三方よしカレンダー

2025年3月27日木曜日

第207回三方よし研究会開催のご報告

第207回の三方よし研究会が開催されましたので、ここにご報告いたします。

◇日時:令和7年3月27日(木) 18:30~20:30

◇会場:東近江市役所 東庁舎 B会議室(ZOOMを活用したハイブリット開催)

(当番:東近江地域 障害児(者)サービス調整会議 通院支援プロジェクト)

総合司会:小串先生より

本日は東近江地域 障害児(者)サービス調整会議 通院支援プロジェクトの方々で、東近江市役所東庁舎のB会議室から送らせていただいております。サービス調整会議の皆様、本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。


【ゴール】

〇東近江圏域における障がいのある方の通院等に関わる現状を知り、考える。

〇障がいのある方や障がいのある方の支援機関について知る。

〇これまでのつながりを大切に、これからの連携と支援のボトムアップに繋げていく。


【情報提供】

「三方よし研究会 介護職員初任者研修、実務者研修の報告」

三方よし研究会で開催している介護福祉士の実務者研修と介護の初任者研修のご案内を差し上げます。昨年度は皆様、講師としてご協力いただきありがとうございました。初任者研修は4名の方が無事終了証を手にされ、介護福祉士の実務者研修の方は6名の方が修了証を手にされております。うち2名の方が外国籍の方になっております。初任者研修の方も4人のうち2名の方が介護の現場でお仕事を開始されております。次年度についても小串先生の方からぜひやろうと言ってくださっておりますので、7月開講で実務者研修が始まり、7月の後半から初任者研修が始まります。5月の中旬には正式に案内文が発行されて募集が開始されますので、ぜひ皆様の方からもお声かけいただけたらと思います。どうぞ皆様よろしくお願いいたします。


進行:支援センター太陽 中河裕恵さん

本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。今回、司会を担当させていただきます支援センター太陽の中川と言います。私たちは普段、東近江圏域において障害のある方々の支援を行っています。その中で、行政の方だったり支援センターだったりいろんな立場から見える現場の課題を地域の課題として捉えて、課題の解消に向けて検討する活動を行っております。様々な課題がある中で、私たちは障害のある方の通院にかかる課題の解消を目指して、通院支援プロジェクトを立ち上げて活動してきました。

今回はこのプロジェクトの活動内容を中心に、この後の学習会や活動報告を通して、参加者の皆様と一緒に研修会のゴールにも示しております通り、東近江圏域における障害のある方の通院などに関する現状を知っていただき、考えるというところと、障害のある方や障害のある方の支援機関について知っていただく。そしてこれまでのつながりを大切に、これからの連携と支援のボトムアップに繋げていく。そんな時間にできたらなと考えております。

まずは通院支援プロジェクトの活動報告、そして通院等に関わる現状と課題について、2番目に20分程度活動報告をさせていただきます。こちらは連携事例について報告をさせていただいて、次のグループ懇談という形にさせていただきたいと思います。学習会の内容につきましては、まずは通院支援プロジェクトというところで、説明させていただきまして、その次に支援センターが関わっている方々について、事例を交えて報告させていただきまして、最後に障害のある方を支える地域資源についてということでの流れにしていきたいと思います。それでは学習会に移らせていただきます。


【30分学習会】

『通院支援プロジェクト活動報告と通院等に関わる現状と課題について』

(通院支援プロジェクト、支援センターが関わる人、障がいのある方を支える地域資源について)

<発表者:支援センターふらっと 大澤充さん>

支援センターフラットの大澤と申します。今日はご貴重なお時間いただきましてありがとうございます。通院支援プロジェクトというところで、活動の報告をさせていただきたいと思います。まず、通院支援プロジェクトというのは何かと言いますと、自立支援協議会の活動のプロジェクトとして活動しておりました。これが5年ほど前に活動しておりまして、3年間ぐらい取り組みをさせていただきました。その中から今回報告をさせていただきます。

