三方よしカレンダー

2019年9月29日日曜日

第142回三方よし研究会のご報告

142回三方よし研究会が開催されましたので、ここに報告致します。
(掲載に関しましては、事例につきご家族の了解を得ております)

日時 令和1919日(木)18:3020:30 
会場 近江八幡市立総合医療センター よしぶえホール
当番 近江八幡市立総合医療センター
ゴール 〇苦痛緩和を正しく理解する
    〇それぞれの立場で緩和ケアを実践できる

【総合司会】
小串先生


【情報提供】
   健口歯つらつフェスタ 1014() AM10:0016:00 能登川コミュニティセンター(湖東歯科医師会 藤井先生より)
・ためしてガッテン演出担当デスクの北折一氏ほか豪華講師も呼んでいるので、ぜひご参加を!


   糖尿病三方よし 1010() 18:30〜 きらめきホール(滝川さんより)
・特集)睡眠について


   びわこリハビリテーション専門職大学開学の案内 20204月〜(大西満さんより)
・専門職大学として、医療系としては全国で2番目の認可となります。


   12月の三方よし研究会について 1221()16:30〜(花戸先生より)
・堀田聡子さん(慶應義塾大学大学院教授)を呼びます。滅多に聴けない貴重な機会ですのでぜひご参加を。
・特に行政や認知症対応実践者に来て欲しいです。



【進行】
近江八幡市立総合医療センター 近野由美さん


【挨拶】
近江八幡市立総合医療センター 院長 宮下浩明院長より
・小児科でのNICUの他GCUの工事が進まなかったが、6床今年度末に開始予定です。
・また耳鼻科がこれまでの1人体制から2人体制へ戻りました。
・今後ともご協力をお願いします。



【事例提供】
○事例を通して緩和ケアを考える~急性期病院の視点から~
ヴォーリズ記念病院 谷川弘子 緩和ケア認定看護師
「通常の緩和病棟の流れ〜受け入れから症状マネジメント」
(スライド資料をもとに)
・緩和ケアの定義 2002年の世界保健機構(WHO)で提唱された定義あり
・がん患者の臨床経過 身体的苦痛だけではない
・緩和ケアのあり方 現在は根治・進行抑制治療と支持療法・緩和ケアが同時並行
・緩和ケアの必要性 苦痛を全人的苦痛として包括的にケアをしていく必要性
・当院における緩和ケア提供の流れ
・緩和ケア導入の時期 患者によってさまざま/併診制の利点
・予後予測をケアに活用 
・症状のマネジメント 症状を「主観的なもの」と捉える
・よく見られる身体症状の変化 恒藤他1996統計グラフより
・痛みのアセスメントの基本 患者の主観を大切にする
・痛みの神経学的分類と特徴 大きく侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に分かれる
・ペインスケール④ 一般的に使われるのはフェイススケール。子供や高齢者に有効
・ペインスケール② 患者自身が直線上に印をつけるVASスケールもある
・日常生活への影響 3つの目標 1夜間の睡眠 2安静時の痛み消失 3体動時の痛みの消失
・がん性疼痛の鎮痛薬 WHO3段階除痛ラダーに基づく薬剤分類
・痛みの緩和のバリア 医療スタッフ/医療システム/患者・家族のバリア
・治療抵抗性の苦痛とそれへの対応 日本緩和医療学会 鎮静のガイドラインより
・まとめ 全人的ケア/症状は主観的なものと捉える/アドバンスケアプランニング/他職種連携


○近江八幡市立総合医療センター 4E病棟での経過(弘田かおりさん)
・夫、長男家族との5人暮らし。日中は夫との二人暮し。温厚でがまん強い性格。
・夫は過去に脳出血既往があり、介護疲れがきている。
・長男夫妻は夫のショックを考え告知しない方針だった。
・病歴はアルツハイマー型認知症、高血圧、便秘症。
・初診時は食欲不振にて。家族の入院希望が強く入院へ。
・入院3日目に退院支援カンファレンス。本人へは未告知。
・一週間後、長男夫妻に病状説明。在宅は困難、入院継続を希望。
・その後転院調整を開始。告知をしないままの緩和ケア病棟転院はありか?
・ベッドコントロールのため地域包括ケア病棟へ転棟することに。
・「もっとしたいことある。はよいにたい」可能な限り希望を叶えることができなかったか?


