三方よしカレンダー

2023年8月17日木曜日

第188回三方よし研究会のご報告

 第188回三方よし研究会が開催されましたので、ここにご報告いたします。

◇日時;令和5817() 18:30~20:30
◇会場:ZoomによるWEBで開催(東近江地域医療支援センター 多目的室)
(当番:湖東歯科医師会 ) 

ゴール
○ オーラルフレイルが与える全身への影響を理解する
○ 各職種がそれぞれの立場で気づく、オーラルフレイルのサインを確認する
○ どのタイミングでどの職種に連携するのか 

【情報提供】
・湖東歯科医師会 会長就任挨拶 湖東歯科医師会 会長 歯科医師 小川勝弘 様

 6月より湖東歯科医師会の会長をしております小川です。本日は、オーラルフレイルをテーマに研究会を開催させていただきます。物を嚙む機能が低下するなどして、食事量が減り低栄養になることがあります。そのようなことの予防について検討することができないかと本日の企画を行っていますので、よろしくお願いたします。
 

・健口いきいき動画のご案内 湖東歯科医師会 歯科医師 輪田茂樹 様

 湖東歯科医師会の和田です。コロナの為に会の活動が低下していましたが、健口いきいき動画を作成しました。QRコードから動画を視聴することができますので、ぜひご覧ください。


・第9回多職種キャリアアップ研究会 多職種キャリアアップ研究会検討委員 楠神 渉

 多職種キャリアアップ研究会の楠神です。今年で9年目となる多職種キャリアアップ研修会を10月1日(日)13:30からG-NETしがで開催します。第1部で地域医療と防災でまちづくりについて、森本先生にお話を伺ったのち、第2部、3部で災害時に対応に等について考える機会となります。ぜひ、ご参加ください。

30分学習会】
 ・オーラルフレイル予防・歯科衛生士の挑戦! 安土学区まちづくり協議会 あづちチャレンジ事業活動報告

 NATURE RYT200ヨガインストラクター 歯科衛生士 溝井敬子 様
 ・オーラル=口腔 フレイル=虚弱
 オーラルフレイルの予防に向けて歯科衛生士の取り組みを報告させていただきます。その前にヨガを取り入れた、予防運動を皆さんと一緒に行いますので、ご一緒にお願いいたします。(実際にヨガ体操を実演していただきました。)
 ・・・このような体操を安土学区のコミセンで行っています。「くちトレ・椅子(チェア)ヨガ」も実施していますので、もしよろしければご参加ください。ヨガをしているようで、これが口腔機能の訓練になっています。
 また、通いの場で出来る!!簡単口腔機能チェックを今年は予定していますので、報告できればと思います。これからも「くちトレ・椅子(チェア)ヨガ」が広がるように取り組みを進めていきたいと思います。

 ・高齢者質問票からの口腔機能低下者への取り組みについて

 東近江市健康医療部健康推進課保健センター介護予防係 保健師 中野由美子 様

 東近江市の歯科保健事業では、身近な地域でのサロンやまちリハ、出前講座などで歯科健康事業を実施し。高齢者のオーラルフレイル予防や、健康状態の把握に努めています。

 高齢者質問票(フレイルチェック表)は以下の通りです。


  令和3年度に3259人にアンケートを実施した結果、歩く速度が遅くなった、硬いものが食べれなくなった等が上位を占めました。また、硬いものが食べれないと回答されたうち、歩く速度が遅くなった方と相関関係で見られ、全身のフレイルに先立って、オーラルフレイルが生じている可能性があります。咀嚼機能も嚥下機能も両方該当した人が75名(17%)おられる。
 オーラルフレイルの定義=老化に伴う様々な口腔の状態の変化に、口腔健康への関心の低下や心身の予防能力低下も重なり、口腔の脆弱性が増加し、食べる機能障害に陥り、さらにはフレイルに影響を与え、心身の機能低下にまで繋がる一連の現象及び過程。

