三方よしカレンダー

2024年5月16日木曜日

第197回 三方よし研究会の報告。

本日、 第197回三方よし研究会が開催されましたので、報告します。

◇日時:令和6年5月16日(木) 18:3020:30
◇会場:ZOOM活用によるWebで開催(東近江市立能登川病院)
(当番:医療法人社団昴会 )


ゴール
○心不全について学ぼう
〇心不全療養指導士を知ってもらおう
〇多職種連携における療養指導の強みを話し合おう

 【情報提供】
・市民公開講座のお知らせ
5月26日(日)13:00~16:00「第11回心臓病で命を落とさないために」をテーマに市民公開講座を八日市文芸会館で開催します。参加費無料ですので、皆さんの参加をお待ちしています。


 

・介護福祉士実務者研修のお知らせ三方よし研究会主催の今年で9年目となる介護職員初任者研修と、3年目となる介護福祉士実務者研修を開催します。今年より歯科医師の小川先生、薬剤師の大石先生にも登壇いただきます。チラシを三方よし研究会のメーリングリストで共有しますので、関心のある方にお声をかけていただけると幸いです。


 

【30分学習会】
●テーマ『心不全について』 20
 発表:医療法人社団昴会 湖東記念病院  循環器内科 木村昌弘医師




心不全とは
心不全の定義は、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気。
心不全診断後の5年生存率は60%でstage3の胃がんと同じ。

ステージによる心不全分類は
 ①症状による分類
 ②stageによる分類
 ③心機能(左室収縮能)による分類の3つがある。

痛みの軌跡

心不全のstageは不可逆的で、stageC以降を心不全という、

BNPは心不全の診断、治療に有用なマーカー。
 35~100 :前心不全~心不全(前心不全、または心不全の可能性がある)
 100~200:心不全(心不全の可能性が高い) 
 200以上  :高リスク心不全(近い将来に心不全悪化による入院などの必要性が生じる可能性が高い)
 35以上で精査または循環器専門医に紹介が必要。※一度心不全を発症したら、「いかに増悪(再入院)を防ぐか」が大事

 心不全治療薬の歴史
三種の神器(β―遮断薬、ACE阻害薬 ARB、スピロノラクトン)が登場してから、劇的に治療方法が改善された。

Bブロッカー、MRASGLTiARNI
パラダイムシフト、この4つの薬剤を組み合わせることが有用である。
以前は6カ月かけて斬増していたが、近年は4剤を30日以内に投与することを目指す迅速法がある。
※導入のタイミングは心不全入院時
しかし薬価の問題も無視できない。

HFpEFの多用性があり、一人ひとりにあったテーラーメイドの治療が必要。

患者さんが何を目指しているのかの考え方が大切=Shared Decision Making

 本邦における心不全患者数
2030年委は130万人となり、心不全パンデミックと言われている。(30%以上が高齢者)

高齢心不全患者の増加に伴う問題

 患者:ADL低下、嚥下機能低下や栄養状態の悪化、認知症などによる服薬管理困難、併存疾患の増加
  介護者:介護者の身体的負担・時間的制約、経済的問題、患者との関係性、ACP
 社会的:介護保険やサービスなどのリソース不足
そこで、ACPの視点や、多職種連携が重要となっている。

心不全の再入院率は最初の1年で30%となっており、主な原因は自己管理不足である。
現在、セルフケアの維持や増悪しないために、心不全療養士がサポートに入っている。
当院では心不全手帳を配布して活用している。

心不全と癌や老衰との違いは、予後予測・治療の差し替えが困難な点。

ACPの考えとして、患者本人が家族と医療者や介護提供者と一緒に意思決定能力が低下する場合に備えて、あらかじめ終末期を含めた今後の医療や介護について話し合うプロセスであり、患者さん、ご家族が話し合い、考えるきっかけを作ることが大切。

かかりつけ医と、病院医師では見る視点が異なり、かかりつけ医は、生活や介護を重視、また病院医師は医療・治療を重視している。共に大切なことであり、地域連携により、各医師の強みをいかし相互にサポートしていく必要がある。
そのためには、病院と、かかりつけ医のギャップを埋めるためには教育も必要であり、お互いが分かり易く連携していけるようになりたい。

 ●テーマ『心不全療養指導士とは』 10
  発表:医療法人社団昴会 湖東記念病院  心不全療養指導士 竹内麻美看護師・大野彩加看護師


心不全療養指導士とは
日本循環器学会で2021年に認定制度がスタートしている。
この制度は、超高齢者化社会を迎えて心不全患者が急増している現状を踏まえ、心不全の発症、重症化予防のための療養指導に従事する医療専門職に必要な基本的知識及び技能など資質の向上を図ることを目的として創設された。
病院に限らず看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、薬剤師、臨床工学技士、公認心理士、歯科衛生士、社会福祉の国家資格を取得していれば、取得できる資格である。

