三方よしカレンダー

2025年6月20日金曜日

第211回三方よし研究会

 第211回三方よし研究会が開催されましたので、ご報告します。

◇日時;2025年6月19日(木) 18:30~20:30
◇会場;きいと/WEB開催(ZOOM開催)
◇当番:東近江介護サービス事業者協議会在宅部門・施設部門(社会福祉法人六心会)

〇ゴール
 ・介護テクノロジー活用実例から、介護現場の負担軽減とケアの質の向上について考える。
 ・地域における権利擁護支援の現状と課題を多職種が共有し、今後の支援について考える。
 ・顔の見える関係・ネットワークを作り、連携を深める


〇情報提供

・介護職員初任者研修、実務者研修の開講について 研修担当:楠神



私たち三方よし研究会では、「介護の人材不足をなんとか解決したい」という思いのもと、これまで10年にわたって介護職員初任者研修を実施してまいりました。
今年度も、介護職員初任者研修を 令和7年7月5日から10月19日 の期間で開講いたします。現在、受講生を募集しております! ご関心のある方は、ぜひお申し込みください。

また、今年度からは企業の皆さまからの協賛もいただき、より一層の応援を受けながら取り組んでおります。
そして、初任者研修を修了された方々から「国家資格である介護福祉士にチャレンジしたい」という声を多くいただき、三方よし研究会としてその意向を受け止め、3年前より実務者研修も開講しております。
今年度の実務者研修は、令和7年7月1日から12月31日 の期間で実施いたします。こちらも現在、受講生を募集中です。
ご興味のある方、ぜひお申し込みをご検討ください。
どうぞよろしくお願いいたします。


・災害対策基本法および災害救助法が改正 堤さん

私の方から口頭でのご報告になりますが、災害対策基本法および災害救助法が改正されました。
課題となっていた「災害時における福祉サービスの提供」について、今回の改正により法的に位置付けられることになりましたので、お知らせいたします。
現時点では、詳細はまだ公表されておりませんが、今後、在宅避難者や車中泊避難者にも福祉サービスが提供されることになり、対応の幅が拡充される見込みです。
また、新たにボランティア団体の登録制度も始まりました。
これらに関する詳細情報が入り次第、改めて共有させていただきます。


【学習会】

きいとにおける見守り機器「HitomeQ」導入の経過と効果について
地域密着型特別養護老人ホームきいと 高口 誠さん

皆さま、こんばんは。
社会福祉法人六進会、地域密着型特別養護老人ホーム「きいと」の高口と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、当施設で導入したICT機器「コニカミノルタ製 見守りカメラ・HitomiQ」の導入経緯とその効果について、ご報告させていただきます。

1. HitomiQとは
当施設にとって初めてのICT機器の導入となったのが、この「HitomiQ」です。
天井に設置したカメラが居室を真上から360度で捉え、AIによって転倒・離床・転落などのリスク行動を検知。職員が持つiPhoneに通知が届きます。
通知設定は利用者様の状態に応じて個別にカスタマイズでき、転倒前後の映像が自動録画されることで、原因分析にもつながります。特に夜間など、少ない職員数で対応している時間帯の負担軽減が期待されています。

2. 導入の経緯
私自身、当初は「HitomiQ」の名前を聞いたことがある程度で、詳しい機能はほとんど知りませんでした。あるトライアル実施施設の報告会に偶然参加したことがきっかけで興味を持ちました。
「HitomiQ」は利用者様の離床や転倒をリアルタイムで検知し、職員のスマホに通知、映像で状況確認ができます。また、行動パターンのデータ化による可視化にも対応しており、「これは施設の課題解決に活かせるのではないか」と感じました。
当時、きいとでは「利用者様のQOL向上」と「スタッフの負担軽減」が大きな課題でした。ICT導入の流れが進むなか、「何を導入すべきかわからない」という悩みもありましたが、導入が遅れることへの不安もありました。
こうした背景から、まずは「HitomiQ」について詳しく調べ、職員にも情報を共有したうえで、導入に向けたトライアルを実施しました。

3. トライアルから導入まで
感染症対応に追われる中、予定通りには進まなかったものの、2023年6月〜8月にかけてトライアルを実施。
結果、職員の多くから「ぜひ導入したい」と前向きな声が上がり、導入が本格化しました。
その後、他のICT機器との比較や展示会への参加、他施設の見学などを行い、2024年4月に導入を正式決定。翌5月より本格運用を開始しました。

4. 導入に際して重視したポイント
現場主導の選定:トップダウンでの導入は失敗する例も多く、現場リーダーと繰り返し話し合いながら進めました。
ネットワーク環境の整備:既存環境ではエラーのリスクがあり、導入前に再整備しました。家族への説明:プライバシー侵害ではなく、事故防止の目的であることを丁寧にご説明し、理解を得ました。
通知設定の個別最適化:利用者様ごとのリスクに応じて通知設定を変更することで、過剰通知を防ぎます。
メーカーとの連携:運用時のサポートを得ながら、職員のアセスメント能力向上にもつなげています。

5. 映像を活用した事故対応と環境改善
導入により、転倒などのリスク行動を映像で確認できるようになりました。
映像は、職員のスマホにもリアルタイムで届きます。映像を通じて、転倒の原因が「予想外の動作」にあったことも判明し、ヒヤリハット報告や環境改善にもつながりました。

6. 導入コストとランニングコスト
導入費用:約170万円(うち補助金:約313万円)
月額費用:約20万8500円(サブスクリプション、iPhoneレンタル等を含む)

7. 導入後の効果
職員の放室回数が減少:通知で状況を確認してから対応するため、無駄な訪室が減り、利用者様のストレスも軽減されました。
事故原因の特定が可能に:行動の「見える化」により、再発防止策を具体的に講じることが可能になりました。
職員の負担軽減:通知確認の手間は増えたものの、不要な移動や夜間の巡回負担は軽減されました。

8. データを用いた業務分析
通知履歴や訪室頻度をグラフ化することで、「職員が何時にどの部屋へ訪室しているか」「通知なしでの訪室が多い時間帯」などが把握でき、業務改善や役割分担の見直しに活かせています。

9. 今後の課題
職員の育成:通知確認だけでなく、データを活かした分析力を育てることが重要。
経費の確保:全居室への導入を目指すには、継続的な経費確保と経営戦略が必要です。
ICTの導入は、介護の質向上と職員の働きやすさの両立を実現するための大きな一歩です。今後も継続的に改善を図り、選ばれる施設づくりを目指していきたいと考えています。
ご清聴ありがとうございました。

【事例報告】
地域における権利擁護支援はどのように進んでいくのか
~事例を通して、成年後見制度の見直し議論を見ながら考える~
NPO法人まちの相談室よりそい・東近江市権利擁護サポートセンター 高田 佐介さん


こんにちは。一般社団法人まちの相談し寄室よりそいの高田佐介と申します。
今回、三方よし研究会での発表は3回目となります。前回はコロナ禍での苦労を経験した事例を、そしてその前は、東近江市と共に成年後見制度を始めた頃のお話をさせていただきました。本日は3回目のご報告となります。
現在、私は東近江市の中核機関として、「東近江市権利擁護支援センター」の名称で活動しています。これまでの取り組みに、少しずつ新たな要素を加えながら支援を行っております。
本日は、私が関わった一つの事例をご紹介します。

対象となった方は90代の男性で、一人暮らしをされており、相続人がいない方でした。過去に二度ご結婚され、それぞれの配偶者と死別されており、養子に迎えられたお子さんもすでに亡くなられていました。親族を辿れば遠縁の方はおられたかもしれませんが、実質的には身寄りのない状況でした。
私が関わった時点では、すでに小規模多機能型居宅介護を利用しながら、在宅生活を続けておられました。要介護4で、車椅子での生活でしたが、比較的安定した年金収入と預貯金もあり、経済的には困窮しておられませんでした。
ただ、ご本人にとって成年後見人という存在を理解するのは難しく、常に「役所の人?」といった印象を持たれていたようです。意思決定支援が重要だと分かっていても、実際にご本人の思いや希望を汲み取ることは容易ではありませんでした。
本人の生活に限界が見え始めたことから、施設入所の手続きを進めることになり、見学への同行や申込の支援を行いました。本人の納得を得られたかは定かではありませんが、現実的な必要性から手続きを進め、最終的に老人保健施設、そして特別養護老人ホームへと移られました。
施設では穏やかに生活されていましたが、ある日肺炎を患い、入院。そのまま病院で亡くなられました。死亡届の提出、葬儀の手配、納骨までを私が担当しました。関東にある先祖代々のお墓に納骨することになり、職員や市役所職員の協力を得ながら、対応いたしました。
死亡後の財産については、相続人がいないため、家庭裁判所に財産管理人の選任申立てを行い、弁護士が選任されました。関わりは約1年、実質的な支援期間は半年ほどでしたが、さまざまな手続きと関係機関との連携が必要な支援となりました。

