三方よしカレンダー

2020年9月18日金曜日

第153回 三方よし研究会開催報告(WEB開催)

153回の三方よし研究会をZOOMを使ったWEB利用にて今回も開催しましたので、ここに報告させていただきます。


すっかりZOOM開催も定着し慣れてきた感が...


日時 令和2917() 18:3020:30

会場 ZOOM活用によるWEB開催

当番 近江八幡市立総合医療センター

 

【ゴール】

〇摂食嚥下支援加算を正しく理解する

〇食べることを支えるためにできることを、それぞれの立場で考える

 

【情報提供】

104()13:0015:00多職種キャリアアップ研究会のお知らせ(楠神渉さん)


今回の司会は近江八幡市立総合医療センターの山田明美さん


【挨拶】

近江八幡市立総合医療センター 宮下浩明院長

巷はコロナばかりだが、当院でも4月から7月までで収益率はやはり落ちている。ただ実はコロナはあまり心配していない。心配しているのは人の心。誹謗中傷など困った状況が出ている。この三方よし研究会にて今一度多職種が一体となっていくきっかけになればいい。


 

【学習会】

2020年度診療報酬改定「摂食機能療法見直し」

「みんなで取り組む誤嚥性肺炎予防」

近江八幡市立総合医療センター リハビリテーション技術科 森田曜言語聴覚士


・なぜ誤嚥性肺炎予防が大事?H29厚生労働省資料より、死因数の原因として肺炎が増加傾向にあること。

・これからの超高齢化社会においては予防が大事。

・それには二つの連携が大事。

・まず①多職種連携が大事。狭義のリハビリ(嚥下リハビリ、ポジショニング)だけでは追い付かない。また栄養の嚥下障害患者を良くするのに必要な理想体重は連携しあわないと得られない。不完全な状態でのリハビリでは状態を悪くしてしまうこともありうる。

・改善のためには 栄養管理・リハビリ・口腔ケア3つの質を高めること。

・いきなりリハビリではなく、みんなでリハビリ

・次に②地域連携。入院してからの改善は困難。キーワードは治療よりも予防。早期発見が大事。

・当院では2014年から摂食嚥下チームとして開始。

・歯科医師との連携強化として~口腔ケア回診を実施し湖東歯科医師会から来てもらっている。

2015年度からの取り組みの中で、院内発症の誤嚥性肺炎患者を調べた結果、38名、窒息3名いることが分かった→新しいアプローチが必要。

・原因として、口腔ケア時の水分を誤嚥しているのではないか。また吸引に対する意識が不十分なのではないかと仮説を立て検証していった。

・水を使用しない口腔ケアジェルを20167月より使用し始めた。

・口腔ケア前後の口腔内細菌数を測定し比較した結果、口腔ケア回診直後に測定しても細菌数にバラツキあり

2017年アクションとして、どうすれば細菌数を確実に減らすことができるかを考えた。

・口腔ケア後に、口腔ケアウェットティッシュでのふき取りを追加=吸引+ふきとり。

2018年検証により、今回は細菌数が減っているという結果がでた。

・一般的なやり方では 吸引+ガーゼふき取りなどが大切。

・今後は誤嚥性肺炎そのものをいかに予防していくかが課題。

・仮説として、ケアの質の向上と標準化が大事なのではないか?

・現在の取り組みとしては多職種との取り組みに力を入れている。

・今年度より診療報酬としても、連携により摂食嚥下リハビリテーションの評価加算がつくことになった。

・これまでも看護師等との連携はできていたが、今後は薬剤師・管理栄養士との連携強化が大切と思っている。

・リハビリを考慮した栄養管理と栄養量を考慮したリハビリ。機能を改善させる栄養管理が大事。「栄養ケアなくしてリハなし」若林秀隆先生

・今後の展望として、当院だけでは困難、他病院・他施設とどのように協力していくかが重要。



(質問)

・多職種連携の上で、薬剤師の果たす役割とは?

→嚥下を良くする薬などの面から考えることなど、たくさんある。

・ケアマネさんが入院時情報連携書の中で口の中の状態を書いていることも多いので、その入院前の情報の意義については?

→入院前の情報があると見立てが立てやすいのでとても大事に思っている。

・今の摂食嚥下チームには薬剤師さんは入っている?

→今は入っていない。今後のためにも今回の情報提供となった。


【事例提供】

近江八幡市立総合医療センターにおける、言語療法士の関わり

「誤嚥性肺炎を併発した脳血管疾患の既往のある患者」

近江八幡市立総合医療センター リハビリテーション技術科 加納・森田言語聴覚士


<事例>

78歳。要介護4。妻と二人暮らし。次男は自宅向いに在住。2018年まではグランドゴルフをしているなど生活を楽しまれていたが、脳卒中後ADL低下、回復期病院を経て自宅退院。デイ利用していたがADL低下で3月より老健施設入所。嚥下困難感等あり入院されている方の今後について。

<課題>

・誤嚥性肺炎の棋院に対して対応は困難であったのか

・在宅で支援できることはあったのか

・入院中にもっとできたことはあったか

・本人の意思尊重、家人の思いについて

「食べたいけど食べられないなら迷惑かけたくない...転院でよい」

「何も食べずに胃瘻で延命はかわいそう。でも自宅に帰してあげたい」

 


【情報交換】

テーマをもとにグループワークで多職種が意見交換を行う。

 

【テーマ】

「食べる」機能が落ちてきた方を在宅でどう支えるか

入院する前にどのような取り組みをするべきだったか

それぞれの立場で、在宅での「食べる」をどのように支えることができるか

 

