三方よしカレンダー

2026年10月15日木曜日

第228回三方よし研究会開催のご報告

本日、第228回の三方よし研究会が開催されましたので、ここにご報告いたします。



日時:令和8年10月15日(木)18:30〜20:30

会場:東近江敬愛病院 3階会議室

当番:東近江敬愛病院・滋賀県介護支援専門員連絡協議会

 

【ゴール】

○病院での認知症対策について考える

○認知症について各職種のかかわり方について知る

○東近江敬愛病院が、地域への役割をどう考えているのかを理解してもらう


【挨拶】

医療法人敬愛会 東近江敬愛病院 間嶋 淳院長


 皆さまこんばんは。東近江敬愛病院の間嶋です。本日は30分勉強会としてお時間をいただきまして『新たな地域医療構想と中小病院の未来』という題でお話をさせていただこうかなという風に思います。

 『新たな地域医療構想』の言葉は私的にはメジャーな言葉なんですけども、意外とメジャーではないようで『何ですかそれ』『え、先生の言葉ですか』などと言われるのですが、厚生労働省が出している、2040年、日本でこの様な医療を広げていこうというガイドラインがあるんですが、そこで示されているのが『新たな地域医療構想』です。

 それをベースに、中小病院の未来ということで、うちの病院が、東近江敬愛病院もまさしくその中小病院になるかなと思いますが、どのような形で医療を展開していけばいいかということを少し考えましたので、お聞きいただければと思います。

【30分学習会】

『新たな地域医療構想と中小病院の未来』

医療法人敬愛会 東近江敬愛病院 間嶋 淳院長


⚫︎「新たな地域医療構想」の位置付け

・厚生労働省が2040年に向け、今後10〜20年で目指すべき医療の方向性を示したガイドラインであり、まさに東近江敬愛病院のような中小病院が目指す指針となる。

⚫︎日本の人口動態と「壮絶な撤退戦」、令和時代の医療需要と人手不足

・明治以降の100年で4倍(3,000万〜1億2,000万人)に増えた人口が今後急降下し、2050年代半ばには1億人を割り、2100年には明治・終戦直後の水準まで減少するという見通しが厚生労働省から示されており、近年のどの論文よりも衝撃を受けた。

・厚労省が表現する「100年にわたる壮絶な撤退戦」では、何を守り何を手放すかの判断が必要であり、撤退のタイミング、過去の成功体験の足枷、誰かの不利益の発生、人手流出などが壁となる。

・人口減少下では、医療・介護・福祉・商業・行政などの生活機能を都市中心部に集約・効率化する「コンパクトシティ化」こそが不可欠となると考えている。

・今後30年間で総人口は減るものの、65歳以上人口の絶対数は変わらず(割合は29%から37%へ上昇)、医療需要はほぼ横ばい推移となる一方で、15〜64歳の働き手が激減するため、医療・介護現場は深刻な人手不足(需要横ばい×供給不足)に直面する見通し。

⚫︎「治す医療」と「治し支える医療」との違い

・全国約8,000病院の7割を占める中小病院が、大病院のミニチュア(重複)として生き残ることは難しく、明確な機能分化が求められる。

・高齢患者は複数臓器の機能低下に加え、認知機能低下、経済・居住・家庭環境などの複合的課題を抱える(マルチモビディティ)ため、臓器別の治療だけでは対応できない。

・高度な医学技術で身体的問題を「点」で解決する「治す医療」(急性期)に対し、全人的な総合診療と多職種連携で生活も含めて「面」で包括的に支えるのが「治し支える医療」(回復期・包括期・在宅連携)といえる。

⚫︎中小病院の未来像(コミュニティホスピタル)

・中小病院は地域密着型病院として、地域包括ケアにおける「治し支える医療」のセーフティネットを担う。

・コミュニティホスピタルとして、外来・入院だけでなく、在宅医療、予防、リハビリ、介護連携、地域教育まで幅広く展開することが、小〜中規模病院の一つのモデルだといえる。

