三方よしカレンダー

2018年11月16日金曜日

第132回三方よし研究会のご報告

第132回の三方よし研究会が開催されましたので、ここにご報告させていただきます。


132回三方よし研究会(第30回ぼちぼちねっと竜王 共同開催)
日時 平成301115()18:3020:30
会場 竜王町公民館
当番 滋賀家庭医療学センター、ぼちぼちねっと竜王

【情報提供】
 交流会「輪つなぎ」11/22()19:0021:00永源寺コミュニティセンター(実行委員会花戸先生より)

 風船バレー実施報告(滋賀県作業療法士会石黒さんより)
〜2分ビデオを見ながら〜
今年の最高齢は100歳!
優勝は三方よしファイターズ。



(司会を小串先生から瀧川さんにバトンタッチ)


【活動報告】
『竜王町における個別訪問歯科指導事業について』
ぽちぽちねっと竜王 竜王町国保険歯科診療所 歯科衛生士
平井由花さん

・運動機能については90%の方が自覚症状あるが、口腔機能については80%の方が自覚症状ない。
・介護保険でも介入できておらず、ケアマネジャーの認識も少ない。そのような中、竜王町における口腔情報提供システムでは、要介護2以上の方へは歯科保健センターが介入している。
・個別訪問歯科指導の流れの説明。口腔情報提供書を使い、訪問口腔調査で口腔内をチェック、本人家族に指導ししている。また咀嚼嚥下など口腔機能低下などの評価、食事ではブローイング訓練、唾液腺マッサージなど口腔衛生指導につなげている。
・やはり多職種との連携が大事、ノートを利用している。利用者はサービスを利用者でもあるため、サービス提供事業者との連携に心がけている。
・介入の結果、口腔清掃自立度では、歯磨きについて自立58.8%、義歯洗浄の自立者60.0%と高まった。ただ口腔衛生状況では、不良の割合につき歯は74.2%、義歯は63.6%と依然として高い状況にあり、自分任せではいけない。その他、咀嚼困難、虫歯の多発、誤嚥性肺炎、義歯の不具合などのリスクがある。
・口のトラプルは虚弱のサイン。オーラルフレイルはフレイルにつながりやすい。
・口の不調→かみにくい→柔らかいものを食べる→口腔機能低下→食欲の低下→低栄養(悪循環)。
・症例提示 83歳の方。H16脳梗塞、右麻痺、要介護5の方が、介入結果、咀嚼機能や栄養状態が良くなった。またアルツハイマー型認知症の91歳の方で、要介護5から3へ軽くなり、体重増加した方がいる。
・まとめ 相変わらず要介護高齢者の口腔衛生状況はかなり悪い。積極的に介入することによりフレイル予防、栄養状態の改善を認める。多職種での連携が必要。
「なんぼでも呼ばれられる。嬉しいわ。」「102歳、元気!」との患者さんの声。


【学習会】
『‘滋賀家庭医療学センター’ってなんなのさ!〜地域で家庭医/総合診療医を養成する実践報告』
弓削メディカルクリニック 滋賀家庭医療学センター 診療部長
ジョンホプキンス大学公衆衛生大学院 修士課程
中村琢弥さん

・弓削メディカルクリニック〜SCFMの歴史を紹介。1995年に開所。2010年に当院の教育部門を改称拡充し「滋賀家庭医療学センター」として新たに開設。日本トップクラスの歴史/実績/規模を誇る家庭医療教育診療所。
・家庭医の専門医って?新専門医制度が2018年度より施行。初期研修後は全19ある基本専門領域のどれか一つの選択が必須。その基本専門領域に「総合診療専門医」が入った。
・よくあるジェネラリスト後期研修・専門医についての疑問について。家庭医療専門医は201710/31現在673名。後期研修は500ちょいある。
・どんな研修内容?内科研修6ヶ月以上、小児科研修3ヶ月以上etc… でも原則3〜4年のプロクラム。
・本センターが目指す家庭医療とは?普通の家庭医とは?特別なスーパーマンでなくても到達できる普遍的かつ高い医師。
・日本プライマリケア連合学会の求める家庭医のアウトカム領域とは。
・弓削メディカルクリニックでは、家庭医によるグループ診療体制で多職種連携が充実。
・プロクラムの様子 総合診療専門医プログラムは3年制。豊富な定期的レクチャー。ビデオレビューはずっと行っている。つい最近当センターかSP部門大賞を受賞している。
・実技試験にも工夫が凝らされている。
・また360度評価、他科転向/開業前研修、学会発表、地域での出前講座も。
・京都でのプライマリケアに5/1518センター長もいくので、よければ参加を。
・私が選ぶ此処の良さとは ①歴史に裏打ちされた地域の信頼/他職種連携。②Off学習時間確保だけでなく働き方改革実践。③家庭医療の質と教育へのこだわり。


