三方よしカレンダー

2026年7月19日日曜日

第225回 三方よし研究会の報告

【活動報告】第225回 三方よし研究会

テーマ「子三方よし研究会で何ができるだろう?」

令和8年7月18日、第225回「三方よし研究会」を、東近江市の中野ヴィレッジハウスとオンラインをつないだハイブリッド形式で開催しました。

今回のテーマは、「子三方よし研究会で何ができるだろう?」

東近江圏域の各地域で、医療・介護・福祉の専門職や地域住民がつながり、地域に根ざした活動を続けている4つの「子三方よし研究会」から、それぞれの歩みや活動内容、成果、今後の課題についてご報告いただきました。

リレートークの後には、当初予定していたグループワークの枠組みを超え、会場とオンラインの参加者が一つになって語り合う「車座」での対話を実施しました。

医療・介護・福祉の連携にとどまらず、地域住民、行政、商店、企業など、地域に存在する多様な人や資源とどのようにつながり、暮らしを支えていくのか。発表者や参加者の皆さまから、これまでの実践に基づく熱い思いや、これからの地域づくりにつながる多くの意見が寄せられました。






リレートーク

地域で育つ「子三方よし研究会」

1.チーム永源寺

 

東近江市永源寺診療所 花戸貴司先生

はじめに、東近江市永源寺診療所の花戸貴司先生から、「チーム永源寺」の活動についてご報告いただきました。

花戸先生は、2000年に永源寺へ赴任されてから、地域医療に携わってこられた歩みを振り返りながら、医療と介護の連携だけでは地域の暮らしを支えきれないことをお話しされました。

「医療と介護の連携は、地域を支える『共助』のごく一部分に過ぎません。大切なのは、自助・互助・共助・公助の間に『隙間をつくらない活動』なんです。」

チーム永源寺では、医師や看護師、薬剤師、栄養士、ケアマネジャーといった医療・介護の専門職だけでなく、手話通訳者や里山活動家をはじめ、地域で暮らし、活動している多様な人たちとの横のつながりを大切にしてこられました。

花戸先生は、病気や疾患を中心に支援を考える「縦の軸」と、地域やコミュニティーを中心に暮らしを考える「横の軸」をつなぐことが重要であると説明されました。

一人の人を病気や障害だけで捉えるのではなく、その人がどのような地域で、誰とつながり、どのような暮らしを続けてきたのかを考える。そのためには、医療・介護の専門職だけではなく、地域に関わる多様な人たちとの関係が欠かせないと語られました。

また、活動を長く続けるうえで大切にしていることとして、花戸先生は、

「医者が偉そうにしないこと。」

と率直に話されました。

専門職が一方的に教えたり、活動を主導したりするのではなく、地域の人たちと同じ目線で関わり、ともに楽しむ姿勢が重要であるといいます。

さらに、外側に客観的な基準がある「サイエンス」だけでなく、自分たちの内側にある、

「楽しい」
「面白い」
「美味しい」

といった感覚を大切にする「アート」の尺度についてもお話しされました。

地域の人たちと「楽しい」「面白い」と感じられる価値観を共有することが、活動を無理なく継続し、20年以上にわたって地域のつながりを育んでこられた源泉であると語られました。

2.子三方よし湖東地区

 



東近江市地域包括支援センター 金子尚美さん

続いて、東近江市地域包括支援センターの金子尚美さんから、「子三方よし湖東地区」の活動をご報告いただきました。

子三方よし湖東地区は、2016年から活動を始め、10年以上にわたって継続しており、現在は第39回を数えています。

開催時期を毎年6月、9月、12月、3月の年4回に固定し、毎回20名前後の多職種が参加していることが紹介されました。

研究会では、オーラルフレイルや心不全をテーマとした学習、実際の支援事例を通じた事例検討など、その時々の地域課題や参加者の関心に応じて、多彩な内容に取り組んでいます。

金子さんは、活動を継続してきた最も大きな成果として、参加者がお互いの専門性だけでなく、人柄や考え方についても理解できるようになったことを挙げられました。

日頃から顔を合わせて学び、意見を交わすことで、職種や所属機関を超えた「顔の見える関係」が築かれ、困ったときに気軽に相談し合える関係へと発展してきたといいます。

具体的な実践として、「小多機での看取り」や「心不全の地域連携」などについて報告されました。

普段から地域の専門職同士がつながっているからこそ、支援が必要になった際にも、職種間で速やかに相談し、役割を分担しながら対応することができたことが紹介されました。

単に名刺や連絡先を知っているだけではなく、お互いの専門性や人柄を理解したうえで関係を築いておくことが、実際の支援場面において大きな力になることを、具体的な事例を通してお話しいただきました。

