この度、第189回の三方よし研究会が開催されましたので、ここにご報告いたします。
◆日時:令和5年9月14日(木) 18:30~20:30
◆会場:近江八幡市立総合医療センター及びZOOMによるWEB開催
◆当番:近江八幡市立総合医療センター
【ゴール】
◯心不全患者の治療やケアを理解する
◯心不全患者の在宅療養を支えるため、それぞれの立場で出来ることを考える
【情報提供】
三方よし研究会主催 介護職員初任者研修の中間報告について 楠神さんより
今年は10名が受講。当会会員も多数講師として参加して研修が全体の6割ほど進んでいます。10月末には終了予定となっています。
【挨拶】
近江八幡市立総合医療センター 白山武司院長より
今年もこの歴史ある三方よし研究会に参加できてありがたく思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
地域連携を含めた心不全チームの取り組みについて
近江八幡市立総合医療センター 循環器内科主任部長 中上拓男先生より
・心不全はあらゆる循環器疾患の終末像であり、多くの疾患に併発する。
・心臓病の中で死亡原因の第一位が心不全。
・心不全入院患者数は毎年1万人ずつ増加しており、当院でも同様の増加傾向となっている。
・80歳以上の高齢心不全患者の予後は極めて悪いことがデータで出ている。
・慢性心不全の臨床的特徴としては、高齢・合併症が多い・再入院率が高い・心理社会的要因が再入院に影響する、ことがいえる。
・当院でも、心不全患者は高齢者の割合が高く、介護度が高い傾向がある。
・心不全に対する疾病管理には、様々な医療専門職の協力が必要
・心不全管理プログラムを導入した結果としては、再入院率が16%→4.5%、再入院までの日数が81日→212日と明らかに効果が出ている。
・1990年代から、チーム医療の有効性について、多くのエビデンスが生まれた。ESCガイドラインでも心不全チーム医療は強く推奨されている。
・当院でも心不全チームを発足させた。目標は心不全患者の再入院予防、再入院までの期間延長。心不全療養指導士も当院から6名が誕生した。
・心臓リハビリテーシについては、2011年8月に開設した。
・薬については、特に病院薬剤師と薬局薬剤師との薬薬連携により、退院後の服薬コンプライアンスが改善している。
・栄養指導も大事。日本人の好む食事は塩辛いものが多い。減塩にあたっての管理栄養士の存在は重要。
・看護師の病棟・外来連携として、血圧・体重・服薬記録等につき、心臓病手帳の存在がある。心臓病手帳の使用で、予後を改善することがエビデンスとして明らかになっている。
・心臓病手帳の他に、患者教育ツールとしての心不全教育ビデオがある。・連携を深めるためにはまず顔の見える関係づくりから。近江八幡心不全地域連携の会を、この三方よし研究会を参考に立ち上げ、隔月奇数月の木曜日に定期開催している。これまで6回開催された。
・心不全啓発のために「心不全シール」も作っている。
【課題提供】
滋賀県心臓病手帳について
訪問看護ステーションゆげ 雨森千恵美先生より
・滋賀県の心不全患者の状況と課題としては、増える高齢患者を地域で診ていく上でのスタッフの知識不足、また県統一の連携ツールや人材育成体制がない、ことがあった。
・「滋賀県心不全在宅医療支援事業」が、令和2年4月に滋賀県の心不全診療の充実化と医療費削減を目的に立ち上げられた。ミッションは、多職種協働によって心不全診療のケアや質を高めることで、心不全患者のQOLを向上させ、健康寿命の延伸に貢献すると共に、地域で安心して人生最期の段階を過ごせるようにすること。
・心臓病手帳の作成は、多職種によるチームで支援し作成することとなった。特徴は、教材(心不全について/わたしのACPシート)と自己管理手帳(びわこ心不全スコア・記録・伝言板の記入など)の2本柱となっていること。
・ACPシートでは、心不全の病状進行のパターンや治療方法、緩和ケア、症状について解説している。
・びわこ心不全スコアは、心不全兆候のいくつかの項目を数値化してスコアリングしていけるようにしている。
・出来上がった教材を使用してみての感想としては、高齢者には内容が多すぎる、点数化に戸惑いがある、ページがとれやすい等の意見があり、今年改訂作業を進めているところ。2.心不全患者の再入院予防について、在宅療養中どのような取組ができ
るだろうか
【発表】
<1グループ>
・手帳自体の存在を知らない方が多かった。研修で聞いたが使ったことがないという意見も。
・心不全の管理は難しいので手帳は有効だと思うし、広めて使いたい。