現在、成年後見制度の見直しが進んでいます。法務省や厚生労働省では、それぞれ異なる視点から議論がなされており、特に国連の障害者権利条約に基づく指摘により、「後見制度が権利侵害に当たるのではないか」との批判もあります。
長年後見人として活動してきた立場からすれば、「権利を守るための制度」であるはずのものが、「権利を侵害する制度」と評価されることには戸惑いがあります。
近年の見直し論議では、「意思決定支援の重視」や「任意後見の活用」、「必要なときに必要な期間だけ使える制度設計」などが挙げられています。また、中核機関や中間支援組織の法定化も議論されています。

しかし、制度改革の中で重要なのは、これまでの制度の役割と成果を正当に評価しつつ、矛盾や課題にどう対応していくかです。後見制度は「自己決定」を支援する制度であり、支援者は本人の立場に立ち、推定に基づく判断を行うことが求められます。
また、後見人と被後見人の関係が長期にわたることによる硬直化を避けるため、交代の仕組みも必要だと考えます。本人のニーズに応じた適切な後見人の選任、柔軟な対応がこれからの制度設計には欠かせません。

成年後見制度をよりよいものにしていくためには、制度を支える中核機関の位置付けや役割を法的に明確にし、支援の質を高めていくことが求められています。
最後に、こうした場で私自身の経験や考えを共有する機会をいただけたことに感謝いたします。今後も議論の動向を見守りながら、現場での実践に活かしていきたいと思います。
ありがとうございました。

【グループ別意見交換】
○事例報告を聞いた感想を共有する。
○それぞれのお立場で関わりがある成年後見制度について、感じた課題などを共有する。
○権利擁護支援において必要となる(望まれる)多職種連携の形や仕組みについて話し合う。

【発表】
2G:


高田さん、ありがとうございました。
本当にいつも、高田さんからは多くの学びをいただいており、私自身も参考にさせていただいています。
今回のグループでは、病院で働いておられる方が多かったこともあり、医療の現場における後見人制度の課題について、さまざまな意見が出ました。
たとえば、医療同意の場面で後見人がいても合意形成が難しいということ、また、レンタル品や病院関係での保証人として後見人が機能しにくいケースがあるという話もありました。さらに、急変時の意思決定や、そもそも判断能力が低下している方への医療的対応については、たとえ後見制度が整っていても、限界があるという意見も出ていました。
このような場面では、後見人にすべての責任を委ねるのではなく、支援者が共に考え、協力し合って「この方にとって最善とは何か」を模索する必要があると、改めて感じさせられました。
誰か一人に負担を押しつけるのではなく、関係者みんなで手を取り合い、本人を中心に据えて考えていく、今後ますますそうした支援のあり方が求められるのではないかと思います。
また、国連から「成年後見制度は権利侵害にあたる」と指摘されたことについても話が及びました。日本がこれまで制度として積み上げてきたものに対して、そうした評価がなされるということは、国民にとっても大きな問いかけになるのではないかと感じています。
これまで真摯に取り組んでこられた後見人の皆さんにとっても、失礼とも感じられる評価であるという意見も出ていました。そして最後に、「お金がない」「身寄りがない」、こうした方々を今後どう支援していくのか。このテーマは、成年後見制度の在り方とともに、今後の大きな課題であると感じています。以上、グループ2からの報告でした。ありがとうございました。

1G:

今回のグループでは、参加人数が多かったこともあり、すべてのご意見をご紹介するのは難しいのですが、活発な意見交換が行われ、大変有意義な時間となりました。
議論の中では、成年後見制度に関わるさまざまな課題が共有されました。たとえば、制度の利用にあたっては法的な手続きや公的書類の取得に多くの費用がかかるため、経済的な負担が大きいという声がありました。また、医療的な判断が必要な場面や急変時の対応においては、後見人だけでは対応しきれない場合もあるという現実も指摘されました。特に、判断能力が低下している高齢者の支援においては、制度だけでは限界があるのではないかという意見も出ており、後見人にすべてを任せるのではなく、関係者が連携して支援にあたることの重要性が改めて確認されました。
法定後見の場合、後見人が弁護士などの専門職であると、日常の伴走的な支援まで手が回らず、結果としてケアマネジャーなど他の支援者がその役割を担わざるを得ないという実情も共有されました。そのため、支援の分担や連携体制の見直しも必要ではないかという意見も出ました。
制度を活用するには、申請のタイミングが非常に重要であり、その判断が遅れることで支援がうまく進まないケースもあるとの声もありました。また、地域支援事業から成年後見制度へ移行する際に、現場での実務的な混乱や不安も少なくないという課題も挙げられました。
財産がわずかで経済的にギリギリの生活をされている方への支援についても話題となり、公正証書などの準備ができていた場合は対応がスムーズであったものの、そうでない方への支援が今後ますます求められるという話も出ておりました。また、参加者の中から「今、私たちが備えておくべきことは何なのか」といった実践的な問いも出されており、制度論にとどまらず、現場での備えや意識づくりの必要性も確認されました。

なお、先ほどの事例に関連して、「亡くなられた90歳の方の財産処分はどうなったのか」との質問も出ておりましたので、後ほど補足いただければと思います。
以上で、グループからの発表を終わります。ありがとうございました。


花戸先生:指定発言の前に、何か質問出たことでお答えできること、お願いできますでしょうか。

高田さん:先ほどご質問いただいた「財産処分」に関する件ですが、現在は弁護士が清算人として選任され、手続きを進めているところです。弁護士が行う清算業務は、裁判所の依頼に基づいて行われるものです。最終的には、必要経費などを差し引いたうえで、残余財産は「国庫に帰属する」という形になり、いわゆる税金として国に納められることになります。そういった清算手続きが始まり、私自身の役割はそこで一区切りとなりました。
次に、国連からの「成年後見制度は権利侵害にあたる」という指摘についてですが、国際的にはすべてを包括的に一人の後見人が担うという体制に対して、「本人の権利や自由を奪ってしまうのではないか」という見解があるようです。ただ、実際に私たちが現場で活動する中では、本人にできることはなるべく本人の意思を尊重しながら進めており、必要に応じて意向確認や判断の補助なども丁寧に行っています。多くの後見人も、その点は十分に意識して活動されていると思います。
ただし、重度の認知症や知的障害などにより、言葉での意思表出が難しい方については、確かに判断の難しさが伴います。そういった場合でも、本人の状況やこれまでの生活歴などを踏まえて、慎重に対応していくことが求められると感じています。
また、保証人に関する話題も出ておりましたが、後見人はその方の財産をしっかりと管理していますので、その範囲であれば、必要な支払い等にも対応できます。ただし、財産が不足している場合には、生活保護制度など他の公的支援と連携しながら、適切な対応を行っていくことになります。そういった対応を丁寧に行えば、関係機関にも理解を得られるのではないかと感じています。
医療に関して、たとえば延命治療を行うかどうかといった判断については、ご家族や関係者、医療機関との間で、できる限り話し合いのうえで合意形成を図っています。施設や病院によって方針が異なる部分もありますが、私自身は、これまでそうした判断に極端に悩んだ経験はありません。むしろ、その都度、医療職との連携や合意の積み重ねが重要だと感じています。
最後に、後見活動を始める際には、役所や関係機関とのネットワークをしっかり作ったうえでスタートすることを基本としています。私自身、ソーシャルワーカーとしての立場からも、地域の関係者と連携しながら、支援の基盤を築くことの大切さを実感しています。


【指定発言】
★NPO法人まちの相談室よりそい・東近江市権利擁護サポートセンター 若林 陽子さん

私の方からは、新たな発言として、これまでのお話を伺って感じたことを、2点お伝えさせていただきます。
まず1点目は、「本人の意思決定支援」についてです。私自身、約10年間、後見活動に携わってきましたが、意思決定支援というのは非常に難しく、ある意味“技”が求められる場面でもあると感じています。ただ、先ほどのご発言にもあったように、関係機関の方々との信頼関係を築いた上で、「本人は今、どう思っておられるのか」ということを、関係者全体で共有しながら支援の方向性を決めていく、そういった姿勢が大切だと思っています。
特に医療に関する場面では、判断の重さを実感することがあります。昨年、私が担当していた方が急性疾患を患い、手術が必要な状況になりました。ご高齢だったこともあり、主治医の先生からは「手術をした方が良い」と説明を受けましたが、私は後見人の立場として「本人の意思を確認できていない以上、こちらから手術を促すことはできません」とお伝えしました。先生もその点をご理解くださり、「それなら、親族を探してほしい」と依頼がありましたが、連絡がつかず、協力も得られない状況でした。
最終的には、病院内の倫理委員会で判断いただき、手術が実施され、無事に退院されました。このように、後見人として医療判断に全面的に関与できるわけではありませんが、本人がどう生きたいと望んでいたか、その思いに寄り添いながら、関係者にお伝えすることも大切な役割だと感じています。

