三方よしカレンダー

2026年6月18日木曜日

第224回 三方よし研究会開催のご報告

本日、第224回の三方よし研究会が開催されましたので、ここに報告いたします。



日時:2026618() 18:3020:30

会場:きいと/WEB開催(ZOOM開催

当番:東近江介護サービス事業者協議会在宅部門・施設部門(社会福祉法人六心会

 

全体進行小串輝男先

 

【ゴール】

○「東近江市多文化共生推進計画」を共有す

外国人住民の困りごとを相談事例等を通して知り、多職種・地域連携でできることを考える

顔の見える関係・ネットワークを作り、連携を深める。

 

【情報提供】

「東近江圏域介護職員初任者研修」の開催について


・東近江圏域介護職員初任者研修は、過去11年間にわたり継続して開講されており、令和8年度も開催が決定しました。この研修は、三方よし研究会のメンバーが講師となり、現場の最前線の知識や経験を伝える内容となっているのが大きな特徴です。

・令和8年度の受講申し込み締め切りは、6月24日となっています。ちなみに日野町や東近江市では、条件に応じて研修受講費用の一部を補助する制度が始まっていますので、周囲に興味のある方がいれば、ぜひ周知お声がけをお願いします。

 

進行:六心会  洋三さん


【30分学習会】

「東近江市における外国人住民の概況と「東近江市多文化共生推進計画」の概要について」

東近江市企画部企画課  係長  溝江  麻衣子さん


1. 東近江市における外国人住民の概要

・東近江市の総人口は平成17年の約11万6,000人をピークに減少に転じており、令和8年6月1日時点では11万1,355人となっている。一方で、外国人住民数はこの10年間増加を続けており、令和8年6月1日現在で5,322人に達している。

・国籍構成としては、以前はブラジル国籍が最多だったが、令和元年頃からベトナム国籍が急増している。令和7年の後半には一時期、ベトナム国籍の人数がブラジル国籍を上回る逆転現象が起きたこともある。

・現在、東近江市は滋賀県内で最もベトナム国籍の住民が多い自治体となっている。

日本人住民の平均年齢が47.0歳であるのに対し、外国人住民は33.3歳と約15歳も若いのが大きな特徴。

・特に20代は外国人住民全体の31.4%(日本人住民の約3倍の比率)を占めており、地域の労働力として重要な世代が集中している。

・在留資格別では「永住者」が最も多く、次いで「定住者」となっている。

・特筆すべきは、10年前と比較して「家族滞在」や「永住者の配偶者等」といった資格を持つ人が大幅に増加している点。

・これは、かつての期間限定の労働という形態から、家族を呼び寄せて地域で共に暮らす「定住化」へとフェーズが移行していることを示しているといえる。


2. 東近江市多文化共生推進計画の概要

・本計画では多文化共生を「国籍に囚われず、全ての住民が互いの文化や多様な価値観を認め合い、平穏で心豊かに生きていくこと」と定義している。

・外国人住民を単なる「支援の対象」ではなく、「地域社会を共に作る一員」として捉え、人権を尊重し能力を最大限に発揮できる活力ある社会を目指している。

国のロードマップに呼応し、自治体として初めて「ライフステージに応じた支援」という視点を盛り込んだ。これは、これまでの「一時的な滞在」を前提とした支援から、誕生、就学、就職、結婚、そして老齢期に至るまでの切れ目のない支援体制の構築を目指している。


3. 5つの基本目標と具体的な施策内容

⚫︎基本目標1:コミュニケーションの円滑化(最重要課題)

・計画の中で最も大きなウェイトを占めている。日本語、特に「日曜日」の読み分けや魚の数え方(1匹、2匹、3匹など)といった独特の難しさを理解することが前提となる。

・多言語での情報発信に加え、行政や地域からの情報を分かりやすく伝える「やさしい日本語」の普及に注力している。

⚫︎基本目標2:生活環境の整備(住みやすさの向上)

