三方よしカレンダー

2024年12月21日土曜日

第204回 三方よし研究会のご報告

第204回 三方よし研究会を開催しましたので、ご報告いたします。
東近江医師会・近江八幡市蒲生郡医師会さんの当番で、第204回三方よし研究会を開催しました。

日時:2024年12月21日 16:00-20:30
会場:八日市ロイヤルホテル



〇講演






内閣官房全世代型社会保障構築本部の稻川武宣氏をお招きして「人口と社会保障のこれから」をテーマに講演していただきました。
講演では、日本の少子化や高齢化が進む中での社会構造の変化に焦点を当て、具体的な課題とその解決策が以下のように示されました。

日本の現状と課題
1.少子化と人口減少
 o 日本の出生率は過去最低の1.20(2023年)。
    人口減少のスピードの問題→果てしない縮小と撤退
    人口減少の構造の問題→「超高齢化」と「地方消滅」
 o 高齢者数の増加に伴い、介護・医療サービスの需要が急増。

2.社会構造の変化
 o 単身世帯や高齢単身世帯の増加。
    2050年には、単身世帯は44.3%、単身高齢者世帯は20.6%に達する見込み
 o 雇用の不安定化や地域コミュニティの希薄化。
    社会とのつながりが弱い人(社会的孤立や複数リスクを抱える人・世帯(リスクの複合化)が増加。年間自殺者数は3万人強となる。
    非正規雇用の割合 1995年:20.9% 2020年:37.2%

3.社会保障の課題 
(社会保障とは→「個人の生活上のリスク」に対して「社会の連帯」によって備え生活を保障する仕組み)
 o 「縦割り」の社会保障制度が複雑化し、効率的な支援が困難。
 o 高齢者や障害者を含めた包括的なケア体制の必要性。
解決に向けた提案


1.地域共生社会の実現
 o 「住まい」と「地域組織」を基盤とした支え合いの強化。
 o 子どもから高齢者までが安心して暮らせる仕組みづくり。

2.少子化対策の強化
 o 育児・教育費の支援拡充。
 o 育児休暇の普及と働き方改革。
プレコンセプションケア:妊娠前の段階で健康状態を整え、将来の妊娠や出産に備えるケアを充実させる。
2030年までをラストチャンスとして、異次元の少子化対策に取り組む。予算規模3.6兆円→2030年代初頭までに予算倍増を目指す。

3.持続可能な地域サービスの確保
 o 地域特性に合わせた事業基盤の強化。
 o 人材育成とデジタル技術の活用。
※将来を先取りした「先行的」な成功事例を作り展開する。(パクる)

東近江市圏域の未来
東近江圏域も含め、人口減少や高齢化の加速が懸念されており、地域全体で取り組むべき課題が多いことが示されました。稻川氏は、「住まい」が「社会保障」及び「まちづくり」あり方に大きな影響を与え、地域独自の成功事例を創出し、それを全国に広げる重要性を強調されました。



〇質疑応答タイム
小串先生:
先進国や東南アジアでも人口減少が進んでおり、医療・介護人材の育成が必要であるとされています。当会でも介護職員の初任者研修を実施しておりますが、今日のお話を伺い、改めて医療・介護の人材がいかに大切かを実感しました。ありがとうございます。

稲川様:
世界的に人口減少が進んでいます。昔は農業の時代において、子どもを増やすことが労働力の確保につながりましたが、現在では、言葉は悪いですが、子どもがコストと捉えられる側面もあります。
介護の分野では、介護報酬を含めた予算が抑えられています。介護保険制度が始まった当初は介護人材が増加しましたが、これからの時代はお金だけでなく、持続可能な生活を可能にするための資源配分を考えていかなければなりません。こうした課題について、皆で議論を深める必要があると感じます。

桜様:
非正規雇用が増えることで結婚が難しくなっている現状は理解できます。しかし、私の周囲には高収入で仕事もあるにもかかわらず、結婚していない方が多数います。そもそも結婚して子どもを産むことが幸せだと感じていないのではないでしょうか。むしろ、リスクと捉えられているように思えます。加えて、子どもが自立して楽しい人生を送るというより、親の言うことを聞かなければならないといった風潮もあります。社会の歪みを感じますが、先生はどのようにお考えでしょうか。

稲川様:
現代社会では、結婚しないことが合理的と考えられる風潮が生じています。ただ、補助金を出せば解決するという問題ではありません。若い世代が何を考えているのか、しっかりと耳を傾けることが重要です。若い人たちがネガティブにならないようにすることが、最大の課題だと思います。おっしゃる通り、問題意識を共有し、若い人たちが希望を持てる未来を示していきたいと考えています。

花戸先生:
私は小児科医です。先日の学会では「なぜ少子化が止められないのか」というテーマが議論されました。子どもを3人以上産む方もいれば、まったく産まない方もいます。また、結婚しない人は非正規雇用の割合が高い傾向があります。まずは経済対策が重要だと感じます。

稲川様:
花戸先生がおっしゃった通り、結婚している方の出生率はこれまで1.8程度で安定していましたが、現在は低下しつつあり、危機感を抱いています。結婚しない、あるいはできない方への対応を真剣に考える必要があると考えています。

溝江様:
小串先生からもご質問がありましたが、他国でも出生率が低下している原因は、日本と同様の問題なのでしょうか。先生のご意見をお聞かせください。

稲川様:
アジア諸国では、大学進学のハードルが高いことや、女性は子育てをすべきだという固定観念が影響している可能性があります。たとえば韓国では、大企業が多く、国際的な仕事をする人々が増えたため、少子化に対する危機感が薄い面があります。一方、日本は国内消費が経済の主軸であり、子どもが減ると消費者も減少するという危機感を抱いています。この点で、韓国と日本では事情が異なります。
以前、人口問題の専門家に聞いたところ、各国の少子化の理由については明確な答えは得られませんでした。非常に複雑な課題です。

〇終わりのご挨拶
花戸先生:
あっという間の2時間でした。これからの10年、20年を見据えて考える貴重な機会をいただき、ありがとうございました。


研修会後には、懇親会にて大阪のヒョウ柄のお姉さまの漫才タイム(^_-)-☆もあり、お腹が捻じれる位に大笑い。充実した時を過ごすことができます。

次回は、東近江総合医療センターさんの当番で、1月16日(木)18:30からの開催です。
今後とも、三方よし研究会をよろしくお願いいたします。