三方よしカレンダー

2022年11月20日日曜日

第179回 三方よし研究会のご報告

179回三方よし研究会がオンラインで開催されましたので、ご報告させて頂きます。     

◇日時:令和41117日(木) 18:3020:30 
◇会場:ZOOM活用によるWebで開催                
(当番:東近江圏域ケアマネ連絡協議会・東近江敬愛病院 )                           

ゴール                         
○ 身寄りのない意思決定のできない患者の支援方法について学ぶ      
〇 意思決定ができない患者の支援方法について、
〇 グループワークを通して多職種で意見交換を行い知識を深める。 



【情報提供】  
ファースト薬局八日市店の紹介       ファースト薬局 
瀧川先生:ファースト薬局が東近江市に開局いたしました。蛇溝町にある、中澤薬局の隣です。お薬のことは勿論、健康のことなどなんでもご相談ください。店舗は緑色の入った四角い建物で、待合室の隣になる相談室を売りにしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

〇新院長の挨拶  
医療法人敬愛会の今後について  
              東近江敬愛病院 院長 間嶋 淳         



よろしくお願いいします。
当院に赴任して約半年が経過しています。この地域、病院を見て参りまして、この地域で役に立っていくにはこうしたらよいのではと感じていることがありますので、これまでの敬愛 これからの敬愛 頼られるコミュニティホスピタルを目指してをテーマにお話しさせて頂きます。
簡単に自己紹介をさせて頂けばと思います。

どちらも地域の基幹病院でした。主に中心には急性期の内視鏡医と思って頂いてよいとお思います。そんな私が、東近江敬愛病院に赴任してさして頂くことになり、皆さんの方が詳しいかもしれませんが、病院の紹介をさせて頂きます。

4月から赴任させて頂き、私の中でこんな感じになっていると感じること。患者さんが病気になると、まずはそれを治すために、急性期の病院にかかられて、在宅に戻られる。すぐにう在宅に戻れない方は、回復病院を経て、在宅を目指すと、大きくこのよう流れになっているのかと思いますが、地域医療構想の中で今ある資源を有効に活用しなければならないというところで、各施設の役割分担を明確にする必要性を感じています。
高度急性期を担う病院はそれに特化して、回復期を担う病院はそれに特化して、地域を担う病院はそれに特化するというのが大きな考え方であると思います。
その中で当院がどのような役割があるかと考えると、急性期から慢性期まで幅広くやっています。これは今の話からすると逆行するのではとお考えの方もおられるかもしれませんが、私は決してそうではないと思います。役割分担することのメリットは専門性を発揮できることだと思います。一方で専門外は非協力的になることもあります。これは私が急性期の病院で勤務していた際につくづく感じることが多かったです。
いわゆる間疾患、間状態の方への対応が不十分であると、具体的には高齢者の方の誤嚥性肺炎だとか、尿路感染症、レスパイトを含めた社会的入院だとか、なかなか忙しくてそこまでできないということもあるのですが、このような方が中途半端な支援になり、しわ寄せがくるのが在宅での医療だとか、介護だとか、そういうところに、しわよせが来ているんだろうなとつくづく思っておりました。
先ほどのテーマで言うと、そのような方の受け皿をしっかりとしないと、地域医療構想の中での、それぞれのセクションで頑張って頂いても、医療構想として成り立たないのではないかと思います。
当院では急性期から慢性期まで幅広くやっているというところ、それぞれの4番バッター、急性期、回復期、慢性期、在宅の医療を上手く繋げられる、そういったところが当院の役割であると思います。
一番最初にコミュティホスピタルの名前を出しましたが、あまり聞かれたことがない方もおられかれもしれません。明確な定義はありませんが、地域の方のニーズに応えるような病院であり、外来診療や、入院治療も行うのですが、そこにとどまらず、地域の実情を踏まえて、求められるように役割を、例えば予防医療であるとか、リハビリであるとか、それだけでなくて医療情報の提供だとか、そういったこともやっていけるような病院をコミュニティホスピタルと言われており、まさしくそういった病院像が私どもの病院に求められており、役割だと思います。
このようなことを通じて、地域おこしだとか、雇用だとか、そういったところまで力を尽くしていくができれば、きっと病院の新しい展開ができると思います。
クリニックと大病院を繋げるような広い意味での地域連携病院、ハブ的機能を持った病院が重要になってくるのではと考えています。こういった連携をベースに在宅と急性期のハブ的な存在となれる病院を目指したいと思います。
多職種の方々が参加される三方よし研究会の皆さんから学びながら、こういった方向性が良いのではとご指導も受けながら、その方向に近づけていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

