第186回の三方よし研究会が開催されましたので、ここにご報告いたします。
◇日時:2023(令和5)年6月15日 18:30~20:30
◇会場:WEB開催(ZOOM開催)
◇当番:東近江介護サービス事業者協議会在宅部門・施設部門(社会福祉法人六心会)
◇ゴール:
○避難行動要支援者避難支援制度について学ぶ。
○避難行動要支援者を実際に支援する仕組みづくりについて実践事例を参考に考える。
○顔の見える関係・ネットワークを作り、連携を深める。
進行:六心会 堤洋三さん
【情報提供】
・三方よし介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修のお知らせ 〜楠神渉さんより〜
【学習会】
「東近江市避難行動要支援者避難支援制度について ~制度の概要と東近江市の推進方針、現状の紹介等~」
・東近江市福祉部 福祉政策課 大丸 和輝さん
・阪神淡路大震災にて「災害弱者」という言葉が使われ始め、東日本大震災の時から「災害時要援護者」の避難支援が検討されるようになった。
・東日本大震災では被災地全体の死亡者数のうち約6割が65歳以上の高齢者で、障害者の死亡率は被災住民全体死亡率の2倍、消防団員等支援者も多数犠牲になり、要援護者の避難が大きな問題に。
・こうして避難行動要支援者名簿の作成が市町村に義務付けられ、同意が得られれば避難支援関係者(自治会や民生委員など)に提供できるような制度ができた。
・近年毎年発生している豪雨災害でも、この災害時要配慮者の死亡者数の高さが、課題を物語っており、東近江市でも、避難行動要支援者避難支援制度が策定された。
・ただ名簿作成だけでは要支援者に被害が集中している現状が続いていた中で、令和3年にさらに法律が改正され、さらに法律が改正され、要支援者一人一人の「個別避難計画」の作成が市町村の努力義務となる。
・その計画作成では防災と保健福祉の連携が非常に重要で、普段から見守りながら災害時には支援につなげていこうという趣旨。
・計画と名簿では優先度をつけて作成していくことが大事。ただなかなか全ての項目を埋めていくのは難しいため、医療福祉の専門職も関わりなが関わりながら作成していく必要がある。
・令和5年1月1日現在、東近江市での避難行動要支援者の対象者は4,144人でそのうち実際の登録者は2,445人(対象者対比59.0%、回答者対比で70.4%)。
・取り組みが進んでいる地区、そうでない地区それぞれある。令和3年に計画作成に前向きな回答をいただいた市辺まちづくり協議会と連携してモデル的に全自治会で個別避難計画の作成支援を進めてきた。
・その中での取り組みの工夫としては、自治会長が中心となって聞き取りを行うが、民生委員も同行することでスムーズな聞き取りが可能になった例がある。
・ただ自治会長や役員なども基本毎年交代していく中で、なかなか取り組みが積み重なっていかないという課題がある。そのような中でこの後に出てくる見守りを中心とした福祉委員会のような組織の結成が非常に大事になってくると思われる。
・いざ災害が発生した時に避難するのも判断するのも住民一人一人なので、主体的な計画作りとその支援が重要だと思っている。
【事例報告】
「五個荘山本町自治会(福祉委員会)における避難支援・個別避難計画作成の取組み」
◯東近江市五個荘山本町 民生委員・児童委員(福祉委員)中沢篤雄さんより
・五個荘山本町は人口621人、世帯数245、男女平均年齢45.6歳で高齢化率は28.8%で大体全国平均と同じくらい。若い世代が近年引越し等で増えてきている特徴もある。
・個別避難計画は「五個荘山本町福祉委員会」がベースとなって活動している。
・前身として2006(H18)年の配食サービス「えぷろん」やミニふれあいサロン、2015(H27)年の「やまもとワンコインカフェ」等、女性中心の有志ボランティア活動がある。
・2019(H30)年に市社協講演会をきっかけに勉強会を開き、ボランティア活動メンバーを中心とした「五個荘山本町福祉委員会」が発足した。
・現在14名の委員で、定例会では毎回担当者が見守り対象者の状況を報告しあうなどしている。
◯東近江市五個荘山本町 福祉委員(前自治会長)稲本正行さんより
・2022(R4)年5月、東近江市自治会連合会の「東近江市避難行動要支援者支援制度」研修をきっかけに、12月に山本町でも避難支援・個別避難計画作成の取り組みが始まった。先立って11月には防災訓練も開催した。
・2023(R5)年1月に「避難行動要支援者個別避難計画作成検討会議」を開催。以後2ヶ月毎に進捗状況を確認し合っている。
