この度、第184回の三方よし研究会が開催されましたので、ここにご報告致します。
◆日時;令和5年4月20日(木) 18:30~20:30
◆会場:ZOOM活用によるWEBでの開催
◆当番:近江温泉病院
【ゴール】
●東近江でパーキンソン病の方の現状を共有する
●東近江でパーキンソン病の方をどのように支えていけるか検討する
【連絡事項】
・NPO三方よし研究会事務局長の小梶猛様の訃報につき、あらためてご報告致し、参加者にて黙禱を捧げました。
小梶さんはこの三方よし研究会の副会長であり、事務局長として立ち上げから定款策定、会計管理、理事会総会の仕切りといった細かな事務作業、会の宣伝に至るまで、いわば三方よし研究会の推進役、偉大な顔としての役割を担われ、この度堂々たる最期を迎えられました。
あらためてご冥福をお祈り申し上げます。
近江温泉病院 前川遼太さん
【活動報告】
「東近江市介護予防体力測定委託事業の結果報告」
発表者:久保田友季子さん(近江温泉病院 理学療法士)
・1日の流れとしては、講義の後体力測定を行い、自主練習指導を行った上で、後日測定結果を「体力年齢」としてお知らせし、歩行動作計測結果を分析してお知らせした。
・結果① 参加者の体力と骨格筋量については、男女ともに足の筋力・骨格筋量以外はほぼ良好な結果だった。
・結果② 歩く姿勢については、歩行中の股関節を後ろへ伸ばす角度は、実年齢、体力年齢と有意に相関していることが分かった。
・結果③ 体型については、男女ともに隠れ肥満から肥満が多く、女性に関してはやせも一部認められた。
・結果④ 運動習慣については、運動習慣のある者は実年齢より約4歳若い、さらに運動習慣あり自主練習を行った者は実年齢より約7歳若いという結果が出た。
・結果⑤ サロン別の特徴としては、運動系のサロンは機能良好、非運動系のサロンは機能不良の傾向がでた。
・結果⑥ 地域別の特徴としては、蒲生八日市がご高齢の方が多く機能不良、永源寺は機能良好、湖東は上肢良好下肢不良、能登川は下肢良好上肢不良との傾向が出た。
・まとめ 男女ともに足の筋力については全国平均より低く、スクワット等足を鍛える運動が重要/歩き方、栄養面の意識、運動習慣も重要/体操指導には地域やサロンの傾向ごとの個別対応の考慮も重要、ということが分かった。
「パーキンソン病についての基礎知識」
発表者:中馬孝容先生(滋賀県立総合病院 リハビリテーション科科長)
・特定疾患としては、圧倒的に潰瘍性大腸炎・パーキンソン病の方が多い。
・パーキンソンとは一つの症候群ではないかという捉え方がある。一つの疾患に様々な症状が合併しており、最初にどの科の先生にかかるかで診断が変わってくるという側面がある。
・最初のとっかかりとしては、落ち込みなどで精神科にかかるなどがあるので、最初が重要。また運動障害の前に嗅覚障害(なんの匂いかが分からない)、睡眠障害、便秘がくることも多いことにも注意が必要(Braak仮説が一時流行ったがそこからも納得がいく)。
・パーキンソンといえばとにかくドパミン枯渇がメインだが、中枢ドパミン神経系にはいくつかある。震戦などをもたらす黒質線条体路は有名だが、中脳から辺縁系、皮質へいく経路もあり、意欲、遂行機能、実行機能への影響も言われている。
・通常ドパミンがシナプスを介して伝わっていくが、そのやりとりが上手くいかないために、補充としてL-dopaがいくつかあったり、ドパミン分解の阻害剤などがある。そのため薬が沢山あるように思うが、いかにドパミン濃度を一定に保てるかの工夫を各脳神経内科の先生方が行っているから。
・有病率は人口10万人にあたり100〜150名ほど。
・昔の教科書なら50歳代がピークと書かれていたが、現在は80歳でもかかる方がおり、高齢になるにつれて罹患率も増加しているといえる。
・病変細胞にレヴィ小体といわれる蛋白封入体がある、原因遺伝子の中にある物質、酸化ストレス、ミトコンドリア異常も原因の一つといわれている。
・症状としては、大きく4つ、振戦、固縮、無動、姿勢反射障害。さらに自律神経障害、精神症状、疼痛、疲労などの非運動症候、前傾姿勢、すくみ足などあり。
・抗パーキンソン病薬の効果は、数年間は安定する。しかし経過とともに薬効が短くなるwearing-off現象、内服した時間に関係なく症状が変動するon-off現象が出てくることが悩ましいところ。
・パーキンソン病診療ガイドライン2018より、早期薬物療法の開始の推奨、L-dopa開始とそれ以外での薬物療法のどちらがよいか、wearing-off患者へのドパミン付随薬追加の提案などが示されている。
・海外文献では、パーキンソン病と診断されたらまずExercise、運動した方がいいよと推奨されている。
・350名ほどの患者への調査で、困っていることとして、介助が必要ない方では手足の震え、解除が必要な方では前傾姿勢が1位。