・通院支援プロジェクトの目的:自分で通院ができる方には通院を自力で行ってもらうことができるように、新たなヘルパー事業所が通院支援に関わる看板を上げやすいように、今ある資源も生かしながら、通院に困る交通難民を一人でも減らしていく地域づくりを進めていく

・メンバー構成につきましては、民間の支援センター参加者と県の健康福祉事務所で、二市二町の障害福祉課も関係している

・圏域の自立支援協議会の目的:地域の関係者が集まり、個別の相談支援の事例を通じて明らかになった地域の課題を共有し、その課題を踏まえて地域のサービス基盤の整備を着実に進めていくこと(5つの役割あり)

・通院支援プロジェクトの活動:定例会議、ヘルパー事業所・医療機関からの聞き取りや意見交換→現状と課題まとめ→4つの解決の道を提示→各事業所・団体への啓発、すすめてきた

・プロジェクトの中で見てきた課題を分類、整理。


<支援センター太場 浅井智久さん>

お世話になっております。支援センター太陽の浅井と申します。この場をお借りして日頃の関わりに感謝をしています。合わせて本当に今日、プロジェクトの活動についてお話しする時間を持たせていただいたことにも感謝をしています。それでは大沢さんから話を引き継いで、支援センターが関わる人ということで、少しお時間いただきます。

・支援センターが関わる人:精神障害をお持ちの方(統合失調症3割、気分障害2割、発達障害2割、その他不安障害・パーソナリティ障がい・適応障害・難病・高次脳機能障害・ひきこもり等)。実際は知的障害や発達障害等が重複している方も多い。また50代以上等、年齢層も上がってきている。

・相談者の所属の内訳は、在宅36%、33%が作業所に通っておられる方、19%が仕事に通われている方と続く。

・ 相談の内容:「退院してから自宅にひきこもっておられるようです。」「お薬を飲まれないし、通院もされていません。」「一人暮らしで家の中がぐちゃぐちゃです。」

・相談経路:行政の一次アセスメント(必要な支援の見立て・整理)→二次アセスメント→(見立てをもとに、本人、家族と出会い、必要な事・支援を一緒に考える。)

・障害の種類:双極性障害、統合失調症、強迫性障害、依存症、高次脳機能障害、摂食障害など

・なぜ起こるのか:日常生活におけるストレス→生まれながらの素因+環境(ここが大きいと考えている)→脳内の伝達物質の異常→発症

・大切にしている事:①ご本人さんの言動の奥にあるモノを見つめる関わり(本人さんが、どう暮らしたいのか…)②作業所が見つかった、ホームヘルプを使うようになった、で終わらない人生支援(5年後10年後を見つめて…)③暮らしを入り口に、チームで人の暮らしに関わる事で、誰もが暮らしやすい地域を作っていく(相談員一人のケースにしない。地域づくり)


<日野町福社保健課 横瀬光宏さん>

貴重なお時間をいただいてありがとうございます。今日参加していただいている方は、医療に携わる方であったり、介護保険に携わる方がたくさん参加してくださっており、日頃からご利用者さんのご支援本当にありがたく思っています。障害のある方を支える地域資源ということで少しお話しさせていただきます。

・本人と太陽の応援団:ヘルパー、訪問看護、医師、MSW、薬剤師、役場職員、作業所デイケア職員、グループホームキーパー、NPO職員、働き暮らし応援センター職員、会社員、商店街の方、バスの運転手、民生委員、近所の方etc…さまざまな方が応援団となっている。


【活動報告】

『通院支援等における連携事例について』いわゆる好事例を2例ご紹介。

●事例1:通院時における連携事例(発表者:支援センター太陽 浅井智久さん)

・60代男性。東近江市在住。5年前に脳梗塞を発症され、高次脳機能障害と診断。精神保健褔祉手帳2級。圏域外の精神科に月1回の定期通院あり。自分一人でバスと電車を乗り継いで通院は難しい。タクシーで行くのはお金がかかりすぎる。ヘルパー事業所に通院支援をお願いしするも、採算が合わないし、通院支援は時間がよめないと断られる(通っている病院は予約が出来ない一人で行っても先生に最近の様子を伝えられない。→本来の業務ではないが、相談員がやむ負えず毎月同行(負担の重荷を背負うイラスト)。