3.てんびん倶楽部(五個荘)


社会福祉法人 六心会 奥村昭さん

続いて、社会福祉法人六心会の奥村昭さんから、五個荘地域で活動する「てんびん倶楽部」についてご報告いただきました。

「てんびん倶楽部」という名称は、近江商人を象徴する天秤棒にちなんで名付けられました。

2015年の発足以来、

「焦らず、ゆるく、つながる」

ことを大切にしながら、地域に根ざした活動を続けています。

てんびん倶楽部の大きな特徴の一つが、専門職が地域のサロンなどへ出向いて行う「出前講座」です。

歯科医師が住民の前で口腔ケアを実演したり、福祉職が認知症について分かりやすく説明したりするなど、専門職が地域へ出向き、住民と直接顔を合わせる機会を大切にしてきました。

こうした活動を通して、地域住民に医療や介護、福祉を身近に感じてもらうとともに、専門職にとっても、地域で暮らす人たちの声や生活の実情に触れる機会となっています。

奥村さんは、コロナ禍においても対面での開催を大切にしてきた理由について、

「メンバー全員の近況報告を通じて、地域の課題、いわゆるシャドーワークを共有する時間を大切にしたかったからです。」

と語られました。

特別なテーマを設けなくても、参加者がそれぞれの近況や、日々の業務、地域で気になっていることを話すことで、制度や会議の場には表れにくい地域の困りごとが見えてきます。

現在では民生委員もメンバーに加わり、地域住民の身近な相談や困りごとを拾い上げ、必要な人や機関につなぐことができる、心強いプラットフォームへと成長しています。

4.ぼちぼちねっと竜王




小規模多機能 山かがみ 山下京子さん

リレートークの最後は、小規模多機能山かがみの山下京子さんから、「ぼちぼちねっと竜王」の活動についてご報告いただきました。

ぼちぼちねっと竜王は、2013年に発足しました。

活動を始めた背景には、

「在宅生活を支えるには、病院だけでは限界がある」
「地域で暮らし続けるためには、多職種によるチームが必要である」

という思いがあったといいます。

活動では、参加者が小さなグループに分かれて意見を交わす、スモールグループでのディスカッションを大切にしてきました。

少人数で話し合いを重ねる中で、それまで電話や書面上では名前や声を知っていても、実際には顔が一致していなかった人たちが、次第にお互いを知り、一つのチームとしてつながっていったと振り返られました。

「名前と声は知っていたけれど、顔が一致していなかった人たちが、一つのチームになっていきました。」

コロナ禍では活動を一時休止せざるを得ませんでしたが、現在は会場とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で活動を再開されています。

一方で、ハイブリッド形式になったことで会場参加者が減少するなど、新たな課題も生じていることが報告されました。

それでも山下さんは、

「ぼちぼち、少しずつでも、多職種で学び合う場を守り続けたい。」

と、活動を継続する強い思いを語られました。

車座での対話




地域から「商い」まで、三方よしの輪を広げる

4つの子三方よし研究会からのリレートーク終了後は、参加者同士による意見交換を行いました。

当初はグループに分かれて話し合う予定でしたが、花戸貴司先生から、

「せっかく集まったのだから、みんなで顔を見ながら話しましょう。」

との提案があり、会場参加者全員が輪になり、オンライン参加者も交えた「車座」での対話となりました。

それぞれの地域で活動を続ける中で感じている悩みや工夫、医療・介護以外の人たちとの連携、独居高齢者や身寄りのない方への支援など、幅広いテーマについて意見が交わされました。