 アンケートを実施しての3つの気づき。

 ①    集計結果
 ②    検診データ:全体の4割が歯科受診ありと回答。(半年前に比べて硬いものが食べにくい、お茶や汁物でむせる38.1%)
 ③    地域サロンからの市民の声;相談を受ける場所までいけない。→「対策」個別歯科指導が必要。

令和4年度「(新)訪問歯科相談」取り組みを実施。
 対象者 平田地区19名 ※訪問前に、レセプトにて歯科受診歴、内科既往歴、検診などを確認。

 ①    1回目(初回訪問):保健師及び歯科衛生士による同伴訪問(健口スマイルシートなど)
 ②    2回目(1か月五後電話):歯科衛生士(歯科受診の有無確認など)
 ③    3回目(5か月後郵送):歯科衛生士(健口スマイルシートの送付など)

 支援できた人 ①16/19人 88.2
        ②9

 市民の声
  ・交通手段がなく、歯科受診できていない
  ・家族に歯科受診を頼めない(内科優先、継続受診となるため)
  ・歯科治療の必要性を感じていない。
  ・訪問歯科などわかっているが、利用していない。

訪問歯科相談 事業の成果
 個別対応をさせていただき、出前講座では全体のお話はできるが、個々のお話ができないので、歯ブラシを見せていただくなど、細かなところまで助言することができる。
 ・口腔に対して意識の向上
 ・適切な義歯ブラシや舌ブラシの使い方(洗う、下磨きなど)
 ・義歯についての疑問の解消(ぬめり、がたつきなど)
 ・唾液腺マッサージ(食事前や、洗面時に行う)
 ・生活習慣病に対して、糖尿病連携手帳の活用
 ・家族に対して、口腔ケアの方法とタイミングを実施できた。

 今後は質問票の結果から、個別アプローチを行っていきたいと計画しています。
 介護予防事業は地域全体として取り組む必要があります。今後も引き続生き、先生がたには助言をいただくことができればと思いますので、よろしくお願いたします。

 ・東近江圏域における在宅医療推進について~口腔機能管理支援センターを柱にした取り組みについて
 湖東歯科医師会 口腔機能管理支援センター長 住井歯科医院 歯科医師 住井正勝 様

 湖東歯科医師会では、口腔機能管理支援センターを設けて、ここ4年取り組みをしています。口腔機能管理支援センター設立までの流れを簡単に説明させていただきます。
 2025年には支援が必要な方が増えると10年前に予想しておりましたが、その当時は、歯科訪問していただけるのか?訪問歯科をどこに問い合わせをしたらよいのか?など問われる、そのような時代でした。そのような状態でしたので、まずは窓口を一本化した方がよいだろうと、多職種連携に関わりながら、在宅歯科医療連携室を石黒先生に来ていただいて開始しています。当初は歯科衛生士の石黒先生にお願いして、研修等の企画をしておりました。その後、2代目として歯科衛生士の溝江先生に入っていただき、名称を口腔機能管理支援センターとして活動を開始しています。詳しくは、東近江保健所の小畑様に詳細を説明させていただきます。

滋賀県東近江健康福祉事務所(東近江保健所) 歯科衛生士 小幡鈴佳 様


 今回10年目となり、昨年度からまとめをしたいなってお話があり資料を作成していましたので、ご紹介させていただきます。
 県の事業ですので4年間で取り組みをさせていただくことにしました。当初は、住民さんへの周知も不十分で、歯科って訪問してもらえるのって感じでした。そのような状況ですので、在宅歯科医療を滋賀県でもしましょうとなり、湖東地区は医療連携が先進的に進んでいましたので、県より湖東歯科医師会に依頼する流れとなりました。当初は歯科衛生士の石黒先生に湖北から通っていただき、この地域で5年間走り回っていただきました。石黒先生には帳簿の整理や、ポータブルの機器の貸し出し、市の広報に掲載するなど周知も行っていただいています。
 相談件数も年に200件を超えるなど増加しています。そのような中、チームでの取り組みの必要性も高まり、7年目から口腔機能管理支援センターと名称変更して、歯科衛生士の溝井先生に入っていただき、取り組みを行っています。

