三方よしカレンダー

2024年4月18日木曜日

第196回 三方よし研究会開催のご報告

第196回の三方よし研究会が開催されましたので、ここにご報告いたします。




日時:令和6418日(木)18:30~20:30

会場:ZOOM活用によるウェブ開催

当番 :近江温泉病院


ゴール:

〜交通外傷による若年・遷延性意識障害を取り巻く現状を共有する〜

交通事故対策機構・中部療護センターのお話から、その取り組みを学ぶ

○交通外傷による若年・遷延性意識障害を有する方のリハビリテーションの事例を通して、急性期から回復期そして慢性期までの流れの中で、その後、生活への思い・課題を受けて、それぞれの立場で思いを共有する


 

全体進行:小串輝男先生

【情報提供】

ぴーまん食楽部より

東近江市とタイアップして「介護保険 はじめの一歩」という案内を始めています。詳しくはメーリングリストにも挙げていただきますので、ぜひご覧ください。



医療法人昴会より

526日に八日市文化芸術会館にて、市民公開講座「第11回‘心臓病’で命を落とさないために」と題した講座を行います。参加無料ですのでぜひお越しください。




 司会進行:近江温泉病院 石黒さん




【学習会】

「独立行政法人・自動車事故対策機構(NASVA)、そして中部療護センターの取り組みの紹介」

(※中部療護センターは、自動車事故による重度後遺障害者(遷延性意識障害者)専門の病院です。)

⚫︎独立行政法人・自動車事故対策機構 中部療護センター長 矢野大仁先生より



・中部療護センターは自動車事故対策機構(NASVA)から運営委託されている。〜千葉療護センター/東北療護センター/岡山療護センター/中部療護センター 

 ・中部国際医療センター(高度先進医療を担う総合病院)中部脳リハビリテーション病院(脳疾患に特化した病院)、中部療護センター(交通事故による重症頭部外傷に伴う遷延性意識障害患者を対象にした総合的医療、看護、リハビリ)の棲み分けとなっている。

中部療護センターの入院実績としては、2001年7月から2023年3月までに334例が退院しており、その内、カルテが残存している293例を解析した結果を示す。

・平均年齢は36.4歳。男性が7割。交通事故の内訳は自動車・バイクで半数以上。

・脳損傷の内訳はびまん性側索損傷が一番多い。合併損傷の内訳では胸部臓器損傷が一番多い。

受傷から中部療護センター入院までの期間 平均416日。

・リハビリは理学療法から作業療法、音楽療法、鍼治療にも力を入れている。内容として、バランスボール、ハンドリフレクソロジー、端座位訓練、座ろうくん、顔面マッサージ、用手的微振動、入浴時のROM可動域訓練、アロマテラピー、ハイチューを用いた嚥下訓練など。

・月2回、多職種での合同カンファレンスを行なっている。

まとめとして、中部療護センターでは様々なリハビリによって機能改善を図るとともに、五感を刺激することによって意識中枢に働きかける治療を行っている。





⚫︎NASVA大阪主管支所 次長より




ナスバの被害者援護業務の対象となる方…自動車事故を原因とし、「脳」、「脊髄」または「胸腹部臓器」を損傷し、重度後遺障害が残ったため、介護が必要となった方バイク事故も対象。加害者、袚害者問わず(自損事故も対象)。

対象にならない方…自転車✕歩行者の事故、自転車✕自転車の事故、海外での自動車事故、競技中の自動車事故(レース)

介護料の支給…自動車事故が原因で、脳、脊髄又は胸腹部臓器を損傷し、重度の後遺障害を持つため、移動、食事及び排泄など日常生活動作について常時又は随時の介護が必要な状態の方に介護料を支給する。

・最重度後遺障害(特Ⅰ種受給資格)…Ⅰ種受給資格(常時要介護)のうち、損傷部位ごとに一定の要件を満たす方(自力移動、自力摂食、意思疎通不可、四肢麻痺、完全麻痺、人工介助呼吸など)は審査により「特I種」受給資格となり、支給金額が増額。

