三方よしカレンダー

2025年5月15日木曜日

第209回 三方よし研究会開催のご報告

ここに第209回の三方よし研究会が開催されましたので、ご報告いたします。



日時:令和7515日(木) 18:3020:30

会場:東近江市立能登川病院 なごみ2階(ハイブリッド方式)

当番:医療法人社団昴会


【ゴール】

◯より安全に医療を提供するために気を付けたい事を学ぶ

◯身体拘束などの抑制についての現状を学ぶ


【情報提供】

三方よし研究会市民公開講座

2025712日(土)14:3017:00

五個荘コミュニティセンター大ホールにて


司会進行:日野記念病院  上田さん



【学習会】【事例紹介】

テーマ『身体的拘束最小化と安全管理』

発表:医療法人社団昴会本部 医療安全統括管理者 木下さん





・身体拘束を「見た」「使った」経験はどうか?車いすベルト等、車いすテーブル、ベッド4点柵、ミトン型手袋、介護衣、クリップコール、施錠、行動抑制、向精神薬等。

・本日の研修の目的

1.高齢者虐待防止法と身体拘束の定義を理解する

2.法的責任とリスク管理の視点で考える

3.身体拘束はなぜいけないのか

4.情報交換を行い安全で尊厳あるケアの方針を考える機会とする

・本日のゴール

1.より安全に医療・介護を提供するために気を付けたいことを学ぶ

2.身体的拘束など抑制についての現状を学ぶ

・高齢者虐待の定義…高齢者虐待とは高齢者に対して行われる身体的、心理的、性的な暴力や搾取、ネグレクトなどの行為をいう。

虐待と気ずかずに発生してるかも…食事を介助者のペースで口に運ぶ/入浴を嫌がる際に叩いて従わせる/入浴介助時に叩いて従わせる/排徊しないよう安易にベッドに拘束する/殴る、蹴る、叩く、つねるなどの暴力行為/外部との接触を遮断/ベッドや車いすへの縛り付け/薬の過剰服用/言葉による適切でない身体拘束・抑制(スピーチロック)/排泄の失敗をした高齢者のお尻を叩く/見て見ぬふりの虐待etc…

・虐待の内容…①身体的店待:1,198人(51.3%)最も多い。②心理的虐待:568人(24.3%)。③介護等放棄:521人(22.3%)被虐待高齢者2,335人のうち、身体拘東あり:598(25%)

虐待発生時の対応…1.虐待の事実確認2.虐待対象者の保護3.調査(調査委員会の設置・追跡・ヒアリング・調査報告書作成)4.対策の検討と実施 委員会で検討。5.支援計画の作成:害者の状況に合わせて、適切な支援計画を作成。6.関係機関への報告と公表。

法的な責任…高齢者虐待防止法第21条がある。高齢者虐待をした施設が負う責任には刑事責任、民事責任、行政上の責任があり、施設としては相談窓口の設置や職場への不満に耳を傾ける対策に取り組むことが重要。

高齢者虐待を起こさない対策…継続的な教育と研修の実施/マニュアルを作成して周知徹底/職員のストレスケアやサポート体制の整備/相談窓口設置/職場環境の改善/記録や書類の電子化/業務改善組織全体での支援体制の強化が重要。

・身体的拘束最小化について…「その人らしい生活を自分の意思で送ることを可能とすること」が「尊酸の保持」には必要。認知症等により、自分の意思を周囲の人々に十分に表明できない状態、または周囲の人々から確認できない状態であったとしても、人間として尊重し、その人らしいケアをすることが「尊厳の保持」には不可欠。

・入院料別の身体的拘束の実施理由…①身体的拘束の実施理由としては、「ライン・チュープ類の自己抜去防止」又は「転倒・転落防止」が多く、あわせて約9割を占めた。②小児入院医療管理料、治派室、療養病棟では、「ライン・チューブ類の自己抜去防止」の割合が高かった。