「集まりやすさ」への工夫

はじめに、研究会を開催する曜日や時間帯について意見が交わされました。

花戸貴司先生からは、チーム永源寺では、あえて平日の午後1時30分から開催していることが紹介されました。

「私たちは、あえて平日の午後1時半に開催しています。そうすることで、行政の保健師さんも『業務』として参加しやすくなるんです。」

地域活動というと夜間や休日に開催されることも多くありますが、行政職員や専門職にとっては、勤務時間内であれば業務として参加しやすい場合があります。

ケアプランセンター加楽の楠神からも、

「ケアマネジャーにとっても、交代制で参加できる日中開催は非常にありがたいという声を聞いています。」

と、日中開催のメリットについてお話ししました。

オンラインで参加された多田さんからも、

「つながりをつくることが目的であれば、日中の方が、より多様な人を巻き込めるのではないかと感じました。」

との意見がありました。

参加しやすい場をつくるためには、夜間や休日に固定するのではなく、参加してほしい人の立場や働き方を考えながら、開催時間を工夫することが大切であると共有されました。

地域の枠を超えた悩みと、プラットフォームの意義

栄養士会の澤谷さんからは、近江八幡地域でも多職種や地域住民がつながる場をつくろうとしているものの、

「誰を中心に進めるのか」
「どのように次の世代へつないでいくのか」

という点に悩んでいることが紹介されました。

「近江八幡でもつながりをつくろうとしていますが、誰をボスにするか、どうやって次世代につなぐか、突破口を悩んでいます。」

これに対して、社会福祉法人六心会の奥村昭さんは、特別なテーマや明確な結論を求めなくても、集まれる場を継続して開いておくことに意味があると話されました。

「何か特別なテーマがなくても、『ひたすらその場を開き続けること』が大事です。課題をそこに放り込んでおくことで、思わぬところでつながりが生まれる。それがプラットフォームの役割だと思っています。」

誰か一人のリーダーがすべてを背負うのではなく、地域の人たちが課題や気づきを持ち寄ることのできる場を開き続ける。その中で、課題と人、活動と活動が自然につながっていくことが、地域におけるプラットフォームの大切な役割であると語られました。

大学教授の髙崎さんからは、栄養の重要性を伝え、栄養士が地域のチームの中でどのように力を発揮できるのかについて、日頃から難しさを感じているとの発言がありました。

「栄養の重要性を訴えても、チームの中でどう活躍するかは難しい問題です。今日ここで、同じように悩む仲間がいると分かったことが一番の収穫です。」

課題をすぐに解決できなくても、同じ悩みを持つ人と出会い、思いを共有できること自体が、次の一歩につながることを感じる意見交換となりました。

医療・介護を超えた「地域ビジネス」との連携

対話の中では、医療・介護・福祉の専門職だけではなく、地域で商売や仕事をしている人たちとの連携についても意見が交わされました。

花戸貴司先生からは、

「医療・介護だけでなく、コンビニや銀行、道路工事をしているような、『ビジネス』として地域に根ざしている人たちと、どうつながれるかが、これからの鍵になるのではないでしょうか。」

との提案がありました。

地域の中には、日々の仕事を通じて高齢者や住民と接している人がたくさんいます。

医療・介護の専門職よりも、銀行や郵便局、商店、コンビニ、美容室などの方が、住民の日常の変化に早く気づくこともあります。

宇都宮さんからは、

「最近は、銀行のビルで研究会を開くなどの動きもあります。司法書士さんがACPに関わる事例も増えていますね。」

と、金融機関や司法関係者との連携について紹介されました。

花戸先生からは、銀行の窓口職員が認知症サポーター養成講座を受講していることも多いとして、

「振り込み詐欺を防ぐだけでなく、『いつもと様子が違う』『何かおかしい』という気づきを専門職につないでくれれば、三方よしの仕組みになります。」

と話されました。

地域包括支援センターの河島さんからは、

「平和堂さんなどの量販店でも、数百人単位で認知症サポーター養成講座を受けてくださっています。」

と、地域の量販店における取り組みが紹介されました。

楠神からも、地域における郵便局との連携について報告しました。

「私の地域では、郵便局長さんが会議に来てくださっています。夏場には、高齢者の方が休憩できる場所として郵便局を開放してくださるなど、心強い存在になっています。」

さらに、栄養士会の澤谷さんからは、近江八幡地域における商店の取り組みについてお話しいただきました。

「近江八幡では、電気屋さんが電球交換の際にLED補助金の申請をサポートしたり、美容室が送迎を含めた見守りをしたりと、『五つ目の商助』とも呼べるような商いの力が生まれています。」

自助・互助・共助・公助だけでなく、地域に根ざした「商い」が暮らしを支える力となっていることが共有されました。

医療・介護の制度やサービスだけで地域生活を支えるのではなく、日常的に地域住民と接している企業や商店ともつながることで、見守りや早期発見、生活支援の可能性が大きく広がることを感じる対話となりました。