・「特I種」について(まとめ)

I種受給資格(常時要介護)のうち、損傷部位ごとに一定の要件を満たす方については、審査により特I種受給資格となる(脳損特1種、脊損特1種それぞれに要件あり)。

・支給金額について(3ヶ月分まとめて支給)特I種 最重度 ¥85,310〜¥211,530。I種常時 ¥72,990〜¥166,950。I種随時¥36,500〜¥83,480。

・支給対象(訪問サービス)全額自費で負担した場合のみ(障害者総合支援法の応能負担はNG)…ホームヘルプ(家政場もOK)、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリ(デイケア)、通所サービス(デイサービス)。

・支給对象(介護用品)介護用・医療用のものが対象、全額自費で負担した場合のみ(障害者総合支援法の応能負担はNG)…ベッド(介護用)、車いす、褥瘡予防具、吸引器、リフト、スロープ etc

・支給対象外の例(一部)…一般用のベッド・低反発クッションなど、車いすのアクセサリ・塗装など(趣味的なものや直接障がいを補わないもの)、取付工事を伴うもの(天井走行リフト)※対象外品の修理、部品交換もNG。
・支給制限(支給できないケース)…療護施設(療護センター・委託病床)に入院(ナスバの運営する病院・ナスバが委託している病院等)、他法令に基づく施設(生活介護•療養介護+施設入所支援)、介護保険、労災保険(「介護(補償)給付」はNG)、その他介護料に相当する給付(国家公務員災害補償法の規定による介護補償給付など) ※重複して利用した場合は返還

・支給制限(支給できないケース)…「主たる生計維持者」の合計所得金額が1,000万円超の場合(世帯合計ではない)→9月~翌年8月まで停止。課税証明を毎年NASVAへ提出(例:不動産売買、贈与)。

・短期入院・入所費用の助成…月々の介護料とは別枠で支給。原則、2日~14日以内の入院・入所(目的間わず、事故起因でなくてもOK)。検査・治療だけでなく、レスパイト目的でも可。リハビリ目的の場合は30日以内に延長可。年間45日・45万円の範囲(入院・入所先に縛りは無し)。

・受給資格申請について…NASVAが書類を受付した日から支給される。

・終わりに…もし、自動車事故で被害に遭われた方がおられましたら、お気軽に「最寄りの支所」までご相談ください(滋賀支所 (077-585-8290)大阪主管支所 (06-6942-2804))。





【事例報告】

交通外傷により若年・遷延性意識障害を有する方(40代女性)のリハビリテーションの事例を通して、急性期から回復期そして療護センターでの現状報告と、退院後の生活・ケアへ向けて

済生会滋賀県病院より

(済生会滋賀県病院リハビリテーション技術科 作業療法士 藤田拓郎、理学療法士 西川晃希、言語聴覚士 籏生麻衣)



・疾患名…#重症頭部外傷 #左小朒挫傷 #左前頭側頭葉胕挫傷#右前頭葉脳挫傷#急性硬膜下血腫#左後頭骨骨折

・社会的背景…ADLの自立した40代女性 大手企業勤務(主任)、既往歴:甲状腺疾患(治療済み)、両親と3人暮らし、兄が長浜在住 右利き。

・受傷時…2024年7月23日 信号のない道を横断中、側道から進行してきた軽自動車がブレーキとアクセルを踏み間違えて急進行し接触された。フロントガラス含め、自動車に破損はほとんどなく、自動車に乗り上げられ、地面にたたきつけられたとのこと。救急隊接触時、歩道に倒れていたが、意識レベル1桁であったため淡海医療センターへ搬送された。CT撮像のため妊娠反応検査を実施されていたが、待機中に意識障害を認め、頭部CTで左前頭葉および左小脳に脳挫傷を認めたため当院紹介搬送となった。