これまでの成果は以下の通りです。
 訪問歯科診察を受けた方が、圏域ではH25年の339人に対してR4年は1179人と3.48倍に増加。(滋賀県では2.97倍)また、訪問歯科衛生士指導を受けた方が、圏域ではH25年の206人に対してR4年は876人と4.25倍に増加。(滋賀県では3.36倍)となっています。

成果のまとめ
 ・相談機能としての役割が担えた
 ・口腔機能管理の重要性が地域に広まった
 ・多職種との連携が進んだ
 ・在宅歯科医療を担う歯科医師、歯科衛生士の人材育成が行えた
 ・在宅医療の関係者への口腔機能管理の知識の普及が進んだ。体制整備の支援ができた
 近年力を入れている取り組みとしては、在宅歯科医療をチームで行うだけでなく、同行していただいて、空気感も含めて学べる機会にもなっています。
特別養護老人ホームなどにも積極的に研修に来て欲しいとの声もいただいている。

今後対等していく課題
 ・入退院支援の中での歯科的支援の強化
 ・介護保険システムにおける口腔機能向上体制強化に関する支援
 ・人材育成

 口腔機能管理支援センターでしかできないこと
 ・歯科医師、歯科衛生士の人材育成
 ・困難事例への訪問歯科診療の実施
 ・歯科衛生士の無料訪問アセスメントの実施
 ・歯科衛生士を雇用していない歯科医師の在宅医師医療への参画
 ・内科との連携が必要な事例に対するコーディネートの実施
 ・退院時カンファレンスやサービス担当者会議への参加など

 これまでの成果と課題を踏まえた今後のセンターの業務としては、特に以下の3つに力を入れていきたいと考えています。

 1. 各通所・入所施設における口腔機能管理体制整備への支援
 2. 入退院支援への仕組みづくりへの参画
 3. 各市町の地域ケア会議や一体化事業への参加
  また、お口いきいきチェックシートをこの地域で作成していますので、ぜひ活用してください。
以上です、よろしくお願いたいします。

【グループワーク】
テーマ『オーラルフレイル予防対策について』
視点
 〇オーラルフレイルかもという視点で、患者様や利用者様の変化に気づいたことはありますか?
〇それぞれの職種の立場から考えるオーラルフレイルの気づきになる症状は?
〇多職種が関われるタイミングは?、その時どうする?

【発表】

1G:
訪問看護師でも、訪問して口を見る機会がないので、口腔ケアがなかなかできない場合があります。デイサービス、ショートステイにつないで、口腔の状態を見ていただくことも検討した。また、栄養士さんはサービス担当者会議に参加する機会が増えてきているので、そのような際に声を出していくこも大事。口のことをケアマネさんも気になったら、歯科衛生士さんに入っていだだくように支援されることもよいと思う。京都ではチームで口腔ケアに取り組んでいるとのこと。歯科衛生士さんには取り組みをPRしていただくとよいと思う。
宇都宮様:できれば外来受診時に食べているかい?歯は大丈夫?などと入院してからでなくて、外来でそのようなことが普通に確認される、そんな風景になればと思います。

2G:
口腔ケアが後回しになっていると話がありました。口腔がフレイルにつながるとの認識がないように思われる。サロンなどでは男性の方で咽が気になることがありました。また施設でも、義歯が合わなくなった際に、すぐに外して食事形態を柔らかくするなど、口腔の状態が悪化することがあります。
夜、寝る前の口腔ケアが特に重要であると先生からお聞きしました。義歯など、口腔ケアを行うなかで、ADLが上がった症例もあり、口腔ケアの大切さを感じています。オーラルフレイルの周知の機会を持っていただくこと、啓発の機会が必要とのことで、グループワークで意見交換していました。