意思決定支援と「未来ノート」

独居高齢者や身寄りのない方が増える中で、本人が住み慣れた地域でどのように暮らし続けるのか、また、自分のこれからの人生についてどのように考え、意思を伝えていくのかについても意見が交わされました。

花戸貴司先生は、地域で暮らしていた独居の方が、支援上の不安などから、サービス付き高齢者向け住宅などの「箱」へ移っていく現状について、次のように話されました。

「最近は独居の方が増え、地域からサ高住などの『箱』へと吸い込まれてしまう現象があります。そうなると、地域での生活から切り離されてしまう。これは切ないことです。」

安全や安心を求めて住まいを移すことが必要な場合もありますが、本人が長年築いてきた地域とのつながりや役割が失われてしまうことへの課題が提起されました。

宇都宮さんからは、

「病院からお家に帰る代わりに、施設を選択してしまうことがあります。自分のこれからの人生をどう過ごしたいか、市民がアンテナを張って考える必要があります。」

との発言がありました。

医療・介護が必要になってから急いで選択するのではなく、元気なうちから自分の暮らし方や人生について考え、家族や支援者と話し合っておくことの重要性が共有されました。

地域包括支援センターの川島さんからは、そのためのツールとして「未来ノート」が紹介されました。

「名称にも思いを込めて、『未来ノート』としています。死の準備をするためのものではありません。これまでの人生を振り返り、これからの人生のプランを前向きに立てるためのツールです。」

未来ノートは、人生の最終段階だけを考えるものではなく、自分がこれまでどのように生きてきたのか、何を大切にしているのか、これからどのような暮らしを送りたいのかを考えるためのものです。

河島さんからは、

「身寄りのない方の支援など、これからの多死社会における意思決定支援を、医療・介護の連携の中で話し合っていきたいです。」

との思いが語られました。

本人の意思を中心に置きながら、医療・介護・福祉の専門職、地域住民、関係機関がどのように支え合うのか。今後、地域全体で考えていく必要のある重要なテーマとして共有されました。

小鳥輝男先生による総括

研究会の最後には、三方よし研究会実行委員会の小鳥輝男先生から、今回のリレートークと車座での対話を振り返り、総括のお言葉をいただきました。

小鳥先生は、三方よし研究会が始まった当初から、

「具体的な取り組みは、それぞれの地域の『子三方よし研究会』で実践していこう」

という考えを大切にしてきたことをお話しされました。

「三方よし研究会の原点は、『具体的なことは各地域の「子」でやろう』ということでした。」

そして、活動を続けるうえでは、すぐに成果を求めたり、形を固定したりするのではなく、

「焦らず、ゆっくり」

進めることが大切であると語られました。

「当時から大切にしてきたのは、『焦らずゆっくり』、そして『規則に縛られず、必要に応じて形を変えていく』という柔軟さです。」

地域によって、人口規模も資源も、参加する人も、抱えている課題も異なります。

そのため、同じ方法をすべての地域に当てはめるのではなく、それぞれの地域に合った形に変えながら活動を続けることが重要です。

小鳥先生からは、各地域で立派な活動が育っていることへの評価とともに、

「今は立派な活動が育っていますが、これからはさらに地域のあらゆる資源を巻き込んで、この輪を広げていきましょう。」

との力強いメッセージをいただきました。

終わりに

今回の研究会では、「チーム永源寺」「子三方よし湖東地区」「てんびん倶楽部」「ぼちぼちねっと竜王」の4つの活動から、それぞれの地域に合った方法で、人と人とのつながりを育ててきた歩みをご報告いただきました。

活動の形や開催方法は異なっていても、共通していたのは、無理なく集まり続けること、顔の見える関係を築くこと、そして、地域で生まれた困りごとをみんなで持ち寄ることの大切さです。

また、医療・介護・福祉の専門職だけでなく、行政、民生委員、銀行、郵便局、量販店、電気店、美容室など、地域で暮らしや商いに関わる多様な人たちも、地域を支える大切な仲間であることを再確認しました。

