三方よしカレンダー

2026年5月21日木曜日

第223回 三方よし研究会のご報告

 第223回 三方よし研究会(PRP療法と認知症ケアにおける地域連携の深化)が開催されましたので、ここに報告いたします。
2026年5月21日、東近江市立能登川病院(なごみ2階)にて、ハイブリッド方式で「第223回 三方よし研究会」が開催されました。今回は「PRP療法(再生医療)」の最前線と、「BPSD(認知症に伴う行動・心理症状)を抱える家族支援」という、医療とケアの両面から非常に重要なテーマで議論が行われました。



1. 情報提供
〇地域を支える人材育成と会の運営基盤
事務局より地域医療・介護を支えるための重要な案内がありました。
介護職員の育成について(NPO法人加楽・楠神氏)
 三方よし研究会として力を合わせて、在宅ケアや在宅生活を支えていくために、11年前から『介護職員初任者研修』を実施しています。今年も来月から募集を開始し、7月4日に開講します。小串先生や花戸先生をはじめ、研究会の講師陣から直にお話を聞ける貴重な機会です。また、現場で働く方のステップアップを支援する『実務者研修』も4年前から実施しています。病院以外の介護現場の方々もぜひチャレンジしてください。



〇会の運営と会費について
(ヴォーリズ記念病院・加藤 氏、澤谷 氏)

                                           

研究会の運営は皆様の会費によって成り立っています。と加藤氏より説明があり、昨年度の未納分を含めた納入のお願いがありました。利便性向上のため、PayPayでの支払いや銀行振込が導入されていることも報告されました。
会計担当の澤谷氏からも、「会費ありきで運営が成り立っています。会計の立場からも重ねてお願い申し上げます」と、協力が呼びかけられました。

2. 開会の挨拶:
          
能登川病院・竹内院長より、会場提供の挨拶とともに、病院の目指す姿が語られました。
本川病院は以前は国保の病院でしたが、現在は社会医療法人昴会 能登川病院として運営しています。当院では現在、整形外科の川口先生による人工関節センター、脊椎診察、そして再生医療を柱の一つとしています。私自身は消化器内科が専門ですが、地域医療、コメディカルの皆様、そして三方よしの皆様に支えられて今日があります。我々医師だけでは何も運用できません。 地域の皆様が一人でも幸せな生涯を送れるよう、これからも医療等に関わっていきたいと考えています。

3. 30分学習会:当人工関節センターにおけるPRP療法の位置づけ


滋賀人工関節センター長・川口誠司 医師より、注目を集める再生医療の現状について専門的な解説が行われました。
・再生医療の可能性と課題: 再生医療は今、非常に注目を浴びています。iPS細胞を使った心筋治療などが進む一方で、安全性や効果が不十分なまま高額な費用を請求する『再生医療詐欺』のようなケースも散見されます。正しい意思を持って見ていかなければなりません。
・PRP(多血小板血漿)療法とは: 自身の血液を遠心分離し、血小板を濃縮して患部に注射する治療です。血小板に含まれる成長因子が組織修復を促します。自己血液を用いるため、アレルギーのリスクが極めて低いのが特徴です。
・当院での運用: 「変形性膝関節症に対し、ヒアルロン酸などの保存療法では効果が薄いが、手術まではしたくないという患者さんへの『新しい保存療法の選択肢(裏メニュー)』として位置づけています。費用は自由診療で55,000円。私が調べた中では最も安価な設定にしました。一ヶ月に1回、計3回の連続投与を推奨しています。
※メッセージ: PRPは魔法のように軟骨を再生させるものではなく、あくまで炎症を抑えるものです。最も重要なのは依然として『大腿四頭筋の筋トレ(運動療法)』です。PRPは、痛みを抑えて運動を可能にするための手助けなのです。また、高齢者のPRPよりも若年者のPRPの方が細胞増殖能力が高いという報告もあります。

4. 事例紹介:BPSDにより介護限界となった症例と地域連携の課題
認知症看護認定看護師・筒井良美 氏より、深刻な孤立に陥った家族の事例が報告されました。


症例の概要: 70代女性。アルツハイマー型と脳血管性の混合型認知症。独身の長男・次男と同居・・・。(個人情報のため、詳細は掲載せず。)
・浮き彫りになった連携の壁: 「診察時には患者本人が取り繕って穏やかに振る舞うため、医師が深刻なBPSDを把握できていませんでした。また、訪問看護からの報告書が適切に主治医の目に触れていない運用上の課題もありました。家族は本人の前では困りごとを言えず、結果として適切な薬物調整が遅れてしまいました。
・今後の改善策: 「診察時に家族が別室で話せる環境を整えるとともに、誰が評価しても客観的な指標となる『TPP13項目』などの評価ツールの導入を提案しています。


