三方よしカレンダー

2024年2月15日木曜日

第194回三方よし研究会のご報告

194回 三方よし研究会を開催しましたので、以下の通り報告いたします。

◇日時:令和6215日(木) 18:3020:30
(当番:日野町・日野記念病院 )


○ゴール
地域とともに専門職が取り組めること
認知症の人にとって自分らしくととは 

【情報提供】 
3月の市民公開講座について:楠神


NPO三方よし研究会市民公開講座上映会を、3月10日(日)13301515(開場1230)に東近江市あかね文化ホール大ホールで開催しますので、ぜひご参加ください。また、メーリングリストに上映会のチラシを掲載しますので、SNS等で皆様からも案内していただけると幸いす。



【ごあいさつ】
日野町長 堀江和博 様
本日は医療福祉連携の三方よし研究会を日野町で開催いただきまして、ありがとうございます。


小串先生はじめ皆さまには、日頃よりご協力いただいており、ありがとうございます。能登半島地震には支援に私も参りました。現地では直接的な死亡より災害関連死が多くなっております。そのような環境の中、やはり少し抽象的な表現になりますが、孤独をいかに防ぐかが大切だと思います。一時避難所から仮設所に移る前に、2次避難で金沢市内の会館に移動しています。衛生環境も整えながら、ご尽力いただいています。そのような中、このような各専門職・団体等の連携を深める研究会は意義のあるものだと思いますので、よろしくお願いいたします。


【30分学習会】

認知症患者の初診時の診療について 日野記念病院 山田 伸一郎 先生私は2004年に就任しまして、認知症外来を担当しています。認知症の定義は、まず認知症は病名ではなく、症候群です。睡眠薬を飲み過ぎた、アルコール飲料を飲みすぎたなどで同様の症状がみられても認知症ではありません、多くの認知症は時間をかけて進行していきます。脳の機能が全体的に低下していき、生活に支障があることで認知症と診断されいます。          せん妄でも同様の症状がでますので、注意が必要です。

我が国の認知症患者は約600万人となっており、国民20人に1人と増えています。これは高齢化が最大の要因です。一番多いのはアルツハイマー型認知症で、他には脳血管性認知症、レビー正体型認知症、前頭側頭葉型認知症があります。

この4つの認知症については、なかなか治療が難しいですが、治せる認知症があります。治せる認知症は全体の1割であり、該当する方を見つけて治療することが大切です。
甲状腺機能低下症、正常圧水頭症、慢性硬膜下血種、アルコール依存症、ビタミンB1・B12の不足、うつ病、薬剤によるもの、てんかん、せん妄などがあります。ビタミンB1、B12の不足:3食べている人は大丈夫です。
認知症の最大の危険因子はお酒です。若いころから飲んでいると、発症するリスクが高くなります。

最初に認知症かと受診されたことは上記でないか確認した上で、検査を続けます。
認知症には中核症状と、周辺症状があります。認知症により記銘力、遂行機能低下など欠けていってしまうものがものが中核症状、これは薬では治せないので、介護などサポートすることで症状を抑えます。それに対して周辺症状は妄想、幻視や暴力などがあります。

診察時には中核症状と周辺症状を分けて聞き取ります。例えば暴力があるときは穏やかになる薬を処方します。
ここまでを踏まえて、実際物忘れ外来での初診患者の診察手順を説明します。最初に認知テストを実施します。

まずは内的な姿勢を整えます。高齢者をリスペクトして、尊敬と親しみを込めて接する。認知症患者さんは待てないの待ち時間の短縮を心がけています。1330からの診察開始ですが、実際は13:00から診察しています。
診察室に入られたら、まず歩き方のチェックをします。
アルツハイマー型認知症の方はさっそうと歩かれます。運動障害はないんですね。それに対して、パーキンソン病、正常圧水頭症は小刻み歩行などがみられます。
また、一人か家族同伴かも大切です。一人で来た人は認知症でない場合が多いです。
このように診察前にある程度、推測することができます。

最初はオープンクエッションで、例えば「今日はどうされましたか?」などと質問します。物忘れ外来に来ているのに、認知症とは異なる、腰痛があってなどと話し始められる方は認知症であることが多いです。逆に自分から最近物忘れがあってと、相談に来れる方は認知症ではないこと、また非常に軽度な状態であることが多いです。