2点目は、経済的に困窮している方への支援についてです。ご本人に経済的な余裕がない場合、後見報酬の支払いが困難なケースもあります。ですが、生活保護制度などの公的支援がありますし、東近江市では「後見報酬助成制度」も整備されています。実際、私が担当したケースでも、本人からの報酬が得られない状況でしたが、市に申請を行い、報酬補助を受けることができました。
昨年は、終活支援などを行っている三重県の中核機関に研修に伺いましたし、今年は島根県松江市の社会福祉協議会で研修を受ける予定です。各地域での取り組みを学ぶ中で、地域ごとの課題や特性に合わせた支援の形があることを実感しています。
東近江市の中核機関としても、まだ立ち上がったばかりではありますが、地域の特性を活かしながら、社会福祉協議会や市役所などと連携し、よりよい支援体制を築いていけたらと思っております。
以上です。ありがとうございました。

★東近江市地域包括支援センター センター長 河島 克彦さん(東近江市権利擁護サポートセンター管轄)


よろしくお願いいたします。地域包括支援センターの河島です。
私たちの今年度(令和6年度)の組織目標のうちの一つに、「本人の意思決定を支援する取り組みの推進」が掲げられております。この目標のもと、市の事業として、権利擁護サポートセンターが障害福祉課との連携のもと新たに設置されました。これにより、さまざまな支援機関が短期間で立ち上がり、今後はさらなる支援体制の強化に取り組んでいきたいと考えております。

「人権」という言葉は一言で語ると簡単ですが、成年後見制度の利用など、実際の支援の場面では「判断能力」や「自己決定」など、非常に深い判断を求められるケースが多くあります。私たち支援者も、日々の現場で立ち止まり、迷いながらも慎重に対応を進めているのが実情です。
また、成年後見制度の利用は、どうしても困りごとや課題が深刻になってから動き始めるケースが多く、そうした点からも「予防的な支援」の必要性を強く感じております。
その一環として、私たちは制度の啓発に取り組むとともに、地域独自のツールとして「東近江版エンディングノート=未来ノート」を作成し、活用を進めています。このノートは、自分自身のこれまでを振り返りながら、将来に向けて「どのような暮らしを望むか」「どのような医療を受けたいか」など、自分の意思を記録するものです。
この「未来ノート」は、もしもの時に備えて、日常の中で自分の情報を整理し、自分らしい支援につなげるためのものです。記入を通じて、成年後見制度についても自然と理解を深めることができ、「自分の未来に自分で備える」ことの一助になると考えています。
未来ノートは、各地域包括支援センターで配布していますので、ご関心のある方はぜひ手に取ってみてください。また、市の出前講座でも体験プログラムとしてご案内していますので、そちらもぜひご活用ください。

最後になりますが、今回の研究会を通じて改めて感じたのは、「本人主体」「当事者主権」という視点の大切さです。成年後見制度について国連から指摘があった点は、特に財産管理の面に関するものが大きいのではないかと考えていますが、やはり「支援を伴う自立」や「正しい理念に基づいた制度運用」がなされていくことで、人間の尊厳が守られ、よりよい制度となっていくのではないかと感じています。
そのためにも、日々の暮らしの中で、専門職はもちろん、市民一人ひとりが「未来に備える」ことを意識し、共に福祉文化を育んでいくことが、これからますます大切になると考えております。
本日は、貴重な学びと気づきをいただき、ありがとうございました。

★滋賀県社会福祉協議会 地域福祉課 滋賀県権利擁護センター 山本 亜紀さん



皆さん、こんばんは。
滋賀県社会福祉協議会 権利擁護センターの山本と申します。
本日はこのような貴重な発言の機会をいただき、ありがとうございます。
先ほど、グループ内でも「お金がなく、身寄りのない方への支援」が話題に上がっていました。また、高原さんのご発表でも触れられていましたが、現在、成年後見制度の見直しが進められている中で、その「必要性」や「補完性」といった観点から、「スポット的な後見の活用」や「オンリー後見」といったキーワードも登場しています。
そのような流れの中で、後見制度の役割が終わったあと、「その方を地域でどう支えていくのか」という課題が大きく浮かび上がっています。現在は、地域福祉権利擁護事業が、その“受け皿”として期待されている状況です。
この点については、国の「地域共生社会のあり方に関する検討会議」においても議論が進んでおり、最近の中間まとめでは、現行の地域福祉権利擁護事業を拡充・発展させる形で、身寄りのない方などを包括的に支援する新たな仕組みの創設が示されました。
ただし、方向性は示されたものの、制度の具体的な中身についてはまだ議論が進んでいない状況です。
そうした中で、社会福祉協議会としては、「現在の厳しい財源や人員体制の中で、本当に対応できるのか」「社協が支援を丸抱えするような構図にならないか」といった不安の声も現場から上がってきています。
だからこそ、今回のテーマでも出ていたように、「多職種連携のあり方」や「地域全体での仕組みづくり」が、ますます重要になってくると感じています。
では、「今、社協として何をしておくべきなのか」。その問いに対して、私たちは現在、各地の社協職員と話し合いを重ねているところです。これまで社協は、地域福祉の実践の中で、身寄りのない方や孤立の問題にも取り組んできました。制度として切り分けるのではなく、地域の暮らしの中で、つながりを持ちながら支援してきたという土台があります。
だからこそ、あまり「事業ありき」で物事を進めてしまうと、かえって本来の地域とのつながりが薄れてしまうのではないか、という懸念もあります。

今後は、地域の中にどれだけ「身寄りのない方」や「支援を必要としている方」がおられるのかを、改めて丁寧に把握しながら、地域内でどう連携を築いていくのか。社協として“本来の役割”を再確認しながら取り組みを進めていくことが大切だと考えています。新しい事業がどう制度化されていくかはまだ不透明ですが、その根幹には、地域の現実と向き合いながら丁寧に支援を重ねていくという姿勢が欠かせないと、私たちは考えています。
以上です。ありがとうございました。

【連絡事項】 第212回 三方よし研究会(市民公開講座)
映画「猫と私と、もう1人のネコ」&トークショー
2025年7月12日(土)14:30~17:00 会場:五個荘コミュニティセンター

7月12日に開催されます、三方よし研究会 市民公開講座についてご案内いたします。
今回の会場は、「五箇荘コミュニティセンター 大ホール」です。参加費は無料となっておりますので、どなたでもご参加いただけます。
今回の上映作品は『猫と私と、もう1人の猫』というタイトルで、「ありふれた日常が崩れた中で見つける“自分らしさ”とは何か」をテーマにした映画です。
物語は、ある日突然ヤングケアラーになった女子高生と、そばに寄り添う猫との日々を描いたものです。ヤングケアラーの問題は、いま社会的にも大きな関心を集めていますが、実は身近なところで、私たちが気づかないうちに支援を必要としている若者がたくさんいることが、さまざまな調査からも分かっています。
この映画を通じて、ヤングケアラーの実情について多くの方に知っていただき、また一緒に考えるきっかけとなればと願っています。
上映日は 7月12日(土)14時30分~17時 です。ぜひご参加ください。

2025年6月1日日曜日

介護福祉士実務者研修 滋賀東近江教室 7月生 受講生募集!

NPO法人三方よし研究会と街かどケア滋賀ネットの主催により、国家資格「介護福祉士」取得に繋がる実務者研修を開講します。

令和7年7月1日から12月31日までの期間で実施し、スクーリングは全7日間を予定しています。

研修では、Create Your Life様のご協力のもと、事例を活用したグループワークやロールプレイを中心に、実践的かつ充実した内容を提供します。

介護の専門性を高めたい方、国家資格を目指す方にとって、絶好の機会です。多くの皆さまのご参加を心よりお待ちしております。


東近江圏域 介護職員初任者研修のご案内


今年も「三方よし研究会」主催による介護職員初任者研修を開催いたします。
本研修では、医師・歯科医師・薬剤師・看護師・作業療法士・介護福祉士・福祉用具専門相談員・介護支援専門員など、医療・介護の現場で活躍中の専門職による講義と演習を通じて、実践力を養うことができます。
「介護の知識を学びたい方」や「介護の仕事に興味のある方」にとって、貴重な機会となっております。ぜひこの機会にお申し込みください。
皆さまのご参加を心よりお待ちしております。




2025年5月15日木曜日

第210回 三方よし研究会開催のご報告

ここに第210回の三方よし研究会が開催されましたので、ご報告いたします。



日時:令和7年5月15日(木) 18:30~20:30

会場:東近江市立能登川病院 なごみ2階(ハイブリッド方式)