→好転①:病院のすぐ隣の薬局でお薬をもらっていたので一包化にも時間がかかる(待っている時間がロスになる)→病院から家の近くに処方箋をFAX。通院帰りにお薬を取りに行く事で1時間の時間短縮に。

→好転②:生活支援も必要とされていたので、普段の生活支援にもヘルパー事業所に介入いただくこととした。→居宅での支援も入る事で事業採算性が向上。

→さらに③:ヘルパーが生活支援にも入っているので、病院の先生にご本人の近況について伝えやすくなった(通院の頻度も相談できた。月1→2ヶ月に1回に)。


●事例2:入院・退院時における連携事例(発表者:支援センターれいんぼう 坂田綾子さん)

・頸髄損傷に伴う四肢麻痺。単身お暮らしの60代男性。一日単身で過ごすだけで、7つの事業所・サービスを組み合わせて入っていただいていた他に移送ヘルパーの調整が必要な方に対し、「明日の午前退院ですので、お迎えお願いします」の連絡が病院からかかってくる。

→「一日では調整できないんです」事情を退院が決まった段階で説明。猶予をいただく。

・このように「退院します」→「はい、どうぞ!」とはいかないケースがたくさんある。

①サービス事業所を複数利用しているケース:サービスをりようするためには、前月20日頃までに依頼するのが基本。特に車での移送ができるヘルパー事業所は圧倒的に資源が不足しており、常に奪い合いの状態。※近江八幡市R5年度の障害者手帳所持者は約4,400人。一方、車を使ったサービスを提供している市内事業所は、3か所だけ。

②キーパーソン不在のケース:例)家族にも知的障がいや精神障害があり要支援状態

③ご本人が帰ることで、家族の支援体制も再調整が必要なケース:例)姉妹ともに強度行動障害があり、顔を合わせると自傷・他害に発展しやすい。※生まれつきのものではなく、障害特性と環境のミスマッチにより本人も周囲も困る行動(異食や物の破壊、自傷他害、大声奇声など)をとってしまう。

・「医療よし・障害よし→本人よし」へ。

①10数年前に比べて、入院中に病院とやり取りする機会が増えた。「Bさんってどんな人?」はもちろんのこと、「おうちでは何かサービスを使っておられるなったよ。定響は楽室的で」等と、地球生活について聞いてくださる医療職の方が多くなった。

②こちら(障青福祉サイド)からも、情報提供するだけでなく、「その後、病状はどうですか?」家での暮らしについて、何かおっしゃっていますか?」と、気兼ねなく質問させていただける医療機関が増えてきた。

③医療分野と障害分野のコミュニケーションが深まる→顔が見えるようになる→ちょっとしたことが言いやすく(聞きやすく)なる→互いの状況への理解が深まる→「地域での暮らし」を想定した退院の流れができる→ご本人が安心して地域に帰れる、といったことが増えた。


【グループワーク】

〇通院時等において、障害のある方との関りの中で困ったこと

〇こんな支援があったら・・・こんな事出来るかも・・・。(意見交換)


【発表】

<1グループ>

・通院の支援や同行されていることにつき、詳しく知らなかったとおっしゃっている方も多く勉強になった。

・病院の方は精神疾患とか障害の方のことにあまり詳しくない方も結構いて、病院先生も自分の専門のところだけ見て終わりという方もいらっしゃる。その中で精神的な面まで診てくれる先生がおられて、精神保健医療センターのアルコール治療プログラムを使用されてうまくいったという方もいらっしゃった。

・先ほど入院中はフォローがしていただけるが通院の方はなかなかというお話もあったんが、病院地域連携室の相談員さんに電話した際も、通院の方でも相談してくださいということをおっしゃっていた。