・日本における身体的拘束禁止の取り組み1997年(平成9年)高齢者に対する身体拘束廃止の動き「抑制廃止福岡宣言」「全国抑制廃止研究会」発足。1999年(平成11年)厚生労働省から介護保険施設などにおける「身体拘東禁止」が省令。2000年(平成12年)厚生労働省から「身体拘東ゼロ作戦推進会議」発足。2024年の診療報酬改定重点ポイントは「身体拘束最小化」介護だけでなく医療分野も入ってきている。

・身体的拘束はなぜ問題なのか?…身体的拘束は患者の尊厳を害する可能性。もたらす弊害:身体的・精神的・社会的弊害あり。

・認知症周辺症状(BPSD)…環境が原因となっている場合がある。POINT:認知症の周辺症状とそのきっかけを多職種で抽出すること。

・身体的拘束の要因と対応例…発生場面、考えられる原因、具体的対応例に分けて、転倒転落から人間関係トラブルまでを分類。

・身体的拘束最小化の具体的な方法…①転倒による重大事故防止では衝撃吸収マット設置(ころやわマット)/ヒッププロテクター付きのパンツ着用/ヘッドプロテクター/離床センサー設置/座コール設置/センサーベッド/見守り:部屋の配置など。②ドレーン・チューブ自己抜去防止では必要最小限の治療計画:点滴実施する期間/テープ固定方法/ドレッシング剤の選択/腹帯の使用など。③環境による重大事故防止ではベッド周園(手の届くところに置く)/靴の位置/不要なものは置かない/バリアフリー/床の材質など。④離院による重大事故防止では赤外線などのセンサーの設置/徘徊センサー/見守りカメラ/セキュリティー強化/捜索(地域の協力)などがある。

緊急やむを得ず身体的拘束を行うときの留意点…①身体的東等を行う可能性について、事前に患者又は家族の同意を得る。②看護・介護計画を立案し、身体拘東等を未然に防ぐ対策を講じた上で、身体的拘東等を行う可能性を明記する。③利用者や他の利用者の生命又は身体を保護するための措置として、緊急やむを得ず身体的拘束等を行う場合は、カンファレンスで身体拘束による心身の損害よりも、拘束をしないリスクの方が高く、「切迫性」『非代替性」「一時性」の3要件すべてを満たした場合のみ、本人・家族への説明・同意を得て行う。④身体的拘束を行った場合は、その状況についての看護・介護記録の整備を行い、できるだけ早期に拘束を解除する。定期的に開催される委員会においても事例を報告し、3要件の確認及び背景等の分析、再発防止、支援方法を検討する。

身体的拘束の判断基準…行動を制限・抑制する目的の対応は「身体拘束」とみなされる。

・身体的拘束に該当する例…ミトン型手袋、抑制帯、車椅子への固定、4点柵、クリップコールなど。

・身体的拘束に該当しない例…センサーベッド、眠りスキャン、離床センサー、見守りカメラ(行動制限せず、報知による対応)、センサー付き緩衝マット、ナースコールの工夫された設置など。目的が「安全確保」であっても、結果として行動の自由を制限すれば拘束とされる可能性がある。

・身体的拘束の3原則…非代替性、切迫性、一時性。

・身体拘束の弊害…①身体的弊害(1)関節拘縮、筋力低下、四肢の廃用症候群といった身体機能の低下や圧迫部位の褥瘡の発生等の外的弊害。(2)食飲の低下、心肺機能や感染症への抵抗力の低下等の内的弊害3)拘束から逃れるために転倒や転落事故、至息等の大事故を発生させる危険性。②精神的弊害(1)本人は特られる理由も分からず、人間としての尊厳を侵害。(2)不安、怒り、圧等、あきらめ等の精神的苦痛、認知症の進行やせん妄の頻発。(3)拘束されている本人の姿を見た家族に与える精神的苦痛、混乱、罪悪感や後悔。③社会的障害(1)看護介讀職員自身の士気の低下。(2)施設・事業所に対する社会的な不信、偏見を引き起ごす。(3)身体拘束による本人の心身機能の低下は、その人のQOLを低下させるだけでなく、更なる医療的処置を生じさせ、経済的にも影響を及ぼす。

