年の暮れも迫ってきました12月17日の土曜日、第180回目となる三方よし研究会が開催されました。
今回は東近江医師会、近江八幡市蒲生郡医師会さんの主催にて、久しぶりの会場リアル開催とWEBオンラインを組み合わせたハイブリッド形式にて開催されましたので、ここに報告いたします。
【ゴール】
〇医療的ケア児の現状について知る
〇生命の安全と共に、人とのふれあいや学びの大切さについて学ぶ
〇医療的ケア児と家族の「普通の」暮らしについて考える
【情報提供】
〇東近江総合医療センターによるクラウドファンディングについて
・東近江総合医療センターでは、市の地域医療を守るために日夜救急車が出動している(搬送実績は3年間で約120件、令和3年度は33件)。
・現救急車の現状は2009年製造、2018年に東近江行政組合から譲り受ける。
・ただ走行距離が約20万キロとなり、エンジンの出力低下が著しくなっている。
・そこで12月13日~2月10日まで、All or Nothing方式によるクラウドファンディングを行うこととした。目標金額は2,000万円。
・ぜひこの地域に根差した機能を高めるための役割を全うできるために、クラウドファンディングにご協力・ご支援のほどお願いしたい。
〇小梶さんより
・本年度会費を納入して頂いた方に、小串先生御提供の田中奈保美さん著『ボケてもガンでも死ぬまで我が家』をプレゼントいたしますので、よろしくお願いいたします。
【特別講演】
医療的ケア児と家族の「普通の」暮らしとは?
〜小児在宅医療とうりずんの活動より〜
栃木ひばりクリニック院長、認定非営利活動法人うりんず理事長 高橋昭彦先生
1.地域で普通にくらすこととは
・おはようから行ってきます、活動、ふれあい、おやすみなさいまで、いろいろな行為がある。
・食べるなら食形態、入浴なら肩まで浸かる、出かけるなら行きたいときに交通手段を使う、休むならリラックスする…このようなことが普通にできない小児がいる。
・例えば、トイレのドアを開けて排泄する、人の目を気にしながら外出する、3時間以上続けて眠ったことがないetc...
・このような小児たちに、普通の暮らしを味わっていただけるようにしたい。
2.子どもと家族に関わる理由
・1997年のある日、大学病院のソーシャルワーカーより「お家に帰りたい人工呼吸器の3歳児がいます、先生何とかなりませんか?」との相談を受ける。
・出会って衝撃…この小児の在宅医をお受けしたい!しかし勤務先の病院からは、先生の休みの日にも対応できる人も必要、となるとそれは厳しいでしょうとの指示を受け、断念。
・この依頼を断ったこと、責任をとれる立場でないとお受けできない現実に直面した。
・そうこうするうちに、研修旅行でニューヨークへ。車を走らせていると、ものすごい勢いで追っかけてくる救急車、パトカーが。何か悪いことでもしたのかとドキドキしていたら、あっという間に追い越していった。そう、その日まさに9.11の瞬間に私はいました。ワールドトレードセンタービルから約3キロの地点。この出来事で大きく私の価値観が変化した。
・その時にあるシスターの言葉がすっと胸に入ってきた。「目の前のことをやりなさい。そうすれば必要なものは現れる」(エイズホスピス・イン・ワシントン)
・それが私の開業のきっかけです。
3.ひばりクリニック
・栃木にて2002年5月に開業。2003年1月より小児在宅医療を開始。さらに2008年6月にはうりずん開設。2016年4月には病児保育かいつぶり開設。コロナに負けていられない...
・家庭医の役割としては、急性期・慢性期の対応から、予防・介護相談・調整・感染対策・子育て支援と幅広くある。
・お子さんの予防接種は「かぶりもの」を着用。「ちからをぬけば、いたくないよ~1・2・3!」その後は拍手、がんばったね~えらいね~すごいね~と声をかけ、ごほうびシールをあげる。
・外来診療の延長線上に在宅医療がある。
4.医療的ケアが必要な子どもたち
・医療の進歩により、小さな赤ちゃんや、生まれてすぐに手術が必要な病気を持つ赤ちゃんや、様々な治療を乗り越えられる赤ちゃんが増えている。一方子どもと家族を支える社会資源や必要な福祉サービス、保育等は充足していない現状がある。
・医療的ケアとは、代表的なものとして、たん吸引や経管栄養酸素吸入がある。
・痰の吸引なら必要な時に痰をとる人が必要、気管カニューレならつまる・抜ける前提で再挿入の準備の必要、人工呼吸器ならアラーム対応や電源・バッテリーの問題etc...様々な対応が必要となってくる。
5.小児の在宅医療
・小児在宅医療の役割としては、対象は子どもと家族、専門医療機関は検査・治療から緊急時入院、在宅医は日常的な診療、家族の診療、きょうだい支援、在宅チームでの情報共有連携などがある。
・つまり、子どもと家族の、今と今後を考えるという役割。
6.放送大学DVD~共に生きる社会を目指して~
7.うりずんの活動
8.どの子ども・家庭にも起こり得ること
・退院前カンファレンスから在宅での対応まで~様々な職種での連携対応
・研修医の感想「...これほど多くの準備と時間がかかるのかということを目の前で実感できました。保護者(主に母親)にかかる負担の大きさを医療スタッフ側が退院前より理解し、家での生活を想像しておくことの重要性を改めて学ぶことができました」
・学校へ行こう!その支援。普通小学校へ通学した女の子のおはなし...