・普及としては、診断された時に病院や診療所で渡す、患者としても使いやすいようにクーポンなど得点があってもいいのでは?という意見もあった。他窓口で提示を促す、手帳を持っていると示せるものがあれば情報を記入していける、などが上がった。
・再発予防としては、デイサービスなどで記入してもらう、主治医からもポイント等を記入していただく、訪問看護からは体重増減等に気をつけるなど上がった。
・特に一人暮らしだと管理が難しい、またデイなどのように皆で集まるなど、一緒にがんばるのもいいのではないかという意見が上がった。
・連携としては、認知度をあげていく、民生委員さんなど地域に密着している方の協力も仰ぐ必要がある。
・在宅に戻った時には状態が落ちることを見越して、また病院も受け入れ体制を取っておく、在宅では連携して状態把握できるようにしていくのが大事。
・普及としては、こういった手帳を持っていますか?と聞くことがまず大事。また診療所や行政の窓口にポスターなどを貼って知ってもらうのはどうか。また退院時に連携して使用していただくなど。
・再発予防としては、手帳のつけ方について、訪問看護師がつくなどして勉強会を行う、個別に指導をしていくなどの意見が出た。内科系疾患については訪問看護師がつくと良くなるという意見も出た。
・薬については、薬を飲めない背景を押さえること、本人の経済的や環境的な背景等に関し、場合によっては行政も介入して環境整備していく必要性もあるとの意見も出た。
・手帳を知らない、持っていないという方が多かった。
・民生委員など住民啓発できないかを考えたい。やはり人から人へ伝わるのが一番効果が大きいとの意見が出た。
・若いうちに取り組むことも大事ではないか。
・再入院防止のために、連携していくその推進役、取りまとめ役がやはり必要、それは誰か。
・栄養指導と心臓リハビリテーションにつき、地域の中でできることがあるのか、そこは専門にかからないといけないのかにつき教えて欲しい。
・啓発としては、町のクリニックにて配布してもらうという意見が出た。
・再発予防としては、デイサービス等で記入していただく、理解(おくすり手帳が普及しているので、心臓病手帳をお持ちの方はお薬手帳にシールを貼るなど工夫する)・連携・環境づくりの3つが大事ではないかとの意見が出た。
<小串先生より>
・知らなかった、持っていない、という意見が多かったが、できたばかりなのだから知らないのは当然。むしろ「このような素晴らしいものができた、ありがたい、これを大いに活用していこう」と捉えようではありませんか。
●ゆうなみ薬局 金澤重幸先生より
この手帳についての我々自身の理解を深めることが、普及の鍵ではないか。薬剤師会でもできることはないか検討していきたい。病院から退院されるときにトレーシングレポートをいただけるようになり、患者さんに的確に対応することができて非常に助かっている。また退院前カンファレンスに参加できるようにしていきたい。
●近江八幡市健康推進課 中村真悠子保健師より
私は地域で悪くなる前の予防の段階で地域住民と関わっている関係で、手帳を使用している方との関わりは少ないが、予防の観点から現在の取り組み等を紹介したい。
・滋賀県の死因別死亡数の割合では、心疾患が悪性新生物に次いで2位の位置にある。
・滋賀県の標準化死亡比としては、急性心筋梗塞の割合が突出している。
・近江八幡では乳幼児から少年期、青年期壮年期、高齢期と、年代別にアプローチしている。
・減塩と血圧についてのロゴを作り、公用車に貼って啓発に励んでいる。
・また小学生向けに血圧授業を行なっており、「血管くん」なる正常血圧啓発キャラクターも作成している。薬局でも血圧や減塩ポスターを貼ってもらっている。先日は地元スーパーでもイベントを行った。
・近江八幡市民であれば、血圧計は無料で貸出し可能、またオリジナル血圧手帳もダウンロードできるようにしているので、どうぞ活用していただきたい。
【情報提供】 患者総合支援室 近野さんより
・排尿支援プロジェクトについての紹介
【連絡事項】
第190回 三方よし研究会 令和5年10月19日(木)18:30~20:30
お題 認知症啓発、徘徊模擬訓練、ケアマフについて
当番 東近江市役所、社協、まちづくりネット
今回は心不全についての深い学びがいただけました。近江八幡総合医療センターの皆さま、ありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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