拘束が拘束を生む「悪循環」

身体的拘束最小化の要点…①患者・利用者主体のケア。本人の尊厳や生活歴をふまえた意思の尊重、本人の表情や行動の変化を読み取る視点。②代替手段の活用。センサーやマット、低床ベッド、個別の声かけ安心できる環境調整、見守りカメラ、眠りスキャンなど。③チームで意思決定。医師・看護・介護・リハビリ・家族が共に情報を共有し、拘束の可否を合意のうえで判断していく。④日々の評価により、早期に解除していくこと。

ケアの基本:本人の意思の尊重。5つの基本的なケアとして、起きる/食べる/排せつする/清潔にする/活動する(アクティビティ)部分に対してのケアがある。

医療倫理の4原則…「自律尊重」「善行」「無危害」「正義」。身体拘束しない医療を実践するためには、倫理的視点として「善行原則」と「自律尊重原則」のそれぞれを高めていく研修が重要。

身体拘束最小化の具体的方法…①転落による重大事故防止(体交枕による転落しない体位の工夫/センサーベッド)。②認知症による重大事故防止(行動の目的を把握/患者に寄り添ったコミュニケーション)。③支援体制の強化(患者・家族参加型の支援体制を構築)。

身体的拘束の過去の判例…3つほど紹介。




 


司会進行:花戸貴司 医師

【グループワーク】

テーマ『テーマ:身体拘束をせずに安全を守る方法を考える』



1.事例リスクの整理・この事例でどのようなリスクがありましたか?・患者の状態、環境、人的体制などから整理してみましょう。

2.拘束に代わる具体策の検討・拘束を使わずに安全を確保するには、どのような代替策が考えられますか?(例:環境調整、機器の工夫、スタッフの配置、家族との連携など)

3.医療安全管理の視点・今回のようなケースで、記録・報告・再評価など、医療安全の視点からどのような管理が必要ですか?

4.チームの提案まとめ・検討した内容をまとめ、発表用に整理してください。・どのような点が重要で、どんな判断や準備が必要か、理由も含めて書いてください

 


【発表】

<会場1グループ>

このシートに沿っていきますと、利用者の自身のリスクとしては、入所3日目でご本人自身も環境に慣れてなくて、職員自身もその方の行動に慣れていなかったということ。また朝の7時ということで、利用者さんが一度に動き出す、すごく忙しい時間帯であったということ。長期間プレドニンステロイドは内服していて、おそらく骨粗鬆症もあって骨折しやすい状況であったこと。認知症アルツハイマー、認知症の初期症状ということでありますけど、見た目よりも理解が難しい部分があったんじゃないかということがあります。環境の設定として考えられるのは、ベッドの高さが合っていたのかどうか、移動方法の検討がされていたのかどうか。あとベッド周りにつまずきやすいものがあったんじゃないか、床が滑りやすかったんじゃないか、ベッドの手すりがどうなっていたのか、家のベッドと手すりの状況が異なっていて、うまく使えなかったのじゃないか、ということが上がりました。トイレの仕方としてポータブルトイレというのも話題に上がったんですけど、それはポータブルは嫌な方が多くて、尊厳が守られないんじゃないかという話が出ました。発生要因としては、すごく忙しい時間であったこと。夜勤が3人だけで50床に対してすごく少なかったことがあげられました。工夫としては、入所早期でありますけど、早期のうちにリハビリ職と相談して、移動動作を考えるとか、環境の調整をする。あるいは家での環境をしっかり聞き取って、それに合わせるという対応ができるんじゃないか。あとは人員の面では、早出の対応として、この時間だけでも少し増やすことができるんじゃないかということがありました。ご家族の説明としては、しっかり誠意を持って説明するしかないかなと。あとは入所の時点では転倒のリスクが高いが、ただ抑制はしないで、こういうことを気をつけていきますということを説明しておくとか。骨折が起こってしまった後、おそらく病院に入院されるんだと思いますけど、治療後にまた戻ってきてもらえるような連携をとっていくということも必要な対応じゃないかという話がありました。


