三方よしカレンダー

2021年5月21日金曜日

第161回 三方よし研究会のご報告

今回もZOOM活用によるWeb開催を行いました。

当番は医療法人社団昴会さんです。



総合司会 : 小串先生





【情報提供】 

○令和3年度 介護職員初任者研修について(NPO法人加楽 楠神さんより)




 

○今年もカルナハウスに羊がやってきました! (カルナハウス 前田より)

 




 進行:日野記念病院 上田さん



【医療法人社団昴会の紹介】

・東近江市立能登川病院:整形外科の紹介 笹谷さん



・蒲生医療センター:新施設(PET-CT施設・リニアック施設)の紹介 遠藤さん

 



30分学習会】

東近江市蒲生医療センター 放射線科 阪原先生より





PETとはポジトロン断層撮影法のこと

PET検査に用いられる放射性医薬品はFDG(フルオロデオキシグルコース)

・今のPETのほとんどはCTと一体になっており、FDGの集積をCTの画像に重ね合わせることにより、病変の部位を正確に診断できる。

FDG-PETの保険適用あり悪性腫瘍、てんかん、サルコイドーシスなど。

・ただ留意事項あり。検査前5時間以上の断食、前日からの運動の禁止、血糖値のチェック、撮影直前、退室前に排尿など。

・大腸に限局性集積が見られる場合、遅延像を撮ることがある。

SUV…癌へのFDG集積程度を表す指標として広く用いられている。

・病期の診断、重複癌、再発診断にも有用。

・治療効果の評価(悪性腫瘍しか保険適用はなし)



FDG-PETで見つけにくい癌小さな癌、糖代謝が低い癌、腎臓や膀胱など生理的集積の高い臓器の癌。

・当センターに設置されているPET-CT装置は最新のものボケが少なくCTPETのずれが少ない。

・迅速な検査と正確な診断を心がけ、住民の皆様や医療関係者の方々に信頼されるPET診断センターを目指します!




<質問>

小串先生 費用は?… 約9万円、3割負担だと3万円弱くらいか。

花戸先生 ドックでPETをする場合、どのような層に?…PET検診もある。前職場の浜松診断センターでは検診を受けた方とそうでない方では、受けた検診群の方が見つかりやすい、また生存率が高い、費用も安いとのデータの蓄積がある。



 【事例紹介】 




[発表1 東近江市立能登川病院 外科 伊藤 文 医師]


50代男性。ADL自立。独身。父は他界、母は音信不通。兄弟5人。繋がったことは無い。前職は15年程度

(経過)

2019年に食道癌ステージ3で大学病院に転院。放射線化学療法、胸腔鏡下食道亜全摘術、経胃管小腸瘻造設。その後小腸切除、小腸人工肛門造設術。

2020年に当院に転院。腸瘻経管栄養。転院調整が困難。

11月末から腹痛出現、腸閉塞、イレウス菅留置。癒着剥離術。

2月に高カロリー輸液+胃瘻栄養で県営住宅へ退院。

3月に当院再入院、その後食道癌再発にて大学病院へ転院。

(医学的な問題点)

・食道亜全摘術後、経口摂取不良。

・短腸症候群で点滴が必要。脱水、栄養障害、感染のリスク。

・多数の急変の既往あり。

 


[地域連携室 笹谷 MSW



(退院支援の介入時点の状況)

・転院前までの状況 病期の特性を理由に退職(解雇)。

・転院後の状況 20201月介入開始。

13月の状況)

・経済状況 傷病手当金のみ。介護保険は末期癌でないため非該当、生活保護も対象外。

・家族への連絡 妹とは喧嘩してから連絡がつかない。甥もいるけど昔あったきりでわからない。携帯電話にも登録はしていない。

・新章手帳1級は所持。

・市本人に判断能力があるため、本人からの意思表示がなければ市からは積極的には動けないとのこと。

・戸籍の照会を提案するが、母の住所地のみ判明したが、本人が取り寄せを拒否、身元保証団体と契約するが費用の捻出が困難。

・県営住宅申請に関わる書類記載や申請書類準備を支援。元職場の方が申請同行。

・訪問看護事業所並びに地域包括支援センターと連携。

・入院中の患者の心情等解雇となり寮も解約、住むところが亡くなった。

・元上司の心情等引受人にはなれない。妹さんには何度も連絡しているが、出ていただけない。結局自分しか動いてやれなくて。乗りかかった船、病院には迷惑はかけられない。早期に退院させてやってほしい。

