三方よしカレンダー

2022年8月21日日曜日

第176回 NPO三方よし研究会の報告

 第176回のNPO三方よし研究会がオンライン&会場のハイブリッド形式にて開催されましたので、ご報告致します。

◇日時;令和4年8月18日(木) 18:3020:30
◇会場:ZoomによるWEBで開催(東近江地域医療支援センター 多目的室)
◇当番:湖東歯科医師会

 〇本日のゴール
 ・口腔の健康が全身の健康に与える影響を理解する
 ・歯周メンテナンスの意義を多職種が理解する
 ・全身状況が変わっても、適切な支援を続けるために必要なことを考慮し共有する

〇全体進行:小串輝男先生


〇司会進行:小川勝弘先生


【情報提供】

 ・三方よし研究会主催 介護職員初任者研修&実務者研修について:楠神
  7年目となる初任者研修は9名の受講者で研修中。又本年度より国家資格取得に向けた実務者研修を実施。


 【30分学習会】

『 歯周病は全身にいかに関わっているのか  』
おがわ東歯科 歯科医師 小川益弘先生



 ・歯周病がある人の重症化の割合
  歯周病あり12.8%、歯周病なし2.3
・歯周病がある人のリスク(ない人と比べて)
  死亡する可能性8.81倍、人工呼吸器使用の可能性4.57倍、集中治療室に入院する可能性3.54

・歯と歯周組織の構造と感染細菌の全身への波及経路
  歯周ポケット→歯周細菌の血流を介した全身への波及→歯髄感染細菌の血流を介した骨髄

・全身への波及
 ・28本全ての歯に5㎜の歯周ポケットがあり、腫瘍を形成していると、手のひら1枚分位の腫瘍面が形成されていることになる。

 ・誤嚥性肺炎から見つかる最近
  歯周病原性細菌グラム陰性陰気性細菌37%、陰気性口腔内グラム陽性球菌24%、好気性口腔内グラム陽性球菌6%・・・。(歯周病菌だけではない。)

・糖尿病が歯周病に及ぼす影響
  2型糖尿病の被験者は糖尿病と比較して、歯周病の発症率が2.6倍高った。(超尿病は歯周病のリスクを高める。) 

・歯周病と糖尿病の関係の科学的根拠

  1. 糖尿病と歯周病の発症や進行は影響を及ぼすか?
      ・1型糖尿病患者では若年層の健常者に比べて、歯周病の発症率が高い
    ・2型糖尿病患者ではHbA1c6.5%以上になると、歯周炎の発症や歯槽骨吸収の進行リスクが高まる。

2. 糖尿病治療に歯周病の改善は有効か?
・糖尿病治療により歯周組織の炎症は改善することがある

3. 歯周病は血糖コントロールに影響するか?
・歯周病は慢性炎症として血糖コントロールに悪影響を及ぼすことが疫学的に示されている。
・歯周炎の重症度が高いほど血糖コントロールが困難になる。

4. 歯周治療が血糖コントロールの改善に有効か?
2型糖尿病患者では歯周病により血糖が改善する可能性があり、推奨される。

 

※若年性の啓発動画を公開しているので、見て頂きたい。(鬼滅の刃の声優)
※滋賀県歯科医師会では出前講演もしているので、気軽にお声をかけてください。又、八日市の大西デンタルクリニックにご連絡して頂いてもOKです。 

【症例報告】  
『糖尿病患者と歯周病 』
独立行政法人 国立病院機構 東近江総合医療センター 歯科口腔外科 堤泰彦先生



 

・歯周病とは?
 ・プラーク(歯垢)性細菌を原因とする炎症性疾患
 ・歯周病は中高年において約80%で罹患
 ・抜歯の主要原因
 ・歯周病治療は、患者のプラークコントロールの確立、歯周ポケット内のプラーク・歯石除去などの原因除去治療で炎症の改善を図り再発予防の定期的なメンテナンスが必要

 ※歯周病、糖尿病、高血圧症、心臓病といった生活習慣病に共通しているのは、初期段階では本人にあまり自覚症状がないこと。(このような病気のことをサイレント・ディシーズと言われる。)気が付いた時には、かなり進行しているケースが多い。

 ・歯周病を引き起こすもの
 ・歯周病菌+なりやすい状況(個々の身体や口腔、個々の環境、かみ合わせ)→歯周病

 ・糖尿病が歯周病を悪化させる可能性あり。又、歯周病が糖尿病を悪化させる可能性あり。(それぞれが影響しあっている。)

・症例(2名の方の症例報告をしていただく)

 ・まとめ
 歯周病は糖尿病は互いに影響し合っている。
 歯周病も糖尿病も指導が大切 生活習慣の改善
 歯周病も糖尿病もそれぞれが関連していることが指摘されており、双方向な治療が望まれる。 

※一番大切なのは噛めることが大切。歯周病が進行すると噛めなくなるので、歯周病を治療してすること。しっかりと口腔管理を行って頂きたい。多職種からも歯科受診を勧めて頂きたい。

 【グループワーク】
テーマ『全身の健康に悪影響を及ぼす歯周病への対策について』
視点 〇いつ誰がどこで気付くのか?
   〇患者様本人でできる口腔ケア、介助のサポートが必要な口腔ケアの見極め方
   〇多職種が関われるタイミングは? その時どうする?

