本日、第218回の三方よし研究会が開催されましたので、ここにご報告いたします。
◇日時;令和8年1月15日(木) 18:30~20:30
◇会場:ZOOM活用によるWEBでの開催
◇当番:NHO東近江総合医療センター
テーマ「多職種連携による退院支援について」
【ゴ-ル】
○退院支援における多職種連携あり方について考える
○顔の見える関係を構築するために必要なことを考える
【情報提供】
●健口いきいき広場2026「介護の力で食べる喜びを~美味しい料理で元気に長生き~」のご案内
日時:R8.2.11(水・祝)13:30~15:30 場所:アピアホール
内容:ケアプランセンター加楽の川上さんや、魚繁大王殿の岩崎さんを迎え、介護の力や嚥下食をテーマに開催されます。
●第9回 日本medical village学会・三方よし研究会市民公開講座のご案内
日時:R8.3.15(日)13:00~16:00 場所:能登川コミュニティセンター
内容:順天堂大学名誉教授、一般社団法人がん哲学外来名誉理事長でMedical Village学会理事長であり新渡戸稲造記念センター長の樋野興夫先生先生、滋賀県がん患者団体連絡協議会の菊井津多子さん、写真家國松康弘さんによる講演が予定されています。
日時:R8.2.14(土)14:30~16:30 場所:湖東信用金庫近江八幡支店
内容:地域の多職種が普段の活動や悩みを共有し、互いの役割を理解し合い、実際に頼り合える関係作りの第一歩として企画しています。ご参加お待ちしております。
【挨拶】
東近江総合医療センター 院長 野﨑 和彦さんより
滋賀県の保健医療計画において口腔ケアが強く意識されている。噛む力が強いほど死亡率が低いというデータや、子供の歯並びトレーニングの重要性が指摘されている。今後の在宅医療において、疾患中心の病院から「生活を見る在宅」へのシフトが必要であり、そのためには多職種の連携が極めて重要です。
「口腔ケアの現状と課題」
東近江総合医療センター 歯科口腔外科医長 堤 泰彦さん
• オーラルフレイルと生存率への影響…「オーラルフレイル(口腔機能の低下)」は、要介護リスクや総死亡率を約2倍に高めることが研究で示されています。しかし、フレイルの状態は4段階に分けられ、初期の段階(レベル3まで)であれば、適切な介入によって元の健康な状態に戻すことが可能です。また、歯の数が20本以上残っている人は生存率が高いというデータもあり、「8020運動」の重要性が裏付けられています。
• 誤嚥性肺炎の予防効果…高齢者や免疫力が低下した患者にとって、口腔内の細菌は誤嚥性肺炎の大きな原因となります。適切な口腔ケアを行い、唾液の分泌を促進して自浄作用を高めることで、誤嚥性肺炎の発症率を約半分にまで下げることが期待できます。特に、震災などの非常時には生活環境の悪化から口腔ケアが疎かになり、肺炎が増加する傾向があるため注意が必要です。
• 術後管理や栄養摂取におけるメリット…手術前後に口腔ケアを行うことで、術後の感染症予防や入院期間の短縮につながるというデータがあります。また、口腔ケアによって唾液が増えると、食べ物をまとめやすくなり(食塊形成)、嚥下反射が誘発されやすくなるため、経口摂取の維持や食事時間の短縮にも寄与します。
• 医療現場における具体的なリスク…経管栄養(濃厚流動食)を使用している患者は、糖分を含む食渣が口腔内に残りやすく、「ボトルカリエス」のような急激な虫歯の進行を招くリスクがあります。これが進行すると、免疫力が弱い患者の場合、敗血症などの重篤な全身疾患を引き起こす可能性もあります。また、入れ歯の咀嚼効率は天然歯の約3割程度にとどまるため、適切な維持管理が不可欠です。
• 病院における現状の課題とマンパワー不足…病院内では入院時のスクリーニングを行っていますが、マンパワーの制約から、歯科専門職が全患者に介入することは現実的に困難です。また、退院支援のカンファレンスに歯科が十分に介入できておらず、地域との連携が不十分である点も大きな課題です。口腔ケアの優先順位が他職種の間で低く見積もられがちな現状もあります。