・医療・福祉・保健体制: 日本の複雑な医療制度や社会保険の仕組みを周知し、誰もが安心してサービスを利用できる環境を作る。

・教育環境: 日本語指導が必要な児童生徒への支援や、保護者への情報共有を強化する。

・災害対策: 災害時に「高台へ避難」という言葉が伝わらない事例があった教訓から、「高いところに逃げて」といったシンプルかつ即時性の高い表現(やさしい日本語)による情報伝達を推進している。

⚫︎基本目標3:社会参画の促進

・外国人を「守られる存在」から「地域を支えるスタッフ」へと転換させるための活動を支援している。

⚫︎基本目標4:ライフステージ別の課題解決

・青年期: キャリア教育の充実。親と同じ職業に就くだけでなく、多様な選択肢を提示する。

・老齢期(65歳〜): 介護保険制度や高齢者福祉サービスの周知を早期から行い、孤立を防ぐ。

⚫︎基本目標5:推進体制の整備

・市役所内部の連携(町内プロジェクト)だけでなく、警察、消防、医療機関、ボランティア団体と情報を共有し、犯罪の抑止や社会的孤立を防ぐネットワークを構築する。


4. 専門職や地域住民へのメッセージ

外国人住民が日本で働くために、どれほどの労力をかけて日本語を学び、不自由な思いをしながら生活しているかを想像し、寄り添う姿勢が求められる。

地域のイベントや避難訓練に積極的に声をかけ、「地域の仲間」として迎え入れることが、安心安全な街づくりの第一歩となる。

・多職種・多機関の連携として、医療や福祉の現場で生じる困りごとは、特定の部署だけで解決できるものではない。行政や国際交流協会、そして専門機関である「滋賀外国人相談センター」などを活用し、チームで支える仕組み作りが必要。






【事例報告】

「東近江市の外国人住民が抱える問題とその対応について~東近江国際交流協会の相談活動を通して私たちができることを考える~」

東近江国際交流協会  事務局長  モリコーニ  直美さん


1. 東近江国際交流協会の活動について
 協会は主にボランティアによって運営されており、あらゆる国籍の人が集い、多文化交流を楽しむ場を提供している。
5つの姉妹都市との「姉妹都市交流事業」と、在住外国人の支援や相談を担う「多文化共生推進事業」を行っている。
個別指導形式の教室を週末に開催しており、1回100円という低価格で、各自のレベルやニーズに合わせた学習を支援している。

2. 相談活動から見える課題と対応
年間約100件の相談があり、内容は日本語学習のほか、ゴミ出しや騒音などの近隣トラブル、ヤングケアラーの懸念など多岐にわたっている。
認知症を患ったポルトガル語話者への介護支援や、言葉が通じず身元不明となった迷子の高齢者への対応など、緊急かつ専門的な通訳・翻訳が必要なケースも過去相談にはあった。
1人で出稼ぎに来ている人は強い孤独感を抱えており、昨年初めて開催したスピーチ大会では「家族の笑顔を思い浮かべて辛さを乗り越えている」という切実な思いが語られた。

3. 職場や地域での円滑なコミュニケーションのコツ
理解していなくても「分かりません」と言い出せなかったり、間違って理解したまま「分かった」と答えたりするケースがあるため、注意が必要。
日本特有の「空気感で理解する」ことは難しいため、言葉による明確な伝達が不可欠。
・「家族」は外国人住民にとって家族は最大の関心事であり、家族の話題を出すことが心の距離を縮める最も有効な方法の一つ。
・国ごとに文化的「スイッチ」がある。中国のメンツ、韓国の年齢序列、インドネシアの怒る上司への不信感など、国ごとの価値観(スイッチ)を尊重し、不要な摩擦を避けることが重要。

4. 今後の展望と連携
違いを否定せず、互いの多様性を認め合い「違いが素晴らしい」と言い合える関係性を築くことが共生の第一歩。
解決が難しい問題については、多言語対応が可能な「滋賀外国人相談センター」などの専門機関へ繋いでほしい。