・経過…2023/07/23 開頭血腫除去術+外減圧術+ICPセンサー留置、7/24 脳室ドレナージ術、7/28 気管切開、8/3 ICPセンサー抜去、8/5 呼吸器離脱、8/16 V-P shunt造設、8/24 胃瘻造設、8/28 頭蓋形成術、9/26 近江温泉病院へ転院。

・退院時… JCSI-30。開眼はされているが視線合わず。しかし、視覚刺激に対して眼球運動が出ている様な反応も出現しだしていた。四肢の緊張は認めているが、随意的な反応はなし。追視や指示に対しての動きは認めず。左上肢不意に動かす場面あり。反射では無い動きも出ている様子であった。端位練習や注入前後での車いす移乗をすすめるなど、レベルの改善を目指し刺激入力、離床機会を増やしていたが、起き上がりや姿勢変換時の頸部への刺激でむせやえずき度々有り、嘔吐につながってしまう場面も多々あり。嘔吐に注意しつつ離床すすめていった。

・ST評価…リハ介入直後は嚥下反射誘発して少量水分摂取は一応可能な下機能。ただし食いしばりかなり強く舌で押し出すことも多く実用的な経口摂取は全く見通しはたたなかった。その後も間接訓練などで介入継続していたが、後々に食いしばりや歯ぎしりも認めなくなる一方で嚥下機能は廃用で実用的な経口摂取はやはり目処たたない状態。話しかけているときに唾液嚥下を繰り返すときは、覚醒が比較的よい時。入眠してしまうと唾液下はできず。声かけしているとまばたきで応答するような反応も時々認めるが実際どれくらい理解されているかは不明な状況。




近江温泉病院より

(近江温泉病院 総合リハビリテーションセンター 理学療法士 下村尚葵、作業療法士 岩崎茉有、言語聴覚士 福本大尚、看護師 坂本恵梨)



・回復期入院時評価…JCS: I-30。運動障害:弛緩性麻痺、感覚障害:遷延性意識障害により精査困難、車椅子座位保持時間:30分。

・入院時の様子…頭部外傷により遷延性意識障害が生じ胃瘻を造設しており、主な生活範囲はベッド上。日常生活において、寝返りや起き上がり動作で眼振や嘔吐を繰り返しており、積極的な離床は困難。車椅子座位においても唾液や痰を誤嚥し嘔吐をすることも多々あった。痛み刺激や体交等身体を動かす刺激に対して開眼するが、刺激が無ければ閉眼していることが多い/開眼しても追視せずに、焦点があわない(目的を持った眼球運動はみられない)/痛み刺激に対して払いのけるような身体の動きはみられない。

・吸引・嘔吐頻度の減少…退院時目標:吸引回数を減らすことができる。嘔吐することなく日常生活送ることができる。短期目標:姿勢・昼食量の評価・服薬調整とし、端座位・立位保持訓練で介入した。

・離床時間の拡大…退院時目標として、2時間以上の車椅子座位保持ができる。自宅への外出を目指して離床時間を確保することを目指す。3年後の在宅復帰に向け、家族が退院後の生活をイメージできるように(主に、在宅生活のスケジュール、自宅への入り方)。短期目標として、2時間の車椅子座位ができる。昼食の胃瘻を車椅子座位で行い、日常生活に汎化させるとし、病棟と起き上がり・移乗方法の統一、車椅子の選定を行った。介入内容は端生位保持による筋持久力訓練。

・非言語的コミニケーションの変化…退院時目標:家族や友人からの刺激に対して反応を示し、非言語的交流の時間を過ごすことができる。短期目標:一定の刺激に対して毎回同じ反応を示すことができる(再現性のある反応を見つける)とし、聴覚、視覚、触覚等を刺激する作業活動の提供、および顔面や口腔内への刺激入力を行い、反応が得られやすい刺激を見つける→Ipadでご本人のエレクトーン演奏の動画等を鑑賞する/手浴/楽器に触れる/外気浴/付き飴を舐めるといった介入を行なった。
・まとめ…当院入院早期から中部療護センターとの面談を行うことで残りの入院生活の課題を整理することができた。また入院生活やリハビリ見学の中で家族と本人が関わる機会を増やすことで現状の課題・できることを共有することが重要であった。