・退院するときに、障害者手帳など手帳が発行されていないことが結構多く、それは困りごとでもある。

・精神疾患などの障害の方がどこか一箇所だけがずっと関わるのではなく、いろんな施設やご近所さんなど関わる人をできるだけたくさん持ち、少しずつでも関わっていくのがいいのではないか。


<2グループ>

・介護分野の方からのお話では、障害の方では通院サポートにヘルパーが関わっておられいいな、ケアマネさんが通院同行すると50単位つくようになったが、障害の方はすごく安価な金額で動いていただいているんだという話があった。

・通院で困ったことの例としては、軽度知的障害の方だと、やはりコミュニケーションの部分で困ることが多く、先生がどうですかと言われまあ元気ですと言って終わってしまい、日常的な細かな様子を伝えられていないため、診断書など書いてもらっても軽い判定になってしまったりがあるので、支援者として詳しく本人の状態を伝えることで、正しく日常の様子も加味した上で、診断書を記入してもらうような支援をしているというような話があった。

・今65歳問題と言われていて、障害のサービスから介護保険の方に移行していくことになるが、そこでスパッと切られてしまうと、生活がスムーズにいかないことが多いということで、事前に相談し合っていけるといいし、一番困るのは本人なので、本人が困らないような支援をつなげていけると良い。

・大きな病院に通っていると、やはり遠かったり時間がかかったりがあるので、普段は地元の先生にかかるけれども、何かあった時や、入院が必要な状態になった時にはきっちり大きな病院にかかれる、近くの病院と遠くの大きな病院という形で、医師同士でも連携をとってもらい、2人の主治医先生がいらっしゃるみたいな形が取れると本人さんも安心して地元の病院にかかれるのではないか。

・お薬も薬局さんの方から家に届けてもらうようなサービスもあったり、一包化なども使っていけると安心につながるのではないか。

・医療側としても、その地域のサービスをやはり知らないと、病気のお母さんと知的障害の息子さんだけでは到底見きれないので、大きい病院でお母さんを入院させておかないといけない、みたいな方向になりがちだが、そこで地域の支援者が関わることで、息子さんも知的障害がありつつお母さんを看取ることで、自分がこれから一人で生きて行くんだというような力になっていったというお話もあった。

・透析の人などで、だんだん送迎の身体機能が落ちてくると、送迎のバスに乗れなくなった時に移送サービスなどは使うんだけれども、そのサービス同士のネットワークが作られると、すごく安心して病院にかかれるようなシステムができるんじゃないか。


<3グループ>

・介護保険は病院まで連れて行くことはヘルパーさんできるけれども、院内介助は算定できないというところに関して、それはおかしいよね、初めて知ったとの意見が出ていた。

・先日五個荘町山本地区で子ども食堂の例を出していただき、老若男女、障害のあるなし関わらず、いろんな人が集まってワイワイカレーを食べていた、その空間を見たときに、排除しない地域づくりをしていくための仕掛けは、やはり誰かが作らないといけないんだなという話があった。

・浅井さんが講義の中でおっしゃっていた「困った人ではなく、困っている人と理解する」というのは、割と障害分野ではキーワード的に使う言葉なので、初めて聞きましたと言われた方もいらっしゃったが、きっと同じように高齢の方でも、実は困った行動をするけれども、この人自身が困っているんだという視点で見ると、改めてこの人にとって何を支援しないといけないのかということが見えてくるのではないか。

・総じて通院の課題は地域の課題なんだというのが、私も感じたところだし、東近江の自立支援協議会のテーマはひとりぼっちを作らないというもの、ひとりぼっちを作らないために地域とつながって、本人さんも、私たち支援機関もひとりぼっちにならないようにしたい。

・支援者がもしかしたら手を出しすぎて、地域のサポーターさんなど資源を知らないあまり、地域が育つ機会を失っているみたいなところも、一つ視点として持たないといけない。


【指定発言】

(独立行政法人 国立病院機構東近江総合医療センター 医療社会事業専門員 寺本隆人氏)