・パーキンソン病の姿勢と歩行については密接な関連がある。姿勢が悪くなると腕の振りが少なくなり、体幹の回旋、骨盤の回旋も少なくなり、歩幅が狭くなるため、腰痛を生じやすく、胸郭の動きも小さく、深呼吸もできていないことが多い。また股関節・膝関節が曲がり歩行時に踵接地が難しいためいざというときに後方へ足を出せずに検討リスクが高くなる。
・また作業や家事動作は前傾姿勢で行うことが多く(体を外らせて行う動作はなかなかない)、その点も生活指導が必要となる。
・ということで、早くから体
操や運動の習慣をつけることがやはり重要。姿勢を意識し、自主練習の習慣を目指しましょう。達成感があるものがよい。
・診察時、上肢挙上、体幹側屈などに関して、仕方のポイントがある。
・介助が必要な動作として服を着る更衣が多い。これから肩まわりを動かす運動の重要性が出てくる。また転倒は居間が多く、その環境チェック、自助具も重要。
・積極的な運動の効果は確かにある。ちょっと難しめの運動が効果的。
・韓国での調査で、8年間の追跡期間中17%の死亡があったデータから、パーキンソン病の診断後、身体的活動的である場合、死亡率は最も低下していた。また身体活動をしていた人は、不活発な人よりも死亡率は低かった。
・パーキンソン病では運動学習が早期から阻害されているため、適切な強度と頻度を考えた指導での運動がとても大事ということを強調したい。
【情報提供】
「難病応援センターの紹介」
発表者:井上克己さん(NPO法人喜里)
・気軽に立ち寄れる場、安心して相談できる場として、9年前に設立された。
・3/1に五個荘小幡町にセンターを開設した。
・理事長も私も難病患者。25年前発病した際、とても心配だったが、身近にいた方々に相談できてとても安心した。そこで気軽に相談できる場が大事だと思い開設に至った。
・電話一本で相談に乗ります。当法人で解決できないことは関係機関に繋いだりしている。
・月に1回、難病サロンを開放している。
・センターの端にカフェスペースを設け、6月くらいにはスタートしたいので、また皆さんもきてほしい。
【情報提供・症例報告】
パーキンソン病患者・家族会「のびのび友の会」育成事業(体操教室)から短時間通所リハにつないだ症例
①パーキンソン病患者・家族会「のびのび友の会」育成事業の紹介と東近江市におけるパーキンソン病患者さんの現状
発表者:中野琴奈さん(東近江保健所 主任保健師)
・東近江保健所は東近江市、近江八幡市、日野町、竜王町を管轄しており、保健所が医療費助成の窓口であることから難病患者や家族の様々な相談を受けている。
・難病指定疾患は338あるが、パーキンソン病患者が一番多く、その受給者数は県全体で1751人、東近江圏域で309人いる。
・パーキンソン病はHoehn-Yahr分類3度以上、かつ生活機能障害度2度以上が対象。
・「のびのびの会」育成事業の目的は、患者やその家族(介護者)同士が交流したり、病気とうまく付き合えること、不安や悩みの軽減を図ること、疾病特性に応じた家庭でできるリハビリを習得すること。
・平成2年頃から約30年続いている。名前の由来は、病気の特性に負けないよう、身体を伸ばし、のびのびすることを目指してつけている。
・平成29年度からはNPO法人喜利さんと共催で行っている。
・309名のうち、案内希望の97名に配布し、33名が参加している。
・令和4年度は5回開催し、近江八幡市ひまわり館や東近江市コミセンを使用、内容は交流・歌・体操。
・参加者からは家でできる体操の希望が多く、そのアンケート結果でも大体良かったとの評価をいただいている。
・今後の課題としては、①パーキンソン病にリハビリが有効であることの啓発が必要であること、②東近江圏域全体が対象であり、距離が遠く参加できない人がおられること、③本会以外でも様々な形で交流できる場が必要、と感じている。
②のびのび体操友の会育成事業(体操教室)からみえた現状と課題
発表者:石山達也さん(近江温泉病院 理学療法士)
・当院には、パーキンソン病に特化したリハビリテーションプログラムLSVT〜BIG/LOUDの認定セラピストが7名いる。
・のびのび友の会での「家でできる体操」を指導した結果、95%がとても良かった、良かったとの感想をいただいている。
・審議応答では、朝起きる時に手を突っ張らないといけないが、どうしたらよいか?狭いところに行こうとすると足がすくんでしまう、リハビリテーションをどこで受けけられるのか分からない...等々上がった。
・のびのび体操から当院リハビリセンター(外来、デイリハセンター)に繋がった方が2名おられた。その紹介(デイリハ利用者に関しては聞き取りの動画を紹介)。
・思いとして〜「今後地域に求めることや、こんな支援があれば良いなと思うことはありますか?」「人に優しい、地域作り、社会作り、これが一番大事だと思う」
【グループワーク】
〜お題〜
・パーキンソン病を呈された方との関わりの中で困ったこと
(特に診断後どうしたら良いかわからなかった。リハビリテーションがあることを知らなかったなど。)
・パーキンソン病を呈された方を地域で支えていくには?