進行:花戸  貴司先生


【グループ別意見交換】

それぞれの立場での外国人住民との関わりの中で課題となっていることについて共有する。

・以下ののテーマについて、1つ以上について話し合う。

外国人住民が「安心して利用できる保健・医療・福祉体制の整備」のために必要な取り組み基本計画2「住みやすさの向上」施策3

外国人住民の「災害への備えと災害時の対応の周知」のために必要な取り組み基本計画2「住みやすさの向上」施策4

外国人住民の「ライフステージに応じた支援」(基本目標2)のために必要な取り組み


【発表】

<1グループ>

ケアマネジャー、地域包括支援センター職員、薬剤師、看護師、医師、保健所職員という職種で構成された。

乳幼児健診の現場などで外国人の親子が増えている現状がある。特に20代・30代の若い世代が増えていることは、支援者も肌で感じている

・親よりも日本語が堪能な子供が、病院で通訳を務めるケースが多く見られる。しかし、癌の告知や重篤な病状、終末期の意思確認といった非常にデリケートで重い内容を、子供に翻訳させることの是非や、その心理的負担を危惧する意見も出された。

対面や電話では言語の壁が厚い一方で、LINEなどのテキストベースのやり取りであれば、翻訳機能等も活用しやすく、より確実な情報伝達ができるのではないか。

外国人に「日本のルールに合わせてもらう」という一方的な視点ではなく、受け入れる側が相手の国の事情や宗教的背景を積極的に学び、理解しようとする姿勢が不可欠。

保健所の立場からは、結核などの感染症対応において、本人だけでなく勤務先の管理者や通訳も含めて、正しい知識の普及や服薬継続の重要性を指導している実情がある。


<2グループ>

病院ソーシャルワーカー、地域連携事務、在宅ケアマネジャー、障害相談員が、実務レベルでの対応について議論した。

臨床現場では「ポケトーク」や翻訳アプリを使用しているが、厳密なインフォームド・コンセントを行うには精度が不足する場合があった。市役所や国際交流センターでも通訳が見つからず苦慮した際、厚生労働省が提供する「無料の医療通訳」電話サービスを利用して解決した事例がある。

医療・介護現場で働く外国人職員が増える中、漢字にカタカナを併記するなどの細やかな配慮や、既に現場で活躍している先輩外国人職員による直接指導を取り入れ、職場定着を図っている。

地域で開催されている日本語教室は、単なる語学学習の場にとどまらない。ゴミ出し等の生活ルールや、災害時の避難方法、防災知識を伝える「地域生活の教育拠点」としての役割を担っている。

・祭りなど、日本の伝統文化や地域の祭りに興味を持つ外国人は多く、町内の飲み会や行事へ積極的に参加してもらうことが、互いの心の垣根を低くし、地域社会に溶け込むための大きなキーワードになる。


<メイン会場グループ>

医師、施設長、病院理事長、ケアマネジャー、薬剤師、歯科衛生士のメンバーにより検討した。

日本の医療制度は、正規の滞在者であれば高齢者であっても通訳を介して適切にサポートできる体制が整っている。国籍を問わず「困りごとの本質」は万国共通。

フィリピン人等の技能実習生を受け入れている施設では、彼らの信仰を尊重し、施設内に礼拝室を設けるなどの配慮を行うことで、精神的な安定と良好な就労環境を維持している例が紹介された。

貧困層の多い国では医師が不足し、薬剤師が地域医療の主役を担っている現状などの報告があった。こうした背景を知ることは、来日した外国人の期待やニーズを理解する助けとなる。

日本特有の「本音と建前」を理解することの難しさや、馴染みのない食文化(刺身など)であっても「せっかく出されたから」と無理をして食べてしまうような、日本的な気遣いから生じる誤解や苦労の事例が紹介された。