• 解決策としての「OHAT」の活用と優先順位付け…限られた資源を有効活用するため、直感的に口腔状態を点数化できる評価指標「OHAT(Oral Health Assessment Tool)」の導入を提案しています。これにより、1〜2分という短時間で客観的な評価が可能となり、重症度の高い患者を優先的にピックアップして歯科が重点介入する体制が構築できます。
• 多職種連携と地域への継続的な支援…今後の展望として、歯科専門職だけでなく、看護師や介護職が共通の評価マニュアルを用いて基本的なケアを行い、専門的な介入が必要な場合に歯科に繋ぐという役割分担が重要です。また、退院時サマリーに口腔情報を記載することで、地域全体で「切れ目のない口腔ケア」を提供し、生活を支える体制づくりを目指しています。
【活動報告】
『多職種連携による退院支援について』
①「薬剤師が行う退院支援の取り組みと課題」病棟業務管理主任(薬剤師) 大住 悠介さん
•地域薬局との連携: 入院前からかかりつけ薬局と情報を共有し、退院時には副作用や管理状況をまとめた「退院時薬剤管理サマリー」を地域薬局へ送付して、継続的な支援を推進しています。
•運用の課題: 薬局からの返信率が約35%と低く、患者の来局に合わせたより早期の情報提供(サマリー発行)が求められています。
•多職種間の情報共有: 薬剤師と薬局間で共有された情報が、ケアマネジャーやソーシャルワーカーなどの他職種に届いていない点が課題です。
・リハビリテーション科では、急性期から在宅まで切れ目のない支援を目指し、入院早期から身体・認知機能の評価に基づいた退院計画を策定しています。
・具体的には、多職種と連携してADL等の情報を共有し、住宅改修や福祉用具の導入を検討することで、患者が安全に生活できる環境を整えます。これにより、退院後の窒息や転倒事故を未然に防ぎ、再入院リスクの低減やQOL向上に繋げます。
・課題は、人員不足や実施単位数が重視される診療報酬制度の影響により、カンファレンス参加などの連携業務に時間を割きにくい点です。また、地域におけるリハビリ資源の格差や、情報共有の仕組みが統一されていない点も解決すべき課題として挙げられます。
・背景と必要性: 高齢化や経済的困窮など背景が複雑化したケースが増加しており、限られた
労働力でこれに対応するには、専門性を活かした効率的な職種間連携が不可欠です。
• 現状の課題: チーム医療は浸透しているものの、職種間連携はまだ限定的です。連携のメリットが不明、または自業務で手一杯という課題に対し、小人数から意識を共有する「スモールスタート」でのルール化を検討しています。
• 具体的な改善策:
○看護要約の充実: 在宅側が求める情報を再学習し、退院後の異常早期発見や適切なケアに繋がる情報提供を目指します。
○外来連携の強化: 外来治療患者の問い合わせに対するルールを明確化し、対応のばらつきによる混乱を防ぎます。
• 目指す関係性: 単に顔がわかる段階を超え、互いの専門性を尊重し「信頼して任せられる関係」を構築することで、地域全体で切れ目のない支援を提供します。
【グループワーク】
○病院と在宅とのギャップをどういったところに感じますか。また、ギャップを埋めるために必要なことはありますか。
○多職種間で顔の見える関係性を構築していくにはどのようなことが必要ですか。
【発表】
<1グループ>
•病院内の情報が在宅側に降りてこず、在宅側が病院内の状況を把握できないことが課題として挙げられた。
•またカンファレンスに栄養士などが参加できない場合もあり、限られた時間でケア、栄養、生活、食事といった多岐にわたる情報を全て共有し繋げることの難しさが指摘された。
•急性期病院の多忙さもあり連絡が取りづらい現状があるが、普段から顔を知り、「あの人に相談してみよう」と思える関係を築くことが最も重要。このような研究会を継続し、顔を出して知り合い、困った時に助けを求められる関係を作っていくべきとの結論に至った。