<会場2グループ>
発生要因、今回のこの方のリスクとしては、入所3日目でご本人もこの環境に慣れていなかったということと、施設側も本人のお体のご状態とか特徴をつかみきれていなかったのではないかという意見が出ました。また、7時という時間帯は起きたばかりということで、日中よりも十分に覚醒ができていなくて、日中の歩行よりもふらつきが起きたりといったことも起こり得るのではないかという意見が出ました。これを防ぐための再発防止策としては、スタッフ内の声かけ、今回はこの方についている時に、他の方のナースコールが鳴りなぜそちらに行ったということなんですけれども、本当にその人が行かなければいけなかったのか、他のスタッフでは対応できなかったのかというところを、もう少し他のスタッフさんとの声かけで、こっち行けないから、あなたが行ってというところの共有ができればいいのではないかという意見が出ました。また、入院前からご本人様に起こりうるリスクを考えてトイレと病室を近くしておいたり、見守りのしやすい部屋に設定しておく、また夜間だけはご本人様の状態を考慮してポータブルトイレを利用するなどの環境設定、転倒したとしても被害を最小限にできるようなマットを引くなり、そういった環境の調整が必要なのではないかという意見が出ました。


<会場3グループ>
利用者の特徴、特殊性とリスクについては、ステロイドによる影響、アルツハイマーで判断力が低下している、入院から3日ということが挙げられました。環境設定としては、センサーマットで工夫されているということを共有しました。発生要因としては、このように判断力低下されている方で、入院3日という状況、さらに顔が険しかったという、いつもと違う状況というところから、そういう状況であるにもかかわらずトイレから離れたというところが挙げられました。あと、夜勤の人もちょっと理解不十分なことがあったのではないか、申し送り等でこの人は離れてはいけない人という認識があったかどうかが確認かなというところでした。実施可能な工夫としては、一時対策としては、トイレでどうしても離れざるを得ない場合は、聴覚で記憶とか判断が難しい場合はもう少しここで座ってお待ちくださいみたいな視覚的に見えるようにフリップのようなものをつけるような工夫をするとか、トイレにブザーなどをつけておいて、トイレから立ち上がった時になるようなシステムを作っておくなどが挙げられました。二次的な対策としては、もし戻られたとしても、そこに手すりがあるというような環境設定をしておくとか。またもし自分で歩かれて転倒したとしても、ヘッドギア、ヘッドガードをつけていくのも、本人さんの受け入れもあると思いますがという案が出ました。三次対策としてはリハビリでもう少し移乗練習をする、入院3日なのでなかなか難しいかもしれないですけど、入院3日なので逆に過剰に対応していく方が良かったかなということがありました。ご家族への説明責任というのは、すぐに報告して、対策をして二次予防をしていくということが挙げられました。まとめとして、夜勤は本当に3人で過酷であり、同時にナースコールが何個も鳴ると大変なので優先順位つけてというのは酷なんですが、一次対策、二次対策、三次対策というのを考えて、特に1週間はあの厳しめにというか過剰に対策していきたいなというところでした。


<オンライン1グループ>
すでに出た意見以外のところで言いますと、まず利用者さんのこととリスクに関してはエリテマトーデスの疾患ですので、進行する病気で、今の病状が今どうなっているのかということの把握と、プレドニンを長期内服されているので、副作用が出て体がむくみやすくなっているのではないか、それが転倒のリスクであったり、骨粗鬆症と筋力低下にもつながるのではないかという意見がありました。環境設定に関しては、ご自宅でベッドを使われていたのか、畳で寝ておられたのかがちょっとわからないのですが、それによって今の病院のベッドの高さが合っていなかった可能性があるという意見がありました。発生要因に関しては、声かけをしてちょっと待っててくださいという声かけだけでは、もしこの方が耳が遠かったりしたらわかってもらえていない可能性があったので、すぐにベッドに戻るので、もっと工夫できることは何かなかったかという危険があったのと、朝の7時というのはやはり老健施設としては、皆さんトイレに一斉に行きたくなる状況なので、ナースコールが鳴り響いて、そもそもこの時間帯は事故が発生しやすい時間帯だったというのも一つ要因として挙げられました。また再発の防止策については、在宅の情報を、例えば排泄のタイミングなどが老健さんに伝わっていればよかったのではないかということと、全身エリテマトーデスの症状であったり、治療経過についても担当の方が知っておく必要があったのではということと、家族さんへの説明に関しては即時に誠意を持って説明すること、曖昧なことは言わないということが意見がありました。以上からまとめとしては、離床センサーだけで安心するのではなく、本人の尊厳の視点で、在宅時からの情報を把握あていくこと、多職種でのその情報を共有することが大事ではないかというようにまとまりました。