本日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございます。大変興味がありました。やはり通院となると、今大きな課題となっているのが、大きな病院に行くと時間もかかるし、院内の移動距離も長いし、いろいろとご不便なことが多いかと思いますが、積極的に先生などに逆提案もしていけたらなと思います。ただ、外来の中でそろそろもうここに来なくてもいいよ、どこか探すかというようなことに先生の方からはならないので、例えば支援者の方から大きな病院、例えば東近江総合医療センターにかからないといけない病状なんでしょうかなどを、気軽に地域連携室の方に聞いていただきましたら、先生に連携してご紹介などしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。入院された方のケース等を通じて、障がい相談員さんと一緒に取り組ませていただくことが増えております。本当に障害のサービスは広くて、こんなことができるのかというようなことであったり、こういうものがあるのかということを、個別ケースを通じて学ばせていただいているところです。本日の発表されました浅井さんにも、大変良い勉強をさせていただいて、顔の見える関係となった後も、頼らせていただいているようなことがあります。今日の研修会でも、薬局さんの方で、アプリによって処方箋の方の受付ができるなど、私たちが普段こんなサービスがあったらいいのに、でも思いつかないような、もうすでにこんなサービスがあるというようなことをたくさん学ばせていただきました。ぜひこのような機会で得た情報を、職場の方にも持ち帰りまして、これからも皆さんと一緒に学ばせていただいて連携を深めていけたらと思います。本日はありがとうございました。


(公益社団法人 滋賀県看護協会居宅介護支援事業所 介護支援専門員 西野久俊氏)

看護協会の西野と申します。本日は勉強になる話を聞かせていただいてありがとうございます。普段私は介護支援専門員として業務についているんですけれども、精神や知的、高次脳機能障害などの障害のことについては、やはり相談支援専門員さんと日常的に連絡を取り合って、報告をし合うということをさせていただいている中で、利用者の方の支援を順調に運べるようになっているのかなと思います。介護保険以外のサービスに関しては、やはり私たちも知らないことが多いので、今後も皆さんと話し合いを進めながら、利用者の方が在宅で、いつまでも健やかに過ごしていただけるように、協力していきたいなと思っております。


【連絡事項】

第208回 三方よし研究会 令和7年4月17日(木)18:30~20:30

○当番・会場:医療法人恒仁会 近江温泉病院


今回もここまで読んでいただき、ありがとうございました。

また来月もお出会いいたしましょう。


2025年3月23日日曜日

三方よし研究会地域公開講座/第8回 日本地域医療連携システム学会の報告

三方よし研究会地域公開講座
第8回 日本地域医療連携システム学会を開催しましたので、ご報告します。

開催日: 2025年3月16日(日)13:00〜16:00
会 場: あかね文化ホール(滋賀県東近江市市子川原461-1)
大会長: 三方よし研究会 実行委員長 花戸貴司 先生

〇開催挨拶
三方よし研究会 実行委員長 花戸貴司 先生




〇基調講演
「病気であっても病人ではない 〜社会構築を目指す〜」
講師: 順天堂大学名誉教授、日本地域医療連携システム学会理事長 樋野興夫 先生



樋野先生は、「がん哲学」と地域医療の連携の重要性について語られました。幼少期に医療機関のない地域で育ち、医師を志した自身の経験を交えながら、「医学の本質は、他人の苦痛に対する思いやりにある」と強調。
「がん哲学外来」は、がん患者やその家族が心の支えを得られる場として機能し、「病気であっても病人ではない」社会を築くことを目的としています。静かな語り口や安心できる環境づくりを重視し、患者の心の壁を取り除くことを目指しています。
また、2021年より中学・高校で本格的に始まった「がん教育」にも触れ、がんを「個性」と捉えることで、病気と共に生きる力を育むことの重要性を指摘しました。
新渡戸稲造や勝海舟の哲学を引用しながら、「人間的な責任としての医療」を強調。科学的な診断・治療だけでなく、温かい人間関係の構築が不可欠であると述べられました。