災害時に最も有効なのは、日頃からの横の繋がり。特別な支援制度を整える以前に、普段から近所付き合いがあれば、いざという時に「あそこの外国人を助けに行こう」と自然に手が差し伸べられ、安全な場所へ導くことができる。


【指定発言】

⚫︎社会福祉法人六心会 介護老人保健施設ここちの郷 副施設長 愛須 和美さん

 本日は貴重なお話を色々聞かせていただきまして大変勉強になりました。 私どもは今法人として中国人の方10名、フィリピンの方6名、計16名の受け入れを行っております。7月1日からまた6名いらっしゃり計22名となります。大体6年、7年ぐらい前から継続して受け入れを行ってきました。

 その中で私がお話を聞いて感じたことは、ハード面とソフト面、両方のサポートがいるということです。ハード面としては、行政や色んなサポートを受けられるというシステムが構築されていることです。ただそれだけでは本当のサポートとはなりませんので、ソフト面のサポート、例えば困りごとがありそうだなと思ったら、同僚が声をかけられる環境であるとか、お母さん的な存在の職員がいることで、安心して務められるっていうことがあるのかなと思いました。

 あともう1点、外国ということでバイアスをかけないということも非常に重要かなと思いました。外国人だからとか、何々の方だからというよりも、私が6年7年付き合って感じることは、やはり最後は人なんですね。日本人も外国人も全く変わらなくて、その人一人一人のパーソナリティが大きい部分もありますので、バイアスをかけずに、きちんと人間として向き合うということが非常に大事かなと思っております。

 今後も共生社会ということで、働いていただく方だけではなく、私たちが地域の社会資源として、地域の方や外国人の方とどのように関係性を構築して、より良い住みやすい社会を作っていけるのかなということで、地域担当の職員もおりますので、力を活かしながら協力していきたいなと思います。今日はありがとうございました。


⚫︎東近江市五個荘木流町(東近江市市議会議員)  大橋  保治さん

 皆さんこんばんは。貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。やっと私の時間がやってまいりました。私は五個荘木流町に住んでいるんですけども、大体人口は約210人で70軒ぐらいの集落なんですけれども、令和元年ぐらいにブラジルの方が空き家を改修して引っ越してこられました。ご主人と奥さんと子供さん5人家族です。

 令和4年に私がそこの区長をしている時に、7月の自治会の清掃で草刈りがあったんですけども、出席されなかったので、自治会長が不参加料集めに行くので、組長さんとして一緒に来てくれないかということで、一緒についていきました。

 行きましたら「なんでそんなお金を払わなきゃいけないんですか」という話になりまして。 その時の世間話の中でですね、公園の草刈りもしていないことや、五個荘の中央公園の方が綺麗やないかとか、家の周りに街灯がないので非常に夜危ないんですよとか、「朝私は5時に出て、三重県まで仕事に行って帰りが毎日夜9時になるので、日曜日しか休みがないのに、なんでそんな場所へ行かなきゃいけないんですか」という話を1時間ぐらい玄関でしておりまして。

 ふと玄関先に大きいバーベキューコンロが見えましたので、「バーベキューはよくされるんですか?」という風に聞きましたら「するよ」ということでありましたので、「今度一度しませんか」ということで提案しましたら「しましょうよ」という話になりまして。 不参加料の話をしに行ったのに、バーベキューの日程を決めて帰ってきたなということになりまして。それから毎年自宅に行きバーベキューすることになりました。

 令和5年からですね、8月に行う地元の夏祭りに来られるようになりましたし、10月に毎年レクリエーションの大会をしておるんですけども、そこも家族で参加してくれるようになりました。 昨年度の夏祭りは、その家族の方はもちろん来ていただいたんですけども、ブラジルの友達の方も一緒に来るようになりまして、本当に身近な国際交流と言いますか、自治会の中で一緒に取り組めているというのは非常に大きい成果かなというように思っております。以上です。ありがとうございました。