地域によって強みも課題も異なります。

しかし、お互いの活動を知り、悩みや工夫を共有し、対話を重ねることで、新たな気づきやつながりが生まれます。

「焦らず、ゆっくり」、そして、形や規則に縛られることなく、地域の実情に合わせて活動を育てていく。

三方よし研究会の原点と、子三方よし研究会が果たしている役割を改めて確認する、充実した研究会となりました。

次回のご案内

第226回 三方よし研究会

日時
令和8年8月20日(木)18時30分~20時30分

開催方法
オンライン開催

当番
八幡蒲生郡薬剤師会・東近江薬剤師会

次回の研究会でも、多くの皆さまとお会いできることを楽しみにしております。

花戸先生より

三方よし研究会の活動は、皆さまからの温かいご寄付とご支援によって支えられています。

PayPayなどによるご支援も受け付けておりますので、今後も地域のつながりを育み、誰もが安心して暮らし続けられる地域づくりを進めていくため、引き続きご支援とご協力をよろしくお願いいたします。

2026年7月5日日曜日

三方よし研究会主催の「東近江圏域介護職員初任者研修」の開講式について

三方よし研究会主催の「東近江圏域介護職員初任者研修」の開講式を行いました。

地域の介護人材確保に少しでも力になれればとの思いで続けてきたこの研修も、今年で11年目。
オリエンテーションの後には、小串先生よりご挨拶をいただき、今年度の研修を無事にスタートすることができました。

今年度は3名の方が受講され、これから全135時間の研修に取り組まれます。
介護の知識や技術を学ぶことはもちろん、受講生同士や講師の皆さまとの出会いやつながりも大切にしながら、一歩ずつ学びを深めていただければと思います。
3名の受講生の皆さんが無事に研修を修了され、介護の仕事への就労につながるよう、最後までしっかりとサポートしていきたいと思います。

講師をはじめ、研修の運営にご協力いただいている皆さまにも、改めて感謝申し上げます。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。



2026年6月18日木曜日

第224回 三方よし研究会開催のご報告

本日、第224回の三方よし研究会が開催されましたので、ここに報告いたします。



日時:2026618() 18:3020:30

会場:きいと/WEB開催(ZOOM開催

当番:東近江介護サービス事業者協議会在宅部門・施設部門(社会福祉法人六心会

 

全体進行小串輝男先

 

【ゴール】

○「東近江市多文化共生推進計画」を共有す

外国人住民の困りごとを相談事例等を通して知り、多職種・地域連携でできることを考える

顔の見える関係・ネットワークを作り、連携を深める。

 

【情報提供】

「東近江圏域介護職員初任者研修」の開催について


・東近江圏域介護職員初任者研修は、過去11年間にわたり継続して開講されており、令和8年度も開催が決定しました。この研修は、三方よし研究会のメンバーが講師となり、現場の最前線の知識や経験を伝える内容となっているのが大きな特徴です。

・令和8年度の受講申し込み締め切りは、6月24日となっています。ちなみに日野町や東近江市では、条件に応じて研修受講費用の一部を補助する制度が始まっていますので、周囲に興味のある方がいれば、ぜひ周知お声がけをお願いします。

 

進行:六心会  洋三さん


【30分学習会】

「東近江市における外国人住民の概況と「東近江市多文化共生推進計画」の概要について」

東近江市企画部企画課  係長  溝江  麻衣子さん


1. 東近江市における外国人住民の概要

・東近江市の総人口は平成17年の約11万6,000人をピークに減少に転じており、令和8年6月1日時点では11万1,355人となっている。一方で、外国人住民数はこの10年間増加を続けており、令和8年6月1日現在で5,322人に達している。

・国籍構成としては、以前はブラジル国籍が最多だったが、令和元年頃からベトナム国籍が急増している。令和7年の後半には一時期、ベトナム国籍の人数がブラジル国籍を上回る逆転現象が起きたこともある。