⚫︎敬愛病院の実践例

・入院を繰り返す病状不安定な患者に自院から訪問診療を提供し、悪化時は即座に入院受け入れを行う、切れ目のない在宅・病床連携を目指して取り組んでいる。

・病院の方向性として、単に病気を治す場所にとどまらず、医療をきっかけに地域コミュニティの繋がりを生み出し活性化させる拠点を目指している。

・地域連携企画として、行政との医療体験ツアー、地元企業との農産物加工品・レシピ提供コラボ、小中高生のアート作品展示、地域住民等と語り合う「地元を活かす会議」などを実施・企画している。



【活動報告】

『シニア世代よ。楽しめ』〜東近江敬愛病院での取り組み〜

東近江敬愛病院 A病棟 木村莉穂さん 小杉瑛美さん


⚫︎病棟の現状と「院内デイ」導入の背景

・2024年7月より一般病棟から地域包括ケア病棟(最大60日入院)へ運用変更し、多職種連携による在宅復帰支援を実施。

・患者層は80〜90代の高齢者が中心で、認知症日常生活自立度ランクIII以上が6割超を占める。

・入院後のせん妄や中夜逆転、不穏が目立ち、ナースコールの多発や離床センサー・薬剤(頓服薬等)の使用量増加が課題となっていた。

・日中の離床時間を増やし生活リズムを整えるため、2025年より病室を離れて活動に参加する「院内デイ」を導入した。

⚫︎「院内デイ」の取り組み内容と工夫

・デイルームにて看護師2名体制で運営。月・金曜日の週2回、午前(10:00〜11:00)と午後(14:00〜15:00)に定員8名で実施。

・活動内容:演歌体操、風船バレー、魚釣り、玉入れ、塗り絵のほか、七夕・ハロウィン・ひな祭り等の季節行事を実施。レクリエーション物品の作成や音楽演奏には他部署・他病棟のスタッフも協力した。

・院内デイおよび昼食(11:00〜13:00)の時間は身体抑制を解除し、見守りや食事介助を行う。退院後のデイサービス利用に向けた予行演習としての役割も担っている。

⚫︎「夜間デイ」の試みと効果

・2026年8月、夕方〜夜間の不穏やナースコール急増に対応するため、17:00〜21:30に「夜間デイ」を毎日開催(対象7〜10名)。遅出や時差出勤等を活用し、病棟外スタッフも運営に協力した。

・導入効果:皆で夕食を摂り、就寝前まで覚醒を促すことでスムーズに入眠できるようになり、夜間のナースコール・センサーコールや不穏時・就寝時の薬剤使用量が減少した(8月末で終了)。

⚫︎「三方よし」の視点による成果と展望

・患者よし:生活リズムが整い夜間不穏が減少。笑顔や活気が戻り、自発的な離床や患者同士の交流・孤独感軽減につながった。

・職員よし:ナースコール対応等の業務負担が軽減し、患者の新たな能力や人となりを知る機会が増加。薬に頼らない看護の選択が可能となった。

・病院よし:認知症ケア・せん妄予防が充実し、入院生活全体の質向上を達成した。

・今後の課題:マンパワーや時間の確保、スタッフ間の経験差への対応を進め、認知症・せん妄への対応力を向上させながら継続的な支援を目指したい。


 

【グループワーク】

『病院・施設における認知症対策について』

・各職場や職種での認知症進行防止に対する工夫・対策について

・学習会・活動報告についての感想等

 

【発表】

 <1グループ(オンライン)>

・病院・在宅の医師、ケアマネジャー、医療連携室、行政などの多様なメンバーで議論した。

・院内デイ等の取り組み評価: 東近江敬愛病院の「院内デイ」や「夜間デイ」を非常に斬新な試みと思った。医療機関と生活の往還における治療と生活のバランスについて意見交換した。