○近江八幡市立総合医療センター3S(地域包括ケア)病棟での経過(片山千鶴子さん)
・転棟時の状態から一週間の入院時の状態
・患者  「早く帰りたい」の繰り返しの訴え。
・病棟看護師の思い
~告知をしないまま転院させることはできるのか?
~質問されたら嘘をつくのか?
~告知されず余命を知らず夫にも会えずに亡くなる...
~せめてご主人に合わせてあげたい
~緩和ケアを専門としている病院でケアを受けさせてやりたい


○ヴォーリズ記念病院 緩和ケア病棟での経過(増田友佳子さん)
・結局は3時間ちょっとの入院だった。
・ご家族の訴え〜しんどくないようにしてやってください。薬を使って欲しい。薬を使ってもらえる当院に頑張って行こうなと(ご本人を)励ましていた。
・緩和ケアは診断された時から症状緩和が始まる。
・遺族ケアの重要性
・今後の課題〜急性期病院でも治療を進めながら緩和ケアも進めていく、チーム連携、共有。


【グループワーク】
・テーマ〜事例を通して苦痛緩和をどのように考えるか


発表】
(Aグループ)
・実際の様子を交えて聞かせてもらった。
・緩和ケア病院が満床だったことから時間がかかったという背景あり。
・多職種連携で急性期病院で看取れなかったか。
・転院の際にはDr.からの診療情報提供書を送らないことも多いので、その際には家族の思いが記載された看護サマリー等を送り情報共有できないか。


(Bグループ)
・一人一人患者自身の気持ちが大切。患者の家族の気持ちも大事だが、本人はしんどいという訴えを家族にされていた。
・「帰りたい」という訴えに対しては、病室でも本人の馴染みのものを置くなどできなかったか。
・麻薬に対しては、いいイメージが素人にはないため、本人や家族を交えてきちんとした説明の上でやるのがいい。
・「夫に会いたい」の訴えに対しては、もっとITを活用する、動画やTV電話などを使うこともできる。


(Cグループ)
・本人の意思が尊重されるべきという意見が一番多かった。
・本当のことを言ってあげたほうが本人と家族の絆も強まるかなと思った。
・本人の帰りたいという希望に対して、家の雰囲気作りをしてあげられたらよかった。


(Dグループ)
・家族や本人の思いも出ており、この病気をどう捉えるか、どう最期を迎えるかにつき、多職種がいるのでそれぞれの立場で聞いていけたら良い。
・緩和ケア=ホスピスという言葉が先走ってしまい、そこに行ったら死ぬだけという思いが強いんじゃないか。
・ホスピス啓発活動ももっとしていかなくてはならない。
・ナースが力を発揮できるところでもあるので、発信することもできるのでは?次の病院に繋げるためにサマリーの書き方なども工夫が必要かも。
・訴えに対し、苦痛の評価も考えていかなければならない。Deathカンファレンス。


(Eグループ)
・苦痛の緩和には、身体と心の痛みの緩和が入ってくる。
・亡くなられた後は家族の心のケアも大事。
・未告知だったことから、家族にがんへのショックが大きかった。告知の段階から本人と家族の思いに寄り添ったケアが必要だったのではないか。
・急性期から緩和ケアまで継続看護の必要性、また様々な職種が関わる必要性。


(Fグループ)
・病状に関して本人にしっかりと伝えられていなかったのではないか。
・本人の意思から疼痛コントロールもなかなか踏み切れなかったのかもしれない。
・看護師がもっと本人の思いを主治医に伝える機会があればよかったのではないか。緩和ケアと急性期の性質の違いもある。
・仕事が忙しい家族と病院との意思疎通の困難さもあった。


