三方よしカレンダー

2023年7月15日土曜日

第187回 三方よし研究会開催のご報告

 この度、第187回の三方よし研究会が開催されましたので、ここに報告いたします。


◆日時 令和5年7月15日(土) 16:00〜18:00

◆会場 東近江総合医療センター(きらめきホール)& WEB(ZOOM)

◆当番 東近江薬剤師会、八幡蒲生薬剤師会


【ゴール】

◯ポリファ-マシーやその対策について学ぶ

◯ポリファ-マシー解消方法を多職種で協議し対策を共有する

◯東近江医療圏域のポリファ-マシーを解消する


【全体進行】 小串先生より


【情報提供】

◯糖尿病三方よし研究会開催のお知らせ

・7月20日(木)18:30〜20:30 東近江地域センター多目的室にて


◯ファースト薬局竜王店スタートのお知らせ


◯ヤングケアラーについての勉強会のお知らせ

・8月17日(木)13:30〜17:00 G-NETしが 男女共同参画センター大ホールにて



【進行】瀧川さんより



【アンケート報告】

●ポリファ-マシーアンケート

〜地域薬局や多職種へのポリファ-マシーについてのアンケート調査〜


・お薬、あなたはいくつ飲んでいるでしょうか?ある患者さんは循環器内科11品目、緊急1品目、整形外科4品目処方されている

・アンケートの目的は、ポリファ-マシーの現状を知り、当会のポリファ-マシー解消に向けた課題を知るため

・ポリファ-マシーに対する取り組みを行なっている薬局は、積極的にが10%、相談に応じてが78%だった。

・取り組み状況としては、主治医と予めポリファ-マシーになりやすい薬を擦り合わせ、継続すべき薬と調節しても良い薬の区別を薬局内で見える化するなどの仕組みづくり、患者さんの病状を聞き取って処方変更を提案する、トレーシングレポートにて伝える、などなど上がっている。

・「ポリファ-マシーは薬局薬剤師が積極的に取り組むべき問題である」と強く思っている薬局がほとんどである一方で、患者さんが望み主治医が処方している以上何ともならない等のマイナスの意見もみられた。

・解消に向けた課題としては、処方意図が明確化できず必要判断が難しい、主治医との連携の機会がなかなか持てない、見極めが難しい、患者さんで沢山もらうことで安心する方がおられる、医師の考えを否定することにつながらないか不安で言いにくいことなどが上がった。


【学習会】

●ポリファ-マシーって何ですか?

丸山薬局 大石和美さんより


・ポリファ-マシーとは、単に服用する薬の数が多いことではない、多くの薬を服用しているために、副作用を起こしたり、きちんと薬が飲めなくなっている状態をいう。

・薬が6種類以上になると副作用を起こす人が増えるというデータもある。

・「へらそう薬」を合言葉に。へ…変化があれば伝えてください。ら…乱用しない(正しく使いましょう)。そ…相談しよう、医師・薬剤師。う…嘘はつかずに(のめてない・のみにくい)。

・解決手順…①薬を全て書き出し、一覧にする、②薬の種類を分類する、③飲んでいる理由を1剤ずつ明らかにする、④患者さん・ご家族の意見を聞く、⑤減薬した後の反応をモニタリングする。

・患者さんのトラブルは一人ひとり違う、症状のメカニズムを知っておく。

・おくすり手帳の大切さを理解する。またかかりつけ薬剤師の存在。

・おくすりは指導するものではなく、伴走していくものだと思っている。その思いでこれからも人の人生に寄り添っていきたい。




【皆でディスカッション】



〇蚊野さん(訪問看護師

・私たちが目にするポリファーマシーとしては、それぞれの病院にかかっていて、それぞれのお薬手帳を持っている、病院ごとにお薬手帳を分けている方に多くみられる。そのような場合はお薬手帳をまとめて持っていってもらうようにして、後は薬剤師さんにまとめてもらえるようなるべく働きかけている。

・祖母が睡眠薬を服用し、その副作用で認知症的な症状が出たために、他病院で認知症薬を処方されていたことがあった。だからお薬手帳をもっていくだけでなく、合わせるということが大事だと思っている。