次に家族構成について今、何人家族ですか?と質問します。
すらすら答えられたら認知症はほとんどなく、子供や孫の数が曖昧になると、認知症と推測されます。
既往症と嗜好、また持病や薬剤も把握します。飲酒・喫煙は認知症の大きな危険因子ですので注意が必要です。
そのようなことを確認した後に、身体所見をとり、その後に検査をおこないます。
病識のない方には、今日は「健康診断です」などと説明します。
認知症の疑いのある場合は、長谷川式テストの他、採血、BNP、HbA1c 甲状腺機能、胸部レントゲン、心電図などを行います。
周辺症状があれば、緊急性が高いです。暴力がある、徘徊するなどはメマリーなどの、大人しくなる薬を初日から処方します。それから、できるだけ早くに介護サービスを利用できるようにします。
認知検査の後、認知症の可能性が高ければ頭部MRIまたは頭部CTなども実施し、投薬を検討、生活指導など行います。
認知症が否定的であれば、経過を観察します。
以上が最初のステップとなります。

 【事例紹介】

「日野町における認知症施策の取り組みについて」 ~認知症キャラバンメイトとともに~ 日野町地域包括支援センター 長野芙沙恵 様 社会福祉士


 

日野町の現状は総人口20,858人、高齢化率31.38%と高齢化が進んでいます。
日野町の認知症施策の主な取り組みは、①早期発見と対応の充実、②認知症に関する普及啓発と認知症本人の社会参加の場づくり、④認知症予防活動の推進です。
9期の在宅介護実態調査によると、介護者が不安に感じる介護では「認知症状への対応」が25.7%と最も高くなっています。

②の認知症に関する普及啓発と認知症本人の社会参加の場づくりでは、日野町では35名の認知症キャラバンメイトさんと共に取り組んでいます。もっと熱心に活動したいとの意見があり、日野町認知症キャラバンメイト連絡会として組織化して取り組んでいます。
23か月に1回、連絡会で話し合いを進めています。活動内容は、①認知症キャラバンメイト連絡会での話し合い、②おもいでカフェ「茶のに処わたむき」、③「茶のみ処わたむきin図書館、④認知症サポーター養成講座、⑤オレンジフェスタ茶のみ処わたむき、⑥特別上映会「ケアニン」などです。

    認知症キャラバンメイト連絡会での話し合いでは、定期的に連絡会を開催し、地域での課題等を共有しています。また、居場所づくりの話し合いをしています。

    おもいでカフェ「茶のに処わたむき」では、「知る」「話をする」「聞いてもらう」ことができるカフェスタイルの交流場所です。

    「茶のみ処わたむきin図書館では、本の読み聞かせの他、認知症予防体操やゲームなどをしています。

    認知症サポーター養成講座では、中学生や小学生も対象にして養成講座を実施しています。小学校では「だいじょうぶだよ ぼくのおばあちゃん」の絵本を使用してわかりやすく説明している。

養成講座は平和堂さんにもスタッフの半数に受講していただいています。今年度はサポター養成研修を19回実施することができました。

養成講座修了者には、子供にはキッズサポータカード、大人には認知症サポーターカードを配布しています。

    オレンジフェスタ茶のみ処わたむき~やさしさでつながるみんなの笑顔~では、住民さんを対象に講演会等を実施しています。日野町長との対談も実施することができました。アンケートでは当事者の生の声を聞けてよかったとの感想などをいただくことができました。

 ○下坂厚さんの声

今後の方向性としては、
・認知症当事者の視点に立った居場所づくりについて検討。
・認知症サポーター養成講座の充実。
・チームオレンジについて検討
・認知症カフェの充実
を考えており、認知症の人が住み慣れた地域で生き生きと暮らせるあたたかい日野町になるように、キャラバンメイトさんと共に、活動をすすめていきたい。

 【グループワーク】
テーマ 「認知症になっても自分らしく生活するために」

  ① 地域とともに専門職が取り組めること
 ② 認知症の人にとって自分らしくとは

【発表】

1G:いろんな意見が聞けました。私たちは専門家として知識をもっているがために、どうしても診断に繋げようとしてしますが、それまでにその方がどのように生きてき、何を大事にしてきた、何をしているときにええ顔をしているとか、そのようなことをしっかりと把握し、関わる人たちと共有することが大事だと思いました。
若年性認知症の方は、デイサービスに行くと利用されている方が高齢だったり、作業所に行くと今度は若すぎたりと居場所がなく、薬剤師としてかかわっていた自分はすごく狭い範囲で認知症の人を見ていたと感じた経験もグループ参加者から伝えていただきました。
京都では当事者同士の会っていうのがあって家族もすごく大切なんだけれども、やっぱり家族が困ってること喋っちゃうと本人が喋らなくなっちゃうから、そのような場も大切だと思います。当事者の会のことの本を読んだ時に家族の会の人がちょっとイラッとしたみたいな発言もあり、それぐらい本人と家族の見える風景がことなることもあります。ありがとうございました ありがとうございます