(まとめ)

一貫して受け身であった患者。どのように関われば自己決定支援ができたのか。60歳の方。もう難しい。わかっていただくのは厳しい。落とし所は?本人は困っていない→自覚してもらう、意識してもらうにはどの様に働きかければ?

在宅に不安を抱えたままの退院。どの様なサービスを利用すれば安心に繋がったのか。



[訪問看護ステーションすずらん 西川Ns



・退院後の自宅でのご様子…医療保険で週2回の訪問の他、薬局と近医の訪問診療。

・注入は退院後一度もされていなかった。経口で水分500750mlと内服。

・楽しみごととして少量のチョコレート菓子を摂取。

・点滴は高カロリー輸液を1日2回自己にて更新。トイレに行く時に輸液ポンプのアラームが鳴ることがあったが自己対応可能だった。

・週1回入浴。入浴後の疲労感はあれど喜んでいた。

・腹痛から1日4回の鎮痛剤プラス糖尿の鎮痛剤を1日24回服用。

・腹痛で1日のほとんどを布団に丸まって休まれている状態。

・通院はバスと電車で、地域包括支援センター職員と共に病院まで来ていた。

・賭け事の結果を知りたいと毎週土曜日に近くのコンビニへ新聞を買いにいかれていた。体力がなくなってくるとコンビニ店員に自宅へ連れ帰ってもらったりタクシーを利用したりしていた。

・外出時に点滴を上手く持ち運べず、何度か訪問看護の緊急訪問があった。

・布団の周りに点滴や内服薬のゴミが散乱している状態。

・洗濯機がなくて洗濯ができず、入浴後の服がなく同じ服を着ていた。

・手続き後は地域包括支援センターから障害者支援でヘルパー対応してもらえるようにしてもらっていた。

・不安がかなり強い状態で、一人でいると不安で気が狂いそうと話されていた。

・何の楽しみもなく、こんななら死んだ方がマシやとも話されていた。

・在宅では1ヶ月ほど。退院までに住民票やマルフク手続きなど、もう少し体制を整えることができていれば

 

(質問)

宇都宮さん どこに穴が空いていた?もう少し詳しく伝えてあげてほしい。

伊藤Dr. 食道の端っこと、胃菅から腸瘻チューブを入れて小腸まで誘導するやり方だった。入っているのは上腹部から。結局は胃瘻となっていた。

 

 

【グループワーク】

テーマ『独居で医療依存度が高い、若年層患者の退院支援』

・どのようなサービスを利用することで患者が安心して在宅退院できたのか


 (発表)

G


・インフォーマルな関わりが持てなかったか。

・介護保険制度に繋がらなかったということだが、身障からサービスにつながったのは良かった。

・この方の意思にどうやって寄り添っていくのか?はポイントだったか。

・障がいには薬剤師訪問もできる。

・制度によらないところで、地域の保健師さんなどの巻き込めていけたか?住職さんなども?

・不安が強い中、どの様な人間関係を構築していくか、不安感もあった。

・制度の狭間に陥られる方へどのような支援を行なっていくか。

・ホスピスもある。


 

G


・色々問題があったようなケースに見受けれたが、そもそも上手くいったんじゃないか?さまざまな地域資源を使って1ヶ月暮らせたんだから。

・本人のモチベーション、何がしたかったのか?ギャンブルの内容をもっと掘り下げられたら。

・人間関係そもそも希薄とは聞いているが、元上司の方から紐解いていくことや、友達関係の紐解き

・癌患者さんの支援団体につなげるなども。

STとして食べる楽しみへのトライもできなかったか。

・本人の精神面ふっと本人が沈むようなときに、本人の気持ちが出てくることがあるので、そのような時に支援する。

・お金生活保護の一部支給もあった?