<オンライン2グループ>
今回のまとめとして。骨折の可能性が高い人であるという前提で計画を立案するという部分で、ベッドの位置などを配慮する。入所して使っていただく歩行器は本人のものを活用する、本人の睡眠時間やそれまでの生活状況から本人のリズムを把握することが重要だとと話しました。また、時間帯としてケアが集中することから、人の配置などの工夫、入所時から信頼関係を築いていくこと、説明するときの言葉の使い方、本人家族がどんな気持ちでいるか、どんな思いでいるかを想像しながら対話をしていくことが挙げられました。また、待っててねに待てる人とそうでない人がおり、ご自身で動ける方に対しては、もう待てないという部分から、目の前のケアを終わらせて次のケアに行くということは原則としてNGとして対応していくということが上がりました。転倒転落が多い方に対して、処方、いわゆるドラッグロックということに対してモヤモヤを感じる方もいらして、まず在宅療養者より入所者の方の方がそういった対応を取られる方が多いということなので、配置ナースケア職からの声に対応した処方をされているという現状があります。でお薬の作用、副作用も含めて検討していく必要があるなということが今回の話し合いに上がりました。


〇指定発言:社会福祉法人六心会 理事長 堤 洋三様
   ご報告させていただきます六心会の堤と申します。よろしくお願いします。本日皆さんから本当に多くの学びをありがとうございました。特に医療安全管理という視点は、私はあまり学ぶ機会がこれまでありませんでしたので、木下さんからのご報告は、多くの示唆をいただき貴重な時間となりました。ありがとうございました。昨年近畿のある県の特養の施設長からお電話をいただきました。県内の施設では、身体拘束に該当するんじゃないかなと思われる下着を使っている施設があると。内容を聞きますと、ボディスーツ型の上下繋がった下着で、おむついじりなどを防止するというものらしいです。で当該施設管理者さんは、この下着の着用は身体拘束に該当しない、該当するか否かは自治体に確認してほしいと言い張り、その高齢者施設の協議会として取り組んできた身体拘束廃止の方針と合致せずになかなか困っているんだというように協議会の長の方はおっしゃっていました。意見交換する中では、ご本人の暮らしとか、排泄に関するアセスメントで、なぜおむついじりや弄便という事象が起こるのか。目先の事象だけにとらわれて、尊厳を守るとか専門職としてしっかりアセスメントするという、その視点が欠けているねと意見交換をしました。身体拘束廃止は本来、保険者とか指定権者である自治体がオッケーをするとかしないとかの問題ではなくて、ケアの場面において、私たち専門職が尊厳とか生命を守る、どのように守るのかという視点が根底にあり、その大切な視点を本日は改めて学んだような気がします。
   先ほどから事例の中でも人材不足というようなワードもたくさん出てきました。ケアの現場では人材不足が慢性化していて、以前より余裕がないとか、なかなかしたいことができないというような事業所も多いのかなというふうに思います。また最近では外国人のスタッフも急加速で増加していますので、教育であったりとか、学びの重要性はますますあの増えているような気がします。また医療機関と介護施設では、できることや取り組みの手法も多少は違いがあるのかなというふうにも感じました。三方よし研究会は顔の見える関係を基盤としたネットワークですので、お互いが気にかけつつ、身体拘束や尊厳あるケアについても気軽に相談したり、相互に助言ができればいいなというふうに思いました。今日木下さんの話の中にもあったのですけれども、当たり前のことなんですけど組織としてしっかりと身体拘束を廃止するというメッセージを介護施設が出して、全員で取り組まないといけないと思っています。特に職場とかケアの現場で交わされるあのスタッフの日常会話の中で、尊厳とか倫理観、あと身体拘束をしない介護について、話し合ったりとか、ちょっと気になったことがあれば常に気軽に相談できる体制づくりが重要かなと思っています。研修も1回しただけでは全然難しく、何度も何度も繰り返ししていって、それで振り返りを常にこうやっていくというような姿勢もとても大切かなと思っています。本日の学びで皆さんと共有できたことが、また私も新たな意識になりましたので、これからも皆さんとともに、身体拘束がない、尊厳があるあの暮らしを応援できればなと思っております。本日はどうもありがとうございました。