◯東近江市五個荘山本町 自治会長(福祉委員長)野瀬芳宏さん
・今後の取り組みとしては、計画作成から避難訓練への展開、登録更新と聞き取りの継続。
・課題は、福祉委員会活動がベースであることから、福祉委員会活動の維持・継続が最も重要(福祉委員の高齢化)。
進行:花戸貴司先生
【グループ別意見交換】
①避難行動要支援者の個別避難計画づくりへにどのように関わることができるでしょうか
②災害時にはどんなネットワークが必要になるでしょうか
③避難行動要支援者の命を守るためにも平素からできることとはどんなことでしょうか。
【発表】
<1G>
・熊本災害も経験したが、災害にあったところは取り組みが進む、ないところは進まないという現状がやはり出てきがちな現実がある。
・施設と居宅によっても違いがある。
・栄養士活動では防災食の取り組み紹介もあった。
・自分の自治会でお隣に声を掛け合って顔の見える関係づくりを始めだした。
・歯科医師会ではポータブル機器や発電機等の用意もされている。
・リハ職としては、フェーズ対応で災害が一段落した後の予防支援、サポートを行いたい。
<2G>
・どの程度の災害を予想するか。そして訪問看護師であれば顔が見えない中で対応していかなければならない実情からすると、顔が見えなくても動けるデータベースの構築、それを共有してわかっておく必要性を感じている。東京では4千人の事例発表のあった東近江市とは桁が違うので強く感じている。人間の耳と形だけでは限界がある。誰かに聞かなくても見える状態をいかに作るか。
<3G>
・①については、作業療法士としては逃げる際の手段についてのアドバイス、ケアマネとしては避難場所の記入、避難所での必要な物資等についてなどの意見が出た。
・②については、その方に対しての情報カードの話が出た。保健所やケアマネ、行政それぞれの持っている情報を合わせていく連携も大事。
・③ではそもそも書くことができない方へのフォロー、市からの働きかけでケアマネに繋がる場合などある。また正確な情報共有の仕方、後継者の問題を考えておくこと、地域行事に参加しておくこと等の意見が出た。
<4G>
・地域包括支援センター、地域コーディネーター、民生委員等の方々が集まるのが大事なのではないか。今回社会福祉法人が活躍しているのはとてもよい取り組みなのではないか。
・色々な情報ツールを駆使して楽しくやっていくのもとても大事な要素なのではないか。
・個人情報のことを全面に出すのではなく、その方の命を守るためには、情報共有が大事なのではないか。在宅酸素や薬情報など。
・民生委員を皆がしっかり支えるということも大事なのではないか。
<社会福祉法人六心会の関わりについて>
・定例会の際に福祉の専門家の立場から意見をいただけることはとても助かっている。
・六心会としても、防災協定も締結して地域と共に進んでいこうと思っている。
【指定発言】
●東近江市五個荘山本町 民生委員・児童委員(福祉委員) 中沢篤雄さんより
・民生委員2期目で1000人いるが、一人でやってこれたのも福祉委員の皆さんがいたから。避難支援計画はあくまで手段であって、これをいかに地に足をつけて取り組んでいけるかが大事だと思っている。滋賀県は災害が少ないと言われてきたが、そのような状況でもなくなってきている現状もあるので、しっかりこれからも進めていきたいと思っている。
●東近江市福祉部 福祉政策課 インクルージョンマネージャー 中村準一さんより
・今日はとても参考になるご意見をいただいた。この制度がまだまだ浸透していない現状は行政としての努力もさらに必要だと思っている。その中で五個荘山本町の取り組みは非常に有意義でありがたく思っている。しかしやはり医療福祉専門職の力は大きいと思っている。例えば薬剤師の一言等が当事者にとって参考に大事になってくる。自分で生き延びようとするには、専門職の知識が必要となっている。そして情報の共有化と管理につき課題を解決していけるようにしたい。自治体の強みを活かして次代の命を守る地域を作っていっていただく、その支援に今後も取り組んでいきたい。今日はありがとうございました。
【連絡事項】 ・187回 三方よし研究会
○当番:八幡蒲生郡薬剤師会・東近江薬剤師会
「ポリファーマシーについて」
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
また次回もお待ちしております!
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