 

〇口井さん(薬剤師)

・お薬手帳を沢山持っている方は割といて、病院ごとに分けるのが当たり前と思っている人も多い。使い方が周知されていない気がする。手帳をまとめておいてもらえるとありがたい。

・お薬手帳にはシールを貼っていくが、最近は一言「ここが変わった」的なプラスアルファ情報を入れるなど工夫をしていかないといけないと思っている。

 

〇宿谷さん(介護支援専門員)

・薬が多く寝込んでしまった担当さん、結局別の病院に入院した際に薬をすべて一旦抜いてもらった経験がある。受診同行して先生と直接話すことで薬が減る場合もある。またお薬手帳をみせてもらいながら、次このことを聞いてきてくださいねと話したり、メモを持っていっていただくこともある。先生から薬局に電話して確認してくれたときもあった。

 

〇東川さん(病院MSW

・10種類など数多く飲まれている方はやはりいるが、基本的にはかかりつけ医の処方通りに出されている方が多い。お薬を出してくれるから良い先生と思われている患者さんも多い気がする。患者さんにもポリファーマシーの説明をしてもらえるとありがたい。

 

〇太田さん(薬剤師)

・病院薬剤師を経て薬局薬剤師になったが、業務自体が全然違うが、正直病院の時は薬局薬剤師をなめていた。トレーシングレポートで情報提供はされるが、実際飲めていない患者さんもいるので、そのあたりは薬局側から病院に伝えていかないといけないと思う。

 

〇奥村さん(特養施設)

・大石先生の、薬は指導するものではなく、伴走するものだという言葉がすごく印象的だった。3年前に父を間質性肺炎から最期は誤嚥性肺炎だったが自宅看取りさせてもらったが、父は病気のオンパレードで沢山の薬を飲んでいたが、排便コントロールには最期まで悩みがあった。かかりつけ薬剤師の存在を知り、そのような伴走してくれる薬剤師さんがいたら父の最期もまた変わったのかなとも思ったりした。



 

〇瀧川さん(薬剤師)

・経験年数他要件はあるが、すべての薬剤師がかかりつけ薬剤師になれる可能性はある。患者さんの人生に伴走してくれうる存在がかかりつけ薬剤師だろうと思う。

 

〇澤谷さん(管理栄養士兼病院兼老健施設)

・食事との関係で、貧血の鉄材を処方されている方が、センターで毎日3食しっかり食べることで改善して在宅へ戻り、在宅での状況を聞くと、朝寝ている時は起こさない、夜は早めに食べる、間は栗饅頭だけなどになり、摂取総量が減るので貧血気味となり鉄材処方となることが分かった。その意味では上手く入院なり入所なりを活用することも大事かと思う。

・診療費を払わない方の苦情相談に出向いた際に、若い医者が便秘への効かない薬を出したのでそんな費用は出せないとの言い分だったため、効かない薬ではなく、いきなり強い薬を出して脱水を起こして大変になることもある、段階を経て診ていく通過点にあるから、医療に参加してほしい、そして若い医者もそのうち偉くなるんだから育ててやってほしいと伝えて払ってもらったケースがあった。



 

〇水戸さん(薬剤師)

・外来で私たちもこの薬は強いのか弱いのか聞かれることはよくある。まずはこれ試してみてくださいと伝えることは多い。しかし先生と出会う機会に患者さんの希望としてお伝えすることもある。

 

〇前田さん(介護支援専門員)

・お薬が飲めているか、お薬手帳の確認は介護支援専門員は大体しているかと思う。しかし手帳の貼り‘紙’は‘神’のように思い、変更や統合不可能な神聖なものを思ってしまいがちなので、多剤服用の弊害を知り薬剤師先生に相談するという思考回路を持つことは大事だと思う。またかかりつけ薬剤師さんの存在も研修では伝えているが、各担当とご家族に介護支援専門員側からも勧めていく必要があると思っている。

 

〇藤本さん(薬剤師)

・在宅薬剤師として、薬局や自宅を回ることも多いが、訪問するだけでは分からないことも多く、かかりつけ先生や訪問看護師さんやケアマネさんなどと連携して把握していこうとすることが大事だと思う。



