第205回の三方よし研究会が下記の通り開催されましたので、ここに報告いたします。
◇日時;令和7年1月16日(木) 18:30~20:30
◇会場:ZOOM活用によるWEBでの開催
(当番:NHO東近江総合医療センター)
テーマ 「医療・介護・福祉等に従事する方々の安全・安心を守るために」
【ゴール】
●医療介護福祉現場におけるハラスメントの現状を共有する
●医療介護福祉現場におけるハラスメントの対策を学ぶ
●患者さんを支援している方々が、安全・安心に支援を行っていくために必要なことを考える
【情報提供】
・日野記念病院町民公開講座のご案内
(2/1(土)日野町わたむきホール虹にて)
・第8回日本地域医療連携システム学会のご案内
(3/16(日)あかね文化ホールにて)
・第25回地域共生ケア全国ネットワーク研究交流フォーラムのご案内
(3/14(金)〜15(土)大阪たかつガーデンにて)
【45分学習会】
進行:吉田さん(東近江総合医療センター地域医療連携係長)
『職員を大切にする在宅・医療現場におけるハラスメント対策〜組織と地域の取り組みを考えるきっかけに〜』
森ノ宮医療大学看護学部看護学科 教授 武 ユカリ先生
・在宅医療現場の暴力・ハラスメントには4つのパターンがある。①医療介護従事者→医療介護従事者(パワハラ・セクハラ・職場いじめ)、②医療介護従事者→利用者ご家族(虐待・詐欺・窃盗)、③利用者ご家族→利用者ご家族(虐待・DV・介護殺人)、④利用者ご家族→医療介護従事者(カスハラ・在宅ケアハラ・ペイハラ)。今日は④についての話。
・在宅現場に関連する刑事事件はここ数年でも実はよく起こっている。しかし2020年の埼玉県医師殺害猟銃立てこもり事件などはまだネット検索できるが、看護師やヘルパーへの事件などは報道されにくくネットでも検索が難しい現状。しかし実際には起こっているということ。
・これらの事件を経て、警察庁から都道府県及び都道府県警察に向け、医師会及び医療機関との連携の推進を促す通達が何度かなされている。
・カスタマーハラスメントとは、顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為をいう。
・その判断基準は業種や業態、企業文化の違いから、違いが出てくる可能性があり、在宅医療現場での判断基準、対応方法の統一、現場共有が重要。
・在宅医療現場の特徴1…支援の対象者であり、暴力ハラスメント行為があっても、ケアの必要性からサービス中止、契約解除が容易でないこと。
・特徴2…利用者の自宅は援助職の職場でもあるということ。
・特徴3…小規模事業所であったり対策に対する学習の機会が少ないなど、暴力ハラスメント対策が難しいということ。
・暴力ハラスメントの種類と定義を共有しておく…身体的暴力/精神的暴力/セクハラ分類、要求に着目した分類など。
・あらかじめ判断基準を明確にするために、在宅医療現場の特性から具体例を共有しておく
・不当・悪質・ハードクレームの特徴を知っておく。一般的なクレームとの違い。
・状況レベル別の対応策を考える。
・無防備な傾聴をしないこと!
・日常業務の中で報告・相談・情報共有しておくこと。
・対応方法を在宅医療介護で統一、共有しておくには、専門職としての役割を再確認する。暴力ハラスメントを容認する、被害を受けることは、私たちの仕事の一部ではない。
・また利用者と家族、地域の関係多職種にも協力を求めること。ハラスメント対策には、良好な地域連携が必要、有効。
・状況レベル別の対応策を考えておくこと。チーム・事業所・地域での連携に必要なこととして、明確な方針と基礎知識を習得しておく必要がある。
・ハラスメントを容認しないことが大事。要求に応じてしまうと、当事者の要求が正当だと誤解させ、要求や行動がエスカレートし、問題が増悪、深刻化してしまうから。
・セクハラ被害を受けた場合…明確な意思、すぐ報告、書面口頭での警告へ。
・暴言を受けた場合…会話を最小限にし、3つのカエルを有効に使い、時間を決めて対応し、記録を残しておくこと。
・堂々巡りの対応困難者に対する適切な初期対応を知っておく。納得ではなく「諦めてもらう」。傾聴しすぎず押し返す。一回1時間が限度。激昂している時などはもっと短時間に。利用者宅での監禁につながる可能性がある。
・命の危険を感じたら、とにかくケア提供よりも身の安全の確保を優先する。すぐ逃げる!など組織内の方針を明確にしておく。
・暴力ハラスメント…被害を受けても「仕方ない」ことに絶対にしないように!