・認知症予防には日常的な人との交流や地域活動が不可欠であり、コロナ禍の面会制限解除を踏まえ、本来の自由な生活やケア体制をどう支えるかを検討した。

・今後はICT活用やサ高住の話題を取り上げつつ、職種を超えて対話できる場を継続することが重要。


<2グループ(オンライン)>
・認知症対策には予防の視点、早期からの介入が重要であり、栄養士による血糖値管理や、家族・かかりつけ医に頼れる環境づくり、出前講座や訪問診療・リハビリの活用などの意見が出た。
・病院での事例として、認知症病棟や療養病棟にてカラオケや工作などの集団リハビリを実施している取り組みが紹介された。
・医療・介護現場でのマンパワー不足や専門職の人員割れが顕著であり、職場環境改善や給与面など行政的な施策も必要なのではないか。

・敬愛病院の院内デイについて人員がどこも厳しい中、どのように補充し対応されているのか、その方法が聞きたい
→他部署からの応援や勤務調整などで対応している。

<会場Aグループ>
・医師・リハビリ・ケアマネ・看護師で構成。環境を整え、総合的に薬に頼らないケアを行うことが最も重要であるとの結論になった。
・ケアマネからは農園活動などの交流の場づくりや、各種サービスの組み合わせによる生活リズムの定着、院内リハでの日光浴やリクエスト楽曲による離床・交流が報告された。
・敬愛病院の「夜間デイ」は外部へ大々的にアピールできる優れた試みであるとの意見があった。人手不足の課題はあるが、日中の「院内デイ」については今後もぜひ継続してほしい。

<会場Bグループ>
・医師、看護師、リハビリ、ケアマネで構成。入院前の生活習慣、趣味、過去の体験などを丁寧に聴き取り、見当識を意識した日常的関わりを実践していると報告があった。
・得られた患者情報をスタッフ間で共有しきれていない現状を踏まえ、電子カルテの共通フォーマット等で一元管理して院内デイに活かすべきだとの提案があった。
・療養病棟での院内デイ導入はマンパワー的に困難な面もあるが、学生やボランティアの受入れ・関わりを視野に入れて検討していくべきだとの意見があった。

<会場Cグループ>
・リハビリ、看護師、施設職員で構成。認知症患者の強い不安に対し、目線を合わせて分かりやすい言葉で説明する重要性が示された。作業レクリエーションでは事前に興味・関心を聴き取り、個別性を持たせる工夫が紹介された。
・医師側から、不穏や不眠に対して適切な薬剤知識をアップデートした上で指示を出したいとの意見があった。
・敬愛病院の「院内デイ」について、離床や覚醒を促すことでADL向上や退院後のデイサービス利用へのスムーズな接続に繋がる非常に優れた取り組みであり、積極的に推進していきたい。

<会場Dグループ>
・人手不足の中で院内デイを開始・継続できた点について、師長や院長、周囲のスタッフの深
い理解と強力なサポートがあったからこそ成り立っているとのこと。
・急性期とは異なり、患者の入院前後の生活像を見据え、コミュニケーションを通じて不穏の改善や精神的安定に寄与できているのではないか。
・敬愛病院の訪問診療により、退院後も状態が不安定になりやすい患者と家庭・病院を切れ目なく繋ぎ、退院後の生活を継続的にフォローできているのではないか。

⚫︎指定発言1:

近江温泉病院 総合リハビリテーションセンター 作業療法士 中村 奈緒子さん

 近江温泉病院で作業療法士をしております中村と申します。私は認知症治療病棟に所属していまして、主に認知症の方に対してのリハビリ等をさせていただいています。
 今日は皆さんの話を聞かせていただいたり、敬愛病院さんの院内デイのこともホームページ等で見ながら勉強させていただいていました。院内デイと調べると、精神科の院内デイの記事が最初に出てきたりします。精神科の方は、精神病の方が院内デイでプログラムをして地域に帰るための練習をするという側面があるかと思いますが、今回の敬愛病院さんの院内デイのことを聞いていると、地域に帰るためであったり、その人の生活を維持するために関わっていらっしゃるというところがあるので『すごいな』というのが最初の感想でした。
 どこも病院も人材不足であったり、不穏な状況の患者さんをどう支えていくかというところは、全国の病院でもよく聞かれる話です。そうした中で新しいことを1つ始めるというのはなかなか難しいことであるのに、すごく先進的な活動をされているなと感じました。また、グループワーク等を通して、やはり人と人との繋がりであったり情報共有がすごく大切なのかなと思いました。元々暮らしていらっしゃったその人らしい生活がどういう状況だったかというのは、医療に入ってくると失われがちで掴みづらいところがあります。そこはケアマネさんであったりうちの病院なら『ライフヒストリーカルテ』といって、どういう生活を辿って来られてどういう趣味があるかというのを最初に家族さんからお聞きするのですが、そういうところがケアマネさんや、こういう会で顔馴染みになって情報交換できるようになると、それを活かして入院・医療の間もその人らしさを崩さないようにまた地域に帰っていただくということがすごくできるんじゃないかなと、今回改めて考えることができました。

 また顔馴染みで色々情報交換させていただければと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


⚫︎指定発言2:しみんふくしの家八日市 小規模多機能型居宅介護 管理者 亀田久美子さん

 小規模多機能の亀田です。よろしくお願いします。小規模多機能型居宅介護は通いと訪問と泊まりということで、認知症の方にとても安心してもらえる場所という自負を持ってやっています。

 今日Cグループのお話の時にも謝らせてもらったのですが、今までは『病院はちょっと認知症の人をほっとくな』とか『認知症の人のことを分かってくれない、ADLが下がって帰ってくる』なんてことを少し言ったりしながら進めてきたところがありました。ですが今日の院内デイのお話をお聞きして、治療や看護という本筋の忙しい上に、さらにもう1つ上のレベルでこの様なトライをされているということがすごいことだなと思いました。
 その中で、初めはなかなか皆が一緒の方向を向けなかったけれど、やはり成功体験等を通じて皆が同じ方向を向けた、それを進めることができたというお話が私の中にすごく残っています。恥ずかしながら介護現場も今、職員不足等があって『人が少ないからあれもできない、これもできない』なんていうことが起こったりしています。でも、今日の取り組みのことを皆で共有して、私たちも頑張らなければいけないなと思わされました。
 今までは『連携、連携』とは言いますけれども『やっぱり医療は医療、私たちは介護』みたいに、どこかで壁を作っていたようなところがありました。ですが今日の話を聞いたら『向いている方向は一緒だな』と思って、今まで以上に一緒にやっていきたいなというような気持ちにさせてもらいました。ありがとうございます。


⚫︎研修会の案内(大熊由紀子さん)
 年一度の「新たなえにしを結ぶ会」の開催が、いよいよ2日後となりました。Zoomなので、しかも無料で、話す方も超豪華でございます。神奈川県知事、世田谷区長、宝塚市長から、地方自治でどうやってご本人からの声をくみ上げた政治をするかというテーマで話します。もう1つは、欲深き挑戦者と、優しい挑戦者という2組(4人)の人たちが登場いたします。一度三方よしのメーリングリストにも流しましたけれども、もう一度案内させていただきます。
 ブレイクアウトルームというところで、山崎史郎さんとか、割といろんなことをやってきた社会学者や文化人類学者、いろんな人と会えたりしますので、どうかお越しくださいませ。お待ちしております。


【次回のご案内】

第229回三方よし研究会

令和8年11月19日(木)18:30~20:30

〇当番・会場:東近江市役所・東近江社会福祉協議会・まちづくりネット



ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

また来月お出会いできるのを楽しみにしております。