 【事例紹介&学習会】      進行:ケアマネ連絡協議会 引間敬子     
テーマ『身寄りのない意思決定ができない患者への支援について』   

 

【事例紹介】カンファレンスの内容について  A病棟・地域連携室:金子早智代 様

それでは始めさせて頂きます。
当院で身寄りのない患者様の治療方針の意思決定ができない患者さんの支援を行いましたので、発表致します。
まず、患者様の紹介をしますTYさま、70歳代後半の女性です。・・・
個人情報保護のため、記載省略

【学習会】 意思決定できない方への支援方法の基準について  医師:加納 正人          ここからは、意思決定支援の総論的なことをお話させて頂きます。
最終的に御飯が食べれなくなった際、食事摂取量が少なくなった際に、その栄養補給をどうするか、以前にこの会でもお話をさせて頂いたように、「生命の神聖」、「生命の尊厳」、そのバランスをどうとるか、といったような非常に難しい問題に実はなってくるということなんですね。
本日の内容は、

社会と高齢化と認知症について
65歳以上の家族がいる世帯構成の推移となります。1986年頃は65歳以上の約半分近くが3世帯課程でした。それが、高齢者がいる世帯の内、高齢者世帯、高齢者単身世帯がグングン増えている状況で、高齢者がいる世帯の内、高齢者単独、又は高齢者のみ世帯が60%に達しています。
滋賀県の状況がどうかと言うと、平成27年の国勢調査では、約8%が高齢者単身世帯、12%が高齢者夫婦世帯、これは全世帯に対する割合です。それが年々変化して、全世帯に占める高齢者単身の世帯の割合が右肩上がりで、かなり深刻な事態となっています。
65歳以上の認知症の患者さんの場合、2020年の数字で約600万人の患者さんがおられる。2030年には800万人程度の認知症との推計。高齢者の約2割が認知症ということになって、つまり、高齢者だけの世帯が増えていくし、その中で認知症により意思決定できない人が増えていくことが見えています。

 〇認知症と意思決定能力
インフォームドコンセント、裁判の判例等であげられている、項目は次の通りです。
(これだけのことは説明しておかないと、説明したと認定して頂けない項目。)
・当該患者の病名及び現症状とその原因
・当該治療行為を採用する理由、有効性とその合理的根拠、改善の見込み
・当該治療行為の内容
・当該治療行為による危険性及び合併症の有無
・当該治療行為を行った場合の改善の見込み
・治療行為をしない場合の予後
・他に取り得る治療方法の有無
手術をしない場合、化学療法の選択肢にあるが、治癒は望めないことなど、しっかりと伝えないといけない。

意思決定能力の要素
理解する力:説明の内容をどの程度理解しているか
認識する力:それを自分のこととして認識しているか
論理的考える力:論理的な判断ができるか
選択を表明できる力:論理的な判断ができるか

さらに、意思決定能力には高い低いがあるが、大きな手術などは高い意思決定能力がないと同意を得ることが難しくなる。

同意能力の評価法 MacArthur Competence Assessment Tool-Treatment(MacCAT-T)


4要素について、評価する手法がある。
選択の伝達・表明
開示された情報の整理
状態、結果の認識
論理性
大変難しい項目で、私も満点を取ることは難しい。

〇同意能力の評価法
何点以上なら同意能力ありといったカットオフ得点が設けられている訳ではない、
点数をつけることにより評価の客観性が高まり、どの領域の能力が低下しているか明らかにすることができ、低下している部分を補って、理解を促進したい意思決定を支援したりすることにも役立つ