 

G


・ケアする側での連携は取れていたのではないか。

・地域における共同資源を活用する

・ずっと一人で大きな病気を抱えていて、生活歴からも喪失の連鎖からセルフネグレクトにつながっていったのかと思う。

・元上司さんがよく動いてくれていた。元上司さんをサポートする形で、本人に伴走する方法。

・訪問看護の役割の大きさを感じさせられた。

・もう少し退院前に話を詰めることで地域のインフォーマル支援につながり不安感も取り除けたのではないか。

・医学的にみてこの方は「ほぼ在宅、時々入院」ではなく「ほぼ入院、時々在宅」かなと感じていた。ご本人の安心をどこに置くのか。

 

 

G


・本人さんの在り方にスポットライトを当てて話した。

・本人が「不安で気が狂いそう」とのことだったが、自分自身の身体のことをどこまで把握されていたのか?

・チョコ以外の楽しみは?コンビニに毎週いかれていたとの賭け事の内容はロトだった。本人さんが不安を解消できる何かを探していく。

・点在する情報をつなげていく。病院でもかき集めていき、在宅につなげていく視点。本人さんありきでサポートしていけるといいなと話していた。

 

 

G


・病状が悪化していく中で、本人は自分の身体がどうなっていくのか、気持ちとのギャップに不安や切ない気持ちもあったのだろう。その中で意思決定支援に関して、退院してもらわなければならないのだろうが、本人に在宅のメリットなどをじっくり話す事が大事。材料を話す、十分な説明が必要。

・介護保険対象ならケアマネジャーだが、地区担当の保健師、包括の主任ケアマネ等、沢山の関係者を作ってあげられれば。

・最後、人生会議の部分で、ホスピスなり看取りの部分で本人の話をゆっくり聞いていくことが大事。

 

 

〇指定発言:宇都宮オフィス 宇都宮 宏子様


 大学病院からこちらへ来た時が一つの分岐点だったかと思う。彼自身はどの様に病状のことを感じていたんだろう。転院してきたときに、大学病院から経済的なことや家族のことなど様々な情報がきているはずで、ご本人の生活の再構築をする作業を、医療者の側でまず整理を行なわなければならないが、それにはまずご本人がどう思っているのかを誰かが確認する必要がある。発表でも精神科の先生のグループからのご発言もあったが、静かな環境で一人か二人くらいの人数で、本人のそばに座って背中をさすりながらでもいいので、大変だったね、でもそばにいるからね、一緒にいるからねと言いながらチームで動いていくことが必要だったのではないかと思った。何とか妹さんと連絡していやいやちょっと待て、なぜ彼がこんなに連絡取りたくないと言っているということは、よほど彼のこれまでの人生で連絡したくないことがあったんだね、じゃあそこは置いておこうね、といって彼自身と向き合っていく必要があったのではないか。私が病院にいたならば「○○さんチーム」を作るだろう。こういった人はこれから増えていくので、本人と向き合っていくことが大事。今も決していい状態ではないのでしょうから、人生会議ではないけれども、話す場を作って頂きたいなと思います。支援者の皆様、お疲れ様でした。

 

○医療法人社団昴会居宅介護支援事業所 孫工ケアマネージャー


 支援者皆さんがやれることはやっていただいていたケースかと思う。家で一人で不安で眠れないのが一番のポイントではなかったか。学ぶべきものがいっぱいあったかと思う。「早く迎えに来ないかな」という方が数多くいる。学んだことは人とのつながりということが大事だということ。地域で一人でも多くの人とつながっているということが生きる実感につながるのではないか。つなげていくという役割を自覚して支援にあたっていきたい。

 

 

【自己紹介】

 初めての参加者を中心に自己紹介してもらいました。

 

 

 

●第 162回 三方よし研究会 令和3 6 17()18:30~20:30

グループに分かれて以下の内容について話し合ってもらう

・どのように関わることで意思決定支援が可能であったか

 

○当番 ・ 会場

東近江介護サービス事業所協議会(施設部門・在宅部門きいと

ZOOM活用によるWebで開催


本日もお疲れ様でした。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

また来月、お出会いいたしましょう。