 【発表】

G:歯科の先生が3名おられた。歯を磨くと、未額が違う。鏡を見ることが大切だが、見れない場合は、時間をかけて磨くようにして頂きたい。歯周病に関しては、口の中にばい菌が沢山あり歯科では、歯石を実際に見て頂くなど、自覚して頂くことが大切。症状が軽いうちから対等していきたい。医師でも口腔ケアが十分でないこともあるので、しっかりと口腔ケアを行うように勧めていきたい。

G:まず、病院にお勤めの方だったのですが、誤嚥性肺炎予防に取り組んでいる。リスクのある人をピックアップして、口腔ケアに取り組んでいる。取り組んでみて効果が大きかった。
高齢者住宅にお住いの方、排泄ケアに視点が行っていたが、ふとした時に、歯の痛みに気付き、歯科医師、歯科衛生市につないで、口腔ケアもでき、笑顔が増えた。口の中にもしっかと目を向けていきたい。東近江圏域では歯科医師会に気軽に相談できるのがよい。
医科と歯科は連携されていますが、薬剤師は歯科から注文を受けることが少なくなりました。歯科と薬局が遠くなったように感じています。(ステロドと他の注射を併用した際に壊死した事例あり。誰がどなたに伝えればよかったのか?薬価と歯科が遠くなったことも原因かと思います。)

 G:ピーマン倶楽部の栄養士、訪問看護、ケアマネさんのメンバーでした。どういったところで、気づくか? ピーマン倶楽部では初回の相談時に歯科受診しているか?お口の問題がないか確認しているとのことでした。認知症の方や、精神疾患がある方など、口腔内に問題があるが治療できていない方がおられので、注意が必要、
Gからもお話もあったが、口腔ケアは雄一自分で出来る予防、ケアなので、しっかり取り組んでいきたい。訪問看護も口腔の大切さに着目されているっが、実は病院が一番遅れているのかなって思いました。気を付けていきます。

 G:小川先生にも入って頂いてのグルーです。いつどこで気づくのか? 誰でもちょっとした気づきを、歯科医師。歯科衛生士につなぐことが大切。気づきの中で、硬いものが食べれますか?より、噛み応えはどうですか?と聞いた方が回答を得られることがある。質問の仕方も大切です。玉名では歯科の話をした際に、義歯の作り方のお話もありました。身近なお話からしていくことも大切ではと思いました。

G:いつどこで誰が気づくのか? 正直なかなかタイミングって難しいってお話があります。訪問介護、ケアマネさんに気付いて頂きたいが、実際はむずかしい。その中で竜王町では要介護3以上の方にはお口のチェックをしてして頂く仕組みがある。この取り組みが他の市町で広がって欲しい。
精神科の人の口腔ケアが気になる。薬剤師さんからは、食事が美味しく食べれていますか?の声掛けを行って、歯科受診に繋げている。行政からはお口のチェックシートを活用していきたい。
歯科の先生は器具を使用することができるのかが、今後のサポートが必要となるタイミングとなる。多職種が関われるタイミングは、時間の関係で意見交換が十分できていないが、退院前のカンファレンスに参加することで関わることができる。

 

QA
Q:東京(質問):どうして、竜王町ではそのような仕組みがあるのか?
A:竜王町は歯科診療所(公立)があるのが強み。要介護1以上の方へ歯科衛生さんが1回訪問できる仕組みがある。30分~1時間かけて、口腔衛生の状態などを自宅で確認して、その情報をケアマネや、地域包括に情報をお伝えしている。
定期的ではなく、初回の1回だけの取り組みで、繋ぐことを目的としています。
コロナ禍いということもあり、今年度はできていないが、昨年度までは実施していました。
同じ行政なので、利用者さんの了解も得た上で、情報共有を行っています。

 指定発言:
川上先生(管理栄養士):管理栄養士の私は健康な方も、そうだない方も、歯は大切だと思っています。しっかりと噛めて食べることが重要。歯科医に通っているか、かならず確認するようにしています。お口の状態が改善すると糖尿の値も良くなることなど、本人、家族に説明しています。訪問歯科の先生が来てくれることを、訪問時に伝えるようにしています。私自身も歯科医師に2か月に1回、行っています。
子どものころから、かかりつけの医師、歯科医師を持つことを住民さんに伝えていくようにします。

小川歯科医院 歯科医師 小川勝弘先生;
口腔内は大きな炎症が常にあります。口腔粘膜、歯の中の神経、口腔内、骨の炎症・・・常に口の中は刺激に耐えています。慢性的な炎症が多い、体の中に、炎症が常にあることがよくなく、不定愁訴の原因にもなります。糖尿病との関連もあり、それが心疾患などに影響したり、女性の場合では低体重児を生むことにつながったり、そのお子さんが将来高齢者になった時にメタボになる傾向が多いなど、様々な障害があります。まずは鏡を見て、お口を奇麗にするところから、はじめて頂きたいです。

 〇その他
宇都宮先生:誤嚥性肺炎を繰り返してから対応するのではなく、病院外来受診の際に、必要な支援を繋げていきたい。

 北沢様(東京):BP製剤のお話をして頂いた。どこと繋がれば、・・・患者さんに、かかりつけの歯科がありますか?と聞くことではないでしょうか? 私はお近くで通いやすい歯科に通ってくださいと勧めています。かかりつけ歯科が見て、どうするか? 医師に繋いで頂くこともできる。ケアマネがかかりつけの歯科を持って頂いていますか?と聞くのが精いっぱいとの意見がありましたが、それでも十分です。なかなか歯をあけて頂けませんが、口を開けて頂くことが、一歩化もしれません。
是非、口のことに興味を持って頂ければと思いまう。

 大友:様いつも花戸先生、小串先生にはお世話になっています。口の中の状態が身体に影響を与えることは知っていましたら、ここまでかと衝撃を受けました。
医師と歯科の連携などまだまだ課題がありますが、好事例を紹介していければと思います。

 【連絡事項】 
第177回 三方よし研究会 令和4年9月15日(木)18:30~20:30
○当番・会場  近江八幡市立総合医療センター

 次回も皆さまのお顔を見れることを楽しみにしています。是非、ご参加くださいね。