3G:
先ほどから話がでているように、支援者が病気に目がいってしまって、口腔ケアが後回しになってしまうことが、ケアマネにもあるとのこと。支援者だけが後回しにしているだけでなく、住民さんも身体の衰えは気にされる方が多いが、口の中のことを気にされていない方が多いように思います。高齢の方でも口から食べているかたはお元気でいられることを、周知していきたい。そのうえで、必要時に溝井さんのような専門職につないでいきたい。

4G:
軽い認知症の方で義歯が合わないことを伝えられずに食事量が減っていたが、歯科衛生につないで改善した事例報告がありました。また、竜王町では、歯科衛生士の訪問を積極的に行っておられる。歯科衛生士さんからは年齢に関係なく誤嚥は40代から見られ、そのような方は口腔の衰えが見られること、口腔に関することは全ての年代において大切であることなども周知していきたい。

5G:
オーラルフレイルは気づいたときは進行していることがあり、質問票を使用して調べていくと、言葉が不明瞭になっている時も気づきのポイントの一つであることが分かりました。
ただ、病気になられている方(訪問診療など受けられている方)より、歯科に通える能力のある方が歯が悪い方がおられるようにも思われるとの意見もあります。そのような方を、どういうふうに歯科受診に繋げていくのか? つなぐ際に誰に相談すべきかパッと顔が浮かびますか?と問うと皆さんの手が上がったので、この地域は連携が進んでいると思いました。オーラルフレイルにおいては、大きな病気ではなくて、ふとおかしい、と感じた時が大切であると思います。

指定発言
・国際医療福祉大学大学院 医療福祉ジャーナリズム分野 修士卒業生 歯科衛生士 北澤浩美 様


皆様の発表を聞かせていただいて、本当にこの地域は素晴らしなって思います。言葉が不明瞭などと気づいたときに、医療的なことだけでは、人はついていかないところで、ヨガの溝井さんのような取り組みが大切ではないかと思います。
私たちも、花戸先生が作られてドクターズレストランや、クリニックなどで活動できれば、
歩く速度が遅くなった、咽るなど、普段の中で様子を見て支援ができればと思います。
オーラルフレイルは高齢者だけの問題ではなく、あらゆる世代で大切で、例えば小学生がぽかんと口をあけているとか、そういったことも口腔機能の衰えです。
多職種の皆様には、なにかあの人おかしくない、たべるのが遅くなったなど、どんどん歯科に対してなげかけていただき、それを皆さんと一緒に考えていければと思います。

・湖東歯科医師会 輪田歯科医院 歯科医師 輪田茂樹 様

フレイの方は、そんなに衰えているわけではないので、自分が一番かと思いますが、どこをどうやるのか?を伝えなくてはと思っています。プレフレイルの段階で止めるのが使命と思っています。
 今、フレイルをどうやって乗り越えるかで介護にいくのか、止められるのか、歯科からいうと、口の中が衰えてくると、入れ歯を入れても噛めないという状態になっています。入れ歯を作るのが難しくなっています。入れ歯をいれないと噛めないと、フレイルになるので、気を付けたい。フレイルの脱却に栄養と運動は欠かせないと考えます。
歩行能力が1分で60m以下だとフレイルの可能性があると言われています。信号機が分速40mで設定されています。フレイル予防に力をいれるのがよいと思います。下からみると、噛めない、発音が悪い、こぼす、こういったことを歯科だけで見つけるのは難しいので、多職種の皆さんの観察力に期待したいと思います。
今日はありがとうございました。

 

その他
大熊様:とても立派に話されていて関心しました。以上が感想です。


宇都宮様:ACP研修会を行いますので、MLを見てください。


西谷様:看護師がリハビリをできるようにと研修会をしています。MLで送付しますので、希望者は参加ください。

小串先生:食べることは生きること、生きることは食べること。これが一番大切かと思います。


 

【連絡事項】 ・第189回 三方よし研究会 令和5914()18:30~20:30
○当番・会場 近江八幡市立総合医療センター
※次回は第2木曜日の開催となりますので、お間違えのないように!
多数の皆様のご参加をお待ちしています。