当番:医療法人社団昴会


【ゴール】

◯より安全に医療を提供するために気を付けたい事を学ぶ

◯身体拘束などの抑制についての現状を学ぶ


【情報提供】

︎三方よし研究会市民公開講座

2025年7月12日(土)14:30〜17:00

五個荘コミュニティセンター大ホールにて


司会進行:日野記念病院  上田さん



【学習会】【事例紹介】

テーマ『身体的拘束最小化と安全管理』

発表:医療法人社団昴会本部 医療安全統括管理者 木下さん





・身体拘束を「見た」「使った」経験はどうか?車いすベルト等、車いすテーブル、ベッド4点柵、ミトン型手袋、介護衣、クリップコール、施錠、行動抑制、向精神薬等。

・本日の研修の目的

1.高齢者虐待防止法と身体拘束の定義を理解する

2.法的責任とリスク管理の視点で考える

3.身体拘束はなぜいけないのか

4.情報交換を行い安全で尊厳あるケアの方針を考える
機会とする

・本日のゴール

1.より安全に医療・介護を提供するために気を付けたいことを学ぶ

2.身体的拘束など抑制についての現状を学ぶ

・高齢者虐待の定義…高齢者虐待とは高齢者に対して行われる身体的、心理的、性的な暴力や搾取、ネグレクトなどの行為をいう。

・虐待と気ずかずに発生してるかも…食事を介助者のペースで口に運ぶ/入浴を嫌がる際に叩いて従わせる/入浴介助時に叩いて従わせる/排徊しないよう安易にベッドに拘束する/殴る、蹴る、叩く、つねるなどの暴力行為/外部との接触を遮断/ベッドや車いすへの縛り付け/薬の過剰服用/言葉による適切でない身体拘束・抑制(スピーチロック)/排泄の失敗をした高齢者のお尻を叩く/見て見ぬふりの虐待etc…

・虐待の内容…①身体的店待:1,198人(51.3%)最も多い。②心理的虐待:568人(24.3%)。③介護等放棄:521人(22.3%)。被虐待高齢者2,335人のうち、身体拘東あり:598人(25%)。

・虐待発生時の対応…1.虐待の事実確認。2.虐待対象者の保護。3.調査(調査委員会の設置・追跡・ヒアリング・調査報告書作成)。4.対策の検討と実施 委員会で検討。5.支援計画の作成:害者の状況に合わせて、適切な支援計画を作成。6.関係機関への報告と公表。

・法的な責任…高齢者虐待防止法第21条がある。高齢者虐待をした施設が負う責任には刑事責任、民事責任、行政上の責任があり、施設としては相談窓口の設置や職場への不満に耳を傾ける対策に取り組むことが重要。

・高齢者虐待を起こさない対策…継続的な教育と研修の実施/マニュアルを作成して周知徹底/職員のストレスケアやサポート体制の整備/相談窓口設置/職場環境の改善/記録や書類の電子化/業務改善。組織全体での支援体制の強化が重要。

・身体的拘束最小化について…「その人らしい生活を自分の意思で送ることを可能とすること」が「尊酸の保持」には必要。認知症等により、自分の意思を周囲の人々に十分に表明できない状態、または周囲の人々から確認できない状態であったとしても、人間として尊重し、その人らしいケアをすることが「尊厳の保持」には不可欠。

・入院料別の身体的拘束の実施理由…①身体的拘束の実施理由としては、「ライン・チュープ類の自己抜去防止」又は「転倒・転落防止」が多く、あわせて約9割を占めた。②小児入院医療管理料、治派室、療養病棟では、「ライン・チューブ類の自己抜去防止」の割合が高かった。

・日本における身体的拘束禁止の取り組み…1997年(平成9年)高齢者に対する身体拘束廃止の動き
「抑制廃止福岡宣言」「全国抑制廃止研究会」発足。1999年(平成11年)厚生労働省から介護保険施設などにおける「身体拘東禁止」が省令。2000年(平成12年)厚生労働省から「身体拘東ゼロ作戦推進会議」発足。2024年の診療報酬改定重点ポイントは「身体拘束最小化」介護だけでなく医療分野も入ってきている。

・身体的拘束はなぜ問題なのか?…身体的拘束は患者の尊厳を害する可能性。もたらす弊害:身体的・精神的・社会的弊害あり。

・認知症周辺症状(BPSD)…環境が原因となっている場合がある。POINT:認知症の周辺症状とそのきっかけを多職種で抽出すること。

・身体的拘束の要因と対応例…発生場面、考えられる原因、具体的対応例に分けて、転倒転落から人間関係トラブルまでを分類。

・身体的拘束最小化の具体的な方法…①転倒による重大事故防止では衝撃吸収マット設置(ころやわマット)/ヒッププロテクター付きのパンツ着用/ヘッドプロテクター/離床センサー設置/座コール設置/センサーベッド/見守り:部屋の配置など。②ドレーン・チューブ自己抜去防止では必要最小限の治療計画:点滴実施する期間/テープ固定方法/ドレッシング剤の選択/腹帯の使用など。③環境による重大事故防止ではベッド周園(手の届くところに置く)/靴の位置/不要なものは置かない/バリアフリー/床の材質など。④離院による重大事故防止では赤外線などのセンサーの設置/徘徊センサー/見守りカメラ/セキュリティー強化/捜索(地域の協力)などがある。

・緊急やむを得ず身体的拘束を行うときの留意点…①身体的東等を行う可能性について、事前に患者又は家族の同意を得る。②看護・介護計画を立案し、身体拘東等を未然に防ぐ対策を講じた上で、身体的拘東等を行う可能性を明記する。③利用者や他の利用者の生命又は身体を保護するための措置として、緊急やむを得ず身体的拘束等を行う場合は、カンファレンスで身体拘束による心身の損害よりも、拘束をしないリスクの方が高く、「切迫性」『非代替性」「一時性」の3要件すべてを満たした場合のみ、本人・家族への説明・同意を得て行う。④身体的拘束を行った場合は、その状況についての看護・介護記録の整備を行い、できるだけ早期に拘束を解除する。⑤定期的に開催される委員会においても事例を報告し、3要件の確認及び背景等の分析、再発防止、支援方法を検討する。

・身体的拘束の判断基準…行動を制限・抑制する目的の対応は「身体拘束」とみなされる。

・身体的拘束に該当する例…ミトン型手袋、抑制帯、車椅子への固定、4点柵、クリップコールなど。

・身体的拘束に該当しない例…センサーベッド、眠りスキャン、離床センサー、見守りカメラ(行動制限せず、報知による対応)、センサー付き緩衝マット、ナースコールの工夫された設置など。※目的が「安全確保」であっても、結果として行動の自由を制限すれば拘束とされる可能性がある。

・身体的拘束の3原則…非代替性、切迫性、一時性。

・身体拘束の弊害…①身体的弊害(1)関節拘縮、筋力低下、四肢の廃用症候群といった身体機能の低下や圧迫部位の褥瘡の発生等の外的弊害。(2)食飲の低下、心肺機能や感染症への抵抗力の低下等の内的弊害。(3)拘束から逃れるために転倒や転落事故、至息等の大事故を発生させる危険性。②精神的弊害(1)本人は特られる理由も分からず、人間としての尊厳を侵害。(2)不安、怒り、圧等、あきらめ等の精神的苦痛、認知症の進行やせん妄の頻発。(3)拘束されている本人の姿を見た家族に与える精神的苦痛、混乱、罪悪感や後悔。③社会的障害(1)看護•介讀職員自身の士気の低下。(2)施設・事業所に対する社会的な不信、偏見を引き起ごす。(3)身体拘束による本人の心身機能の低下は、その人のQOLを低下させるだけでなく、更なる医療的処置を生じさせ、経済的にも影響を及ぼす。

・拘束が拘束を生む「悪循環」

・身体的拘束最小化の要点…①患者・利用者主体のケア。本人の尊厳や生活歴をふまえた意思の尊重、本人の表情や行動の変化を読み取る視点。②代替手段の活用。センサーやマット、低床ベッド、個別の声かけ安心できる環境調整、見守りカメラ、眠りスキャンなど。③チームで意思決定。医師・看護・介護・リハビリ・家族が共に情報を共有し、拘束の可否を合意のうえで判断していく。④日々の評価により、早期に解除していくこと。

・ケアの基本:本人の意思の尊重。5つの基本的なケアとして、起きる/食べる/排せつする/清潔にする/活動する(アクティビティ)部分に対してのケアがある。

・医療倫理の4原則…「自律尊重」「善行」「無危害」「正義」。身体拘束しない医療を実践するためには、倫理的視点として「善行原則」と「自律尊重原則」のそれぞれを高めていく研修が重要。

・身体拘束最小化の具体的方法…①転落による重大事故防止(体交枕による転落しない体位の工夫/センサーベッド)。②認知症による重大事故防止(行動の目的を把握/患者に寄り添ったコミュニケーション)。③支援体制の強化(患者・家族参加型の支援体制を構築)。

・身体的拘束の過去の判例…3つほど紹介。




 


司会進行:花戸貴司 医師

【グループワーク】

テーマ『テーマ:身体拘束をせずに安全を守る方法を考える』



1.事例リスクの整理・この事例でどのようなリスクがありましたか?・患者の状態、環境、人的体制などから整理してみましょう。

2.拘束に代わる具体策の検討・拘束を使わずに安全を確保するには、どのような代替策が考えられますか?(例:環境調整、機器の工夫、スタッフの配置、家族との連携など)

3.医療安全管理の視点・今回のようなケースで、記録・報告・再評価など、医療安全の視点からどのような管理が必要ですか?