◯指定発言2:医療法人社団昴会本部 医療安全統括管理者 木下様
   みなさん、お疲れ様でした。グループワークで時々覗いてみると、ちゃんと一番から順番に積極的に発言をされているグループが多く、皆さんどの方も積極的に発言をされていて、すごく有意義な時間になったんじゃないかなと思います。

   今回の事例は疑似事例なんですね。実際にあった事例ではありません。私が勝手に作った事例だったんですけれども、PMSHELL分析というものがあります。人間工学に特化した医療に使えるような分析方法なんですけれども、昴会ではこの分析をどの病棟や病院、施設でもしておりまして、これは患者さんの特殊性を考えた上で対策を考えていくという手法なんです。なので患者さん管理、マネジメント管理、ソフトウェア、ハードウェア環境、当事者、関係者、いろんなことが網羅されているので、要因と考えられるような、その対策をここで導き出すことができるという手法です。で事例に一応当てはめてみると、この方アルツハイマー型認知症、しかも初期まだ二ヶ月ということで、初期段階で物忘れがある、そういう感じのところでまだアリセプトなどの薬は飲まれておられないで転倒して骨折がありましたので、そちらの方はすごく注意が必要な方という特殊性があります。でトイレ移動時に険しい表情があったということで、これも入所3日後のため、環境変化も考慮した見守りの体制設定をチームで検討していただいたらいいのかなと思います。で険しい表情からどういったことを想定するかということですけど、ここから患者さん中心にいろんな対策につながっていくんじゃないかと思います。

   マネジメントの管理のところでは、夜勤が3人ですね。三名の看護師1名、介護福祉士1名、ケアワーカー1名の3人でした。で50人の入所者さんをみている。これは量として、介護料に適用できる人員配置を検討しないといけないんじゃないかなと思います。でも実際に現実可能かどうかというと現実不可能です。こんな人員がどこでも不足している中で増やしていくというのはちょっと難しいかなと思いますので、これは少し置いといて、ソフトウェアのところではマニュアルなどになってくるんですけど、身体拘束、高齢者虐待のマニュアルをしっかり整理してあるという前提で、研修も年1回以上、ここまでは実施されているという前提です。ここでソフトウェア的には、まあ業務の配分とかその時間の調整をするとどうかなと思いました。7時というのは、やはりお食事の準備であったりを少し業務整理をして、この時間ちょっとずらせないかなという、多重業務が重ならないような配分をできないかなということを、部署で検討するといったことが対策に上がってくるのかなと思います。

   ハードウェアのところでは、離床センサーは設置していたんですけれども、離床センサーでは今回ちょっと意味がなしていませんでした。なので、他のセンサーとか他のものを検討する必要性があったのかなと思います。環境的には部屋の出入りがステーションから見えない構造にあったのかなと思います。トイレから戻ったのが把握されていませんでしたので。なので部屋の出入り口またはベッドサイドのセンサーをちょっと考えたらどうかなということと、もしこの人が今後また転倒リスクも高いですから、部屋の転出ということもちょっと環境の対策になるのかなと思います。