中部療護センターより

(MSW 林和美)


・中部療養センターの病室の特徴…入院患者様のわずかな意識の回復の兆しをとらえることができるよう、ワンフロア病棟システムを取り入れて、集中的に看護できるようにするとともに、同じ看護師が一人の入院患者様を継続して受け持つプライマリー・ナーシング方式の看護体制を導入している。その上で、日常生活を通じた多くの自然刺激を与え、細やかな配慮のもとに看護を行っている。

・療護センターのMSWの役割と退院支援…およそ3年間の入院。退院先の相談調整、家族の心理的支援、社会保障制度の案内(自賠責・労災の補償、身体障害者手帳、障害者総合支援法、障害年金、特別障害者手当成年後見人、補装具・日常生活用具、NASVAの介護料など)、賠償問題処理の支援、在宅改修の助言、オーダーメードの車椅子作成、外出外泊の支援、特別支援学校の入学・転校の支援、家族への介護指導etc...

・療護センターから退院される患者のうち、およそ4割は在宅に直接退院する。患者の中には自宅が遠方ということもあり、一旦地元の病院に転院して、自宅に帰られる方もいる。その方たちも含めると、最終的には、5割近くの方が在宅で生活している。

・自宅以外の退院先として、療養型病院、障害者病棟、障害者総合支援法の障害福祉サービスが使える住宅型有料老人ホーム、身休障害者施設がある。ご家族の思いを聞きながら、MSWが調整をしていく。



ご家族の思い

(書面より:代読)

 その節は4カ月にわたり大変お世話になりました。日々患者やその家族のためにご尽力いただいていますことに敬意を表します。

 今回の研究会で遷延性意識障害患者のリハビリ事例として使いたいとの依頼がありました。プライバシーが守られた上で事例として議論いただき、これからの課題検討に役立てていただければ幸いと思います。事例の中で「患者家族の思い」について協力依頼がありましたので、以下に思いのまま綴りましたのでご報告します。


1. 急性期の思い

 2023.7.23 交通事故で車に衝突されて救急搬送されたとの連絡を受け取った時は、まだ信じられない気持ちで病院へ向かいました。命が危ない状況だったため、先の事を考える余裕はなく、ただ一つ命だけは救っていただくよう懇願したのを覚えています。1日1日がどうなるかわからない状況が続いたことや目覚めてくれることを信じて、祈る思いで毎日病室に通い症状や治療・介護の様子を記録してきました。7回目の手術で外していた頭蓋骨をもとに戻して急性期の治療は終了しました。主治医からは重度の脳損傷のため今後意識が戻るかどうかはわからないと告げられて不安は募るばかりでした。入院中は病院スタッフの皆さんが親身になってお世話頂いたり、都度様子を教えていただいたりしたことは、私達には心理的に大きな助けになりました。

 また警察での聴取の際、事故時のドラレコ映像を見せてもらったこともあり、暫くは車にはねられた時の本人の恐怖と無念さが頭の中をぐるぐると渦巻いて離れませんでした。今でもその映像が思い出され、胸が締め付けられる思いがして不憫で仕方がありません。


2. 回復期の思い

 9/26に近江温泉病院へ転院して回復期りハビリ病棟に入院しました。本病院では本人の生活環境から刺激を得ることを重視されているようで、趣味のエレクトーン演奏DVDの視聴、育てている観葉植物の写真、親しい友達の面会など、私達からの提案に真摯に対応いただきました。