十分な栄養管理=生き続けたい(生かし続けたい)延命
人工的な延命は行わずに自然に見送りたい(ナチュラルコース)=十分な栄養管理は苦痛を長引かすことがある。
十分な栄養を入れるかが、選択肢の第一関門となっている。

 症例:個人情報の為、記載なし

 〇人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン
本人の意思が推定できない場合、本人にとっての最善の方針を医療・ケアチームで判断していきましょう。

 


〇カンファレンス用ワークシート。
一つは医学的な、標準的な改善の判断など、医療的な合意性、妥当性をしっかりと考えないといけないです。カンファレンス用シートを用いて、本人の意向なども踏まえて、今後の対応方針を考えるところがよいです。


ジョンソンの四分割法の表は、解りやすいです。
医学的適応、患者の意向、QOL、周囲の状況

 


〇四分割表の応用方法
1 問題点をできるだけあげてみる。
2 疑問点を検討する。必要な資料や情報を集める。
3 今後、具体的にどのような対応ができるか検討する。

 〇人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン

 


結局、強い医師の考えを追認するだけのものになる?
医師以外の医療・介護従事者がそれぞれの専門家として貢献することが認められるようになってきた事実をむしろ重視すること

 まとめ
・核家族社会の高齢化、認知症人口の増加などから、意思決定能力が低下した高齢者の終末期ケアの選択肢を迫られる場面は今後も増えてくるとみられる。
・できるだけ本人の意向を汲み取る。
・多専門職の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチーム
・論点が整理できるツールも利用
・皆が腑に落ちる結論に至るまで検討を繰りかえす
・状況の変化に応じた検討を繰り返す

 

東近江敬愛病院:A病棟看護師の東さん
症例報告:個人情報の為、記載せず。

【グループワーク】          進行:花戸貴司先生        
              テーマ『身寄りのない、意思決定できない患者への支援について』     

 ・どのように関わることで意思決定支援が可能になるのか  
 ・紹介事例に対する感想等         
 ・家族以外に意思決定権があるのは?     
 ・もし自分が意思決定ができない状態になるならどうしたらよいのか            

             

【発表】              進行:花戸貴司先生         
※各グループから1人2分以内の発表でお願いいたします。   

G:感想はとても難しくて、よく遭遇する悩ましい症例。このチームは在宅の情報もあたられたりとか、素晴らしい症例だと言われていました。
1回目のカンファレンスでは決まらず、2回目の在宅でも入ってのカンファレンスで支援方針を決定できたようですので、最初のカンファレンスから在宅の方々を入れて頂きたかった。
家族以外の誰が医師決定に関われるかについては、ご近所さん、久しい友人の方、ケアマネ、、医療福祉関係者など本人が意思を伝えていた全員の人とたちが、意思決定に関わり権利があるのではとのお話でした。

G:若手ホープが抜けてしまったので、代理で報告します。
話を聞いていて、とても難しい症例だと思います。もし、そのカンファレンスに呼ばれても、なかなか難しくて発言もできない。薬剤師の先生からは、元気な時から関わっていた人がいるのから、そのような人、在宅の私たちの聞いて欲しい。そういう人を呼んで生活の視点など持って頂きたかった。その中で、食べれなくなっても、狭まるだけでなく、広がりがあると感じる。
ただ、なかなか意見ができないので、まずは聞いてあげることが大事だと思います。

 G:本当に難しい症例だったと思います。チームを立ち上げて頂いて、とても頑張られたとの意見がありました。
法的にどうだろうか?との意見もありました。自宅で帰りたいと言われた際には、主治医と家族の意見が一致していれば、それでよいのではとの意見がでていました。