4.チームの提案まとめ・検討した内容をまとめ、発表用に整理してください。・どのような点が重要で、どんな判断や準備が必要か、理由も含めて書いてください

 


【発表】

<会場1グループ>

このシートに沿っていきますと、利用者の自身のリスクとしては、入所3日目でご本人自身も環境に慣れてなくて、職員自身もその方の行動に慣れていなかったということ。また朝の7時ということで、利用者さんが一度に動き出す、すごく忙しい時間帯であったということ。長期間プレドニンステロイドは内服していて、おそらく骨粗鬆症もあって骨折しやすい状況であったこと。認知症アルツハイマー、認知症の初期症状ということでありますけど、見た目よりも理解が難しい部分があったんじゃないかということがあります。環境の設定として考えられるのは、ベッドの高さが合っていたのかどうか、移動方法の検討がされていたのかどうか。あとベッド周りにつまずきやすいものがあったんじゃないか、床が滑りやすかったんじゃないか、ベッドの手すりがどうなっていたのか、家のベッドと手すりの状況が異なっていて、うまく使えなかったのじゃないか、ということが上がりました。トイレの仕方としてポータブルトイレというのも話題に上がったんですけど、それはポータブルは嫌な方が多くて、尊厳が守られないんじゃないかという話が出ました。発生要因としては、すごく忙しい時間であったこと。夜勤が3人だけで50床に対してすごく少なかったことがあげられました。工夫としては、入所早期でありますけど、早期のうちにリハビリ職と相談して、移動動作を考えるとか、環境の調整をする。あるいは家での環境をしっかり聞き取って、それに合わせるという対応ができるんじゃないか。あとは人員の面では、早出の対応として、この時間だけでも少し増やすことができるんじゃないかということがありました。ご家族の説明としては、しっかり誠意を持って説明するしかないかなと。あとは入所の時点では転倒のリスクが高いが、ただ抑制はしないで、こういうことを気をつけていきますということを説明しておくとか。骨折が起こってしまった後、おそらく病院に入院されるんだと思いますけど、治療後にまた戻ってきてもらえるような連携をとっていくということも必要な対応じゃないかという話がありました。


<会場2グループ>
発生要因、今回のこの方のリスクとしては、入所3日目でご本人もこの環境に慣れていなかったということと、施設側も本人のお体のご状態とか特徴をつかみきれていなかったのではないかという意見が出ました。また、7時という時間帯は起きたばかりということで、日中よりも十分に覚醒ができていなくて、日中の歩行よりもふらつきが起きたりといったことも起こり得るのではないかという意見が出ました。これを防ぐための再発防止策としては、スタッフ内の声かけ、今回はこの方についている時に、他の方のナースコールが鳴りなぜそちらに行ったということなんですけれども、本当にその人が行かなければいけなかったのか、他のスタッフでは対応できなかったのかというところを、もう少し他のスタッフさんとの声かけで、こっち行けないから、あなたが行ってというところの共有ができればいいのではないかという意見が出ました。また、入院前からご本人様に起こりうるリスクを考えてトイレと病室を近くしておいたり、見守りのしやすい部屋に設定しておく、また夜間だけはご本人様の状態を考慮してポータブルトイレを利用するなどの環境設定、転倒したとしても被害を最小限にできるようなマットを引くなり、そういった環境の調整が必要なのではないかという意見が出ました。


<会場3グループ>
利用者の特徴、特殊性とリスクについては、ステロイドによる影響、アルツハイマーで判断力が低下している、入院から3日ということが挙げられました。環境設定としては、センサーマットで工夫されているということを共有しました。発生要因としては、このように判断力低下されている方で、入院3日という状況、さらに顔が険しかったという、いつもと違う状況というところから、そういう状況であるにもかかわらずトイレから離れたというところが挙げられました。あと、夜勤の人もちょっと理解不十分なことがあったのではないか、申し送り等でこの人は離れてはいけない人という認識があったかどうかが確認かなというところでした。実施可能な工夫としては、一時対策としては、トイレでどうしても離れざるを得ない場合は、聴覚で記憶とか判断が難しい場合はもう少しここで座ってお待ちくださいみたいな視覚的に見えるようにフリップのようなものをつけるような工夫をするとか、トイレにブザーなどをつけておいて、トイレから立ち上がった時になるようなシステムを作っておくなどが挙げられました。二次的な対策としては、もし戻られたとしても、そこに手すりがあるというような環境設定をしておくとか。またもし自分で歩かれて転倒したとしても、ヘッドギア、ヘッドガードをつけていくのも、本人さんの受け入れもあると思いますがという案が出ました。三次対策としてはリハビリでもう少し移乗練習をする、入院3日なのでなかなか難しいかもしれないですけど、入院3日なので逆に過剰に対応していく方が良かったかなということがありました。ご家族への説明責任というのは、すぐに報告して、対策をして二次予防をしていくということが挙げられました。まとめとして、夜勤は本当に3人で過酷であり、同時にナースコールが何個も鳴ると大変なので優先順位つけてというのは酷なんですが、一次対策、二次対策、三次対策というのを考えて、特に1週間はあの厳しめにというか過剰に対策していきたいなというところでした。


<オンライン1グループ>
すでに出た意見以外のところで言いますと、まず利用者さんのこととリスクに関してはエリテマトーデスの疾患ですので、進行する病気で、今の病状が今どうなっているのかということの把握と、プレドニンを長期内服されているので、副作用が出て体がむくみやすくなっているのではないか、それが転倒のリスクであったり、骨粗鬆症と筋力低下にもつながるのではないかという意見がありました。環境設定に関しては、ご自宅でベッドを使われていたのか、畳で寝ておられたのかがちょっとわからないのですが、それによって今の病院のベッドの高さが合っていなかった可能性があるという意見がありました。発生要因に関しては、声かけをしてちょっと待っててくださいという声かけだけでは、もしこの方が耳が遠かったりしたらわかってもらえていない可能性があったので、すぐにベッドに戻るので、もっと工夫できることは何かなかったかという危険があったのと、朝の7時というのはやはり老健施設としては、皆さんトイレに一斉に行きたくなる状況なので、ナースコールが鳴り響いて、そもそもこの時間帯は事故が発生しやすい時間帯だったというのも一つ要因として挙げられました。また再発の防止策については、在宅の情報を、例えば排泄のタイミングなどが老健さんに伝わっていればよかったのではないかということと、全身エリテマトーデスの症状であったり、治療経過についても担当の方が知っておく必要があったのではということと、家族さんへの説明に関しては即時に誠意を持って説明すること、曖昧なことは言わないということが意見がありました。以上からまとめとしては、離床センサーだけで安心するのではなく、本人の尊厳の視点で、在宅時からの情報を把握あていくこと、多職種でのその情報を共有することが大事ではないかというようにまとまりました。


<オンライン2グループ>
今回のまとめとして。骨折の可能性が高い人であるという前提で計画を立案するという部分で、ベッドの位置などを配慮する。入所して使っていただく歩行器は本人のものを活用する、本人の睡眠時間やそれまでの生活状況から本人のリズムを把握することが重要だとと話しました。また、時間帯としてケアが集中することから、人の配置などの工夫、入所時から信頼関係を築いていくこと、説明するときの言葉の使い方、本人家族がどんな気持ちでいるか、どんな思いでいるかを想像しながら対話をしていくことが挙げられました。また、待っててねに待てる人とそうでない人がおり、ご自身で動ける方に対しては、もう待てないという部分から、目の前のケアを終わらせて次のケアに行くということは原則としてNGとして対応していくということが上がりました。転倒転落が多い方に対して、処方、いわゆるドラッグロックということに対してモヤモヤを感じる方もいらして、まず在宅療養者より入所者の方の方がそういった対応を取られる方が多いということなので、配置ナースケア職からの声に対応した処方をされているという現状があります。でお薬の作用、副作用も含めて検討していく必要があるなということが今回の話し合いに上がりました。