(Gグループ)
・連携に対して、家族さんに対してどれだけ病状説明していても不足はある。
・看護師サイドやセラピストは表情からも察していくべきだった。
・痛み訴えに対して、姿勢のアドバイス等もできた。
・実際に看取られた方からの意見で、両立して看ていけるのか。
・本人の思いとして、病状が未告知だったことに対し、この班では緩和ケアだったのかな。


(Hグループ)
・苦痛を緩和することにつき、精神的な痛みへの対応こそ大事にする必要がある。
・死に近づくに従い医療優先となりがちで、本人がどうしたかったのかなという思いが置き去りになってしまう。
・アルツハイマー型認知症があった中で、自分やったら?と意見を聞くと、ほとんどが告知してほしかったという意見が出た。
・時間のない中ではあったが、告知されていたら、お世話になった方への感謝を伝えることなどもできたのではないか。
・本人の希望をしっかりと聞くには家族の存在が大事。本人と家族を支える土台作りと地域づくりができればいい。


【コメント】
1.ヴォーリズ記念病院 谷川弘子 緩和ケア認定看護師
・3時間という短い入院の中で、ホスピスに来てもらってよかったのか?スタッフ共々迷った。
・入院前の訪問の段階で、1週間きるだろうという予後予測を立てていた。
・告知していないことはネックではないか?という意見が多々あったが、当院では告知していようが未告知であろうが、その人の抱えている人的苦痛は同じという観点から受け入れを行っている。ただし本人がこの身体はどうなっているのか?という訴えをされた場合は、一切嘘はつきませんと明言している。信頼関係の点から。言い方には配慮しますが。それを納得していただいて来て頂いている。
・他の緩和ケア病棟では未告知のままで受け入れしているかは確認して頂きたい。
・全体から見てこの方ってギリギリまで在宅で居られたのではないかと思う。
・急性期、地域ケア病棟、緩和ケア病棟3つの病棟の看護師がジレンマを抱えながら本人家族への関心を寄せて来た事例であって、決してこの方自身が悲しく家にも帰れず騙されていたという状況ではなかったのではないか。今日の皆さんの話を聴いて心があったまる思いがした。これからももっともっと交流を深めていきたい。


2.滋賀県がん患者団体連絡協議会 八木政廣氏
・私たち患者にとってもこのような場は非常に大事だと思っている。
・個人の話で言うと、私自身はがんについてきちんと聞きたかったが、この症例のようにあと1週間2週間という期間であれば、私は告知はどうでもよいと思う。それよりもこの一週間二週間をどう過ごすか、どう有意義な自分を出せるかを大事にしたいと思う。
・患者の立場から希望を述べると、今ACP(Advance Care Planning)やSDM(Shared decision making)など、本人の意思決定の支援を一生懸命しようということになって来ているが、その中でぜひともお願いしたいのは、私たちは医療者からするとど素人。その中でお互いに話をしていくと、どうしても理解できないまま話が進んでいく、そうして最終的に理解しないまま後悔してしまうということが出てくる可能性がある。なのでぜひとも医療者はその人がどの程度理解されているか、誤解をされていないか、に気をとめてほしいと思います。そうすればもっともっと良くなっていくのではないかと思います。


【自己紹介】
初めての方を中心に自己紹介


【三方よしメーリングリストの紹介】


【三方よしポストのご紹介】




【連絡事項】
(次回143回 三方よし研究会 令和元年1017()18:30
当番 湖東歯科医師会・ぴーまん食楽部・東近江介護支援専門員連絡協議会
会場  五個荘コミュニティセンター
テーマ
○初期の口腔がんについて学ぶ、
○退院時および栄養評価について学ぶ
○多職種での連携を深められるようにする


今回も多数のご出席、ありがとうございました。
来月もお待ちしております。宜しくお願い致します。

0 件のコメント:

コメントを投稿