 G:東近江保健所の西川と申します。
Gは先生に入って頂いたので事例に感しての感想と質問もさせて頂いています。患者さんを見ている人と様子が結びついていたのか?等の質問もありました。QOLの確保と、医療的な判断も早期に必要な症例で、判断を迫られていた。
家族以外の方で意思決定できるのは、誰かが決定権を決めるのは難しいので、その人を知っている多職種で話あっていくことが大切。

 〇指定発言:永杉 憲弘さん たまな在宅ネットワーク在宅医療連携コーディネーター  

永杉です。今日、皆さんとご発言を聞きながら、病院に行くと肩身を狭く感じるだとかの意見があり、それをどのように改善していくのかが課題だと感じました。
玉名の状況も含めて報告させて頂きます。きとんとしたお話は、宏子御姉様にして頂きますので、私は前座で(^_-)-
最近、たまな在宅ネットワークで関りました、身寄りのない、意思決定が難しい患者への支援についてご紹介します。

76歳女性有料老人ホームご入居・・・個人の為、記載せず。

まとめ
意思決定支援を行う為の話し合いは、みんなやったほうがよいが、なかなか出来ない時もあり。そのような機会をつくる時間的な余裕がない時もある。又時には利益相反する可能性もある中で言いだしにくい。
中立的な立場の「たまな在宅ネットワーク(在宅医療・介護連携事業)が担うことで、その物理的・心理的負担を軽減することができればと思います。
話し合いに際して、現在の支援者だけでなく、これまで関りを持っている支援者、時には知人・地域の方々も参加頂き、本人のこれまでの意向暮らし、関係を再度確認しながら、本人の意向を推察し支援方針を決定していくこと。
たまなでは、ガイドライン変えちゃいました。人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン、たまな在宅ネットワーク班を今年4月のたまな在宅ネットワーク定例会で作成しています。
具体的には、本人を支える様々な医療・介護・福祉従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて医療・ケアを受ける本人が多職種の医療・介護・福祉従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も需要な原則である。
・・・さらに、本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族、親族、時には親しい友人や地域の仲間等の信頼できる者も含めて、本人と話し合いが繰り返し行われることが重要であると、厚労省作成版をアレンジしています。
それでは真打登場です。宇都宮先生、よろしくお願いたいます。

 〇指定発言:宇都宮 宏子さん  在宅ケア移行支援研究所 宇都宮宏子オフィス   


宇都宮:よろしくお願いいたます。
私、最初のケースのお話をもう少し、お話を聞きたかったです。もう少し食べて頂こうと、病棟ではムース食まで持っていかれた訳ですよね、関わった病棟ナースや相談員など、大変な思いをされてケアされたかと思い、その場面など、そこをもう少し深堀したかったです。スライドを見てください。
医師決定支援の3つの視点ということで、支援者の意思決定支援で大切なのは、事前の意思表示、これまでの人生の物語を傾聴(意思を推定)することなんですよね。遠くに住んでいる息子さんにお話を聞くとか・・・。今の気持ちは話しかけに対して本人のうなずきなどで知ることもできるが、過去のことを知ることにより、価値観なども分かってきます。
医学的判断においては、ドクターに適切、適時な病状説明、見通しを立てて頂くことによって、口腔内ケアなどの看護、ケアができるようになります。お口の中を潤す、口腔ケアをするなど沢山ケアできることがあるはずです。こういったケアを提供しながら、本人、家族の意向を確認していくことになります。
ベストではなくベターかもしれませんが、本人にとって、幸せ・いごこちのいい暮らしが自実現できるように、チームで共に考えていく。つまり共同意思決定という形で、進めていくことが大事なことだと思いました。
今日の事例では、この医学的判断どうだろうか?ではなくて、迷った時には在宅のケアマネさんなどにも意見を聞いて、この人はどういう人だろうか、何を大事されているのかなど、その人のことを理解しようとするところから始まるのかと思いました。
ありがとうございました。

【連絡事項】   

・第 180回 三方よし研究会 令和4年 12月 17日(土)16:00~18:00             
   ○当番 東近江医師会・近江八幡市蒲生郡医師会  ・ 会場 よしぶえホール                 ZOOM活用によるWebで開催