【連絡事項】

第225回 三方よし研究会 2026年7月18日(土)16時~18

内容:「子三方よし研究会」の取組み報告

当番:実行委員会


2026年6月14日日曜日

第224回NPO三方よし研究会のご案内

 第224回NPO三方よし研究会のご案内

6月18日(木)に開催する第224回NPO三方よし研究会は、東近江介護サービス事業者協議会(施設部門・在宅部門)および社会福祉法人六心会が担当します。

今回のテーマは「多文化共生」です。

東近江市では外国人住民の増加が進む中、地域で安心して暮らしていただくためには、行政だけでなく、福祉・医療・教育・地域住民など、多様な立場の連携がますます重要になっています。

研究会では、次の3つをゴールとして開催します。

・「東近江市多文化共生推進計画」を共有する

・外国人住民の困りごとを相談事例などから学び、多職種・地域連携でできることを考える

・顔の見える関係づくりを進め、ネットワークを広げる

地域で暮らす外国人住民の皆さんが安心して生活できるまちづくりについて、一緒に考える機会になればと思います。

開催概要

【日時】

2026年6月18日(木)

18:00~ NPO三方よし研究会 総会

18:30~ 第224回NPO三方よし研究会

多文化共生や地域づくり、多職種連携に関心のある皆さまのご参加をお待ちしています。

【参加申込】

https://forms.gle/yJyuWTMbuxUckXAH7

皆さまのご参加を心よりお待ちしておりますね。




2026年5月21日木曜日

第223回 三方よし研究会のご報告

 第223回 三方よし研究会(PRP療法と認知症ケアにおける地域連携の深化)が開催されましたので、ここに報告いたします。
2026年5月21日、東近江市立能登川病院(なごみ2階)にて、ハイブリッド方式で「第223回 三方よし研究会」が開催されました。今回は「PRP療法(再生医療)」の最前線と、「BPSD(認知症に伴う行動・心理症状)を抱える家族支援」という、医療とケアの両面から非常に重要なテーマで議論が行われました。



1. 情報提供
〇地域を支える人材育成と会の運営基盤
事務局より地域医療・介護を支えるための重要な案内がありました。
介護職員の育成について(NPO法人加楽・楠神氏)
 三方よし研究会として力を合わせて、在宅ケアや在宅生活を支えていくために、11年前から『介護職員初任者研修』を実施しています。今年も来月から募集を開始し、7月4日に開講します。小串先生や花戸先生をはじめ、研究会の講師陣から直にお話を聞ける貴重な機会です。また、現場で働く方のステップアップを支援する『実務者研修』も4年前から実施しています。病院以外の介護現場の方々もぜひチャレンジしてください。



〇会の運営と会費について
(ヴォーリズ記念病院・加藤 氏、澤谷 氏)

                                           

研究会の運営は皆様の会費によって成り立っています。と加藤氏より説明があり、昨年度の未納分を含めた納入のお願いがありました。利便性向上のため、PayPayでの支払いや銀行振込が導入されていることも報告されました。
会計担当の澤谷氏からも、「会費ありきで運営が成り立っています。会計の立場からも重ねてお願い申し上げます」と、協力が呼びかけられました。

2. 開会の挨拶:
          
能登川病院・竹内院長より、会場提供の挨拶とともに、病院の目指す姿が語られました。
本川病院は以前は国保の病院でしたが、現在は社会医療法人昴会 能登川病院として運営しています。当院では現在、整形外科の川口先生による人工関節センター、脊椎診察、そして再生医療を柱の一つとしています。私自身は消化器内科が専門ですが、地域医療、コメディカルの皆様、そして三方よしの皆様に支えられて今日があります。我々医師だけでは何も運用できません。 地域の皆様が一人でも幸せな生涯を送れるよう、これからも医療等に関わっていきたいと考えています。