〇指定発言:社会福祉法人六心会 理事長 堤 洋三様
   ご報告させていただきます六心会の堤と申します。よろしくお願いします。本日皆さんから本当に多くの学びをありがとうございました。特に医療安全管理という視点は、私はあまり学ぶ機会がこれまでありませんでしたので、木下さんからのご報告は、多くの示唆をいただき貴重な時間となりました。ありがとうございました。昨年近畿のある県の特養の施設長からお電話をいただきました。県内の施設では、身体拘束に該当するんじゃないかなと思われる下着を使っている施設があると。内容を聞きますと、ボディスーツ型の上下繋がった下着で、おむついじりなどを防止するというものらしいです。で当該施設管理者さんは、この下着の着用は身体拘束に該当しない、該当するか否かは自治体に確認してほしいと言い張り、その高齢者施設の協議会として取り組んできた身体拘束廃止の方針と合致せずになかなか困っているんだというように協議会の長の方はおっしゃっていました。意見交換する中では、ご本人の暮らしとか、排泄に関するアセスメントで、なぜおむついじりや弄便という事象が起こるのか。目先の事象だけにとらわれて、尊厳を守るとか専門職としてしっかりアセスメントするという、その視点が欠けているねと意見交換をしました。身体拘束廃止は本来、保険者とか指定権者である自治体がオッケーをするとかしないとかの問題ではなくて、ケアの場面において、私たち専門職が尊厳とか生命を守る、どのように守るのかという視点が根底にあり、その大切な視点を本日は改めて学んだような気がします。
   先ほどから事例の中でも人材不足というようなワードもたくさん出てきました。ケアの現場では人材不足が慢性化していて、以前より余裕がないとか、なかなかしたいことができないというような事業所も多いのかなというふうに思います。また最近では外国人のスタッフも急加速で増加していますので、教育であったりとか、学びの重要性はますますあの増えているような気がします。また医療機関と介護施設では、できることや取り組みの手法も多少は違いがあるのかなというふうにも感じました。三方よし研究会は顔の見える関係を基盤としたネットワークですので、お互いが気にかけつつ、身体拘束や尊厳あるケアについても気軽に相談したり、相互に助言ができればいいなというふうに思いました。今日木下さんの話の中にもあったのですけれども、当たり前のことなんですけど組織としてしっかりと身体拘束を廃止するというメッセージを介護施設が出して、全員で取り組まないといけないと思っています。特に職場とかケアの現場で交わされるあのスタッフの日常会話の中で、尊厳とか倫理観、あと身体拘束をしない介護について、話し合ったりとか、ちょっと気になったことがあれば常に気軽に相談できる体制づくりが重要かなと思っています。研修も1回しただけでは全然難しく、何度も何度も繰り返ししていって、それで振り返りを常にこうやっていくというような姿勢もとても大切かなと思っています。本日の学びで皆さんと共有できたことが、また私も新たな意識になりましたので、これからも皆さんとともに、身体拘束がない、尊厳があるあの暮らしを応援できればなと思っております。本日はどうもありがとうございました。


◯指定発言2:医療法人社団昴会本部 医療安全統括管理者 木下様
   みなさん、お疲れ様でした。グループワークで時々覗いてみると、ちゃんと一番から順番に積極的に発言をされているグループが多く、皆さんどの方も積極的に発言をされていて、すごく有意義な時間になったんじゃないかなと思います。

   今回の事例は疑似事例なんですね。実際にあった事例ではありません。私が勝手に作った事例だったんですけれども、PMSHELL分析というものがあります。人間工学に特化した医療に使えるような分析方法なんですけれども、昴会ではこの分析をどの病棟や病院、施設でもしておりまして、これは患者さんの特殊性を考えた上で対策を考えていくという手法なんです。なので患者さん管理、マネジメント管理、ソフトウェア、ハードウェア環境、当事者、関係者、いろんなことが網羅されているので、要因と考えられるような、その対策をここで導き出すことができるという手法です。で事例に一応当てはめてみると、この方アルツハイマー型認知症、しかも初期まだ二ヶ月ということで、初期段階で物忘れがある、そういう感じのところでまだアリセプトなどの薬は飲まれておられないで転倒して骨折がありましたので、そちらの方はすごく注意が必要な方という特殊性があります。でトイレ移動時に険しい表情があったということで、これも入所3日後のため、環境変化も考慮した見守りの体制設定をチームで検討していただいたらいいのかなと思います。で険しい表情からどういったことを想定するかということですけど、ここから患者さん中心にいろんな対策につながっていくんじゃないかと思います。

   マネジメントの管理のところでは、夜勤が3人ですね。三名の看護師1名、介護福祉士1名、ケアワーカー1名の3人でした。で50人の入所者さんをみている。これは量として、介護料に適用できる人員配置を検討しないといけないんじゃないかなと思います。でも実際に現実可能かどうかというと現実不可能です。こんな人員がどこでも不足している中で増やしていくというのはちょっと難しいかなと思いますので、これは少し置いといて、ソフトウェアのところではマニュアルなどになってくるんですけど、身体拘束、高齢者虐待のマニュアルをしっかり整理してあるという前提で、研修も年1回以上、ここまでは実施されているという前提です。ここでソフトウェア的には、まあ業務の配分とかその時間の調整をするとどうかなと思いました。7時というのは、やはりお食事の準備であったりを少し業務整理をして、この時間ちょっとずらせないかなという、多重業務が重ならないような配分をできないかなということを、部署で検討するといったことが対策に上がってくるのかなと思います。

   ハードウェアのところでは、離床センサーは設置していたんですけれども、離床センサーでは今回ちょっと意味がなしていませんでした。なので、他のセンサーとか他のものを検討する必要性があったのかなと思います。環境的には部屋の出入りがステーションから見えない構造にあったのかなと思います。トイレから戻ったのが把握されていませんでしたので。なので部屋の出入り口またはベッドサイドのセンサーをちょっと考えたらどうかなということと、もしこの人が今後また転倒リスクも高いですから、部屋の転出ということもちょっと環境の対策になるのかなと思います。

   当事者、こちらは排泄という他の利用者のコールにより離れてしまいました。だけど利用者さんがナースコールをずっと鳴らしてたら、やはりこのままほっといていいのかなという気になったんだと思うんですね。それで見守りが必要な方の時にはもう離れないということを前提にしていただけたらなと思います。こことリンクしているのがこの関係者ですね。7時モーニングケア前。食前薬食事のための移動で、すごく繁忙状況にあったんじゃないかなと思うんですけれども、こちらの方もコール対応の協力、例えば業務内容の共有と優先順位を考慮して、対応している時には離れずに、違う方が早く行ける方が行けるように業務の調整をしながらということになるんですけど、こういったことが、医療安全管理者が関わると対策できますので、検討しながら対策していただけたらなと思います。

   家族側の主張からすると、認知症があることはわかっているのに、なんで骨折したのということとか、骨折したことがあるのになんで看てくれてなかったのということや、施設で治療費は払ってくれるのかなどを言ってくる人はいますよね。保障に関しては私たちの範疇ではないところで、弁護士さんに相談したりとかなるんですけど、家族さんからこう言われたからといって。すぐに申し訳ありませんでしたと謝罪するのではなく、ご心配かけたことに関しては、骨折したことのことだけではなくて、ご心配をおかけしてすいませんということは最初に謝っておいた方がいいんですけど、内容により、またこの保証に関してのことは、少しお時間をいただいて調査をさせていただきますというふうにした方がいいのかなと思います。施設側の主張としたら、身体拘束は原則禁止と言われています。でこの方は同意書でちゃんと説明もしてサインもされていた。で離床センサー設置がしていました。で注意義務の認識があったんですけど、その場から離れてしまったんですよね。なので本人、家族の尊厳を配慮した上で説明をしていくっていうことが必要かなと思います。あとは法的なところについて検討が必要です。本当に法的に問題はないのか、過失があったのかなかったのか、十分検討した上で対応が必要かと思います。

   この事例での学びは、身体的拘束が失われる利益よりも得られるメリットの方が大きいこと等を考慮します。安全を守るためには、利用者の特殊性を知って多方面で考えることが重要でした。利用者を取り巻く環境に目を向けてリスクを管理していきます。利用者の特性に応じた環境設定、これは皆さま発表した中で出てきていたんじゃないかなと思いますので、今日学んだことを実際に現場で活用していただけたらなと思います。

   拘束をしないとは何もしないことではありません。何をすれば安全が守れるかということを具体的に考えて行動していきましょう。ナースコールの設置位置やベッド、周囲の整理、安心感のある声かけとか、環境照明の調整など、日常の中でできることはたくさんあります。安全確保の方法を、自由を奪うことから尊厳を保つ工夫へと転換することが私たちの役割だと思います。

   本日のまとめです。身体拘束は原則禁止。高齢者虐待防止法、診療・介護診療報酬減算に基づく対応をしていく必要があります。実施する場合には三原則、切迫性、非代替性、一時性プラス記録義務。必ず記録に残して説明したものを同意書とともに保存保管しておく必要があります。損害賠償事例から学ぶ見守りやリスク評価の不足は、法的責任に直結していきます。チームでの合意形成と多職種協働が身体的拘束最小化を実現する鍵となります。拘束による心身の損害よりも、ここ一番大事なんですけど、抑制をしないことによる危険性が高いと判断された場合に限っては、患者、利用者及びご家族の同意を得た上で実施をしていきましょう。医療安全の基本は、リスクの予見・回避・軽減アセスメントを事前に必ず行っていきましょう。拘束をしない選択ができる職場風土の醸成ができたらいいかなと思います。私は医療安全管理者なので、病院や施設で研修することがあるんですけど、身体拘束をしてはいけませんと言っているのではなくて、するのであればこの三原則、この要件を満たしてるかはしっかり評価した上で、毎日外せるように評価を繰り返してPDCAを回すというらうにしていただけたらいいかなと思います。