 面会の度に見せる本人の表情を見て、「大きな目を開けているが見えているのだろうか?」「いま何を思っているのだろうか?」「辛いとか、悲しいとか、寂しいとか感じているのだろうか?」と思いを巡らせ、話しかけますが反応はありませんでした。スタッフの皆さんの懸命なリハビリ治療をいただいている中で、目に見える症状改善が現れておらず、スタッフへの感謝はあるものの、心配ばかりが増幅して消えることはありませんでした。


3. 療護センターへの期待

 現在入院させていただいている療護センターは交通事故による遷延性意識障害患者を受け入れておられる専門病院と伺い、少しでも症状改善ができるのではと期待しています。遠方でありなかなか本人と面会して変化を確認することはできませんが、その分今まで以上にDrはじめスタッフの皆様を信頼してお任せするしかありません。夜災してから半年を過ぎましたが、あっという間の半年で、なかなか将来を考える余裕がありませんでした。療護センターには最長3年間は入院できると聞いています。この間に将来への準備を進めなくてはなりません。「何ができるか」「何をしてやれるか」悩みはつきません。


4. 今後への心配事(症状改善可能性、治療、介護、資金管理など)

 療護センター退院後のことについて、心配事が多すぎて入院中にどこまで準備ができるか不安が尽きません。今はできるところから少しずつこなすしかないと腹をくくっています。


① 症状改善が見込めれば将来の選択肢も変わると思われますし、最低限意思疎通ができるようになってくれること、更には気管吸引がなくなり口から食べられるようになることを祈っております。症状改善しても介護が必要な状態は変わらないと思われるので、可能な最良の介護を受けるにはどこでどうすればよいか?私達も自分自身が介護を受ける年(後期高齢者)になっており、今の状態では自宅に連れて帰るのは到底無理だと思っています。


② これから一生介護が必要になれば相応の費用がかかると思われ、苦しまないで済むだけの財政的な準備が必要です。資金は「どのくらいあればよいか?」「どのように管理すればよいのか?」本人が意識がない中で、誰が、どのようにして契約や支払いを管理していけばよいのか?心配は尽きません。銀行口座管理や携帯などの契約変更などは本人でないとできない事で、代行するには「成年後見人」でないとできないといわれました。そのため現在は可能な部分について親が代行していますが、今後本人しかできない案件については何もできず、不都合が発生する可能性があります。保険や職場の関係が切れた時には、全てを親兄弟で管理せねばならず、成年後見人が未定であればいろんな不都合が起こると心配でなりません。


③ 平均寿命まで人生を全うできるなら、残り40年の時間があります。現在の症状が続き意識回復がならなかった場合、将来の生活はどうなるのか?想像できません。介護を受けながら一人の人として生きていけるのだろうか?心配です。私達にはどこまでできるかわかりませんが、できるだけのことはしてやりたいと考えています。


まとまりのない文章になりましたが、率直に感じた事、不安、心配など思いを書きだしました。

一部を切り取っていただいても構いませんので、ご参考になれば幸いです。

以上



全国遷延性意識障害者家族の会より

(全国遷延性意識障害者・家族の会代表 桑山雄次)(金融庁自賠責審議会・特別委員、国交省被害者保護増進等事業に関する検討会・委員)



【1】 NASVA での治療

1. リハビリを中心とした医療を、通常の180日上限でなく3年近く受けられる

2. 遷延性意識障害からの脱却率は27%(通常は5~10%と言われる)逆に73%は残念ながら脱却できないということである。脱却できたケースも高次脳機能に障豊がでることがほとんど。


【2】その後の生活

①脱却できた場合に、高次脳機能障害に適した支援機関があるのか

・どんな後遺症が残っているのか

・医療機関(特にリハビリ関係施設など)

・福祉施設(デイケアも含めて)

②脱却できなかった場合に※当会はそのような状態の障害者の会

・若年性の「寝たきり」の人を長期にわたって介護できる体制が地域にあれば在宅が可能

・在宅が出来ない場合には施設か長期療養型病院(月額20万円~と言われている)