・現在、東近江市は滋賀県内で最もベトナム国籍の住民が多い自治体となっている。

日本人住民の平均年齢が47.0歳であるのに対し、外国人住民は33.3歳と約15歳も若いのが大きな特徴。

・特に20代は外国人住民全体の31.4%(日本人住民の約3倍の比率)を占めており、地域の労働力として重要な世代が集中している。

・在留資格別では「永住者」が最も多く、次いで「定住者」となっている。

・特筆すべきは、10年前と比較して「家族滞在」や「永住者の配偶者等」といった資格を持つ人が大幅に増加している点。

・これは、かつての期間限定の労働という形態から、家族を呼び寄せて地域で共に暮らす「定住化」へとフェーズが移行していることを示しているといえる。


2. 東近江市多文化共生推進計画の概要

・本計画では多文化共生を「国籍に囚われず、全ての住民が互いの文化や多様な価値観を認め合い、平穏で心豊かに生きていくこと」と定義している。

・外国人住民を単なる「支援の対象」ではなく、「地域社会を共に作る一員」として捉え、人権を尊重し能力を最大限に発揮できる活力ある社会を目指している。

国のロードマップに呼応し、自治体として初めて「ライフステージに応じた支援」という視点を盛り込んだ。これは、これまでの「一時的な滞在」を前提とした支援から、誕生、就学、就職、結婚、そして老齢期に至るまでの切れ目のない支援体制の構築を目指している。


3. 5つの基本目標と具体的な施策内容

⚫︎基本目標1:コミュニケーションの円滑化(最重要課題)

・計画の中で最も大きなウェイトを占めている。日本語、特に「日曜日」の読み分けや魚の数え方(1匹、2匹、3匹など)といった独特の難しさを理解することが前提となる。

・多言語での情報発信に加え、行政や地域からの情報を分かりやすく伝える「やさしい日本語」の普及に注力している。

⚫︎基本目標2:生活環境の整備(住みやすさの向上)

・医療・福祉・保健体制: 日本の複雑な医療制度や社会保険の仕組みを周知し、誰もが安心してサービスを利用できる環境を作る。

・教育環境: 日本語指導が必要な児童生徒への支援や、保護者への情報共有を強化する。

・災害対策: 災害時に「高台へ避難」という言葉が伝わらない事例があった教訓から、「高いところに逃げて」といったシンプルかつ即時性の高い表現(やさしい日本語)による情報伝達を推進している。

⚫︎基本目標3:社会参画の促進

・外国人を「守られる存在」から「地域を支えるスタッフ」へと転換させるための活動を支援している。

⚫︎基本目標4:ライフステージ別の課題解決

・青年期: キャリア教育の充実。親と同じ職業に就くだけでなく、多様な選択肢を提示する。

・老齢期(65歳〜): 介護保険制度や高齢者福祉サービスの周知を早期から行い、孤立を防ぐ。

⚫︎基本目標5:推進体制の整備

・市役所内部の連携(町内プロジェクト)だけでなく、警察、消防、医療機関、ボランティア団体と情報を共有し、犯罪の抑止や社会的孤立を防ぐネットワークを構築する。


4. 専門職や地域住民へのメッセージ

外国人住民が日本で働くために、どれほどの労力をかけて日本語を学び、不自由な思いをしながら生活しているかを想像し、寄り添う姿勢が求められる。

地域のイベントや避難訓練に積極的に声をかけ、「地域の仲間」として迎え入れることが、安心安全な街づくりの第一歩となる。

・多職種・多機関の連携として、医療や福祉の現場で生じる困りごとは、特定の部署だけで解決できるものではない。行政や国際交流協会、そして専門機関である「滋賀外国人相談センター」などを活用し、チームで支える仕組み作りが必要。






【事例報告】

「東近江市の外国人住民が抱える問題とその対応について~東近江国際交流協会の相談活動を通して私たちができることを考える~」

東近江国際交流協会  事務局長  モリコーニ  直美さん


1. 東近江国際交流協会の活動について
 協会は主にボランティアによって運営されており、あらゆる国籍の人が集い、多文化交流を楽しむ場を提供している。
5つの姉妹都市との「姉妹都市交流事業」と、在住外国人の支援や相談を担う「多文化共生推進事業」を行っている。
個別指導形式の教室を週末に開催しており、1回100円という低価格で、各自のレベルやニーズに合わせた学習を支援している。

2. 相談活動から見える課題と対応
年間約100件の相談があり、内容は日本語学習のほか、ゴミ出しや騒音などの近隣トラブル、ヤングケアラーの懸念など多岐にわたっている。
認知症を患ったポルトガル語話者への介護支援や、言葉が通じず身元不明となった迷子の高齢者への対応など、緊急かつ専門的な通訳・翻訳が必要なケースも過去相談にはあった。
1人で出稼ぎに来ている人は強い孤独感を抱えており、昨年初めて開催したスピーチ大会では「家族の笑顔を思い浮かべて辛さを乗り越えている」という切実な思いが語られた。