 

〇川上さん(管理栄養士)

・クリニックや外来患者さんの栄養指導に入ることが多いが、お薬手帳を毎回持参いただくわけでもないので、そこのクリニックのお薬情報は分かるがそれ以外のお薬が分からないことが多い。また外来なので、もっと健康になりたいとサプリメントや健康食品を飲まれている方も多く、なるべく先生や薬剤師さんにちらっと伝えている。



 

〇伊藤さん(医師)

・最初のアンケートにあったが、薬剤師が医師よりも知識が劣っているということは絶対にないので、どんどん意見いただければと思う。ポリファーマシーの経験としては、10種類以上飲んでいる方の家族から、これポリファーマシーなんじゃないか?と聞かれて、他科の先生にも相談しながら減らした経験があるが、このような時は薬剤師さんに相談すればよいんだと学んだ。処方薬だけでなく市販薬の情報も薬剤師さんに相談しようと思う。

 

〇  さん(薬剤師)

・薬剤師への期待も大きいことが分かったので、多職種の皆さんに頼って頂けるような存在になれるよう、お薬手帳のこともそうだし、啓蒙活動も行っていきたい。



 

〇  さん(薬学部学生)

・私は祖父が人工透析、祖母がアルツハイマー型認知症でその介護を家族全員でだが私も小学生の時からしてきて、医療の道を目指した経緯はあるが、患者側からみた景色だったので、実際色んな職種の方が関わっていることまでは気づけなかった。そして今私にはできないこと、また私だからこそできることがあるということを知り、色んな視点をいただけたことでもっと勉強していかなくてはならないと強く思った。このような議論する場があるということは素晴らしいと思った。





〇花戸さん(医師)

・お薬って、この病気にはこの薬を使わなければならないという薬と、便秘や不眠など生活に関わる薬があり、それは運動したりで改善
もできるかもしれない。となると医者と薬剤師さんだけでなく多職種での連携がやはり必要だということになる。

・サービス担当者会議や退院前カンファレンスに出た薬剤師さんどれだけいます?(4名ほど)参加をぜひしていってほしいと思う。



 

【指定発言】

●<医療の立場から>横山さん(滋賀県庁薬務課)

・ポリファーマシーにはとても関心を持っていたので興味深く聞かせて頂いた。大石先生からの伴走という言葉があったが、私たちは服薬指導の言葉のように、指導して飲ませるという考えに立ちがちだが、飲むのは患者さんなので、自ら飲んでいただけるようにすることが大事なんだなと感じた。

・患者さんが何のために飲まなければならないのか、関心をもってもらうことが大事だと思う。自分が何種類飲んでいるか把握しているかどうか。「飲めてますか?」と問えば「飲めてます」としか答えない。患者さんがいかに分かって飲んでくれているかは大事だと思う。

・地域ケア会議などに出ると多職種が様々な視点からみて提案されるので、そのような多職種視点はとても大事だと思う。顔の見える関係をつくっていく、その中で職種で呼ぶのではなく名前で呼び合う関係性をつくっていくことが患者さん利用者さんのためになるんだろうなと感じた。



 

●<介護の立場から>前田さん(介護支援専門員)

・大石先生の話でフィードバックをすることの大事さを改めて感じた。課題や対策をその方に関わる職種皆にどう伝え共有していくのかにつき、真剣に考えていきたい。担当者さんの生活向上とまではいかなくとも少なくとも維持させる、人生に意義を感じて頂けるように、介護支援専門員は特に多職種間の橋渡しを担わなくてはならないと思っている。サービス担当者会議にも薬剤師先生方にもっともっとお声がけしていきたい。本人への多剤は弊害が多いのだろうが関わる職種は多種でありたいし、この三方よし研究会のような場をモデルに連携をとっていければと思う。



【次回】

・第188回三方よし研究会は8月17日(木)18:30〜20:30、湖東歯科医師会さん主催にて開催します。




今回も学び多い濃い時間となりました。また今回は久しぶり(4年ぶり?)の会場参集での会でした。顔の見える形はまたやはり違いますね。

次回もお待ちしております。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。