三方よしカレンダー

2023年1月19日木曜日

第181回 三方よし研究会開催のご報告

この度、第181回の三方よし研究会が開催されましたので、ここにご報告致します。


◇日時;令和5年1月19日(木) 18:3020:30

◇会場:ZOOM活用によるWEBでの開催

当番:独立行政法人国立病院機構東近江総合医療センター





【ゴール】

○がんのリハビリテーションについて考える。

○予後未告知のがん患者への在宅療養支援について考えるとともに、グループワークによる意見交換を通じて、理解を深める。

○各職種が顔の見える関係を作ることができる。




【情報提供】

●病院救急車更新に向けたクラウドファンディングについて(東近江総合医療センター 小西さんより)

・皆様のご協力のおかげで、現在500万円、病院への直接寄付も含めると700万円の寄付が寄せられています。現状厳しいところもありますが、引き続きどうぞご協力のほどどうぞよろしくお願いいたします!


●難病応援センター開業にあたって(支援センター太陽 浅井さんより)

・現在大津に一箇所あるだけの難病応援センターを東近江市に2月に開業予定しています。ただ昨今の建築資材の高騰もあり資金があと300万円足りません、皆様のご協力のほどどうぞよろしくお願いいたします!




 

進行:増田英和さん(東近江総合医療センター)



30分学習会】

『がんのリハビリテーションについて』

東近江総合医療センターリハビリテーション科 家中照平主任理学療法士


・がんのリハビリテーションについては、適切な研修を終了した理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が個別に20分以上のリハビリテーションを行った場合に1単位として算定が可能。
・目的として、がんの診断時期、治療開始時期、再発転移時期、積極的な治療が受けられなくなった時に合わせて、それぞれ予防的、回復的、維持的、緩和的なリハビリテーションと目的が変わってくる。

・がん患者へのリハビリテーションにはエビデンスがあり、化学療法前後に身体活動性が低下し、筋力や運動耐容能、身体機能の低下が生じてくるためリハビリテーション治療(運動療法)を実施することが推奨されている。

・副作用や転倒、骨折などの副作用と、日常生活動作の向上、生活の質といった利益のバランスが必要。

・リハビリテーションには事前情報の確認、運動実施前の評価、実施後の中止条件による判断など細かく対応している。

・様々なリスクがあり、使用されている抗がん剤の主な副作用の確認、血液データ推移の確認、その日の症状の確認など大事にしている。




【症例報告】

『予後未告知のがん患者への在宅療養支援』

~家族が告知を望まない場合~

東近江総合医療センター看護部 下井まどか南4病棟副看護師長


・Aさん、男性、7歳代後半。妻との二人暮らし。次男家族が車で30分圏内に在住。妻は要支援2。畑作業が趣味。
・2022年5月に直腸がんの診断。7月に高気圧酸素療法開始、化学療法の副作用症状による苦痛出現。8月に入院、横行結腸人工肛門増設術。

・術後1週間で本人は退院希望、医療者としては2〜3週間の入院の必要性とズレが生じ、バタバタと短期間で在宅へ。

・予後については家族だけが聞いており、本人告知がなく意向が確認できないままの退院となった。

・退院後は在宅医、訪問看護ステーション、在宅薬剤師、ケアマネジャーそれぞれの連携にて本人の希望は実現できた。
・本人、関係専門職皆が告知してほしい、告知した方が良いと考えていたが、奥さんだけが「伝えると弱ってしまうので伝えるのは絶対にやめてほしい」と頑なに拒否、結局そのままの最期となった。

・今回の困難は、身体状況やストマ手技の獲得ができていない現状での在宅は難しいと感じていた病棟看護師と自宅に早く帰りたいという患者との思いの認識のズレがあった事、予後告知に関して家族が希望しない場合に、本人が最後の時間の過ごし方を考えるためにどのように話を進めるべきかにあった。




【グループワーク】

テーマ『患者の意思決定支援に対する支援方法について』

・家族が告知を望まない場合にどうすればよいか。


【発表】

<1G>

・第一声としては、支援する側としては、頑として告知反対されるのは正直困るなと。

・本人の知る権利をどうやって確保するか。グループの半数以上は「知りたい」との意見だった。

・入院中は告知していく一つのチャンス?主治医の意向も大きく関係してくる。

・一方告知しても長生きする場合もあり、それほど重要性は高くないのでは?との意見も。本人の望む形、満足する形で最期を迎えられるようにしていくことが重要ではないか。


<2G>

・告知云々というよりもいろんなことを改めて早いうちから話しておくことが大事。このケースでは2005年の発症時くらいからか。そのためには信頼関係が重要。告知はその信頼関係の一つなのでは。

・告知は信頼している方から話すことが大事な場合もあるのではないか、その意味で宗教者も大きな存在。

・181回参加されているこのメンバーに聞いてもらったらそれなりの答えが出てくるのでは?