③在宅の場合

⚫︎主治医(多くの科に通じた医師)と緊急時の後方病院。全身管理を筆頭に、てんかん・褥そう・泌尿器・胃ろうなどの他に、尖足対策、呼吸器りハなどのリハビリやボトックス治療・・・・

⚫︎訪問看護•通院先医療機関

⚫︎生活介護・訪問介護・ショートスティ・入浴サービス・・・・・

⚫︎特に痰吸引など医療的ケアの出来るヘルパーを育てるための環境があるか?(事業所の有無・ヘルパーの確保・研修体制)

④家族への支援

⚫︎特に在宅の場合は、ヤングケアラー問題や、ダブル介護、介護者の冠婚葬祭や介護者が病んだときの対策(介護者が介護できなくなったときの対策)

⚫︎NASVA からの介護料(最重症の場合では、月額85,310円~211,530円)


【3】その他のもろもろ情報

①そもそも

・遷延性意識障害者の最大の困難は、コミュニケーションがとれないことである

・医療からは、「治療は終わったので退院して欲しい」と言われ、福祉からは「障害が重すぎて受け入れられない」と言われ続けてきた。これは昔も今もそう(医療と福祉の谷間)。

・15 年ほど前に支援の要請をするため、大都市圏の県庁を訪れたことがあったが、「このような障害の重い人が在宅に居ることを知らなかった。」と言われ、社会的認知の少なさを感じた。

・賠償金額の低さ 弁護士会基準では、微害者であっても1日 12,000円の介護費用が基準となっており、このような金額で24時間介護なら時給は500円である。一括賠償の場合はもっと低くなる。加害者が任意保険に加入していない場合は、自賠責のみになり後遺障害での最高額が4,000万円であり、そこに医療費も介護費も慰謝料も全て含まれる。

②医療

・回復や治療の決定的な方途は見つかっていない

・安静はダメで、刺激を与えることが大事であるとされている

・「意識」の脳での局在場所もよくわかっていない 「意識とは何か」についての解はまだない

・再生医療にはまだ時間がかかりそうである

③福祉(主として在宅介護を中心に)

・一般論であるが、在宅をすれば状態が良くなることが多い

・痰吸引などの研修を修了したヘルパーが必要なのに、そういったことを行ってくれる事業者が少ないそもそも「ヘルパー不足」「看護師不足」は深刻である

・しかも「手のかかる」介護であるのに、介護職への報酬が低い

・日常生活では、福祉に頼らざるを得ないが、福祉が貧困な場合やコロナ禍でヘルパーが来られない場合は、家族介護がメインとなってしまう

④家族の生活

・止むを得ず、仕事を辞めざるを得ないことも多い

・現在の在宅福祉体制下では、重度障害の場合の家族介護者は、1.5人は必要だとも言われている。(主たる介護者と従たる介護者)

・収入も減るし、将来もらえる年金も減ってしまう

・治療法もなく、この生活が続くことによる絶望感、家族である自分たちが介護できなくなればどうしよう?

・「毎日訓練するように」と言われながらも、家族だけでは出来ることには限りがあり、あまりに無力であることを実感する

⑤国交省の施策

・自賠法の改正が2023年6月にあり、被害者保護の財源が確保されたが、人手不足などの問題はどう解決していくのか?

・平成30年度より、グループホームへの人件費の助成制度を始まったが、残念ながらあまり増えていない。

・自動車事故は誰にでも起こり得るが、自動車事故被害者に限らず、現時点では重度の障害者の将来は明るくなく、主たる介護者が介護できなくなったときのセーフティーネットはまだない




 

【グループワーク】

・皆さんの経験や聞いたことなど「交通外傷による若年・遷延性意識障害者への医療・介護・リハビリ―ション・ケア・生活」について様々経験談の共有・それぞれの立場での課題・圏域における課題とあるべき姿や思うことについて

・独立行政法人・自動車事故対策機構(NASVA)、そして中部療護センターへの期待

 

 