〇主講演(13:45-14:45)
「住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために 〜三方よし研究会と地域の取り組み〜」
講師: 東近江永源寺診療所 所長 花戸貴司 先生



花戸先生は、地域医療・介護の現状と課題について幅広く語られました。高齢化が進む中、訪問診療の重要性が増しており、医師会の支援が地域医療の柱となっている現状が紹介されました。また、介護保険の新規・更新申請に関する知識の必要性や、家族の介護負担の軽減についても言及。
家族だけでなく、自治会、民生委員、専門職、ボランティアが連携することで、より充実した支援が可能になると述べられました。特に、一人暮らしの高齢者の増加に伴い、地域のつながりを強化し、孤立を防ぐ取り組みの重要性が強調されました。
また、健康維持のための生活習慣についても触れられ、共に食事をすることが認知症予防につながることや、地域活動への参加が健康促進に役立つことが紹介されました。特に、運動やフィットネス活動が心身の健康維持に寄与することが強調されました。
防災対策にも言及し、高齢者の避難支援の重要性を指摘。過去の災害事例を踏まえ、地域ぐるみの備えや支援体制の構築の必要性が示されました。
最後に、花戸先生は「地域の力で支え合うことが、健康で豊かな生活につながる」と述べ、住民が協力し合いながら誰もが安心して暮らせる社会を目指すことの大切さを伝えました。


地域活動報告(14:55-15:45)
・蒲生地区 「おたがいさん蒲生」



「おたがいさん蒲生」は、蒲生地区で生活支援サポーターが活動する支え合いの仕組みです。平成29年に市社会福祉協議会の生活支援サポーター養成講座から始まり、「助け上手」「助けられ上手」な地域づくりの必要性を認識した住民が集まりました。
地域の困りごとを共有し、ゴミ出しや買い物支援、話し相手の提供など、多様な支援活動を展開。21回の懇談会を経て令和2年に設立予定でしたが、新型コロナの影響で延期。しかし、活動は継続され、令和6年12月には72回目の懇談会が実施される予定です。
現在16名のサポーターが、相互扶助の理念を大切に活動しており、専用携帯を活用した相談受付や福祉専門職との連携も強化されています。有償ボランティア制度を採用し、支援の質を維持しながら活動の継続性を確保しています。
一方で、人材不足や送迎依頼の偏り、「便利屋扱い」といった課題も抱えていますが、住民が支え合い「安心できる地域」を目指し、活動を続けています。

・愛東地区 「学生カフェFIKA」 愛東くらしの会議 楠神渉



「学生カフェFIKA」は、愛東中学校の生徒が発案し、中学生議会で提言されたプロジェクトです。田舎の小規模中学校から大規模高校へ進学する際の不安や、人見知りによる不登校の問題を背景に、人と交流する機会を増やし、世代を超えた地域交流の場を作ることを目的としています。
当初は提案に対して行政からゼロ回答でしたが、地域団体の支援を受けながら準備を進め、プレオープンでは地元食材を使った料理を提供し、地域の方々と交流を深めました。夏祭りではバザーを開き、運営資金を確保しお揃いのTシャツも揃えられています。
正式オープン後も、流しそうめんやお月見イベントを開催し、子どもから高齢者まで幅広い世代が楽しめる場を提供。参加者は80名を超え、今後も地域に根ざした活動を続けていく予定です。


〇対談、今後の展開


地域医療と地域支援の取り組みが多岐にわたることを実感できる機会となりました。誰もが安心して暮らせる地域を目指し、今後も様々な活動が展開されていくことが期待されます。

〇閉会の挨拶
NPO三方よし研究会 会長 小串輝男先生


〇次年度の紹介
京都府立医科大学 保健・予防医学教室 予防医学部門
京都府立医科大学大学院 医学研究科
分子標的予防医学 教授 医学博士 武藤倫弘 先生


〇司会
chain of smile 代表 小原日出美様


〇物販コーナー