・本人の自己決定について、家族との乖離が出てきた場合にガイドラインのようなものはあるのか?



<3G>

・在宅チームとしては、困ったことは何もなかったとのこと。むしろ病院側が短期間で困ったのではないか。

・麻薬処方管理できる在宅薬剤師がいることの安心感。



・在宅にいい家があり畑があり良い医者がいて隣近所の繋がりがある、という環境が都会にはないところも多い。そのようなところ、狭いマンションで関係者が皆入れないような所では、ホスピスには高すぎて数も少ないので入れないので、サ高住の医療版のようなところが増えており、だんだん増えてくるのではないか。在宅の外付けサービス?形態としては施設。



<4G>

・奥さまの不安を取り除くような働きかけ、その理由はなんだったのかの話。

・手技ができない=退院ができないという病院の論理があるが、その中で今回のケースは地域の力を信じて退院につなげたことは、プロセスとしてはすごいことだったのではないか。

・現在告知を躊躇わない若手のDr.が増えている、個人情報の観点から本人に伝えないといけないとの考えからだが、果たして伝え方含めそれが正解なのかという問題提起があった。

・残された奥さまのことを考えて対応された、という話が印象的だった。



【コメント】

●滋賀県看護協会在宅ケアセンターみのり 鹿野看護師より

・在宅にいて告知が良いのかしない方が良いのか迷う場面はやはり出てくる。その中で大事になってくる因子として環境、サポート体制、医師等との信頼関係、本人家族の性格、告知に対する思いの強さ、があるのではないか。

・告知しなくてよかったケース…認知症の奥様を看ていた旦那さんが大腸ガンになったケース。息子から絶対言ってくれるなと言われモヤモヤしながら対応していたが、看護に専念されつつ最期は病院で「ワシもうあかんのかな」と言われつつ逝かれた。

・告知してよかったケース…胃癌末期。在宅で吐血した際に「もうアカンとなったら息子に絶対伝えたいことがあるから、絶対伝えてくれよ」と言われ、その時が来た時に伝え悔いなく逝かれたケース。

・告知が日本でクローズアップされる背景に宗教の存在があるのではないか。日本は仏教の国であり天国地獄がある、無になるという観念だが、キリスト教圏では天国に召されるという観念。海外でボランティアをしていた際、15歳の少女が聖書を出してきて「私にはこれがあるから大丈夫」と話したことが印象に残っている。

・今回のケースについては、いい亡くなり方だったのではないかと思う。



●花戸先生より

・今回の症例の在宅チームは私の担当だった。モヤモヤ感がかなりあったケース。

・退院支援としては、ストマやインスリン、疼痛ケアについては訪問看護、訪問薬剤師が中心となって対応していただき、うまく着地できた、という感じではないか。

・ACPとしては、この方以前にS状結腸癌、前立腺癌を患っていたが比較的早く治療できコントロールできたため、今回も早く帰りたいという希望だった。しかし今回は未分化癌で進行も早く、本人に早く伝えたかったし本人も知りたがっていた。ただ呉服屋を営んできた昭和の社長夫妻であり、奥さまは伝えたら弱ってしまうとの考えだった。20分本人を診察して1時間奥さまを説得するが、絶対に告知には首を縦に振らなかった。ただ本人逝去後に残るのは奥さまであり、奥さまの気持ちを尊重して対応した。最後の1週間はPCAポンプ、皮下注射で何となく本人も分かっておられたのではないか。しかし結局告知はしなかった。訪問看護のお風呂や自分、薬剤師の話も楽しみにしていながら最期逝かれた。その時皆がこれで良かったかなと思えればよいかと思わせられる事例だった。





【連絡事項】

・第182回 三方よし研究会 令和5年216日(木)18:3020:30

○当番 びわこリハビリテーション専門職大学

ZOOM活用によるWEBでの開催(予定)



今回は告知について、様々なご意見をいただき勉強になった時間でした。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

また来月、お待ちしております!