<自己紹介>  初めての参加者を中心に自己紹介してもらう

 

【連絡事項】

・令和7年度 三方よし研究会 総会 令和7年6月19日(木)18:00~18:30

・第210回 三方よし研究会 令和7年6月19日(木)18:30〜20:30

 

○当番・会場

東近江介護サービス事業所協議会(施設部門・在宅部門) きいと ZOOM活用によるWebで開催

2025年5月6日火曜日

令和7年度 東近江圏域介護職員初任者研修のご案内

 令和7年度 東近江圏域介護職員初任者研修のご案内

介護の知識技術を学びたい・介護の仕事に興味がある方へ
東近江圏域介護職員初任者研修は、NPO三方よし研究会が運営する全日通学制の介護職員初任者研修だから安心です。医療・介護の現場で活躍中の豪華講師陣。即戦力が身に付きます!
ぜひ、この機会に研修会にお申込みください。





2025年4月17日木曜日

第208回 NPO三方よし研究会のご報告

 第208回 NPO三方よし研究会を開会しましたので、ご報告いたします。

◇日時:令和7年4月17日(木)18:30~20:30 
◇会場:近江温泉病院(オンライン開催)
(当番:近江温泉病院)

ゴール
○ボツリヌス療法および持続性バクロフェン療法(ITB療法)について学習する
○筋のこわばりが高く困ったこと、その時の対応を共有しボツリヌス療法および持続性バクロフェン療法(ITB療法)が選択肢の一つになることを知る。
○民間救急についての情報を共有する


【活動報告】パーキンソン病の方に対する短期集中リハビリテーション外来の紹介
発表者:前川遼太(近江温泉病院 理学療法士)



皆様、本日はパーキンソン病の方を対象とした当院の短期集中リハビリテーション外来についてご報告させていただきます。
札幌市研究会での学びを活かし、東近江市にお住まいの約300名のパーキンソン病患者様に対し、早期からの運動や体操指導の重要性を認識し、当院では保健所主催の「のびのび友の会」にて、座学と体操指導を実施してまいりました。
リハビリに関してお困りのことがあれば、お気軽にご相談くださいと広報活動を行った結果、2023年度は34名中2名、2024年度は24名中1名の方が当院の外来を希望されました。

外来開始までの流れとしましては、まず主治医の先生にご相談いただき、当院でのリハビリ実施許可を得ていただきます。その後、ご本人または保健所から当院外来にご相談いただき、紹介状をご持参いただいた上で、外来リハビリテーションが開始となります。
回数や頻度についてはご相談に応じますが、おおむね週3回、1回40分から60分のリハビリを1週間単位で実施し、明確な目標を設定します。1ヶ月後に効果を評価し、その後は徐々に回数や頻度を減らし、3ヶ月を目安に終了、またはモニタリングへと移行します。
当外来では、日常生活における目標達成と運動能力の獲得、そしてパーキンソン病の進行予防を主な目的としています。

症例紹介
5年前にパーキンソン病と診断された70代女性の事例をご紹介します。日常生活は自立されていましたが、急な方向転換の困難さ、足のつり、そして腰痛によるコルセットと鎮痛薬の服用が課題でした。趣味の畑仕事や山菜採りを、ご友人との旅行時にコルセットなしで楽しみたいという強い希望をお持ちでした。
当外来では、開始時週3回、1回60分のリハビリを実施しました。開始3週間で、目標としていた台所での転換時のすくみ足の消失、コルセットと鎮痛薬なしでのご友人との畑仕事や山菜採りの実現を目指しました。
リハビリ開始から3週間後には、方向転換時の不安定さがなくなり、歩行時の姿勢も改善し、背筋が伸びるようになりました。腰痛も軽減し、コルセットや鎮痛薬を使用せずに過ごせるようになりました。2ヶ月後には、念願の山菜採りやご友人との旅行も楽しまれるようになり、後日、採取されたわらびの写真が届きました。

このように、パーキンソン病の方々が日常生活で抱える困りごとや、どのような運動をすれば良いかといった悩みに対し、当院では丁寧な相談と集中的なリハビリテーションを提供しています。お困りの方やご興味のある方は、どうぞお気軽にご連絡ください。
以上で、活動報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【30分学習会】
ボツリヌス療法および持続性バクロフェン療法(ITB療法)の臨床的意義と効果について
発表者:嶋 綾子 先生  (医療法人社団 昴会 湖東記念病院)


本日は、脳卒中後の痙縮に対するボツリヌス療法と持続性バクロフェン療法(ITB療法)の臨床的意義と効果についてご説明させていただきます。

痙縮のメカニズム
運動制御には、興奮系と抑制系の2つの神経経路が重要です。例えば、柔らかいシフォンケーキを握る際、単に握るという興奮系の信号だけでは潰してしまいます。抑制系が同時に働き、適切な力加減で握り、口まで運ぶことができるのです。

脳卒中などにより運動神経が損傷すると、まず随意運動が麻痺します。その後、誤った神経修復過程で、脳からの正しい指令とは異なる「縮め」という誤った信号が過剰に筋肉に伝わるようになります。これが痙縮のメカニズムです。麻痺のある患者さんの2~4割に痙縮が起こると言われています。

痙縮に対する治療法
最新のガイドラインでは、痙縮に対する治療法として、ボツリヌス療法、神経ブロック、電気刺激療法、バクロフェン内服、ITB療法などが挙げられています。

ボツリヌス療法
ボツリヌス菌が産生する毒素を利用し、筋肉に注射することで神経伝達物質の放出を抑制し、筋肉の過剰な収縮を和らげます。効果は通常3ヶ月程度です。

ITB療法(持続性バクロフェン療法)
脊髄腔内にチューブを挿入し、お腹に埋め込んだポンプから持続的に抗痙縮薬(バクロフェン)を投与する方法です。内服薬と比較して、少ない量で効果が得られ、眠気などの副作用も軽減できます。ポンプの電池は約10年持ちますが、定期的な薬剤の補充が必要です。

臨床的意義と効果
ボツリヌス療法とITB療法は、以下のような臨床的意義と効果が期待できます。

関節可動域の改善: 筋肉の緊張が和らぐことで、関節が動きやすくなります。
関節拘縮の予防: 痙縮を放置すると関節が固まってしまう拘縮を予防します。
筋緊張の軽減: 過剰な筋肉の緊張を和らげ、姿勢の安定や改善につながります。
疼痛の軽減: 痙縮による痛みを軽減し、患者様のQOL(生活の質)向上に貢献します。
介助負担の軽減: 身体が動かしやすくなることで、介助者の負担を軽減できます。

治療の注意点
筋肉の突っ張りを利用して日常生活を送っている場合、筋緊張が和らぐことで一時的に不便を感じることがあります。また、ボツリヌス療法の効果は一時的であり、繰り返し注射が必要です。ITB療法は手術が必要であり、感染などのリスクも伴います。

療法士との連携
治療の効果を最大限に引き出すためには、理学療法士との連携が不可欠です。治療効果が出ている時期に、正しい姿勢でのリハビリや可動域訓練を行うことで、より効果的な改善が期待できます。また、筋肉の状態の変化や異常に気づいた際には、医師に情報共有をお願いいたします。

痙縮は治療可能な症状であることを患者様やご家族に早期に伝え、適切な治療につなげていくことが重要です。

ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。ありがとうございました。

【情報提供】
民間救急について
発表者:横田 和之様 (株式会社 かすたねっと)


この度は、民間救急についてお話させていただく機会をいただき、誠にありがとうございます。
私は11年前まで地域の消防本部に勤務しておりましたが、退職後、滋賀県で民間救急事業を開業いたしました。消防在職中に民間救急の存在を知り、全国46都道府県にある中で滋賀県には一つもないという現状を知りました。さらに調査を進める中で、民間救急車でありながら医療的な搬送が十分に行われていない実態を知り、「滋賀県でこそ、専門的な搬送サービスが必要だ」という強い思いから起業に至りました。

民間救急車は、正式には「患者等搬送事業」として、国土交通省近畿運輸局の認可を受けた一般乗用旅客自動車運送事業の一種です。消防機関で一定の講習を受けた事業者が、患者搬送事業者、通称「民間救急車」として運営されています。しかしながら、タクシー事業者と同一視されることも少なくありません。
そのような現状に対し、弊社では看護師と救命士が必ずペアで乗務するという体制を整えております。このような体制の民間救急事業者は、全国的にも数少ないと認識しております。現在、滋賀県内に彦根営業所、長浜営業所、栗東営業所の3拠点を構え、企画搬送車5台、車椅子対応車2台、長距離搬送車1台の計8台で、滋賀県と昨年開業した京都府を中心に活動しております。事務所には、アルバイト職員を含め25名の看護師が在籍しております。