【事例紹介】
『そんなにコールせんでも...〜心配性のご家族に多職種連携でアプローチ!〜』
弓削メディカルクリニック 滋賀家庭医療学センター 医師
喜多理香さん

症例 8○歳 男性 アルツハイマー型認知症、心臓弁膜症、慢性心不全、慢性心不全、骨髄異形成症候群、廃用症候群、喫煙歴長い、内服あり、ほぼ全介助の方、要介護3の方。 


【グループワーク】
『心配性や理解不足で、頻回コールのある患者家族に、チームとしてどのように対応できるか』
(話し合うポイント)
・心配の原因は?医学的に、介護面で、個人的な、問題点は?
・頻回コールって何がダメなの?
・頻回なコールを減らすにはどうすれば良い?
・医療・介護関係者間でどのように情報を共有すれば良い?

(引き続きの司会:中村先生)

(お題)


(グループワーク風景)


【発表】
Jグループ)
・山口から初めて参加させて持った医師です。
・心配の原因:今の認知機能が大丈夫かというところも含めて精査する必要がある。
・頻回なコール:介護負担があるようならレスパイト等も考えてはどうか。
・ここの凄いところは呼ばれたらすぐ集まる!羨ましいなと思った。
・経済苦についても今後は話し合っていく必要がある。
・単に集まるだけでなく、職種間で話し合うということが重要。
 

Iグループ)
・山口から来ました医師3年目です。
・デイの関わり多いところで、職員に言い方に問題あるのでは?
・奥さんだけでは介護限界。要介護3でデイ3日とケアマネジャーの関わりだけでは...また奥さんの理解不足もある。
・頻回コールの問題点:大きな問題はないかな?と思うが、あまりに頻回だと狼少年ではないけれども本当の緊急時に困る。
・減らすためにはケアマネジャーの関わりや訪問等で、職種間での情報共有、連携が重要ではないか。

 Hグループ)
・心配の原因:経済的な問題について、奥さんはお金のことを相談しにくいのではないか?また聞いてほしい、寂しさがあるのでは?
・頻回コールの問題点:何回も同じ医療機関では難しいし、スタッフのマンパワーの問題もあるので。
・コールを減らすには:奥さんの不安を軽減するため、コールの基準を作ってはどうか。勝手にサービスを断るとのことだが,どのくらいの負担が発生するのかの丁寧な説明も必要ではないか。
・情報共有:ケアマネジャー中心に多職種で話し合う必要性がある。

(Gグループ)
・心配の原因:経済的な心配に病気への理解不足もあるか。電話することでの安心感も。
・頻回コールの問題点:やはり狼少年ではないが、他に必要としている人への対応に影響が出てくることから。
・減らすには?:奥さんの他のコミュニティは?また奥さんの不安への処方も必要では。
・情報共有:ヘルパー、病院お互いに把握できるよう、連携ノートの活用など。
・経済苦について:病院に電話するということはお金かかること、そのへんの理解の促し。



Fグループ)
・心配の原因:奥さんの他、同居の息子の状況は?娘の状況は?専門職でも経済苦まで入っていけないので、行政に入ってもらう必要性。どこまでの経済苦かわからない。
・頻回コールの問題点:マンパワーの問題、また何が本当かわからなくなるため。
・減らすには?:奥さんの不安を取ってあげる。ケアマネの介入など訪看やヘルパーも入れるように。
・情報共有:サービス担当者会議の活用など。
 

Eグループ)
・心配の原因:高齢者は一回聞いたくらいではわからないことを理解し、繰り返し説明してあげることが大事。息子や娘に相談することも必要では。その関係性は?
・頻回コールの問題点:何回もでは緊急の際に遅れる可能性あることから。
・減らすには?:訪問看護での導入は?緊急加算つけると24時間対応もしてくれる。実体験の方もこのグループにはいたので。

Dグループ)
・心配の原因:近くに相談できる人がいないこと。また経済的な問題について、ケアマネジャーから包括へつなぐ必要がある。
・頻回コール:コールの背景はしっかり把握しておくべき。病院へ行きたい?話したいだけ?
・減らすには?:フローチャートのようなものを作るのはどうか?
・情報共有:通所サービスからの連絡が問題提起だけというのは問題?。提案ノートの見直し。区分変更。月1回の訪問看護。奥さんに際する介護保険の申請も検討では?食事=栄養状態の把握…デイから。思いきってケアマネジャーを違う人に変更するのもどうか?