【発表】

<1G

・感想のようなグループワークになったが、やはり皆さんこのようなケースをみて心が痛むというような話をされており、親のことを考えてもこれからのことは不安、費用のことも大変不安なことがあるだろうなということを話し合った。

・やはり1番辛いところは、本人の希望というのがなかなか組み取れない、本人がどうしてほしいのかというところがわからないということと話されていた方もいた。

・また吸引可能なヘルパーさんほか支援者がすごく少ない状況というのが社会情勢としてあるので、これがなんとかならないかということも出ました。

・今回の発表で、療護センターやNASVAという有効なシステムがあるということが勉強になったという方もいた。

・また交通事故に会われた当事者の方もいらっしゃり、その頃のことを思い出し、少し涙ぐまれながら、人には言えないような体のしんどさや辛さ、もっとやりたいことがあるけど仕事が十分にできない辛さなどで未だに苦しんでいるというご意見も頂いた。



 

<2G

・やはり継続的なリハビリができないリスク、負担も抱えていることであったり、今できることがどういうことなのかということを考える機会になった。

・ご家族さん、家族会の方のお話から、家族さんの負担も大きさや、コロナが蔓延した状況の中では、サービスもままならずに負担が増えていたというところもお伺いしている。

・障害の受容であったり、今後のいろんなところの不安の部分について質問をいただいたりもしていたが、実際のところ、その障害の受容というのは、もうずっとしていけるものではないんじゃないか、というような話もいただいている。

・住まいの問題であったり金銭の問題については今後続いていく不安でもあるが、最近は、有料老人ホームにつき、色々種類やレベルもあるが両親と子供さんとで入居される方もいらっしゃるという話も情報としていただいた。



 

<3G

・交通事故の方の支援をされた場合、やはりドクターの後を引き受けてくれるような 介護の方があまりおられず、トレーニングを受ける機会もあまりなく、在宅を望んでもかわない方がいた話や、医療的ケア児の場合とても似たようなケースで、介護している両親がやはり高齢になって経済的に大変なケースが多いという話があった。

・今回の勉強会で、うまく施設をつないでいっている仕組みを知りとても勉強になったということ、家族さんの支援を地域の力とか地域のサービスでどこまでできるのかということをすごく考えさせられた良い機会でしたという感想、家族さんも、やはりこう聞いてくれる人がいることがとても大事なのではないかという感想がとても多かった。



 

<4G

・実際交通事故の後の支援が、こういう風になっているんだという驚きを持つことが多く、その中でも今回交通事故にあって意識障害が出てしまい、病院から中部療護センターまでつないでいった事例は、とてもスムーズで勉強になったという話がとても多く上がった。

・家族会の方の話の中で、意識障害は良くて30パーセント弱しか良くならないというところで、やはり、事故は予防していかなければならない、ここが大事だという話があった。

・実際、医療と介護、医療と福祉の中で、介護者が最後介護ができなくなった時のセーフティネットがまだまだ十分ではないというところで、これからそのセーフティネットをしっかりしていかなければならないというところを非常に強く感じた。



 

<5G

・やはりこのようなケースに出会うことがなかなか少ないというところで、NASVAさんや中部療護センターさんのような存在、医療機関のことを初めて知りましたという意見があった。

・グループのMSWさんが元々保険会社で勤めていたとのことで試算を出してくれたが、やはり年間300万円ぐらいしか予算がないというところで、やはり困窮していくのかなという意見も上がっていた。

・発表してくださった先生がグループに来ており色々と質問させていただいていた中で、病院では15人ぐらいのユニットに対してナースさんが67人で看ておられるということで、かなり綿密なケアをされているということ、入院待ちの方がかなり多くおられるということで、早期からの入院調整がかなり大切になってくるというところ、急性期の体の状態が不安定な状態ではなくて、安定してから入られるというところが大事なポイントだということなど勉強になった。



 