(どのような支援、サービスがあるか、理想の関わり方について)
【発表】
<1G>
・自分の病気がどう進んでいくのか分からない方にどう接したらよいかで困った。
・情報をまとめたものがあるとありがたい。
・健康教室などで、どこまでしてもらってよいのかの不安もある。
・どんな方でも地域の中で参加できる場があることが大事なのでは。
<2G>
・進行の早い方についての対応、痛みのせいで介入がしにくい方、施設に繋ぐにあたり薬価の高さから上手く繋げられないなどの悩みの意見が出た。
・情報の行き届かせ方が大事、大きなところでまとめて関係機関に繋げる場があるとよい。
<3G>
・薬を細かく調整していく、運動習慣がなかなかつかないとの困り事が出ていた。
・成功体験、褒め言葉、発症した時の最初の対応が大事。
・エロンゲーション体操の紹介。
<4G>
・診断がつかない、OFFの時の介助を指導したいが時間的に合わない、食事の際のとろみをつけるタイミング、運動面をみていくのかパーキンソン病に焦点を当てるのかで困ることがあるとの意見が出た。
・こういった症状があるということをまず知ること、また多職種での連携が大事。
<5G>
・オンオフの症状によって介護度が変わってしまうこと、オフが怖くて出無精になってしまわれる方への対応、精神面疾患への対応などが困り事として出た。
・初期段階ではリハビリへの理解が得られないことも多いため、初期段階から運動の啓発が大事。地域への集まりへの参加も大事なので、そのためのボランティアも考慮が必要。また薬に振り回されることがあるので主治医との連携も大切。
<6G>
・要支援にもかからない方の情報が取りにくいこと。その方達の移動手段も課題がある。日常的な習慣づくりも大事。
<7G>
・パーキンソン病と診断されていないが小刻み歩行等がみられる方への介入方法、意欲の低い方や認知症状のある方への運動習慣の定着化、4大兆候への対処などの課題が出た。
・リハビリとしては的確な指示の出し方、定期的な話し合いの場を持つこと、パーキンソン病患者の体験を聞く場を作ること、悩みを打ち明けることで前向きになれること、チームで支えること、などの対処の大事さが出た。
【指定コメント】
●中馬孝容先生より
・各グループいろんなディスカッションがなされていたんだなと感じて勉強になりました。地域でみていくことが大切だとは皆分かっているんだけれども、難病の患者さんはそれぞれに特徴がある。早期には歩行や動作で困ることがケアマネジャーへのアンケートでも上がってくるが、要介護度が上がってくると、圧倒的に多いのが嚥下。そして呼吸、言葉=スピーチ。地元で往診してくれるようなSTさんが少ないとのアンケート意見もあった。またほかアンケート結果ではリハの効果は認めてくださっているが、その次に上がってくるのがご家族の精神的ケア。なので患者のみならず家族全体をみていっているという現状が全国的にある。ですので、地域で支えるか、限りある人的資源の中で、うまく情報共有することでどんどんつなげていくことがとても大事だと感じている。その意味でこのような会に参加させていただけてありがたかったなと思っている、ありがとうございました。
●中野琴奈様より
・本日はありがとうございました。早くから体操など習慣にしていけるように取り組んでいくことが大事だと感じました。保健所ではある程度重症化してから関わることが多いので、早くから関わりを持つにはどうしたらよいかと思っていたので、このような会があることをもっと伝えていきたいと思います、ありがとうございました。
【次回】
第185回NPO三方よし研究会 令和5年5月18日(木)18:30 ~ 20:30
当番:医療法人社団昴会
「若年者で医療依存度の高い患者の退院支援について」ほか
今回もお読みいただきありがとうございました。
また次回、お会いしましょう。
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