・時に関係性は専門性を超える...(こともあるのでは)
・お母さんに会いたい。母と子どもの最期の再会。
・大人への階段。4歳で最初に担当したあの子供が、今26歳となって手伝ってくれています、の写真。(ここでブログ担当は号泣...)
・子供の移行期の課題…体が大きくなる、親も年を取る、日中活動の場が少ない、親亡き後の見通しが立たないetc...
・市役所に就職したかつての患者さんが遊びに来てくれました...
・東日本大震災の教訓。災害の備えは平時から。
・本当に信頼し合っている間柄になっていれば、連絡しあわなくとも、なんとかしてくれるもの...?
9.子どもの日々の暮らしを保障する
・チームで関わる在宅ケア
・経験値0を1に増やすということ。重症児や医療的ケア児とその家族は、経験値0の経験が大変に多い。そこで、その年の子どもなら経験するであろうことを、一つずつ経験させていってあげるようにしている。経験値0→1に増やすことは、子どもの成長と豊かな暮らしにつながる(生まれて初めてうさぎを触っている小児のお写真と共に)。
・ハレの日、ケの日。北海道旅行なども。
10.きょうだい支援の大切さ
・クラウディア・エヴァートさん…きょうだい関係を称えるSiblings Day(4月10日)を提唱した方。日本での最後の公演にも行ってきた。日本ではNPO法人「しぶたね」さんが日本でのきょうだいの日を呼びかけ、制定している。
11.ここがすごい!医療的ケア児支援法
・医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律案の全体像
・ポイントは、家族も支援の対象であること、国や地方公共団体の責務を明らかにしたこと、家族任せにしない方針、普通の児童と共に教育を受けられるよう最大限配慮していること、18歳までの法律ではないこと、地域格差への配慮があること
12.誰も排除しない社会
・2005年困難を抱えた子どもと親に寄り添うため、認定NPO法人だいじょうぶが日光に設立された。
・活動としては、子どもと親の相談室、家庭自動相談室、子育てヘルパー「育児・家事訪問支援事業」、子どもの居場所「ひだまり」、乳幼児の認可外保育施設「キッズルーム」、子どもを虐待してしまう親の回復プログラム「MY TREE ペアレンツ・プログラム」等々あり。
・大切なのは、こども・おとなまるごと支援!
13.元気の出るお話「外出は社会参加!」
・人工呼吸器をつけた子どもの親の会のお兄さんお姉さんが、ヘルパーと一緒に電車を乗り継いで、東京での20周年記念集会へ参加した。
・1車両に5人の車イスに乗った小児とヘルパーの写真!いつかこのような光景が日常的になるように!
14.障害とは
・あるろう重複障害者の集まりに参加した時の、先生の体験談...いつでも急に人は障がい者になりうるのです!
15.多職種連携のための「こころ配り」
・「聴く」「出向く」「つなぐ」
感動と涙涙の80分強のお時間でした...先生、ありがとうございました!
写真はたくさん見せて頂きましたが、個人情報の観点からブログでは極力控えさせてもらっていますが、残念残念...まさに「百聞は一見に如かず」
【連絡事項・次回】
第181回 三方よし研究会 令和5年1月19日(木)18:30~20:30
〇当番 東近江総合医療センター(WEBオンライン開催予定)
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
この後、場所を変えて年末忘年会を十分なソーシャルディスタンスを取ったうえで開催させていただき、先生の熱い思いをさらに聞かせて頂きました。
私たちにもまだまだできることがあると感じさせていただいた、充実した時間となりました。
また来月お会いしましょう!
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