弊社の民間救急車の車内は、消防救急車と同等の設備、あるいはそれ以上の資機材を備えています。例えば、輸液ポンプやシリンジポンプなども搭載しており、高度な医療処置に対応可能です。また、搬送用資機材も7種類を常備し、活動障害や発達障害のある方、高層階にお住まいの方など、様々な状況の患者様の搬送に対応できます。過去には、大津市の17階建てマンションから、呼吸器を装着された患者様を特殊な器具を用いて安全に搬送した実績もございます。
主な業務としては、滋賀県内全域はもちろんのこと、県外への転院や、県外から滋賀県への搬送など、年間を通して全国各地に対応しております。本年においても、関東や九州への搬送実績があります。陸路だけでなく、航空機や公共交通機関、新幹線を利用した搬送も可能です。
医療機関への通院や入退院の送迎に加え、この度、守山市社会福祉協議会様からのご依頼で、外出支援サービスも開始いたしました。外出や外泊の付き添い、外出・外泊中の定期的な訪問、関係機関や医療機関への情報提供など、連携を取りながら患者様の外出をサポートしております。

その他、イベント救護も行っており、過去にはG20サミットの要人救護、世界ラリー選手権の救護活動にも従事いたしました。来月には京都府内で開催される国際的なイベントの救護も予定されております。これらの活動については、県内3病院の救急車にも情報共有を行っております。

県や市からの委託業務としては、新型コロナウイルス感染症発生当初、横浜のクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号からの依頼を受け、約3,000名の方の搬送を行いました。現在、滋賀県内3拠点で活動しており、来年度を目途に福井県にも拠点を立ち上げたいと考えております。
以上、簡単ではございますが、民間救急サービスについてご説明させていただきました。ご清聴ありがとうございました。


【症例報告】
右被殻出血を呈し急性期から回復期、生活期という経過の中で持続性バクロフェン療法(ITB療法)の実施とリハビリテーションを併用することで良肢位の保持時間が延長し、家族との交流、社会的役割の再構築が可能となった症例
*息子さんからお父さんへのお手紙
発表者:理学療法士 中川めぐみ  作業療法士 冨田啓介 言語聴覚士 久貝千里(近江温泉病院)

※個人情報のため、掲載を省略

【グループワーク】
・筋のこわばりが高く困ったこと、その時の対応をどうしてきたか、どうしたらよいか検討(筋のこわばりが強く痛みが生じていた。お風呂などの介助が大変であった。痛み止めの薬を定期的に飲んでいた。リハビリを探していた。など)

【発表】
1G:


グループ1です。意識レベルの変動が多かった症例について検討しました。具体的には、強いこだわりによる行為の制限や清潔保持の困難さ、生活介助における課題、そして疼痛の出現が多く見られました。
これらの問題に対して、ストレッチングやマッサージ、ポジショニング、介助指導を実施しました。また、ご本人が可能な範囲で自主訓練を行い、現状維持を図りました。
今後の課題としては、今回の学びを踏まえ、バクロフェン療法やITB療法といった治療法をより早期に提案できるかどうかを検討すること。また、既にこれらの治療を受けている方に対して、医師との間で情報共有(評価や効果)を密に行うことが挙げられました。さらに、これらの提案をより身近に行えるよう、提案の手順(誰に情報を伝えるべきか:ケアマネージャー、医師など)を明確にすることも重要であるという結論に至りました。以上です。

2G:


グループ2は、鍼灸師と民間救急の方計9名で構成されました。痙縮と拘縮の違いについて理解が深まったという意見がありました。鍼灸師の先生からは、刺さない鍼治療や、微弱電流を流すことで症状が軽減する治療法があるという情報提供がありました。民間救急の方からは、病気の既往歴は把握しているものの、痙縮や拘縮に関する情報がないため、安全に配慮した移動を心がけているという共有がありました。また、数年前に三方よし研究会でボツリヌス療法がテーマとして取り上げられたことがあったものの、病院の負担などを考慮すると、全ての患者に提供するのは難しいという意見が出ました。
まとめとして、一人でも多くの患者が円滑な生活を送れるように、今日の発表のような良い症例が増えることを期待するという意見がありました。


3G:

三グループの発表です。ケアマネージャーからは、退院カンファレンス直前だけでなく、入院中からの情報共有の重要性、若年患者の生活支援の難しさ、入院中からの長期的な関わりの必要性、チームケアの重要性が指摘されました。
病院スタッフからは、拘縮の強い患者の介護負担軽減のため、治療効果への期待が述べられました。東近江総合医療センターからは、パーキンソン病のオンオフ症状によるリハビリの難しさ、リラクゼーション運動療法中心のリハビリ、以前勤務病院での痙縮治療の効果例、ロボット装着リハビリの経験、診療報酬による治療普及への期待が示されました。

花田先生からは、薬物療法だけでなく、急性期から維持期、専門職だけでなく生活の中でのリハビリ視点の重要性が強調されました。
近江温泉の石黒先生からは、若年発症の患者に対し、急性期からの早期介入の重要性、家族関係、リハビリでの拘縮懸念から医療介入の必要性を感じたこと、多職種連携の重要性、先を見据えた治療の必要性が述べられました。現在の目標達成後も、療養病棟で治療継続し、今後の目標を模索していく方針が示されました。
最後に、民間救急の利便性とともに、費用が高いという意見が出ました。救急車の費用についても言及があり、費用対効果について考慮する必要性が示唆されました。




4G

四グループです。近江温泉病院の前川です。グループでは、筋緊張が高くて困っている状況について話し合った結果、ほぼ全員が常日頃から困っているという認識で一致しました。過去には、重度の筋緊張により褥瘡が生じ、最悪の場合には切断に至るケースもあったと聞いています。
今回の症例を通して、自分の意図しないところで強い筋緊張が起こることは、患者さんにとって非常に辛い経験だろうということを共有しました。
極端な意見として、脳卒中や早期に筋緊張が高まると予想される疾患の場合、全員に早期からITB療法を施行することで、異常な筋緊張のみを抑制できるのではないかという意見も出ました。早期からのITB療法が良い結果を示す例も一部あるようですが、やはり費用面が課題となるという点で意見が一致しました。
今回のケースを踏まえ、筋緊張の高い症例については、相談という形で嶋先生にご相談させていただくという結論に至りました。

指定コメント
嶋 綾子先生、(医療法人社団 昴会 湖東記念病院)

4チームの皆様が、急性期、回復期、生活期といった様々な段階において、患者さんの病状、ご家族の状況、そして痙縮のような後から出てくる問題について共有することの重要性を強調されていたのが非常に印象的でした。
脳卒中という病名にとらわれがちですが、痙縮もまた治療の対象であるという認識が広まることの重要性を感じておりましたので、皆様がその点に言及してくださったことは、大変嬉しく、ありがたく思いました。
東近江、ひいては滋賀県東部において、切れ目なく様々な段階で助け合えるチーム医療の仲間でありたいと考えております。以上です。

横田 和之様(株式会社 かすたねっと)


民間救急について、費用面のご意見をいただきました。運賃は認可制で、介護タクシーとは料金体系が異なり、弊社の場合は出庫から帰庫まで一律料金です。そのため、金額が高いと感じられるかもしれません。
消防の救急車は、1件あたり約4万5千円の費用がかかると言われています。全国的に、入院不要な患者からの費用徴収の動きもあるため、民間救急への公的補助も検討されるべきだと考えています。現在、前原市や長浜市では、重度障害者・児の移送費補助が進んでいます。
関係者の皆様のご理解が進むことを願っております。今後ともよろしくお願いいたします。

花戸先生:
介護タクシーでは対応が難しい、重度な方の搬送こそ民間救急の役割だと考えています。在宅でがん末期の方がポンプを装着しながら自宅に戻られる際にも、お願いしたことがあります。このように必要不可欠なサービスですが、公的な援助が十分でない現状をご理解いただければ幸いです。今回の外出支援が実現できたのも、様々な関係者の皆様のサポートのおかげです。ありがとうございました。

三方よし研究会メーリングリストについて


花戸先生:三方よし研究会では、月1回のオンライン研究会で顔の見える関係を築くとともに、メーリングリストを活用して日々の情報交換や症例報告を行っています。まだメーリングリストに参加されていない方は、三方よし研究会ブログのトップページからお申込みください。


【連絡事項】 ・第209回 NPO三方よし研究会 令和7年5月15日(木)18:30~20:30

上田さん:令和7年5月15日に、昴会主催、能登川病院会場にて三方よし研究会を開催します。今回は久しぶりに、現地参加とオンライン参加を併用したハイブリッド形式で実施します。会場は能登川病院隣の「なごみ」2階です。病院にお越しいただければご案内しますので、お時間のある方はぜひお越しください。
内容ですが、今回は医療安全をテーマに、当院の医療安全認定看護師が中心となり発表します。特に、在宅など様々な現場で話題となる身体拘束について、勉強会や判例紹介を行い、最終的にはグループワークを通じて、在宅医療や医療機関など様々な立場から学びを深めたいと思います。以上です。