3. 職場や地域での円滑なコミュニケーションのコツ
理解していなくても「分かりません」と言い出せなかったり、間違って理解したまま「分かった」と答えたりするケースがあるため、注意が必要。
日本特有の「空気感で理解する」ことは難しいため、言葉による明確な伝達が不可欠。
・「家族」は外国人住民にとって家族は最大の関心事であり、家族の話題を出すことが心の距離を縮める最も有効な方法の一つ。
・国ごとに文化的「スイッチ」がある。中国のメンツ、韓国の年齢序列、インドネシアの怒る上司への不信感など、国ごとの価値観(スイッチ)を尊重し、不要な摩擦を避けることが重要。

4. 今後の展望と連携
違いを否定せず、互いの多様性を認め合い「違いが素晴らしい」と言い合える関係性を築くことが共生の第一歩。
解決が難しい問題については、多言語対応が可能な「滋賀外国人相談センター」などの専門機関へ繋いでほしい。



進行:花戸  貴司先生


【グループ別意見交換】

それぞれの立場での外国人住民との関わりの中で課題となっていることについて共有する。

・以下ののテーマについて、1つ以上について話し合う。

外国人住民が「安心して利用できる保健・医療・福祉体制の整備」のために必要な取り組み基本計画2「住みやすさの向上」施策3

外国人住民の「災害への備えと災害時の対応の周知」のために必要な取り組み基本計画2「住みやすさの向上」施策4

外国人住民の「ライフステージに応じた支援」(基本目標2)のために必要な取り組み


【発表】

<1グループ>

ケアマネジャー、地域包括支援センター職員、薬剤師、看護師、医師、保健所職員という職種で構成された。

乳幼児健診の現場などで外国人の親子が増えている現状がある。特に20代・30代の若い世代が増えていることは、支援者も肌で感じている

・親よりも日本語が堪能な子供が、病院で通訳を務めるケースが多く見られる。しかし、癌の告知や重篤な病状、終末期の意思確認といった非常にデリケートで重い内容を、子供に翻訳させることの是非や、その心理的負担を危惧する意見も出された。

対面や電話では言語の壁が厚い一方で、LINEなどのテキストベースのやり取りであれば、翻訳機能等も活用しやすく、より確実な情報伝達ができるのではないか。

外国人に「日本のルールに合わせてもらう」という一方的な視点ではなく、受け入れる側が相手の国の事情や宗教的背景を積極的に学び、理解しようとする姿勢が不可欠。

保健所の立場からは、結核などの感染症対応において、本人だけでなく勤務先の管理者や通訳も含めて、正しい知識の普及や服薬継続の重要性を指導している実情がある。


<2グループ>

病院ソーシャルワーカー、地域連携事務、在宅ケアマネジャー、障害相談員が、実務レベルでの対応について議論した。

臨床現場では「ポケトーク」や翻訳アプリを使用しているが、厳密なインフォームド・コンセントを行うには精度が不足する場合があった。市役所や国際交流センターでも通訳が見つからず苦慮した際、厚生労働省が提供する「無料の医療通訳」電話サービスを利用して解決した事例がある。

医療・介護現場で働く外国人職員が増える中、漢字にカタカナを併記するなどの細やかな配慮や、既に現場で活躍している先輩外国人職員による直接指導を取り入れ、職場定着を図っている。

地域で開催されている日本語教室は、単なる語学学習の場にとどまらない。ゴミ出し等の生活ルールや、災害時の避難方法、防災知識を伝える「地域生活の教育拠点」としての役割を担っている。

・祭りなど、日本の伝統文化や地域の祭りに興味を持つ外国人は多く、町内の飲み会や行事へ積極的に参加してもらうことが、互いの心の垣根を低くし、地域社会に溶け込むための大きなキーワードになる。


<メイン会場グループ>

医師、施設長、病院理事長、ケアマネジャー、薬剤師、歯科衛生士のメンバーにより検討した。

日本の医療制度は、正規の滞在者であれば高齢者であっても通訳を介して適切にサポートできる体制が整っている。国籍を問わず「困りごとの本質」は万国共通。

フィリピン人等の技能実習生を受け入れている施設では、彼らの信仰を尊重し、施設内に礼拝室を設けるなどの配慮を行うことで、精神的な安定と良好な就労環境を維持している例が紹介された。

貧困層の多い国では医師が不足し、薬剤師が地域医療の主役を担っている現状などの報告があった。こうした背景を知ることは、来日した外国人の期待やニーズを理解する助けとなる。