<指定発言>

全国遷延性意識障害者家族の会 代表 桑山雄次氏

今日はどうもありがとうございました。

こういった地域でこのような課題共有をされておられるということに対して、やはり非常に敬意を表したいと思いました。なかなかこういった地域に各々が集まって、このような困難な事柄について話し合いをされるというのは、すごくいいことだなと思いました。

その反面、では具体的にどうするんだということになった場合に、どこまで社会資源が今の日本の中であるのかというと、非常に残念な状況だろうなと思っています。

うちの家なども、子供が事故にあった当時は、私も妻もフルタイムで働いてたんですが、子供が事故にあって2年半ぐらいでまず妻が仕事を辞めて、その後私が1人で仕事をしていたんですが、私の母も同居していてその母の介護も必要になってきて、ダブル介護が必要になってきたため、とてもじゃないが妻一人では支えきれないので、私も結局50歳の時に仕事を辞めるということになりました。やめる時に、うーんどうしようかなとも思ったんですが、とりあえず何もなければ、なんとか私が年金もらうまでの期間、食いつなげるであろうという前提の下で、仕事を辞めてやってきました。

うちの場合は、その加害者の方が、幸いにも対人無制限の任意保険に入っていてくれたので、そこから賠償金がもらえたということがあったんですが、私が仕事を辞めてから年金をもらうまでの間の10数年間っていうのは、もう貯金をどんどん切り崩すという生活の中でずっとやってきましたので、子供がもらった賠償金なんかもやはりかなり減ってるのも確かです。

あと先ほども成年後見の話も少しあったかと思うんですが、その制度もやはりまだまだ不備なところがあって、裁判を起こす時など、本人が意見が言えない場合には成年後見人を立てた上で裁判を行うんですが、そうなってしまった場合に、障害者本人のもらったお金というのはなかなか家族であろうが下ろせない。だから例えばあるグループホームがあって、そこにとりあえずは自己負担がこれだけかかるといった場合に、家族がそのお金を払おうと思っても本人の口座から下ろせないんです。その辺りが今の成年後見制度は不備な点が多くあります。

成年後見制度の見直しも進んではいるんですがなかなか結論が出ないというのは、元々成年後見制度が高齢者の財を守るというところから始まった制度なので、若年性で所得を持っている人たちのことはあまり考えていなかったという事情があって、その辺りが非常に話がややこしくなっていってるというのが今の現状です。

最終的には先ほどのグループの中でもちょっと話したんですが、有料老人ホームみたいな所の中でやっていくというのが1番いいのかなという思いがちょっとあります。今のところは、うちの家族会の場合、そういった施設を利用して過ごされるという方が多くなってきています。有料老人ホームの場合には市町村で使っている福祉サービスをそのまま使えますので、在宅という意味合いが変わってきているというか、施設の中で在宅を行うような形になるので、それも1つの作戦なのかなとか、そんなことを思ったりしていました。

ありがとうございました。以上です。



 

近江八幡市障害福祉課

私どもの方も、あまり交通障害のこのような方の支援というのは数多く経験してるわけではありませんので、医療機関ですとか、ご家族の会の方の当事者さんのご意見を聞かせていただきまして、大変勉強になりました。ありがとうございました。

市町村としまして、今後、この方が在宅を選ばれるにしろ施設を選ばれしろ、まずは身体障害者手帳をお取りいただき、障害の福祉施策サービス、補装具ですとか日常生活用具というような形のものを給付するなど支援させていただくにあたりましては、そのお住まいの障害福祉課が入口になりますので、そこの窓口の方に来ていただきまして、身障手帳を取るところから始めまして、それぞれ在宅であれば在宅のサービス、施設ということであれば、手帳に基づいた県内の障害のある方の施設のご相談にも対応させていただきたいと思いますので、何かありました時にはご相談いただけたらという風に思っております。

ありがとうございました。



 

【連絡事項】

第197回 三方よし研究会

2024516日(木)18:3020:30

当番:医療法人昴会

テーマ 心不全について


今回もここまでお読みいただき、ありがとうございました。

また来月もお待ちしております。