2G:認知症の方に対する意思決定支援では、認知症の方の方針を決定する際に難しさを感じています。意思決定までのプロセスが大切。高齢者の支援をされている方からは、サポーターとしての上から目線ではなく、パートナーとして活動することに心がけたとの報告が私の心に残っています。家族に認知症の説明をされるときには、病気という説明をして認知症の理解が進むようにされているとの報告もありました。
また、認知症を発症する前の、普段から本人と今後について話をしていくことが大切だと感じました。

3G:「認知症の人にとって自分らしくは」、難しいお題であるが、高齢化にともなって、だれもが認知症になる可能性があるなかで、その人に関心をよせて、いつまでもその人が居心地よく地域で暮らしていける地域づくりというところが、自分らしい生活にもつながるのかなというようなお話がありました。それを実現するためにも、認知症を支援される家族さんへの支援も同様に大切。
また、専門職が取り組めることとして認知症理解を地域で深めていくこと、日野町さんの取り組みでもありましたように キャラバンメイトさんと共に啓発活動をしっかりやっていくこと、そして実際に一緒に関わっておられる方が、情報共有をしていくことも大事であり、多職種連携というところにも繋がってくるかと思います。そして認知症の方と一緒に暮らしていくという居場所づくりも大事なのかなというお話になりました。

 4G:患者さんの居場所つくりが大きな話題としてあがっていました。認知症患者さんのできること探しをすることが大切であり、これができるねと声掛けをしていくことが大事との話がありました。声掛け、言いやすい環境を作ることも大切。
私の祖母が認知症なのですが、麻雀が好きで、本人の趣味など大切にしていることをこれからも見つけていきたいと思います。社協さんからは認知症の支援にあたり、高齢者を巻き込んで、カラオケ教室の方の居場所を作ることができた、報告もありました。小串先生からは認知症の方を巻き込んでいくことが大切との意見をいただきました。仕事一本で来た人が認知症を発症した時に燃え尽き症候群で、死にたいといわれることもある。認知症になる前に、活動をノートにまとめたり、趣味を見つけていくことが大切ではと意見がありました。

5G:入院されている患者さんの方が、長い入院生活で在宅に戻るのが難しくなる現実があります。家族さんは入院後にもとの生活に戻れるかの不安を持っておられます。その際はケアマネさんに依頼して介護サービスを利用して、その人らしい生活に戻れるようなケアプランを作成してもらうのもよいとの意見がありました。
2年間かけてケアマネが患者さんのお話を聞いて、グループホームに移って生活をされている方の実事例の紹介もありました。その人を知って、支援していくことが必要ではと思います。

 

指定発言
認知症キャラバンメイト 加藤 悦朗 様
お話を聞かせていただいて、どこの地域でも安心してくらせる地域を目指していると思います。日野町の活動も報告させていただきましたが、質と効果について、まだまだ不十分だと感じています。高齢者が増えるなか、認知症患者さんも増えていく、その中でサポートする人も増やしていかないときいけない。キャラバンメイトだけでなく、地域の子どもから、大人までみんなに認知症理解を深めていくことが必要です。一番難しいのは、認知症の理解や、知っていただくこと、そういうことだけでは後が続かない現実があります。これからは「私もサポートしたい」と、そのような思いを持った人をどんどん増やしていきたい。気楽に相談できる環境を整備していくことが認知症の啓発活動につながります。活動の中でサポートの質と効果を考えていきたい、そこが一番大切かと思います。

近江温泉病院 認知症疾患医療センター 廣田 智恵理 様 保健師
皆さんからがそれぞれの立場で認知症について考えて発言してもらい、非常に勉強になりました。そのなかで、専門職はすぐに診断につなげたくなるのではとの意見で私のハッとさせられました。
認知症支援においては、どれだけ自分事して捉えられるかが大切かと思います。専門職として考える前に、自分が本人だったら、またはその家族だったらどのように感じるのか、その気持を日々忘れずに業務あたることが大切だと思いました。
専門職としては、今後の道筋を立てることが不安を解消することに、また本人、家族の負担を軽減するのにつながると思います。本日ありがとうございました。

 情報提供
発達障害のための研修会
令和635日(火)13301500ショッピングプラザアピア


 



次回のご案内
令和6310日(日)13:30~ 市民公開講座 オレンジ・ランプ上映会
東近江市あかね文化ホール 大ホール