日本特有の「本音と建前」を理解することの難しさや、馴染みのない食文化(刺身など)であっても「せっかく出されたから」と無理をして食べてしまうような、日本的な気遣いから生じる誤解や苦労の事例が紹介された。

災害時に最も有効なのは、日頃からの横の繋がり。特別な支援制度を整える以前に、普段から近所付き合いがあれば、いざという時に「あそこの外国人を助けに行こう」と自然に手が差し伸べられ、安全な場所へ導くことができる。


【指定発言】

⚫︎社会福祉法人六心会 介護老人保健施設ここちの郷 副施設長 愛須 和美さん

 本日は貴重なお話を色々聞かせていただきまして大変勉強になりました。 私どもは今法人として中国人の方10名、フィリピンの方6名、計16名の受け入れを行っております。7月1日からまた6名いらっしゃり計22名となります。大体6年、7年ぐらい前から継続して受け入れを行ってきました。

 その中で私がお話を聞いて感じたことは、ハード面とソフト面、両方のサポートがいるということです。ハード面としては、行政や色んなサポートを受けられるというシステムが構築されていることです。ただそれだけでは本当のサポートとはなりませんので、ソフト面のサポート、例えば困りごとがありそうだなと思ったら、同僚が声をかけられる環境であるとか、お母さん的な存在の職員がいることで、安心して務められるっていうことがあるのかなと思いました。

 あともう1点、外国ということでバイアスをかけないということも非常に重要かなと思いました。外国人だからとか、何々の方だからというよりも、私が6年7年付き合って感じることは、やはり最後は人なんですね。日本人も外国人も全く変わらなくて、その人一人一人のパーソナリティが大きい部分もありますので、バイアスをかけずに、きちんと人間として向き合うということが非常に大事かなと思っております。

 今後も共生社会ということで、働いていただく方だけではなく、私たちが地域の社会資源として、地域の方や外国人の方とどのように関係性を構築して、より良い住みやすい社会を作っていけるのかなということで、地域担当の職員もおりますので、力を活かしながら協力していきたいなと思います。今日はありがとうございました。


⚫︎東近江市五個荘木流町(東近江市市議会議員)  大橋  保治さん

 皆さんこんばんは。貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。やっと私の時間がやってまいりました。私は五個荘木流町に住んでいるんですけども、大体人口は約210人で70軒ぐらいの集落なんですけれども、令和元年ぐらいにブラジルの方が空き家を改修して引っ越してこられました。ご主人と奥さんと子供さん5人家族です。

 令和4年に私がそこの区長をしている時に、7月の自治会の清掃で草刈りがあったんですけども、出席されなかったので、自治会長が不参加料集めに行くので、組長さんとして一緒に来てくれないかということで、一緒についていきました。

 行きましたら「なんでそんなお金を払わなきゃいけないんですか」という話になりまして。 その時の世間話の中でですね、公園の草刈りもしていないことや、五個荘の中央公園の方が綺麗やないかとか、家の周りに街灯がないので非常に夜危ないんですよとか、「朝私は5時に出て、三重県まで仕事に行って帰りが毎日夜9時になるので、日曜日しか休みがないのに、なんでそんな場所へ行かなきゃいけないんですか」という話を1時間ぐらい玄関でしておりまして。

 ふと玄関先に大きいバーベキューコンロが見えましたので、「バーベキューはよくされるんですか?」という風に聞きましたら「するよ」ということでありましたので、「今度一度しませんか」ということで提案しましたら「しましょうよ」という話になりまして。 不参加料の話をしに行ったのに、バーベキューの日程を決めて帰ってきたなということになりまして。それから毎年自宅に行きバーベキューすることになりました。

 令和5年からですね、8月に行う地元の夏祭りに来られるようになりましたし、10月に毎年レクリエーションの大会をしておるんですけども、そこも家族で参加してくれるようになりました。 昨年度の夏祭りは、その家族の方はもちろん来ていただいたんですけども、ブラジルの友達の方も一緒に来るようになりまして、本当に身近な国際交流と言いますか、自治会の中で一緒に取り組めているというのは非常に大きい成果かなというように思っております。以上です。ありがとうございました。


【連絡事項】

第225回 三方よし研究会 2026年7月18日(土)16時~18

内容:「子三方よし研究会」の取組み報告

当番:実行委員会