3. 30分学習会:当人工関節センターにおけるPRP療法の位置づけ


滋賀人工関節センター長・川口誠司 医師より、注目を集める再生医療の現状について専門的な解説が行われました。
・再生医療の可能性と課題: 再生医療は今、非常に注目を浴びています。iPS細胞を使った心筋治療などが進む一方で、安全性や効果が不十分なまま高額な費用を請求する『再生医療詐欺』のようなケースも散見されます。正しい意思を持って見ていかなければなりません。
・PRP(多血小板血漿)療法とは: 自身の血液を遠心分離し、血小板を濃縮して患部に注射する治療です。血小板に含まれる成長因子が組織修復を促します。自己血液を用いるため、アレルギーのリスクが極めて低いのが特徴です。
・当院での運用: 「変形性膝関節症に対し、ヒアルロン酸などの保存療法では効果が薄いが、手術まではしたくないという患者さんへの『新しい保存療法の選択肢(裏メニュー)』として位置づけています。費用は自由診療で55,000円。私が調べた中では最も安価な設定にしました。一ヶ月に1回、計3回の連続投与を推奨しています。
※メッセージ: PRPは魔法のように軟骨を再生させるものではなく、あくまで炎症を抑えるものです。最も重要なのは依然として『大腿四頭筋の筋トレ(運動療法)』です。PRPは、痛みを抑えて運動を可能にするための手助けなのです。また、高齢者のPRPよりも若年者のPRPの方が細胞増殖能力が高いという報告もあります。

4. 事例紹介:BPSDにより介護限界となった症例と地域連携の課題
認知症看護認定看護師・筒井良美 氏より、深刻な孤立に陥った家族の事例が報告されました。


症例の概要: 70代女性。アルツハイマー型と脳血管性の混合型認知症。独身の長男・次男と同居・・・。(個人情報のため、詳細は掲載せず。)
・浮き彫りになった連携の壁: 「診察時には患者本人が取り繕って穏やかに振る舞うため、医師が深刻なBPSDを把握できていませんでした。また、訪問看護からの報告書が適切に主治医の目に触れていない運用上の課題もありました。家族は本人の前では困りごとを言えず、結果として適切な薬物調整が遅れてしまいました。
・今後の改善策: 「診察時に家族が別室で話せる環境を整えるとともに、誰が評価しても客観的な指標となる『TPP13項目』などの評価ツールの導入を提案しています。


4.グループワーク


「若者ケアラーについての関わり、気づきから地域でできる支援を考える」および「BPSD(認知症に伴う行動・心理症状)を抱える認知症患者・家族を、地域課題を踏まえてどのように支えるか」をテーマに行われました。

5.発表

〇1グループ:能登川包括・谷村氏による発表


まず、訪問看護などの専門職が関わっていたにもかかわらず、その情報が病院へ十分に届いていなかったことへの反省が話題となり、情報共有や連携のあり方について議論が行われたとの報告がありました。
また、「本人だけでなく、家族もケアの対象として考える必要がある」という意見が多く出されたことも紹介されました。長年にわたり家族だけで支援を続けてこられた背景を踏まえ、家族の負担感や孤立にも目を向けながら支援していくことの重要性が確認されたとのことでした。
さらに、専門職がそれぞれ単独で関わる「点」の支援ではなく、多職種が連携しながら在宅チームとして継続的に支える「線」の支援が必要ではないか、という意見も共有されました。
今回の事例では、本人に30年以上前から症状があった一方で、当時は「介護保険制度」や「ヤングケアラー」という概念がなかったことにも触れられました。そのような時代背景の中で、家族だけで支え続けてこられた状況を考えると、地域や専門職がどのようにSOSを受け止め、早い段階で支援につなげていくかが課題であるとの意見が出されたとのことでした。
また、地域で認知症の人や家族を見守るネットワークづくりの必要性についても話し合われたことが報告されました。認知症サポーターづくりを進めるだけでなく、専門職が地域へ出向き、顔の見える関係を築いていくことの大切さが確認されたとのことです。加えて、スーパーマーケットなど住民が日常的に利用する場所についても、「地域の社会資源」として捉え、支援のネットワークの中に取り込んでいく必要があるという提言もあったことが紹介されました。