Cグループ)
・心配の原因:妻の心のケアを軸にして話し合った。奥さん一人に集約してくるというのは判断がしにくいだろう。ボールを受けてしまうと話したくなる心理から。娘等の巻き込みも必要では。金銭面は行政の介入も必要。
・頻回コールの問題点:情報が上がってくるというメリットはあるので、ないことの方が危険。
・減らすには?:職種間での顔の見える関係、連携がやはり大事。

Bグループ)
・心配の原因:入退院医繰り返しもしているし、奥さんも緊急性の判断が難しいのでは?
・どうやったら安心してもらえるか?:「チームで支えてますよ」ということを見てもらうこと。娘や息子も同席の場で担当者会議の場をみせる。大丈夫だよ、急がなくてもいいよと伝え、会話を増やしていくことが大事。介護者の気持ちは専門職では分かり切れないところもあるので、家族の会など同じ立場の人での話の場の活用も(たまたま今日この場でそのような場があった)。

Aグループ)
・心配の原因:ドクター行きすぎでは?どうしてそんなに行くの?ドクターとCMの連携ができていない、サービス担当者会議やケアマネジャーから積極的な働きかけが必要。
・要介護3ではない?全介助で寝たきりなので区変し、要介護5になりサービス検討すれば実費や不安も減るのでは?
・生活困窮については地域包括支援センターへぜひ相談を。
・娘さん、息子さんどうしているんだろう?知っていかなければならない、個人情報の関係もあるが。町内の関わりも必要。

【クロージング】
弓削メディカルクリニック 滋賀家庭医療学センター 医師 喜多理香さんより
(その後
・医師間での症例共有、対応の均一化
・医師と担当ケアマネジャーとでのフランクな話しあい
・大事なことは、妻だけでなく息子にも共有するようにした。
・連携ノートでの密なやりとり
・身障手帳の申請での経済負担軽減
※「複雑な事例に相対するには」海外で出されている対応モデル(スライド投影)も使い、問題解決ではなく安定化を目指す対応を検討した。


【コメント①】むべの里 主任介護支援専門員 石原早苗さん
・家族の中には、褥瘡と知っていても、これが褥瘡だとは知らなかったという意見や、ターミナル期であってもイメージができない家族さんを見てきた。ご家族は経験や価値観を持っている。専門職の中では当たり前のことでもご本人ご家族にはそうでないこともある。それぞれの家族に合わせる必要がある。その人にどのように話したら分かるか。写真や動画など、理解してもらえるような工夫も必要。複数介護している場合もあるので、家族間での共通理解が進むような対応も必要。「何かあればいつでも連絡してくださいね」と言ってしまうが、「何かって何?」。「おばあちゃんが30時間起きないんです」との相談を受けた。このケースの場合は訪問看護への相談を依頼した。困っているときには目の前の人に相談してしまいがちだが、これは〇〇に相談してねと明確的に伝える、その積み重ねが大事なのではないか。また役割分担も大事だがその役割だけではなく他もカバーする気持ちも大事。奥さんは話し相手がいなかった? デイの湿疹の伝え方も足りなかった、セラピーの部分まで説明する必要があった。患者さんやご家族の言葉の裏に何が潜んでいるのかを考えながら今後も対応していきたいと思う。


【コメント②】竜王町地域包括支援センター 木下和子さん
この事例は、ケアマネジャーのアセスメント力、そこからマネジメントしていくことが大事だと思った。 経済苦などで必要なサービスが入らないといったことがあるので、多職種でみていくという意識は必要。百聞は一見に如かずの言葉の通り、見てみないとその空気感も分からない、包括も実際に積極的に関わっていきたいと思うのでよろしくお願いいたします。


【初めての方の紹介】
今回は多数の方が初ご出席! 紹介させて頂きました。

















【次回】
133回三方よし研究会
平成301222日(土)
16:0018:00

当番 東近江医師会、近江八幡市蒲生郡医師会
場所 近江八幡市立総合医療センター
(その後は懇親会もありますので、乞うご期待!)

次回も多数の方のご出席をお待ちしております!




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