   当事者、こちらは排泄という他の利用者のコールにより離れてしまいました。だけど利用者さんがナースコールをずっと鳴らしてたら、やはりこのままほっといていいのかなという気になったんだと思うんですね。それで見守りが必要な方の時にはもう離れないということを前提にしていただけたらなと思います。こことリンクしているのがこの関係者ですね。7時モーニングケア前。食前薬食事のための移動で、すごく繁忙状況にあったんじゃないかなと思うんですけれども、こちらの方もコール対応の協力、例えば業務内容の共有と優先順位を考慮して、対応している時には離れずに、違う方が早く行ける方が行けるように業務の調整をしながらということになるんですけど、こういったことが、医療安全管理者が関わると対策できますので、検討しながら対策していただけたらなと思います。

   家族側の主張からすると、認知症があることはわかっているのに、なんで骨折したのということとか、骨折したことがあるのになんで看てくれてなかったのということや、施設で治療費は払ってくれるのかなどを言ってくる人はいますよね。保障に関しては私たちの範疇ではないところで、弁護士さんに相談したりとかなるんですけど、家族さんからこう言われたからといって。すぐに申し訳ありませんでしたと謝罪するのではなく、ご心配かけたことに関しては、骨折したことのことだけではなくて、ご心配をおかけしてすいませんということは最初に謝っておいた方がいいんですけど、内容により、またこの保証に関してのことは、少しお時間をいただいて調査をさせていただきますというふうにした方がいいのかなと思います。施設側の主張としたら、身体拘束は原則禁止と言われています。でこの方は同意書でちゃんと説明もしてサインもされていた。で離床センサー設置がしていました。で注意義務の認識があったんですけど、その場から離れてしまったんですよね。なので本人、家族の尊厳を配慮した上で説明をしていくっていうことが必要かなと思います。あとは法的なところについて検討が必要です。本当に法的に問題はないのか、過失があったのかなかったのか、十分検討した上で対応が必要かと思います。

   この事例での学びは、身体的拘束が失われる利益よりも得られるメリットの方が大きいこと等を考慮します。安全を守るためには、利用者の特殊性を知って多方面で考えることが重要でした。利用者を取り巻く環境に目を向けてリスクを管理していきます。利用者の特性に応じた環境設定、これは皆さま発表した中で出てきていたんじゃないかなと思いますので、今日学んだことを実際に現場で活用していただけたらなと思います。

   拘束をしないとは何もしないことではありません。何をすれば安全が守れるかということを具体的に考えて行動していきましょう。ナースコールの設置位置やベッド、周囲の整理、安心感のある声かけとか、環境照明の調整など、日常の中でできることはたくさんあります。安全確保の方法を、自由を奪うことから尊厳を保つ工夫へと転換することが私たちの役割だと思います。

   本日のまとめです。身体拘束は原則禁止。高齢者虐待防止法、診療・介護診療報酬減算に基づく対応をしていく必要があります。実施する場合には三原則、切迫性、非代替性、一時性プラス記録義務。必ず記録に残して説明したものを同意書とともに保存保管しておく必要があります。損害賠償事例から学ぶ見守りやリスク評価の不足は、法的責任に直結していきます。チームでの合意形成と多職種協働が身体的拘束最小化を実現する鍵となります。拘束による心身の損害よりも、ここ一番大事なんですけど、抑制をしないことによる危険性が高いと判断された場合に限っては、患者、利用者及びご家族の同意を得た上で実施をしていきましょう。医療安全の基本は、リスクの予見・回避・軽減アセスメントを事前に必ず行っていきましょう。拘束をしない選択ができる職場風土の醸成ができたらいいかなと思います。私は医療安全管理者なので、病院や施設で研修することがあるんですけど、身体拘束をしてはいけませんと言っているのではなくて、するのであればこの三原則、この要件を満たしてるかはしっかり評価した上で、毎日外せるように評価を繰り返してPDCAを回すというらうにしていただけたらいいかなと思います。



<自己紹介>  初めての参加者を中心に自己紹介してもらう

 

【連絡事項】

・令和7年度 三方よし研究会 総会 令和7619日(木)18:0018:30

・第210回 三方よし研究会 令和7619日(木)18:30〜20:30

 

○当番・会場

東近江介護サービス事業所協議会(施設部門・在宅部門) きいと ZOOM活用によるWebで開催

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