4.グループワーク


「若者ケアラーについての関わり、気づきから地域でできる支援を考える」および「BPSD(認知症に伴う行動・心理症状)を抱える認知症患者・家族を、地域課題を踏まえてどのように支えるか」をテーマに行われました。

5.発表

〇1グループ:能登川包括・谷村氏による発表


まず、訪問看護などの専門職が関わっていたにもかかわらず、その情報が病院へ十分に届いていなかったことへの反省が話題となり、情報共有や連携のあり方について議論が行われたとの報告がありました。
また、「本人だけでなく、家族もケアの対象として考える必要がある」という意見が多く出されたことも紹介されました。長年にわたり家族だけで支援を続けてこられた背景を踏まえ、家族の負担感や孤立にも目を向けながら支援していくことの重要性が確認されたとのことでした。
さらに、専門職がそれぞれ単独で関わる「点」の支援ではなく、多職種が連携しながら在宅チームとして継続的に支える「線」の支援が必要ではないか、という意見も共有されました。
今回の事例では、本人に30年以上前から症状があった一方で、当時は「介護保険制度」や「ヤングケアラー」という概念がなかったことにも触れられました。そのような時代背景の中で、家族だけで支え続けてこられた状況を考えると、地域や専門職がどのようにSOSを受け止め、早い段階で支援につなげていくかが課題であるとの意見が出されたとのことでした。
また、地域で認知症の人や家族を見守るネットワークづくりの必要性についても話し合われたことが報告されました。認知症サポーターづくりを進めるだけでなく、専門職が地域へ出向き、顔の見える関係を築いていくことの大切さが確認されたとのことです。加えて、スーパーマーケットなど住民が日常的に利用する場所についても、「地域の社会資源」として捉え、支援のネットワークの中に取り込んでいく必要があるという提言もあったことが紹介されました。

2グループ:六心会・堤氏による発表


医療面も含めた多角的な視点から「家族の心理的なハードルを、どのように支えていくか」について意見交換が行われたことが報告されました。
まず、家族にとって認知症を正しく理解し、受け止めること自体が非常に難しいという意見が共有されました。特に、「元気だった頃の本人のイメージ」が強く残っているため、現在の姿を受け入れるまでには大きな葛藤が伴うことが話し合われたとのことでした。
また、施設利用に対する「預けてしまうような罪悪感」や、精神科医療に対する先入観が根強く存在していることも話題となり、その思いにどのように寄り添いながら支援につなげていくかが難しい課題として共有されたことが紹介されました。
さらに、家族自身が長年の介護や生活の中で苦しみを抱えながらも、その状態に自覚を持てていない場合もあるため、まずは丁寧に話を聴き、思いを受け止める関わりが重要ではないかという意見も出されたとのことです。その上で、地域住民が感じている「入院した方が良いのではないか」という視点と、家族が抱える思いとの間をつなぎ、信頼できる専門職へ結びつけていく役割の大切さも確認されたと報告されました。
加えて、支援は介護や医療だけに限定するのではなく、家族全体の生活に目を向ける必要があるという意見も共有されました。特に、息子さんたちの経済状況や将来設計、収入面などの生活課題にも関わりながら困りごとの解決を支援していくことで、新たな信頼関係が生まれ、支援につながる入口が広がっていくのではないかという意見が出されたことも紹介されました。

〇会場グループ:能登川病院・竹内氏による発表


病院や地域それぞれの立場から、早期介入に向けた具体的な仕組みづくりについて意見交換が行われたことが報告されました。
まず、家族が孤立し、うつ状態に陥る前に、地域で支えることはできなかったのかという点について議論があったことが紹介されました。以前のような「おせっかい」とも言える近所付き合いが少なくなり、見て見ぬふりをしてしまう地域の雰囲気がある中で、近所同士の良好な関係性を再構築していくことの大切さが共有されたとのことでした。
また、病院側の課題として、受診されるまでは家族や本人の異変に気づくことが難しい現状があることも報告されました。そのため、主治医の段階から訪問看護や介護サービスの導入について早期に提案・相談できる体制づくりが必要ではないかという意見が出されたとのことです。
さらに、地域での「拾い上げ」の取り組みについても意見が交わされ、徘徊している方への声かけや見守り訓練などを行うことで、「家族だけで何とかしなければならない」という思い込みを和らげ、「実は困っている」と言いやすい地域づくりにつながるのではないかという意見が共有されたことも紹介されました。
加えて、若い世代への支援のあり方についても話題となり、若い世代はまずインターネットで情報検索を行う傾向があるため、「相談窓口がすぐに見つかるデジタル環境」の整備が急務ではないかという意見が出されたとのことでした。また、日頃から連携業務に携わる専門職であっても、自分自身の親のことになると相談をためらってしまう現実があることから、相談のハードルを下げる工夫の必要性についても共有されたと報告されました。
そのほか、具体的な連携方法として、ケアマネジャーや訪問看護師が報告書だけでなく、「最近少し気になっている」といった段階でも、こまめに病院へ電話連絡を行うことで、早期介入につながるのではないかという提案もあったことが紹介されました。
最後に、若年性認知症に対する支援制度についても意見が出され、65歳未満で診断された場合に利用できる障害年金などの経済的支援について、医師や支援者が情報を共有しながら、必要な方へ適切につないでいくことが重要であるとまとめられたことが報告されました。

