段はなかなか聞きづらいこともある

・特養入所時に最後はどうしますか?と聞くと家族もびっくりするので、それよりも本人のそれまでの生き方を聞くようにするとほぐれてよく話される

 


2G(教育者、管理栄養士、STCWMSWCM


・最期の意思決定支援として、自分も最期どうなりたいかを正月にでも考えておいてね、写真を毎年選んでおいてね、と話している方がいる

・ホスピスでも、本人の予後を家族に説明する場面で、最期の場面まで想像できない家族も居られ時間がかかることも多い

・事例で急性期病院での倫理カンファレンスや主治医の特養訪問や特養対応は素晴らしい

・若いうちは最期のことを考えないではないが深く考えることまではしていないことが多い

・エンディングノートも以前に書いたことが今本当に実行してもらえるのか?毎回やはり更新していかないし、葬式のこともやはり意思を伝えておくことは本人の義務

・宗教観とかかりつけ医をぜひ今から持っておきたい

 


3GPT、施設職員、CM


・訪問リハビリでターミナルケアをしている中、食に関する意思決定支援として、お店に行きたいとの希望に対して、実際に店を調べ動線を確保したりセッティングしたりする、もし行けなくともご家族に喜んでいただけた

45年前までは意思決定支援の場に行くことが難しかったが最近はシステム化され元気なうちから終末期のことを聞けるようになり、延命希望しない方へはスムーズに在宅看取りへ移行できた事例もある

・やはり元気なうちから確認しておくことが大事

・地域とのネットワークを組む中で意思決定支援を早くから行い看取り支援までスムーズにいったこともある

・終末期でのPTの役割として、福祉用具の選定は重要になってくる

 


4G(急性期医療関係者)


Dr.がいざというときに話をされることが多いのに対し、訪問看護では日常の中で本人の人生を探ることをやっているしこれ自体がACPなのかなと思っている

・家族の中から「そうなのよ!」という共感を引き出すことを意識してやっている

・病院地域連携の場ではエンディングノートを使っての対応はなかなか少ないのが現状

・患者と家族の思いがずれた時は間に立たされてネガティブな感情が出て来ることがあるが、その様なとき家族の思いを聞くより「あなたが患者さん本人だったらどう思いますか?」と聞くとよいかも

 


5G(病院、訪問看護、Dr.、患者ご家族)


・本人が話せるうちにしっかり話しておく、記録しておくことが大事

・邪魔をしない様にだがご本人の元気な声をご家族に伝えるようにしている

・コロナ禍でも病院施設でも面会を増やしているところもある

・自宅でなくとも病院でも施設でも看取れる環境を作ろうとする努力をしている〜食べる楽しみなどできることから

・今回のケースはラッキーなケース?良かった悪かったは本当は何年経っても判断のつかないことだろうが、少なくとも今回のケースに関しては多くの家族がよかったと思えている最期だったと言える

・ではもしこのケースが施設じゃなかったら?〜多分どのような場でもご本人ご家族が納得する最期を迎えられたのではないか

 


6G(薬剤師、在宅医、特養職員、医大生)


・特養入所の段階ではもうご本人から情報を頂くことが難しいことも多いので、ご家族から多くの情報を得る工夫をしている

・コロナ禍で定期的にご家族から情報を頂くのも難しくなっているので、タイミングを捉えて頂く〜食べ物であったり飲み物であったり

・急性期病院と地域の病院との性質の違いを感じている

 

 

【コメント】

●ご家族から 〜施設での看取りを決めた想い〜


・うちの子たちの今の思いとして、大学3年の子はやれることをやった、自分もこのような最期を迎えたいなと思った、大学1年の子はおばあちゃんが家族に負担をかけていると悩んでいたのでその不安をもっと取り除いてあげたかったし、もっと家にいるときに優しくしておけばよかった、中学生の子はおばあちゃんにしてあげたかったことを病院施設のスタッフさんが代わりにしてあげてもらえてよかった、最期ふれあいさんが引き受けてくれたことに感謝しているとのことでした。

・私は、母の面会の時に先生にいつもお出会いできたので凄く心強かったです。ふれあいさんにも同じ思いで、どちらかというと家にいるときの方が後悔があります。

5月に私の父も亡くなったのですが、亡くなるまでの一週間だけ入院になったのだが、病院が亡くなる30分前に今の奥さんに会ってもらい、亡くなる前の数分間思い出話をしあいながら息を引き取ったとのこと。両親のことを思うと、寂しい思いをせずに身近な家族といられるのが一番いいのかなとあらためて感じています。色んな方に支えてもらって家族は後悔少なくいられますし感謝しています、本当にありがとうございました。


 

●訪問看護ステーションゆげ ⾬森千恵美看護師


・皆さんこのような最期を迎えられたらいいなと思えるモデルとなる事例だった。この様な最期を目指して、本人が生き切った、家族が後悔しないと思える看取りを目指して、日頃元気なうちから思いを聞いて良い看取りに繋げていきたい。

・訪問看護でもお誕生日に写真を撮る様なイベントをしているが、その写真を見ながらどんな人だったのかというきっかけを掴んでいっている、そういったことの積み重ねが最期の看取りに生きてくるのかなと思い、毎日楽しく訪問看護に従事している。

・今回あらためて在宅は比較的時間がある方だと思った、急性期はそんな時間もなく後悔も残るケースも沢山あるのではないか、今日皆さんの話を聞いてそのありがたみも感じさせて頂いた。今日は皆さんの様々なご意見大変参考になりました、ありがとうございました。

 


【情報提供】

滋賀県多職種連携講演会 918日 1900~ 琵琶湖ホテル



糖尿病三方よし研究会より



【自己紹介】初めての参加者を中心に自己紹介


 

【連絡事項】

 第166回 三方よし研究会  令和31021日(木)

 当番:東近江市、東近江市社協、まちづくりネット東近江

 テーマ:「地域活動を知って専門職に繋ごう」





今回もご参加の皆さま、ありがとうございました。

そして担当頂きました近江八幡市立総合医療センターさまお疲れ様でした。


急性期病院での看取り支援での倫理カンファレンスその他患者さんのことを深く掘り下げたご対応、そして特養施設でのご本人に寄り添ったご対応、とても学びになりました。


次回も皆さまのご参加、お待ちしております!