資格を取るまでの流れ
STEP1入会~STEP8資格取得までの流れで、認定後、5年毎の更新が必要となる。

当院での活動
病棟看護師1名、理学療法士1名、地域医療連携室看護師1名の3名がいる。
心不全手帳を使用している。

退院前カンファレンス
・在宅スタッフとともに、入院中の経過を共有し、在宅で継続して個々に応じた管理ができるように、多職種で役割を明確化している。また退院後の外来日に自宅での生活の様子を聴きとり、診察に同席などしてサポートしている。在宅での体調変化や受診相談等はケアマネジャーや訪問看護師との連携している。

情報シートは2021年から導入しており、カンファレンスを行ったうちでシートの利用は8割、現在は全患者で利用している。 

今後の展望
6月の診療報酬改定にて、強心薬在宅維持点滴加算や在宅診療指導料に心不全が追加されている。薬剤師や訪問看護師と連携を密にし、スムーズな調整と退院支援を充実させたい。
そして外来、入院に関わらず、療養指導を行い、安心して住み慣れた地域で生活しているように支援していく。
在宅で安心して療養していいただけるように病院側の支援体制も整えたいと思います。当院退院の際には様々な支援をいただき、ありがとうございます。

 

【事例紹介】

テーマ『独居の高齢心不全患者の在宅療養支援について~多職種連携を通して~』

        発表:医療法人社団昴会 湖東記念病院  地域医療連携室 竹内麻美看護師


 せせらぎ居宅介護支援事業所 橋本美佐子ケアマネージャー


【グループワーク】
テーマ『多種多様の療養指導について』
グループに分かれて以下の内容について話し合ってもらう
 ・ACPのタイミングや方法について
 ・服薬アドヒアランス・コンプライアンス不良の方へのアプローチの仕方
 ・それぞれの立場で関われる療養指導とは 


【発表】

1G:
独居の方は服薬管理が難しい。またACPについてもタイミングを見てお話をするのが難しく感じている。心不全療養士のことを知らなかったが、多職種が関わることで、変わってくるのかなって思っていいます。まずは様々な職種と連携を深めていきたい。
ACPについて要、要で定期的に確認していきたいと思います。ケアマネジャーの研修内容も令和6年度に変り、学びを深めていきと思います。

2G:
事例紹介では多職種が関わっておられ、いろんな視点でみることできた。また、心不全療法士の役割りを知ることができた。勉強することでスキルも磨けたらと思いました。ACPについて薬剤師としては、かかわることがすくなかったのですが、ケアマネから支援内容など聞き学びになりました。
ACPは1回だけでなく、各ターニングポイントで相談する事が大切であると感じています。

3G:
ACPが熱心なドクターからは家族さんの意思に基づいてしまうことがあるので、その時に,本人さんはどうでしょうか?と確認することにより、本当の意味でのACPができる。
満足のある生き方が大切である。ACPは本人と家族のコミュニケーションも大切であり、そのような場を持てるようにしていきたい。
男性と、女性は思いも異なり、男性は自宅、女性は迷惑をかけたくないので病院を選択されることが多いように感じている。性別による違いなども考えていきたい。

4G:
ACPはタイミングが大切であり、信頼関係を気づいてから確認するのがよい。訪問薬剤など月1回の訪問では聞きづらいので、治療のタイミングなど、何かのきっかけで聞けるといいなってお話がでていました。この圏域には未来ノートもあり、後期高齢者にはノートの説明もされているので、活用していきたい。
多職種にはそれぞれの役割りがあるので、その情報を繋いでいくのが大切。退院時には、ケアマネに在宅では何ができて何ができないのかをきちんと伝えることにより、服薬管理などしかりと行うようにしたい。介護やケアに係っている人と連携していくことが大切。

5G:
グループワークではそれぞれの心不全の取り組みを共有しました。今回の事例は素晴らしかったとの意見がでています。ACPについては、それぞれの立場でしっかりと確認されていたかと思います。
グループメンバーにこの事例に係った保佐人の方がおられ、いろいろと苦労もあったが、皆さんが関わっていく中で、支援の輪が広がっていた。ACPは誰が何処でするではなく、様々な場で多職種が行う事が大切。

6G:
事例については、本人の希望に寄り添って、細やかなサポートをされており、素晴らしかった。ACPに関して、やはりタイミングが難しい。元気なうちに、そのような話をしてもピンとこなかったり、中には怒りだされる方もおらえる。一方、関心を持ってもらえる方も多いので、知ってもらうだけでも良く、元気なうちから意思確認を行っていただく必要がある。
東近江市の介護保険申請、更新時の問診票にはACPの欄が加わっているので、軽度のうちからそのようなお話ができている。