<2グループ>
•入院診療と訪問診療では求められる役割が異なるため、ギャップがあるのは当然であり、それを埋めるために密な情報共有が必要。
•今後はオンラインメッセージ、チャット、個人カルテなどを活用したネットワークによる多職種間での「見える化」が必要になるとの意見が出た。
•ケアマネジャーが往診に同行し医師と直接話す機会を増やすなど、他職種と積極的にコンタクトを取り、相談しやすい関係性を築くことが重要。
•病院でのADL能力と、実際の在宅での生活動作には情報に違いやギャップが生じやすい現状がある。
•病気の予後や経過について、本人や家族がどこまで理解できているかという点に病院と在宅の差を感じるとの意見があった。
•退院後に嚥下(飲み込み)のリハビリが必要な場合でも、外来で嚥下に対応しているクリニックが非常に少ないという地域性の課題も挙げられた。
•サマリー等による情報共有だけでなく、退院後の情報を病院側へフィードバックすることで、入院期間中のギャップを埋めていく必要がある。
<会場グループ>
•相互理解の深化: 在宅と入院それぞれの「力(強み)」を互いに深く理解しなければギャップは埋まらないため、「スモール・トゥ・ビッグ・ピクチャー」の視点で進めるべきとの意見が出た。
•がん患者を中心としたACP(人生会議)や看取りに関しても、多職種連携を深める必要がある。
•退院後の患者の健康を守るためには、医師やリハビリ職だけでなく、歯科医師を含む多様な職種の連携が不可欠。
【病院と在宅のギャップの正体】
• 時間軸と視点の違い: 病院は「退院」という限られた期間内のサービスが主体ですが、在宅はその後も続く「生活の安定」や「QOL(生活の質)」を重視します。この視点の違いがギャップを生みます。
• 情報の質の偏り: 病院は医学的情報が豊富ですが生活や家族の情報が不足しがちです。逆に在宅は生活情報が豊富ですが医学的情報は断片的になりやすいという特徴があります。
• 役割理解の不足: お互いの役割や専門性を十分に理解できていないことも、支援のスタート地点を遅らせる要因となります。
【ギャップを埋めるための対策】
• ハブ機能の強化: 早期から入院プロセスに介入し、必要な情報を各所に繋ぐ「ハブ(拠点)」的な機能を持つ部門(退院支援を担う専門職)が病院側に不可欠です。
• 「思い」の受け渡し: 単なる事務的な調整ではなく、病院側が大事に思っていること、お願いしたいこと、あるいは入院中に課題として残ったことなどを「思い」と共に共有し、生活へ繋げていくマネジメントが重要です。
【信頼関係の構築】
• 個人の関係性: 組織名でのやり取りだけでなく、「〇〇さん」という個人としての関係を築くことで連携の幅が広がります。
• 思考過程の共有: 成功事例だけでなく失敗事例も共有し、他職種がどのような思考過程を経て判断したのかを学び合うことが、連携を深める近道です。
●東近江健康福祉事務所 奥井 菜穂さん
【第4版改訂の重点ポイント】
以下2点に特に力を入れています。
• リハビリテーション: 入院中のリハビリ職とケアマネジャーが早い段階から情報連携を行い、退院後の生活イメージを共有することで、在宅のケアプランに反映させる視点を強化しました。
• 口腔機能管理: 入院中に新しく導入された口腔ケアの方法やグッズの情報は、在宅へ伝わる際に抜け落ちやすいため、これらを確実に引き継ぎ、在宅での管理を継続できるようにしました。
【連携の枠組みの拡大】
今回の改訂では、これまでの「病院とケアマネジャー」という点での連携から、ケアマネジャーを含む「在宅療養支援者全体」と病院との連携へと枠組みを広げたことが大きなポイントです。今後も病院、訪問看護、ケアマネジャーなどが連携の流れを共有できる機会を継続していきたいと考えています。
【連絡事項】
・第219回 三方よし研究会 令和8年2月19日(木)18:30〜20:30
○当番 湖東歯科医師会