【事例報告】
『東近江総合医療センターにおける対応困難事例 』
東近江総合医療センター 林 医療安全管理係長/立堀 専門職
・事例①…COVID19+誤嚥性肺炎にて入院、その後入退院を繰り返した方、毎日医師や地域連携室に電話や面会をしてくる事例
・事例②…肝機能障害のため、緊急入院してきたが、本人から息子に電話をして、息子がその都度何度も病棟に対応を迫ってくる事例
・事例③…急性腎不全の急性期対応後の転院、多発性硬化症があり、自宅で対応。入院中は過度な謝罪要求、また重度褥瘡があり退院適応ではないにも関わらず無理に退院に持っていこうとした事例
・事例④…Googleレビューでの誹謗中傷への対処方法について苦慮した事例
・まとめ…ハラスメントにつながるきっかけ、継続した関わりの難しさ、医療機関のカスタマーハラスメントの相談先が現状ない。ただ病院としてはスタッフを守ることも重要ということ。
【グループワーク】
○それぞれの立場で、ケアや支援等を行っている中で困っていることはありますか。
○ハラスメントの対策として取り組んでいることはありますか。
○皆様が安全・安心にケアや支援を行っていくために、必要なことや求めたいことはありますか。
【発表】
○1グループ
センター対応のアサイです。1グループの発表させていただきます。
1グループ本当にいろんな方がおられまして、訪問看護さんであったり、病院さんであったり、ケアマネさんであったり、 包括支援センターさんであったり、障害の方の相談員であったり、いろんな方のお話を聞くことができました。
で、今日の研修と通じて皆さん言われてたんですけれども、やっぱり
・どこの職場でもいろんな方と関わるお仕事ではあるため、今回のハラスメントのようなことがあるんやなということ。
・1人でしんどいことがあった時に1人で関わるのではなくて 2人で関わる、1つの機関で支えられなかったり上手くいかないことはケース会議したりして複数期間で関わるということを大事にしていかなければならない。
・各現場で「この方うちにも来はりましたわ」みたいな話で病院同士、各機関が繋がってると上手くいくこともあるのではないか。
・1つプロだなと思ったのが、 訪問看護さんより、ハラスメントがあり支援をお断りする方がいた場合に、単純にお断りするのではなく、次の訪問看護であったり、ヘルパーであったり、次のステージ、担っていただける方をちゃんと決めてから支援を引き継いで中止したという話があった。
○2グループ
・ネットの話もあったが、もしかしたら自分も書かれてるかもしれないと自分ごととして感じながら聞かせてもらった。
・家庭の問題が周囲に広がっていっているように感じる、家庭状況も変化していっている中で問題も複雑化してるんじゃないか。
・デイサービス勤務をしていて、その場での話と担当者会議での話が全く違い、手のひらを返したように攻撃をしてくる方などもいて、複数で対応していくことも大事。
・病院では、亡くなってしまう、死んでしまうということがとても納得ができない方がやはりいて、そこは病院側も本当に苦労されている現状、お察しします。
・病院の中でも1つ心がけていることとして、「相手の感情は理解する」ようにして対応することを心がけていること、責任ある立場の人がクレーマーの側に立って、当事者を攻撃することは絶対にしないと肝に銘じているという意見があった。
・滋賀県でもハラスメントのマニュアルがあるので、それを参考にしてほしい、ホームページでダウンロードが可能。
・やはり三方よしのような集まりで色々と意見を出し合うことが大事なのではないか。
○会場グループ
・記録がちゃんと残っていることで証拠としての信用性が上がるので、記録はちゃんとしておいてもらった方がよい。
・ネット中傷に関しては、もう書かれてもほっておく、気にしないというのがやはり大事ではないか。
・実際に警察の方に医療機関から相談があるケースはそんなに多くはないということだが、当院でも特に認知症の患者さんなどは手が出たりというのはもう日常茶飯事で、医療従事者がやはり我慢している実態がある。その中で相談員は本人と従事者との間に入って、できるだけ直接会いソフトに対応していこうとしているので、上手に使ってもらい、言いにくいことは伝えてほしい。そのように皆で協力して対応していくのが大事なのではないか。
【指定発言】
・東近江市地域包括支援センター センター長 河島 克彦 様
東近江市ですが、地域包括支援センター3か所あるうち、本庁の地域包括支援センターに私はいますが、 市役所でも役所の職員への不当要求への対応ということで職員全体でも研修をしている状況です。その中で、地域包括支援センターとしては、総合相談、介護予防のケアマネジメントやケアマネジャーへの支援、権利擁護では虐待対応などをやっていますが、個別の支援だけではなく支援者への支援をしていくということで、先ほど武先生のお話にもあったように、サービスの種別によって状況は違う、包括支援センターは独特の役割もあるのかなと思っているところです。