2グループ:六心会・堤氏による発表


医療面も含めた多角的な視点から「家族の心理的なハードルを、どのように支えていくか」について意見交換が行われたことが報告されました。
まず、家族にとって認知症を正しく理解し、受け止めること自体が非常に難しいという意見が共有されました。特に、「元気だった頃の本人のイメージ」が強く残っているため、現在の姿を受け入れるまでには大きな葛藤が伴うことが話し合われたとのことでした。
また、施設利用に対する「預けてしまうような罪悪感」や、精神科医療に対する先入観が根強く存在していることも話題となり、その思いにどのように寄り添いながら支援につなげていくかが難しい課題として共有されたことが紹介されました。
さらに、家族自身が長年の介護や生活の中で苦しみを抱えながらも、その状態に自覚を持てていない場合もあるため、まずは丁寧に話を聴き、思いを受け止める関わりが重要ではないかという意見も出されたとのことです。その上で、地域住民が感じている「入院した方が良いのではないか」という視点と、家族が抱える思いとの間をつなぎ、信頼できる専門職へ結びつけていく役割の大切さも確認されたと報告されました。
加えて、支援は介護や医療だけに限定するのではなく、家族全体の生活に目を向ける必要があるという意見も共有されました。特に、息子さんたちの経済状況や将来設計、収入面などの生活課題にも関わりながら困りごとの解決を支援していくことで、新たな信頼関係が生まれ、支援につながる入口が広がっていくのではないかという意見が出されたことも紹介されました。

〇会場グループ:能登川病院・竹内氏による発表


病院や地域それぞれの立場から、早期介入に向けた具体的な仕組みづくりについて意見交換が行われたことが報告されました。
まず、家族が孤立し、うつ状態に陥る前に、地域で支えることはできなかったのかという点について議論があったことが紹介されました。以前のような「おせっかい」とも言える近所付き合いが少なくなり、見て見ぬふりをしてしまう地域の雰囲気がある中で、近所同士の良好な関係性を再構築していくことの大切さが共有されたとのことでした。
また、病院側の課題として、受診されるまでは家族や本人の異変に気づくことが難しい現状があることも報告されました。そのため、主治医の段階から訪問看護や介護サービスの導入について早期に提案・相談できる体制づくりが必要ではないかという意見が出されたとのことです。
さらに、地域での「拾い上げ」の取り組みについても意見が交わされ、徘徊している方への声かけや見守り訓練などを行うことで、「家族だけで何とかしなければならない」という思い込みを和らげ、「実は困っている」と言いやすい地域づくりにつながるのではないかという意見が共有されたことも紹介されました。
加えて、若い世代への支援のあり方についても話題となり、若い世代はまずインターネットで情報検索を行う傾向があるため、「相談窓口がすぐに見つかるデジタル環境」の整備が急務ではないかという意見が出されたとのことでした。また、日頃から連携業務に携わる専門職であっても、自分自身の親のことになると相談をためらってしまう現実があることから、相談のハードルを下げる工夫の必要性についても共有されたと報告されました。
そのほか、具体的な連携方法として、ケアマネジャーや訪問看護師が報告書だけでなく、「最近少し気になっている」といった段階でも、こまめに病院へ電話連絡を行うことで、早期介入につながるのではないかという提案もあったことが紹介されました。
最後に、若年性認知症に対する支援制度についても意見が出され、65歳未満で診断された場合に利用できる障害年金などの経済的支援について、医師や支援者が情報を共有しながら、必要な方へ適切につないでいくことが重要であるとまとめられたことが報告されました。