◎指定発言:近江八幡総合医療センター 心不全療養士 看護師 松田悠子様

当センターでは、看護師、薬剤師、理学療士、栄養士の7名が心不全療養指導士を取得しています。 今年も5名程度が受験しようと今頑張っています。2021年に心不全チームが発足し、2021年夏ぐらいからと心不全指導をし、心不全の入院患者さんに行っています。
内容としては心不全とはとして、病気についてや、心不全手帳の記入、食事や内服、 運動など日常生活について、あとACP人生会議という内容を約1週間かけて行っています。
病棟では1年目から4年目など若いスタッフも多く、経験年数にもばらつきがあるので、 指導内容に差が出ることが予測されました。
指導内容の統一を図るため、厚生労働省が出演している心不全教育ビデオを活用しています。
心不全手帳は滋賀県が心臓病手帳を使用し、血圧、体重、症状の 記入を習慣化できるように取り組んでいます。心不全指導を導入した結果としては、 再入院率が16パーセントから4.5パーセントへ減少。また再入院までの日数が81日から222日と伸びており、効果は出ていると考えています。だが、 心不全入院の全員には指導が行えていない現状です。
コロナ禍ということもあり、認知症がない人や特許の人を対象にしてきました。
そのため、認知症のある人や介護が必要な人には指導が行えず、入退院を繰り返している現状もあります。
コロナでの面会制限も緩和されたため、本人だけではなく家族へのアプローチが可能となってきている。今は少しずつ本人だけではなく家族への指導も始めています。
ACPに関しては、ACPイコールDNRを取るとか、もしもの話をするために何を話していいのかよかなどの抵抗感が医療者にも強く、なかなか進まなかった現状がありました。
そのため、講義のACPのためにもしばなカードを導入しました。これは35枚カードがあり、痛みがないかや 家で過ごしたい、家族に迷惑をかけたくないなどが書かれており、そこから自分が大切にしたいと思うカードを選ぶというものです。
ACP人生会議といきなり言われても、患者さんは答えられないことが多くあります。しかし、カードを使用することで自分の考えを整理することができます。そのカードを選択した理由などを聞くと、患者さんの人生観や 患者さんの違う一面を知ることができるようになりました。元気な時のACP、繰り返す心不全の時のACPでも患者さんの気持ちは変わると思うので、 1回だけでは終わらず、何度も繰り返ししていく必要があります。
心不全指導には病棟看護師の他に外来看護師も入っています。ACPには薬剤師や医師も入ることがあります。
心不全指導が終了すると、医師、病棟看護師、外来看護師、薬剤師、理学療養師、栄養士、ソーシャルワーカーが参加し、心不全指導を行って、患者さんの反応などをみんなで情報提供を行い、退院後、外来フォローができるように連携を行っています。 外来看護師からは、心不全指導を以前行った人の心不全手帳の記入の状態や自己管理の現状の報告があります。
心不全指導が始まって約3年となり、ようやく連携が少しずつ取れてきたと実感しています。ただ、当院の外来フォローではなく、地域のクリニックのフォローとなると連携が取れていないのが現状です。
今後は地域連携を行っていきたいと考えています。現在、近江八幡心不全地域連携の会を奇数月、 第4木曜の18時半から20時で開催しています。
三方よし研究会と同様にグループワークと勉強会という内容で、医療センターでの現地参加とズームでの参加もできます。連携を深めるためには顔の見える関係作りが大切だと考えているため、現地での参加をお待ちしています。
次回は来週523日で、内容はリハビリについてです。以上です。ありがとうございます。

 

◎訪問看護ステーションゆげ 管理者 雨森千恵美様


皆さんお疲れ様です。訪問看護の立場から少しだけお話します。
私も滋賀県の心臓病手帳に関わらせていただいて、そしてここで説明をさせていただいただきましたが、その時は心臓病手帳って何? 全然中身知らないしって感じでした。その後、皆さんが、今日の事例も含めて心臓病手帳を活用してってくださるんだということが分かっただけでとても嬉しかったなと思います。
特に在宅では多職種が関わることが非常にポイントになるように思います。その人柄を、いろんな角度から捉えて、 そしてACPも含めて、どうなったらこの方は幸せなんだろうかということを皆さんで考えながら支えていくということに対しては、心臓の方でなくても、いろんな病気の方、皆に共通することかなと思っています。ですので、ACPについても、心臓の方以外でも同じようなことを繰り返して 意思を確認していくっていう作業になるかと思います。
ただ、心不全の方っていうのは、比較的、良くなって、またすぐ悪くなってとの繰り返しで、タイミングがありますので、いかに在宅では入院を回避するかっていうことで、 少しでも体重が増えてきたら、すぐに外来につなぐなど、早期発見して早期治療につなぐ、そして入院を回避するということを目標に連携しているというように思っています。
実は私たちの訪問看護に 依頼のあるケースっていうのは、ほとんど末期のステージに入っていて。なかなか管理が難しく、入退院を繰り返しているという方です。もっともっと、こういう方をどうやって支えたらいいのかっていう、ちょっと難しい症例なんかも、皆さんと議論できれば思っております。
来月、リハビリのことをまた教えてくださるということですが、 今回も訪問リハビリっていうものがこの職種の中に入ってなかったかなと思います。 入院中の心臓リハビリっていうのは盛んにされてると思うんですけど、そこがちょっと在宅に引き継がれてない現状がまだまだあるのかなという課題も感じました。
その辺り、また来月を楽しみにしたいと思います。皆さんどうもお疲れ様でした。ありがとうございました。

【連絡事項】 
・第198回 三方よし研究会 令和6日年6月20日(木)18:30~20:30
18:00から総会を開催、18:30から災害支援をテーマに開催しますので、皆さんの参加をお待ちしています。



 

 

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