5.指定発言
〇医療法人社団昴会日野記念病院 副院長 山田 伸一郎 医師



山田医師より、社会構造の変化に伴う家族の孤立と、専門職による能動的な関わりの必要性について発言がありました。
まず、近年は地域や社会全体のつながりが弱くなっている中で、今回の事例のように、同居している家族であっても「家族ごと孤立しているケース」が少なくないのではないかとの指摘がありました。表面的には家族で生活していても、外部とのつながりが乏しく、支援につながりにくい状況が潜在的に多く存在しているのではないかとの見解が示されました。
また、今回の息子さん2人については、問題を整理し解決していく力に課題を抱えていた可能性や、長男がうつ状態にあったこと、さらに介護をどのように進めればよいのかという知識不足からくる不安も大きかったのではないか、との考察が述べられました。
その上で、こうした状況にある家族に対しては、「相談が来るのを待つ」のではなく、専門職側から一歩踏み込み、腹を割って話をするような関わりが必要ではないかとの提言がありました。認知症という診断がついているのであれば、その段階から具体的な支援や解決に向けて積極的に介入し、本人・家族を支えていく姿勢が求められるとの発言がありました。

〇NPO法人加楽 楠神渉氏



ケアマネジャーの立場から、BPSD(行動・心理症状)への向き合い方や、地域資源を活かした早期発見の仕組みづくりについて発言がありました。
まず、BPSDへの対応については、現れている症状だけに目が向きがちである一方、その背景には本人自身の困りごとや戸惑い、さらに支える家族の疲労感や孤立感があることを忘れてはならないとの発言がありました。そうした背景に、いかに早い段階で気づけるかが支援の本質ではないかとの考えが示されました。
また、今回のように20代の息子さんが仕事をしながら介護を担っている場合、医療機関や行政機関へ自ら相談に行くことは非常にハードルが高いことにも触れられました。その結果、本来医療側へ伝わるべき情報が届かず、支援が遅れてしまう状況が起きているのではないかとの指摘がありました。
さらに、医療機関や本人・家族だけで問題を抱え込むのではなく、「地域の力」を活かしていくことの重要性についても発言がありました。その具体例として、ある地域では認知症の勉強会に参加した方へ「卵1パック」を配布する取り組みを行っていることが紹介されました。こうしたちょっとした工夫があることで、仕事帰りの若い世代も参加しやすくなり、雑談の中で「実は、うちの母が最近少し気になっていて……」といった、日常の中の不安を自然に話せる場になっているとの説明がありました。
また、地域の中で不安を口にできる関係性があることで、地区のリーダーや民生委員、あるいは「お節介なおばさん」のような存在が、「それは病院に行った方がいいよ」と背中を押し、医療や支援につないでくれることの大切さについても語られました。こうした人と人とのつながりを地域の中に作っていくことが重要ではないかとの発言がありました。
加えて、認知症の症状が進行してからでは、新しい場所や人への不安が強くなるため、できるだけ早い段階からチームや地域とつながり、本人の居場所を作っていくことが重要であるとの意見も述べられました。
最後に、専門職ができる関わりとして、「本人の体重測定をしている短い時間に、別室で息子さんの本音を聞く」といった、ほんの少しの“隙間”の時間を大切にすることが、支援の糸口につながる場合があるとの発言がありました。専門職同士が連携しながら、そうした小さな関わりを積み重ね、多職種で支えていきたいとの思いが語られました。


6. 総括・閉会および次回予告
最後に、全体進行の小串輝男医師より「真面目な先生同士がこれだけ頑張っていることがよく分かり、非常に楽しかった」と総会への手応えが語られました。


【次回案内:6月18日(木)18:30〜】
次回は「共生社会と多様性」をテーマに開催されます。東近江市で増加する外国人住民との共生について、行政の担当者や国際交流協会の方を招き、多様性をどう受け入れるかを共に考えます。総会も併せて実施されますので、会員の皆様はぜひご参加ください。

また、会の維持には皆様の会費が不可欠であるとして、最後に改めてQRコード(PayPay)等による会費納入のお願いがあり、和やかな雰囲気の中で閉会となりました。


0 件のコメント:

コメントを投稿