5.指定発言
〇医療法人社団昴会日野記念病院 副院長 山田 伸一郎 医師



山田医師より、社会構造の変化に伴う家族の孤立と、専門職による能動的な関わりの必要性について発言がありました。
まず、近年は地域や社会全体のつながりが弱くなっている中で、今回の事例のように、同居している家族であっても「家族ごと孤立しているケース」が少なくないのではないかとの指摘がありました。表面的には家族で生活していても、外部とのつながりが乏しく、支援につながりにくい状況が潜在的に多く存在しているのではないかとの見解が示されました。
また、今回の息子さん2人については、問題を整理し解決していく力に課題を抱えていた可能性や、長男がうつ状態にあったこと、さらに介護をどのように進めればよいのかという知識不足からくる不安も大きかったのではないか、との考察が述べられました。
その上で、こうした状況にある家族に対しては、「相談が来るのを待つ」のではなく、専門職側から一歩踏み込み、腹を割って話をするような関わりが必要ではないかとの提言がありました。認知症という診断がついているのであれば、その段階から具体的な支援や解決に向けて積極的に介入し、本人・家族を支えていく姿勢が求められるとの発言がありました。

〇NPO法人加楽 楠神渉氏



ケアマネジャーの立場から、BPSD(行動・心理症状)への向き合い方や、地域資源を活かした早期発見の仕組みづくりについて発言がありました。
まず、BPSDへの対応については、現れている症状だけに目が向きがちである一方、その背景には本人自身の困りごとや戸惑い、さらに支える家族の疲労感や孤立感があることを忘れてはならないとの発言がありました。そうした背景に、いかに早い段階で気づけるかが支援の本質ではないかとの考えが示されました。
また、今回のように20代の息子さんが仕事をしながら介護を担っている場合、医療機関や行政機関へ自ら相談に行くことは非常にハードルが高いことにも触れられました。その結果、本来医療側へ伝わるべき情報が届かず、支援が遅れてしまう状況が起きているのではないかとの指摘がありました。
さらに、医療機関や本人・家族だけで問題を抱え込むのではなく、「地域の力」を活かしていくことの重要性についても発言がありました。その具体例として、ある地域では認知症の勉強会に参加した方へ「卵1パック」を配布する取り組みを行っていることが紹介されました。こうしたちょっとした工夫があることで、仕事帰りの若い世代も参加しやすくなり、雑談の中で「実は、うちの母が最近少し気になっていて……」といった、日常の中の不安を自然に話せる場になっているとの説明がありました。
また、地域の中で不安を口にできる関係性があることで、地区のリーダーや民生委員、あるいは「お節介なおばさん」のような存在が、「それは病院に行った方がいいよ」と背中を押し、医療や支援につないでくれることの大切さについても語られました。こうした人と人とのつながりを地域の中に作っていくことが重要ではないかとの発言がありました。
加えて、認知症の症状が進行してからでは、新しい場所や人への不安が強くなるため、できるだけ早い段階からチームや地域とつながり、本人の居場所を作っていくことが重要であるとの意見も述べられました。
最後に、専門職ができる関わりとして、「本人の体重測定をしている短い時間に、別室で息子さんの本音を聞く」といった、ほんの少しの“隙間”の時間を大切にすることが、支援の糸口につながる場合があるとの発言がありました。専門職同士が連携しながら、そうした小さな関わりを積み重ね、多職種で支えていきたいとの思いが語られました。


6. 総括・閉会および次回予告
最後に、全体進行の小串輝男医師より「真面目な先生同士がこれだけ頑張っていることがよく分かり、非常に楽しかった」と総会への手応えが語られました。


【次回案内:6月18日(木)18:30〜】
次回は「共生社会と多様性」をテーマに開催されます。東近江市で増加する外国人住民との共生について、行政の担当者や国際交流協会の方を招き、多様性をどう受け入れるかを共に考えます。総会も併せて実施されますので、会員の皆様はぜひご参加ください。

また、会の維持には皆様の会費が不可欠であるとして、最後に改めてQRコード(PayPay)等による会費納入のお願いがあり、和やかな雰囲気の中で閉会となりました。