【各グループ発表】

(1グループ)

・誤嚥性肺炎はこじらせるとなかなか治りづらいため、最初のちょっとしたキッカケ、噛みづらさであったりのサインを見逃さないようにすることが大事。

・在宅に戻る前に、「いざという時どこに相談したらよいのか、どこにつないだらよいのか」を確認しておいて戻れたらよい。

・今回であれば老健→病院など、バトンをつなぐように情報の連携が大事。

・好きな食べ物等、本人の嗜好や思いをしっかり把握理解しておくことが大事。


(2グループ)

8月にケアマネ定期会議にて嚥下口腔機能の研修を行い「やはり私たちもこのような勉強をしなければならないな」といった刺激と自覚を持ってもらえる機会はよかった。

・在宅のケアプランに口腔内の把握をキチンと入れてほしい。

・仙台でも在宅での支援では栄養の専門職の存在は大きい。訪問看護さんも活躍している。栄養連携が大事。

・自宅でなら胃瘻しかないのか?との不安もある中で、管理栄養士の指導で訪問看護師が「肉じゃがだめなら豚肉シチューね」と工夫し、薬剤師がPEG管理をしながら在宅生活を送っている人もいる。まさに連携の威力を聞かせてもらっていた。


(3グループ)

・老健、急性期、在宅と食支援を考えた今回の事例で思ったのは、病院から在宅へ「こうしてください」との指示がある一方で在宅側での希望もあり、そのすり合わせが大事だということ。


(4グループ)

・医療機関として本人の食べたい意思を尊重し可能な範囲で訓練を行い、在宅では地域の受け入れ状況もあるが歯科衛生士や訪問看護師などの連携も取りながら本人の食べたい意思を最大限尊重できる環境を整えることが大事。

・多職種での顔の見える関係が大事。専門職に加え家族も含めて。


 (5グループ)

・入退院連携では、いかに多職種と交われるかだと思った。このケースでは老健とももっと連携できなかったかと思う。特養などで連携がうまくできているところもあると聞いている。

・退院できたケースでもいざというときにはスペシャリストが駆けつけられるといい。

・今回手術して大変に思ったこととしてACPがある。コロナで面会がままならない中で自分が間に入って話を聞いてすすめた。もっと在宅の方々と交われる(電話でも)連携ができればと思う。


(6グループ)

IT企業の方からは、今回の話は専門用語があって難しかったとの意見があった。

・自分が看取られる側になったら、食べたいものを腹いっぱい食べて死にたいよねとの話から、やはり食べることは生きる楽しみであり、それを奪われることのジレンマがある。そのために信頼関係を作りながら連携し、たべさせる食べさせないを専門職がしっかり判断していくことが大事ではないか。


( 7グループ)

・専門職が多かったため栄養管理についての話が多かった。

・この事例ではもともと厳しい状態で入院したのだろうし、病院では回復のためかなりの頑張りがあっただろうが大変だったろうと思う。なので入院前から管理が必要。

・糖尿病もありリスクが高い方で、体重が減った段階ではもう遅い、もっと早くからの介入が必要だったかもしれない。在宅では油やバターなどでカロリーを増やす介入が必要。

・脳卒中を2年前されているので、その段階で見通しの話はあったのだろうか?実際に食べれなかった際の希望を聞いておく必要があった?

・ギアチェンジの段階がある。その判断を誰がするか、やはり医者がすべき判断をキチンとしていき、関係者が集い本人の食べたい意思を中心に連携していくのがいいのではないか。

・身内に誤嚥性肺炎の方がいて、食事形態の指導がなかった、医療者に伝えてもわからないしとの勝手なあきらめもある?

・在宅に帰ってからどのようにサービスに入っていくかは、やはりケアマネジャーにつないでもらうのがいいのではないか。


【コメント】

●居宅介護支援事業所赤煉瓦の郷 横木薫介護支援専門員

・病院として様々な取り組みをしてもらっているなとの印象を受けた。

・在宅の方が退院するときに、食形態や細かく丁寧に説明しサマリーもらえるので、退院直後は連携するが、その後ADLの向上度はよく分かるが、嚥下評価は難しいなと思っている。PTOTは多いがSTさんがあまりいらっしゃらないため、嚥下の評価やリハビリはわざわざ入院してというのも家族にとっても敷居が高い。悪いなる時は食事を減らしてしまうが、実際の評価をしてもらえるルートがあるとよいなと思う。



●ぴーまん食楽部 川上かね子管理栄養士

・口から食べる支援はぜひしていきたい。今でもちょっとずつだがクリニックや診療所、薬局、市町の保健センターから訪問したりしている。毎週月曜日に開催している無料の「栄養で三方よし」相談会でも携わっている。ちょっとずつ利用が増えている。

・低栄養と過栄養が混在しているのが在宅だと思っている。住民さんにも日頃から体重管理だったり家族に協力してもらえる栄養指導を啓発している。

・1か月に2キロ痩せたり続けて2食食べられない場合はすぐに受診をすすめ、できるだけ入院しなくていいようにしている。今回の例は在宅は難しいが、在宅の栄養士にはなかなか病院のサマリーが届かないので、今後病院の栄養士とも連携して在宅生活を支えられるようにしたいので、今後とも連携をよろしくお願いいたします。


【自己紹介】

初参加 2名(言語聴覚士)

 

 【次回】

154回三方よし研究会 令和21015()18:3020:30

当番 わたむきネット


今回も多数のご参加、ありがとうございました!

ここまで読んでいただきありがとうございます。

また次回もお待ちしております!