その中で、先ほどの講義の中で大変印象に残ったところがいくつかあったんですが、やはり感じ方に個人差があるというところ、また一般的なクレームと悪質的なクレームというのはちゃんと分けて判断しなければならないということ、そして傾聴しつつ 押し返すみたいなバランス感覚なんかも、すごく難しいんですけど、やはり大事なんだなと今までの経験も振り返りながら思いました。何よりも初期対応が大事ということで、センターの方でもなるべく2名対応であったり記録に残したり、最初に時間制限を設けて話すなど、いろいろな工夫もしている中で、ケースのアセスメントをちゃんと組織の中、センター内、町内、町外と、随時連携をしていく、共有していくということがすごく大事だなと感じました。
カスハラの方がだんだんとエスカレートしてくると、リアルタイムに担当部門が共有できていないことが、さらに炎上させていく要因にもなりますので、ボルテージが高まってきた時には、この情報共有というのはすごく大事だなということを思っております。
何よりもやはり組織対応ということなので、強い組織、体制を作っていき、また引き継いでいくということがこれから大事なのかなというようにあらためて思いました。大変今日は全体として勉強になりましたし整備できました。ありがとうございました。
・東近江警察署 刑事第一課長 西野 雅之 様
今回このような勉強会に呼んでいただきましてありがとうございました。本当に、私も勉強になりました。医療従事者の方が日頃からこのようにすごく苦労されている、我慢されてることが多いということを思いました。当然警察として、事件にならないから相談してくれないなどは全くありませんし、ことが大きくなる前に相談していただければ、事件にならなくとも相手に注意など指導はできますので、またお声がけしていただけたらいいと思います。ただ、やはりどうしても、話を傾聴に努めたにもかかわらず、どんどんそれが大きくなっていき、要求が過大になっていったりすることもあります。
さきほども武先生の話でもありましたが、やはり兆しというものは絶対あると思います。その兆しを見逃さずに、毅然とした態度で対応するのも必要なのかなと思います。ただ、そう言ってしまうとなかなか企業は難しくなってしまうので、その辺のバランスがすごく難しい、そこで苦労されてるのかなと思いましたので、また今後とも何かあればいつでも言っていただければいいのかなと思います。
●滋賀県健康医療福祉部医療福祉推進課 梅染さん
本日参加を受け入れていただいて本当にありがとうございます。県の医療福祉推進課にて在宅訪問看護、介護現場における暴力ハラスメント対策事業というものをさせていただいておりまして、武先生のご講義の中でもご紹介いただいておりましたが、マニュアルを作ったり、研修を看護協会に委託して実施させていただいております。また研修も、今年はもう残すところ大津会場しか残っていませんが、参加希望等あればお問い合わせいただきご参加いただけたらと思いますのと、今年度事業として滋賀県全域で使っていただけるような利用者さん家族さん向けのチラシを作っておりまして、また完成したら 滋賀県全体に通知させていただきますので、よければご活用いただけたらと思います。お時間いただきありがとうございます。
●森ノ宮医療大学看護学部看護学科 教授 武 ユカリ先生
今日は本当に貴重な機会をいただきありがとうございます。警察の方までご参加いただいているような、こんな素晴らしい会に来させていただいて、理想形を見るような気持ちで、すごくいい会だなと。私毎回来てもいいでしょうかっていう気持ちでいるぐらいです。
先ほど地域連携のところは少しはしょってしまいましたけれども、 顔の見える地域連携というのがないと、暴力、ハラスメントだけ相談するというようなことは現実的ではなくて、いろんな方が日頃から相談できるような顔の見える間柄というのがすごく必要で、 いろんなことが相談できる中に暴力、ハラスメントのことがあるというような形を作らないといけません。やはりすごくね、セクハラなど特にそうなんですけれど、 すごく相談しにくいんですよ、言葉を言うだけでも。なので、この三方よしの研究会さんは、それがすごく理想な形で、しかもいろんな職種の方が、いろんな事業所の方が、福祉の相談員さんに障害の相談員さんまでいらっしゃって、すごいですね。医療と繋がりにくいというお声もすごく地域的に聞いたりなどもするので、なんて理想的なところなんだとちょっと感動しております。またよろしければ。私、ややま先生とは元同僚なので、研修もご一緒させていただいてるんですけど、またよろしかったら参加者として参加させていただきたいです。今後ともよろしくお願いします。
【連絡事項】
・第206回 三方よし研究会
令和7年2月20日(木)18:30~20:30より
○当番 湖東歯科医師会
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
また来月もよろしくお願いいたします。
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